57 / 90
第二章その4 ~信じてほしいの!~ ガンコ才女の説得編
ガンコ祭神ゼノファイア
しおりを挟む
「断る。なぜ我が、ガレオンの船団に協力せねばならん。ヤツは我が宿敵だ」
室内に座する巨体は、開口一番そう言った。
ルビーのように赤い体は、立てば100メートル以上になるだろう。
体型はガレオンよりかなりずんぐりして、いかにも頑強そうに見える。
これが第6船団の保護する祭神『ゼノファイア』であり、餓霊軍団の総大将・ディアヌスに敗れた事で、人間に保護されている状況だ。
鹿児島に敵が迫っているし、当然協力してくれると思ったのだが、彼はガレオンほど物分りが良くないらしい。
鶴が「まあ、分からず屋ね!」と言いながら詰め寄ろうとするので、コマや神使達が必死になだめた。
「駄目だよ鶴、さすがによその船団なんだから。ここは天草さんに任せようよ」
「せやで姫様、かんにんや」
ムムム、と唸る鶴をよそに、ゼノファイアは天草を見据えた。
「そもそも見知らぬ者を我に会わせるなど言語道断。我を恨む者も未だにいるだろう」
祭神の言葉に、壮太が隣の晶に囁く。
「なあ晶、なんで味方の祭神を恨むヤツがいるんだ?」
晶は片手でメガネの位置を直しながら答える。
「高千穂の竜芽細胞が巨大化し、人々を襲った際、彼らの意識はディアヌスと同一。いわば分身状態だっただろう? 自我を得たのは数日後、日本を占領した後なんだが……家族を奪われた人からすれば、ディアヌスだけでなく、ゼノファイアのような祭神に恨みを持ってもおかしくないんだ」
「なるほどなあ。サンキュー晶」
納得する壮太の前で、天草がゼノファイアに訴えかける。
「御免なさいゼノファイア。でも、もうすぐ餓霊の軍勢がこの鹿児島に押し寄せてくるわ。負ければ第6船団は終わり。そしたらあなたを守るこの船だって維持出来なくなるの」
天草は胸元で指を組み合わせ、祈るように祭神に伝える。
「色々あると思うけど、でも今は、まずディアヌスの軍勢に勝つ事が最優先なの」
「……………………分かった。仕方あるまい」
ゼノファイアはそう答えたが、鶴は待ってましたとばかりに進み出た。
「いいわゼノちゃん、分かってくれればそれでいいのよ。さっそく力を借りるけど、その前に、霊気が乱れてそうな所を治すわね」
鶴は遠慮なくゼノファイアによじ登ると、手の平からレーザーを照射。ガレオンの時と同じように、勝手に治療し始める。
「あっおい、なんだこの娘は。この我をゼノちゃんなどと……こら、やめろっ、アーッ!?」
ゼノファイアは地響きを上げ、足ツボマッサージを受けたようにくねっていたが、やがてぐったり壁にもたれかかった。
「これでいいわ。さっそく開始よ」
鶴は気にせずゼノファイアの膝の上に立ち、目を閉じて何か念じ始める。
誠達は固唾を呑んで見守るが、ふとそこでコマが言った。
「他人の霊気でこんな術を使うなんて、難しいコントロールがいるんだけど……かなり成長してるね」
「それって、鳳さんの戦闘を見たせいなのか? 一回見ただけで?」
「元々素質は百点なんだよ。修行嫌いなだけでさ」
コマはそう言うが、誠はふと例の違和感を思い出した。
少し迷いつつも、思い切って尋ねてみる。
「……なあコマ。ヒメ子、最近ちょっと変わってないか?」
「変わる?」
「そう。何ていうか、少し人の話を聞くようになったっていうのか……急に成長してるような気がするんだけど」
「…………それは……………そうかもね。ちょっと早いけど、いずれはね」
コマは困ったように言葉を濁したが、そこで辺りの景色は一変した。
室内に座する巨体は、開口一番そう言った。
ルビーのように赤い体は、立てば100メートル以上になるだろう。
体型はガレオンよりかなりずんぐりして、いかにも頑強そうに見える。
これが第6船団の保護する祭神『ゼノファイア』であり、餓霊軍団の総大将・ディアヌスに敗れた事で、人間に保護されている状況だ。
鹿児島に敵が迫っているし、当然協力してくれると思ったのだが、彼はガレオンほど物分りが良くないらしい。
鶴が「まあ、分からず屋ね!」と言いながら詰め寄ろうとするので、コマや神使達が必死になだめた。
「駄目だよ鶴、さすがによその船団なんだから。ここは天草さんに任せようよ」
「せやで姫様、かんにんや」
ムムム、と唸る鶴をよそに、ゼノファイアは天草を見据えた。
「そもそも見知らぬ者を我に会わせるなど言語道断。我を恨む者も未だにいるだろう」
祭神の言葉に、壮太が隣の晶に囁く。
「なあ晶、なんで味方の祭神を恨むヤツがいるんだ?」
晶は片手でメガネの位置を直しながら答える。
「高千穂の竜芽細胞が巨大化し、人々を襲った際、彼らの意識はディアヌスと同一。いわば分身状態だっただろう? 自我を得たのは数日後、日本を占領した後なんだが……家族を奪われた人からすれば、ディアヌスだけでなく、ゼノファイアのような祭神に恨みを持ってもおかしくないんだ」
「なるほどなあ。サンキュー晶」
納得する壮太の前で、天草がゼノファイアに訴えかける。
「御免なさいゼノファイア。でも、もうすぐ餓霊の軍勢がこの鹿児島に押し寄せてくるわ。負ければ第6船団は終わり。そしたらあなたを守るこの船だって維持出来なくなるの」
天草は胸元で指を組み合わせ、祈るように祭神に伝える。
「色々あると思うけど、でも今は、まずディアヌスの軍勢に勝つ事が最優先なの」
「……………………分かった。仕方あるまい」
ゼノファイアはそう答えたが、鶴は待ってましたとばかりに進み出た。
「いいわゼノちゃん、分かってくれればそれでいいのよ。さっそく力を借りるけど、その前に、霊気が乱れてそうな所を治すわね」
鶴は遠慮なくゼノファイアによじ登ると、手の平からレーザーを照射。ガレオンの時と同じように、勝手に治療し始める。
「あっおい、なんだこの娘は。この我をゼノちゃんなどと……こら、やめろっ、アーッ!?」
ゼノファイアは地響きを上げ、足ツボマッサージを受けたようにくねっていたが、やがてぐったり壁にもたれかかった。
「これでいいわ。さっそく開始よ」
鶴は気にせずゼノファイアの膝の上に立ち、目を閉じて何か念じ始める。
誠達は固唾を呑んで見守るが、ふとそこでコマが言った。
「他人の霊気でこんな術を使うなんて、難しいコントロールがいるんだけど……かなり成長してるね」
「それって、鳳さんの戦闘を見たせいなのか? 一回見ただけで?」
「元々素質は百点なんだよ。修行嫌いなだけでさ」
コマはそう言うが、誠はふと例の違和感を思い出した。
少し迷いつつも、思い切って尋ねてみる。
「……なあコマ。ヒメ子、最近ちょっと変わってないか?」
「変わる?」
「そう。何ていうか、少し人の話を聞くようになったっていうのか……急に成長してるような気がするんだけど」
「…………それは……………そうかもね。ちょっと早いけど、いずれはね」
コマは困ったように言葉を濁したが、そこで辺りの景色は一変した。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
99歳で亡くなり異世界に転生した老人は7歳の子供に生まれ変わり、召喚魔法でドラゴンや前世の世界の物を召喚して世界を変える
ハーフのクロエ
ファンタジー
夫が病気で長期入院したので夫が途中まで書いていた小説を私なりに書き直して完結まで投稿しますので応援よろしくお願いいたします。
主人公は建築会社を55歳で取り締まり役常務をしていたが惜しげもなく早期退職し田舎で大好きな農業をしていた。99歳で亡くなった老人は前世の記憶を持ったまま7歳の少年マリュウスとして異世界の僻地の男爵家に生まれ変わる。10歳の鑑定の儀で、火、水、風、土、木の5大魔法ではなく、この世界で初めての召喚魔法を授かる。最初に召喚出来たのは弱いスライム、モグラ魔獣でマリウスはガッカリしたが優しい家族に見守られ次第に色んな魔獣や地球の、物などを召喚出来るようになり、僻地の男爵家を発展させ気が付けば大陸一豊かで最強の小さい王国を起こしていた。
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
第5皇子に転生した俺は前世の医学と知識や魔法を使い世界を変える。
黒ハット
ファンタジー
前世は予防医学の専門の医者が飛行機事故で結婚したばかりの妻と亡くなり異世界の帝国の皇帝の5番目の子供に転生する。子供の生存率50%という文明の遅れた世界に転生した主人公が前世の知識と魔法を使い乱世の世界を戦いながら前世の奥さんと巡り合い世界を変えて行く。
バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します
namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。
マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。
その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。
「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。
しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。
「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」
公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。
前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。
これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。
転生したら領主の息子だったので快適な暮らしのために知識チートを実践しました
SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
不摂生が祟ったのか浴槽で溺死したブラック企業務めの社畜は、ステップド騎士家の長男エルに転生する。
不便な異世界で生活環境を改善するためにエルは知恵を絞る。
14万文字執筆済み。2025年8月25日~9月30日まで毎日7:10、12:10の一日二回更新。
最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。
みこみこP
ファンタジー
高校2年の夏。
高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。
地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。
しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。
転生したら『塔』の主になった。ポイントでガチャ回してフロア増やしたら、いつの間にか世界最強のダンジョンになってた
季未
ファンタジー
【書き溜めがなくなるまで高頻度更新!♡٩( 'ω' )و】
気がつくとダンジョンコア(石)になっていた。
手持ちの資源はわずか。迫りくる野生の魔物やコアを狙う冒険者たち。 頼れるのは怪しげな「魔物ガチャ」だけ!?
傷ついた少女・リナを保護したことをきっかけにダンジョンは急速に進化を始める。
罠を張り巡らせた塔を建築し、資源を集め、強力な魔物をガチャで召喚!
人間と魔族、どこの勢力にも属さない独立した「最強のダンジョン」が今、産声を上げる!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる