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第一章その1 ~始めよう日本奪還~ 少年たちの苦難編
戦場のルーキー1
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廃墟と化した市街地に、1台のバスが立ち往生していた。そばには2機の人型重機が付きそっている。
1機は油断無く周囲を警戒していたが、もう1機は明らかに不慣れなのか、一つ一つの動作がぎこちなかった。
「おい宇部ちゃん! あたしが周り見てるから、バスのフォローしてあげて! 作業機械モードに切り替え忘れないで、戦闘モードのままじゃ駄目よ」
「りょ、了解です」
少女は先輩パイロットの言葉通り、悪路と苦闘するバスを後ろから押した。
バスは左右に揺れながら瓦礫を乗り越え、降車して見守っていた人々も安堵の声を上げた。運転手が調べた所、特にパンクもしていないようだ。
「さあ、早く乗ってくださーい! 急いで港まで後退しますよ!」
先輩パイロットが呼びかけ、人々は再びバスの中へと駆け戻った。
バスは荒れた路面をゆっくりと移動していく。
「もう少しで路面が良くなるから、そしたら一気にスピードが出るわ。それまで警戒しとくのよ」
「はい」
「ちゃんと戦闘モードに戻した? いざって時にトリガー引いたら、違う動作が出ちゃうわよ」
「はっ、はい! あの、忘れてました」
「こいつは……」
モニター上で、先輩兵が頭を押さえて項垂れている。先輩兵は少女より幾つか年上のお姉さんで、口調はきつめだが面倒見のいい人物だった。
「あ、あの先輩、ちゃんと逃げられるんでしょうか。私も残弾少ないですし、先輩の機体だって、添加機の調子がおかしいし」
「まあ、ホントなら交換すべきだったんだけど、他の子の部品が足りなくなるしさ。今回は誤魔化しながら使うわ。大丈夫、格闘戦がないなら、防御無しでも何とかなるから」
先輩兵はそう言って白い歯を見せた。
「大体、こんな所で死んでたまるもんですか。早くポイント溜めて、絶対島嶼部の市民権を買ってやるんだから。それで結婚もして、子供も生まれて、みんなで幸せになるの」
「わ、私は先輩みたいに強くないので、ポイントなかなか溜まりません。市民権なんて、夢のまた夢で……」
「だったら後方に回る分だけ貯めればいいじゃん。あんたは戦いに向いてないから、補給か、調理課がいいわ。確か実家はふぐ料理屋さんだっけ」
「は、はい。地元では、ふくって言いますけど……頑張ってみます」
「よーし、上出来。だけど周りも見てなさいよっ」
先輩兵は会話を打ち切り、機体を操作してアサルトガンを連射する。
崩れた建物の瓦礫に紛れ、体長1・5メートルほどの、青紫の何かが這い出ていたからだ。
それは巨大な銃弾が至近を掠め、ぼろきれのように裂けて倒れた。
同様のものが幾つか這い出してきたが、やはり同じように銃撃を受けて崩れていった。
「ね、楽勝でしょ。大型のヤツは前の人が食い止めてくれてるのよ。ここまで来るのは小さい連中ばっかだから、勇気出して」
「は、はいっ」
「そればっかり」
先輩兵はモニターで苦笑するが、そこで何かに気付いたようだ。
「……ちょっとあれ、重機じゃない?」
「……ほんとですね!」
2人のいる広い街路から、横手に数十メートルほど入った空き地……恐らくは駐車場だった場所に、一機の人型重機が佇んでいた。
ビルに背を預けて座り込んだ状態であるが、それほど大きな損傷があるようには見えない。
「バッテリー切れで降りたんでしょうか」
「だったら救助部隊が勘違いしないように、操縦席を開けとかない? ここまで逃げてきて、神経負荷で意識が飛んだのかも。壊れて無さそうだし、パイロットは生きてるんじゃないかな」
「あ、動きました!」
少女は思わず声を上げた。
倒れた人型重機が、確かにびくりと痙攣したのだ。中にいるパイロットが無意識に手を動かし、操作レバーに触れたのだろうか。
「あたしが見てくる。あんたはバスに付いといて」
先輩兵は機体を操作すると、倒れた人型重機に近づいた。
「もしもし、生きてる? 生きてるなら早く起きて……」
先輩の人型重機は、拡声器で呼びかけながら歩み寄るのだったが。
その瞬間、座する人型重機が大きく動いた。正確には、重機の後ろに隠れていた何かが、機体を突きとばして一斉に飛び出したのだ。
機体は脇腹から背中にかけて無残にこじ開けられ、中は血まみれの空洞になっていた。
1機は油断無く周囲を警戒していたが、もう1機は明らかに不慣れなのか、一つ一つの動作がぎこちなかった。
「おい宇部ちゃん! あたしが周り見てるから、バスのフォローしてあげて! 作業機械モードに切り替え忘れないで、戦闘モードのままじゃ駄目よ」
「りょ、了解です」
少女は先輩パイロットの言葉通り、悪路と苦闘するバスを後ろから押した。
バスは左右に揺れながら瓦礫を乗り越え、降車して見守っていた人々も安堵の声を上げた。運転手が調べた所、特にパンクもしていないようだ。
「さあ、早く乗ってくださーい! 急いで港まで後退しますよ!」
先輩パイロットが呼びかけ、人々は再びバスの中へと駆け戻った。
バスは荒れた路面をゆっくりと移動していく。
「もう少しで路面が良くなるから、そしたら一気にスピードが出るわ。それまで警戒しとくのよ」
「はい」
「ちゃんと戦闘モードに戻した? いざって時にトリガー引いたら、違う動作が出ちゃうわよ」
「はっ、はい! あの、忘れてました」
「こいつは……」
モニター上で、先輩兵が頭を押さえて項垂れている。先輩兵は少女より幾つか年上のお姉さんで、口調はきつめだが面倒見のいい人物だった。
「あ、あの先輩、ちゃんと逃げられるんでしょうか。私も残弾少ないですし、先輩の機体だって、添加機の調子がおかしいし」
「まあ、ホントなら交換すべきだったんだけど、他の子の部品が足りなくなるしさ。今回は誤魔化しながら使うわ。大丈夫、格闘戦がないなら、防御無しでも何とかなるから」
先輩兵はそう言って白い歯を見せた。
「大体、こんな所で死んでたまるもんですか。早くポイント溜めて、絶対島嶼部の市民権を買ってやるんだから。それで結婚もして、子供も生まれて、みんなで幸せになるの」
「わ、私は先輩みたいに強くないので、ポイントなかなか溜まりません。市民権なんて、夢のまた夢で……」
「だったら後方に回る分だけ貯めればいいじゃん。あんたは戦いに向いてないから、補給か、調理課がいいわ。確か実家はふぐ料理屋さんだっけ」
「は、はい。地元では、ふくって言いますけど……頑張ってみます」
「よーし、上出来。だけど周りも見てなさいよっ」
先輩兵は会話を打ち切り、機体を操作してアサルトガンを連射する。
崩れた建物の瓦礫に紛れ、体長1・5メートルほどの、青紫の何かが這い出ていたからだ。
それは巨大な銃弾が至近を掠め、ぼろきれのように裂けて倒れた。
同様のものが幾つか這い出してきたが、やはり同じように銃撃を受けて崩れていった。
「ね、楽勝でしょ。大型のヤツは前の人が食い止めてくれてるのよ。ここまで来るのは小さい連中ばっかだから、勇気出して」
「は、はいっ」
「そればっかり」
先輩兵はモニターで苦笑するが、そこで何かに気付いたようだ。
「……ちょっとあれ、重機じゃない?」
「……ほんとですね!」
2人のいる広い街路から、横手に数十メートルほど入った空き地……恐らくは駐車場だった場所に、一機の人型重機が佇んでいた。
ビルに背を預けて座り込んだ状態であるが、それほど大きな損傷があるようには見えない。
「バッテリー切れで降りたんでしょうか」
「だったら救助部隊が勘違いしないように、操縦席を開けとかない? ここまで逃げてきて、神経負荷で意識が飛んだのかも。壊れて無さそうだし、パイロットは生きてるんじゃないかな」
「あ、動きました!」
少女は思わず声を上げた。
倒れた人型重機が、確かにびくりと痙攣したのだ。中にいるパイロットが無意識に手を動かし、操作レバーに触れたのだろうか。
「あたしが見てくる。あんたはバスに付いといて」
先輩兵は機体を操作すると、倒れた人型重機に近づいた。
「もしもし、生きてる? 生きてるなら早く起きて……」
先輩の人型重機は、拡声器で呼びかけながら歩み寄るのだったが。
その瞬間、座する人型重機が大きく動いた。正確には、重機の後ろに隠れていた何かが、機体を突きとばして一斉に飛び出したのだ。
機体は脇腹から背中にかけて無残にこじ開けられ、中は血まみれの空洞になっていた。
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