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番外編1
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昔はこの世界にも神様がいると信じていた。
良いことが起こる時はいつも神様のお陰だと思っていた。
しかし、あの出来事以来、神様はいないと思った。
なぜこうも私の良い人生を壊すことが出来たのだろうか。
私の家族はいわゆる転勤族だった。
そのせいで、その町に留まることは出来ず、友達など一切出来なかった。
いつも遊んでいたのは熊のぬいぐるみとだった。
最初のうちは楽しかったのかもしれないが、飽きが来てしまったせいで、この生活が嫌になってしまった。
1度だけ両親に泣きじゃくったことがあった
「友達が欲しい」ただそれを連呼するだけだった。
当然、生活がかかっているので父は会社をやめることは出来る筈がない。
しかし、幼い頃の私はそんなことを気にも止めることは出来ない。
たしかその日は、泣き過ぎで疲れ果て寝ちゃったな。
翌日、父は有給を取り公園に連れてきてくれた。
昨日泣きわめいたせいだろう。
そういえば、父が家にいる時間よりも、会社にいる時間の方が多かったな。
休みなどほとんどなく、毎日のように仕事してたっけ。
今思えば、父はこのままじゃ娘が可哀想だと思ってくれて、大切な休みを使って時間を作ってくれたのかもしれない。
「何して遊ぼうか?」
「ブランコ!」
「よーし!」と言い父はブランコに乗った私を押してくれた。
父は私を心配に思ってくれるのに対し、私は昨日泣きじゃくったことは、一切覚えていなかった。
あの時は嫌な思いでもすぐに忘れることが出来たのだ。
ブランコが終わると「じゃあ今度は…」と父の視線の先に砂場があり、そこに1人の男の子が遊んでいた。
「砂場で遊ぼっか」
多分その時に父は同年代っぽいあの子と友達になれば、悲しい思いも減るだろうと考えたのかもしれない。
しかし、私は「嫌だ」と言った。
何回も幼稚園を変えて、人見知りのせいか元々あったグループの輪にも入る勇気がなく、1人で過ごすことが多かった。
そのことがトラウマとなり、人見知りに拍車をかけてしまっていた。
そんな私をみかねて父は「父さんと一緒に砂場で遊ぼう」と、私の手を引いて砂場まで歩いた。
最初のうちは父と遊ぶだけだと思っていたが、父は策士だった。
最初のうちは娘と遊び、少しずつ男の子との距離をつめた。
そして、「何を作ってるの?」と父は男の子に話しかけた。
すると、男の子は「まだ決まってないよ?」と返事を
した。
「じゃあ、とっても面白いことが出来るんだけど…」
と男の子に視線を向けた。
すると男の子は
「やりたい!」
とはしゃいでいた。
「じゃあ、そのためにまずはみんなでトンネルをつくろうか!」
半ば強引に私も参加させられたトンネル作り。
土台が完成すると父は「父さんは疲れたから、後は2人で頑張って!」と公園のベンチにむかった。
「お父さん…」と不安そうにしていた私を見かねた父はこんなことを言ってくれた。
「アキいいか?時には勇気を出すことも必要なんだ。アキは初めて会う人と少し接するのが苦手かもしれないけど、それを乗り越えられれば、友だちもたくさんつくれるからね」と笑顔で言い、砂場から離れた。
それから父の言われた通りの工程でトンネルをつくっていた。
「勇気を出す…」その事が脳裏をよぎっていた。
しかし、まだ勇気は出せずに殻にこもったままの状態だった。
どうしようと深く悩んでいると男の子が話しかけてくれた。
「君の名前なんていうの?」
嬉しかった。今でもあの時の光景を鮮明に覚えている。
砂で汚れた手で一生懸命作っているトンネル、そのせいで流れている汗、そして不安そうな私を包み込んでくれた優しい声。
これが私の初恋だった。
しかし、今では彼は私のことを忘れてしまっている。
それは仕方ない。
そのときは彼も私も幼かったのだ。
彼ならまた私を助けてくれるのかもしれない。
あの時のように…。
良いことが起こる時はいつも神様のお陰だと思っていた。
しかし、あの出来事以来、神様はいないと思った。
なぜこうも私の良い人生を壊すことが出来たのだろうか。
私の家族はいわゆる転勤族だった。
そのせいで、その町に留まることは出来ず、友達など一切出来なかった。
いつも遊んでいたのは熊のぬいぐるみとだった。
最初のうちは楽しかったのかもしれないが、飽きが来てしまったせいで、この生活が嫌になってしまった。
1度だけ両親に泣きじゃくったことがあった
「友達が欲しい」ただそれを連呼するだけだった。
当然、生活がかかっているので父は会社をやめることは出来る筈がない。
しかし、幼い頃の私はそんなことを気にも止めることは出来ない。
たしかその日は、泣き過ぎで疲れ果て寝ちゃったな。
翌日、父は有給を取り公園に連れてきてくれた。
昨日泣きわめいたせいだろう。
そういえば、父が家にいる時間よりも、会社にいる時間の方が多かったな。
休みなどほとんどなく、毎日のように仕事してたっけ。
今思えば、父はこのままじゃ娘が可哀想だと思ってくれて、大切な休みを使って時間を作ってくれたのかもしれない。
「何して遊ぼうか?」
「ブランコ!」
「よーし!」と言い父はブランコに乗った私を押してくれた。
父は私を心配に思ってくれるのに対し、私は昨日泣きじゃくったことは、一切覚えていなかった。
あの時は嫌な思いでもすぐに忘れることが出来たのだ。
ブランコが終わると「じゃあ今度は…」と父の視線の先に砂場があり、そこに1人の男の子が遊んでいた。
「砂場で遊ぼっか」
多分その時に父は同年代っぽいあの子と友達になれば、悲しい思いも減るだろうと考えたのかもしれない。
しかし、私は「嫌だ」と言った。
何回も幼稚園を変えて、人見知りのせいか元々あったグループの輪にも入る勇気がなく、1人で過ごすことが多かった。
そのことがトラウマとなり、人見知りに拍車をかけてしまっていた。
そんな私をみかねて父は「父さんと一緒に砂場で遊ぼう」と、私の手を引いて砂場まで歩いた。
最初のうちは父と遊ぶだけだと思っていたが、父は策士だった。
最初のうちは娘と遊び、少しずつ男の子との距離をつめた。
そして、「何を作ってるの?」と父は男の子に話しかけた。
すると、男の子は「まだ決まってないよ?」と返事を
した。
「じゃあ、とっても面白いことが出来るんだけど…」
と男の子に視線を向けた。
すると男の子は
「やりたい!」
とはしゃいでいた。
「じゃあ、そのためにまずはみんなでトンネルをつくろうか!」
半ば強引に私も参加させられたトンネル作り。
土台が完成すると父は「父さんは疲れたから、後は2人で頑張って!」と公園のベンチにむかった。
「お父さん…」と不安そうにしていた私を見かねた父はこんなことを言ってくれた。
「アキいいか?時には勇気を出すことも必要なんだ。アキは初めて会う人と少し接するのが苦手かもしれないけど、それを乗り越えられれば、友だちもたくさんつくれるからね」と笑顔で言い、砂場から離れた。
それから父の言われた通りの工程でトンネルをつくっていた。
「勇気を出す…」その事が脳裏をよぎっていた。
しかし、まだ勇気は出せずに殻にこもったままの状態だった。
どうしようと深く悩んでいると男の子が話しかけてくれた。
「君の名前なんていうの?」
嬉しかった。今でもあの時の光景を鮮明に覚えている。
砂で汚れた手で一生懸命作っているトンネル、そのせいで流れている汗、そして不安そうな私を包み込んでくれた優しい声。
これが私の初恋だった。
しかし、今では彼は私のことを忘れてしまっている。
それは仕方ない。
そのときは彼も私も幼かったのだ。
彼ならまた私を助けてくれるのかもしれない。
あの時のように…。
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