毒の話

KeiSenyo

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毒の話

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 蜘蛛がいる。青い蜘蛛。空色に鮮やかに、表面が塗られている。人工物のようだが、たしかに生物として動く。自分の意思を持つ。
 そこへ、狸がやってきた。狸はぽんぽこお腹を叩き、蜘蛛を威嚇する。蜘蛛は反撃に口から糸を飛ばす。例の、ぬるぬるとしたくっつくやつだ。狸はそれを迷惑そうに弾く仕草をする。勿論、糸に絡め取られてしまう。
 狸は動けなくなってしまった。蜘蛛は、そろそろと狸に近寄り、その顎を広げ、捕食しようとする。しかし、圧倒的に狸の方がでかい。それに、蜘蛛の顎では狸の毛皮も噛み砕けなかった。蜘蛛は、狸の口の中に入ろうと試みる。体の中から食い荒らしてしまおうというわけだ。しかし、逆に狸に噛み砕かれ、蜘蛛の浅はかな試みは無残に失敗する。
 だがこれで終わりというわけでもない。蜘蛛には毒があったから、その毒が狸の全身を回り、道連れにした。誰も生きていない。この不毛な戦闘に誰一人生き残った者はいない。毒の回った狸を誰かが食らう。その者も死ぬ。そしてその者にも毒が回り、それを食した者もやはり死ぬ。死が連鎖する。どんどん連鎖していく。
 いいや、それにも終わりはある。毒に強い生き物が登場した。それは、狸や蜘蛛よりもはるかに小さい。毒ほどその栄養とはならない生物だ。その生き物は毒を粉々に分解し、すべての生物が食べられるようにする。その生き物は身を持って解毒を行う。自らがあとから食べられてしまう。
 小さな生物ほど強いのかもしれない。彼らは食われる最下層の者かもしれないが、解毒は彼らによって行われるのであれば。巡り巡ってまた毒ある蜘蛛に彼らは食べられてしまうが。毒自身になってしまうが。
 これが毒の正体である。世界は毒に満ちている。いいや、その毒の、循環に満ちている。かろうじてこの連鎖循環から逃れられた生物がいる。彼らは、毒の価値を知らない。毒をもって何事か語らない。毒のないところに彼らは住んでいたから、毒されたものは、毒のある場所へと渡り歩く。両者は交わらない。同一の世界に互いがいるのだが、一方は毒を必要とせず、一方は毒の価値を知る者たちを巡り歩く。青い蜘蛛。それはどこで生まれただろうか。ふと生まれていた気がする。どこに?
 それが毒を持っていたといつ誰が知っただろう。いつからか、それは始まったはずだ。その毒が巡り、大勢の者たちを倒し、小さな者たちに分解されていくということが。始めから、世界の成り立ちの最も初めからそれは行われたのではなかった。ある時その毒の存在を誰かが知り、伝えたのである。「毒のあるものが誕生した」と、訴えたのである。その瞬間、その世界に毒は満ちた。毒は循環する季節のようなものになった。誰もがそれを食べていたと知るようになった。分解されうるのだという発見をした。
 さてこの毒のない場所に、新たに蜘蛛が誕生した。その蜘蛛は四つ足で、今度は赤い。はたしてその蜘蛛は、毒を持っているだろうか。もしそのような報告がされれば、世界にその毒は瞬く間に満ち、分解され、巡回するだろう。その瞬間、ある一つの垣根がおそらく消え去るのだろう。いいや、もしかしたら、新しい垣根を見つけるかもしれない。またその毒が、ない場所を。
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