新説・鶴姫伝! 日いづる国の守り神 PART2 ~鎮西のジャンヌダルク~

あさくらやたろう-BELL☆PLANET

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第二章その4 ~信じてほしいの!~ ガンコ才女の説得編

ガンコ祭神ゼノファイア

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「断る。なぜ我が、ガレオンの船団に協力せねばならん。ヤツは我が宿敵だ」

 室内に座する巨体は、開口一番そう言った。

 ルビーのように赤い体は、立てば100メートル以上になるだろう。

 体型はガレオンよりかなりずんぐりして、いかにも頑強そうに見える。

 これが第6船団の保護する祭神『ゼノファイア』であり、餓霊軍団の総大将・ディアヌスに敗れた事で、人間に保護されている状況だ。

 鹿児島に敵が迫っているし、当然協力してくれると思ったのだが、彼はガレオンほど物分りが良くないらしい。

 鶴が「まあ、分からず屋ね!」と言いながら詰め寄ろうとするので、コマや神使達が必死になだめた。

「駄目だよ鶴、さすがによその船団なんだから。ここは天草さんに任せようよ」

「せやで姫様、かんにんや」

 ムムム、と唸る鶴をよそに、ゼノファイアは天草を見据えた。

「そもそも見知らぬ者を我に会わせるなど言語道断。我を恨む者も未だにいるだろう」

 祭神の言葉に、壮太が隣の晶にささやく。

「なあ晶、なんで味方の祭神を恨むヤツがいるんだ?」

 晶は片手でメガネの位置を直しながら答える。

「高千穂の竜芽細胞ドラゴンセルが巨大化し、人々を襲った際、彼らの意識はディアヌスと同一。いわば分身状態だっただろう? 自我を得たのは数日後、日本を占領した後なんだが……家族を奪われた人からすれば、ディアヌスだけでなく、ゼノファイアのような祭神に恨みを持ってもおかしくないんだ」

「なるほどなあ。サンキュー晶」

 納得する壮太の前で、天草がゼノファイアに訴えかける。

「御免なさいゼノファイア。でも、もうすぐ餓霊の軍勢がこの鹿児島に押し寄せてくるわ。負ければ第6船団は終わり。そしたらあなたを守るこの船だって維持出来なくなるの」

 天草は胸元で指を組み合わせ、祈るように祭神に伝える。

「色々あると思うけど、でも今は、まずディアヌスの軍勢に勝つ事が最優先なの」

「……………………分かった。仕方あるまい」

 ゼノファイアはそう答えたが、鶴は待ってましたとばかりに進み出た。

「いいわゼノちゃん、分かってくれればそれでいいのよ。さっそく力を借りるけど、その前に、霊気が乱れてそうな所を治すわね」

 鶴は遠慮なくゼノファイアによじ登ると、手の平からレーザーを照射。ガレオンの時と同じように、勝手に治療し始める。

「あっおい、なんだこの娘は。この我をゼノちゃんなどと……こら、やめろっ、アーッ!?」

 ゼノファイアは地響きを上げ、足ツボマッサージを受けたようにくねっていたが、やがてぐったり壁にもたれかかった。

「これでいいわ。さっそく開始よ」

 鶴は気にせずゼノファイアの膝の上に立ち、目を閉じて何か念じ始める。

 誠達は固唾を呑んで見守るが、ふとそこでコマが言った。

「他人の霊気でこんな術を使うなんて、難しいコントロールがいるんだけど……かなり成長してるね」

「それって、鳳さんの戦闘を見たせいなのか? 一回見ただけで?」

「元々素質は百点なんだよ。修行嫌いなだけでさ」

 コマはそう言うが、誠はふと例の違和感を思い出した。

 少し迷いつつも、思い切って尋ねてみる。

「……なあコマ。ヒメ子、最近ちょっと変わってないか?」

「変わる?」

「そう。何ていうか、少し人の話を聞くようになったっていうのか……急に成長してるような気がするんだけど」

「…………それは……………そうかもね。ちょっと早いけど、いずれはね」

 コマは困ったように言葉をにごしたが、そこで辺りの景色は一変した。
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