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第一章その3 ~とうとう逢えたわ!~ 鶴ちゃんの快進撃編
悪事を暴き、メリメリと音を立てて日本が良くなる。気がする。
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佐々木は流星のように飛び続け、すぐに旗艦に到着した。彼を追ってきた誠達も、甲板にふわりと着地する。
鶴は額に手をかざし、懐かしそうに周囲を見渡す。
「なるほど、見た事あると思ったら、下界で最初に来た安宅船ね」
「ようこそお越しやで、姫様!」
先回りして甲板で出迎えた神使達は、うやうやしく一礼する。
先頭の眼帯を付けた狛犬が言った。
「姫様はまだ復活されたばかりなんで、念のため護衛にワシらがお供しますぜ」
「分かったわ。それじゃよろしくね」
鶴は頷くと、宙を漂う佐々木の後を付いていく。
誠は鶴の後ろをちょこちょこ歩く神使達に話しかけた。
「コマだけでも強いのに、お前達が護衛してくれたら安心だな」
だがそこで、眼帯を付けた狛犬が、ぎろりと誠を振り返った。
「……やいてめえ、何ふざけた口きいとるんじゃい」
「ええっ!?」
「勘違いするなよ、ぽっと出のお前なんぞ、ワシらは一切認めてないんじゃい」
狛犬の言葉に、横を歩くキツネも同意している。
「そや、ワイらは長い事、苦しいお役目や修行してきたんやぞ。それをお前みたいなトーヘンボクに、大事な手柄渡すかいな! みんな、いてまえ!」
神使達は刀を取り出し、誠に向かい襲い掛かった。
「えっ!? いやちょっと、もしもし!?」
慌てて避ける誠だったが、神使達は攻撃をかわされても、壁や天井を蹴ってまた襲ってくるのだ。
「や、やめろ、うわっちょっとヒメ子!」
悲鳴を上げる誠をよそに、鶴達は議員控え室に到着した。
佐々木はエネルギーを使い果たしたらしく、杖をついてふらふらしている。
「こ、この中におりますので……蛭間は留守のようなのですが」
「ありがとう、案内ご苦労よ」
「それは……何よりです。ふうーっ……」
佐々木は安らかな顔で倒れ込んだ。
佐々木の額に濡れタオルを乗せるコマをよそに、鶴は扉の隙間から室内を覗いた。中には複数の政治家達と秘書、そして護衛らしき男性陣もいた。
「なーるほど、あいつらが悪い奴らなのね」
「こいつらも悪いんだ! うぎゃああっ!」
誠はタコ殴りにされながら言うが、鶴は勢い良く室内に突入した。
「いざたのもう! 私よ!」」
「うわっ、なんだね君は!?」
一同は驚いて振り返ったが、さすがに鶴の噂は聞いていたようだ。顔を見合わせ、口々に相談している。
「あっ、鎧!? 聞いたことがあるぞ……鎧姿のおかしな子が来て、大活躍していると」
「じゃあこの子がその子なのか? こないだの悪漢も鎧だったと言うが……」
「ええい、だまらっしゃい! そして後者は永久に忘れなさい!」
「ひいっ!?」
一同は鶴の気迫に怯えている。
「私の名は大祝鶴姫、現世を守るスペシャルな聖者よ! 前は調べずひっぱたいて怒られたから、まずは罪をあばいてやるわ!」
鶴は虚空から神器のタブレット画面を取り出した。
「むむ、さっそく反応があるわ!」
鶴は画面の反応を見て、物凄い勢いで引き出しを開けていく。
引き出しは上げ底になっており、たちどころに隠していた書類が見つかった。
コマが駆け寄り、書類の中身を吟味してみる。
「なるほど鶴、これは資材の横流しの記録だよ。この調子でいこう」
「任せてコマ!」
鶴は神器を駆使し、次々に不正の証拠を発見する。
戸棚の奥、パソコンの隠しフォルダ、絵画の裏から絨毯の下。
データにパスワードをかけていようが、適当に数字を打ち込んで解除し、理不尽なまでに秘密が暴かれていくのだ。
「まだこの場にないものも沢山あるわね。そういう時はこれよ!」
鶴は神器を高々と掲げると、光り輝かせ、大きなカメラの形に変えた。
「……あ、あれは何のカメラなんだっ!?」
誠は狛犬の刃を白刃取りしながらコマに尋ねた。
「あれはね黒鷹、時間を遡って撮影出来るカメラだよ。本人を撮れば、過去の悪事も写真におさめられるんだ」
「それじゃ、一気に行くわよ!」
鶴が次々シャッターを切ると、汚職の瞬間をとらえた証拠写真が大量に宙に舞った。
「さすがは姫様、最高じゃあ!」
神使達がはやしたてるので、鶴はノリノリで撮影ボタンを連打するが、勢い余って誠の前でもシャッターを切ってしまう。
「あらごめんなさい、黒鷹もやっちゃったわ……」
鶴は神器から吐き出された写真を拾うが、そこには誠が水着写真集を持つ様が映っている。
鶴は真っ赤になり、室内にはオソロシーイ、と鶴の悲鳴が木霊した。
「おんどりゃあっ、姫様に失礼なものを見せやがったな!」
「このエロガキが、やっぱり死ぬべきや!」
「俺のじゃない、もらったんだ!」
誠は神使達から逃げ回るが、
「全員、正座よ!!!」
鶴が叫び、なぜか誠も正座させられた。鶴は正座した一同の前に、証拠の写真や書類を積み上げ、お説教を開始する。
「あなた達、それでも人の上に立つ身なのかしら? いいこと、世の主君というものは、常に民を思いやり、王としての責任を果たすものなの。かくいう私は、生後百日で喋り、大変真面目で立派な姫として……」
長くなりそうなので、コマが鶴の肩に飛び乗って遮った。
「ストップだよ鶴、調子に乗って話を盛ると、またこっぴどく怒られるよ?」
「そ、それもそうね。とにかく、悪事が出来たのは今までの話よ。今のうちに悪党と手を切るなら、命だけは勘弁してあげる。もちろん全く強制じゃないけど、そこの狛犬は悪党の魂が大好物だから、自由に選ぶといいわ」
政治家達が目をやると、いつの間にか巨大化した狛犬が彼らを見ながら、よだれをたらして唸っている。
選択肢など1つも無く、政治家達は流れるような土下座を見せる。
狛犬がじろりと睨んでくるので、誠も冷や汗を流しながら倣った。
「わ、私達も、良くない事だとは思っていました。しかし食料も資金も、そして土地さえも蛭間が握っており、逆らいようが無かったのです」
「そうですとも、彼らの援助なくして第5船団は成り立たないため、やむなく言いなりになっただけなのです」
「姫様、どうしやしょうか?」
うなるような声で狛犬が尋ねる。
「そうね、私は慈悲深いから……こうよ!」
鶴が×の付いたカードを差し出し、狛犬が政治家達を追い回す。
「よし、食ってやる!」
「ひえええっ!?」
「あら、出す向きを間違えたわ」
鶴がカードを反転させ、○をこちらに向けた頃には、政治家達は全員白髪になってへたり込んでいた。
「うんうん、これにて一件落着よ」
鶴は満足そうに頷くが、その瞬間、なぜかコマが焦って×のカードを掲げていた。鶴が振り返ると、いつの間にか後ろに女神が立っていたのだ。
「ひっ、ナギっぺ!?」
「私は仲間にしろと言ったのだ、誰が脅迫しろと言ったか、このお調子者め! そしてまた話を盛ったな!」
鶴は神使達とともに、急いで廊下を駆け去って行く。
女神はやれやれとため息をつき、政治家達に向き直った。
佐々木も杖をついたまま、生まれたての小鹿のように立っている。
「ともかく佐々木、それに貴様らには、これからバリバリ働いてもらうぞ。取り急ぎ船団の政を立て直す事だ」
「か、かしこまりましたっ!」
佐々木達は言葉通り、かしこまって一礼する。
女神はそこで扉からこちらを窺っている狛犬達に目配せをした。
「……今の気配だ、追え」
「合点!」
狛犬達は飛び上がると、通路の向こうへ走って行った。
鶴は額に手をかざし、懐かしそうに周囲を見渡す。
「なるほど、見た事あると思ったら、下界で最初に来た安宅船ね」
「ようこそお越しやで、姫様!」
先回りして甲板で出迎えた神使達は、うやうやしく一礼する。
先頭の眼帯を付けた狛犬が言った。
「姫様はまだ復活されたばかりなんで、念のため護衛にワシらがお供しますぜ」
「分かったわ。それじゃよろしくね」
鶴は頷くと、宙を漂う佐々木の後を付いていく。
誠は鶴の後ろをちょこちょこ歩く神使達に話しかけた。
「コマだけでも強いのに、お前達が護衛してくれたら安心だな」
だがそこで、眼帯を付けた狛犬が、ぎろりと誠を振り返った。
「……やいてめえ、何ふざけた口きいとるんじゃい」
「ええっ!?」
「勘違いするなよ、ぽっと出のお前なんぞ、ワシらは一切認めてないんじゃい」
狛犬の言葉に、横を歩くキツネも同意している。
「そや、ワイらは長い事、苦しいお役目や修行してきたんやぞ。それをお前みたいなトーヘンボクに、大事な手柄渡すかいな! みんな、いてまえ!」
神使達は刀を取り出し、誠に向かい襲い掛かった。
「えっ!? いやちょっと、もしもし!?」
慌てて避ける誠だったが、神使達は攻撃をかわされても、壁や天井を蹴ってまた襲ってくるのだ。
「や、やめろ、うわっちょっとヒメ子!」
悲鳴を上げる誠をよそに、鶴達は議員控え室に到着した。
佐々木はエネルギーを使い果たしたらしく、杖をついてふらふらしている。
「こ、この中におりますので……蛭間は留守のようなのですが」
「ありがとう、案内ご苦労よ」
「それは……何よりです。ふうーっ……」
佐々木は安らかな顔で倒れ込んだ。
佐々木の額に濡れタオルを乗せるコマをよそに、鶴は扉の隙間から室内を覗いた。中には複数の政治家達と秘書、そして護衛らしき男性陣もいた。
「なーるほど、あいつらが悪い奴らなのね」
「こいつらも悪いんだ! うぎゃああっ!」
誠はタコ殴りにされながら言うが、鶴は勢い良く室内に突入した。
「いざたのもう! 私よ!」」
「うわっ、なんだね君は!?」
一同は驚いて振り返ったが、さすがに鶴の噂は聞いていたようだ。顔を見合わせ、口々に相談している。
「あっ、鎧!? 聞いたことがあるぞ……鎧姿のおかしな子が来て、大活躍していると」
「じゃあこの子がその子なのか? こないだの悪漢も鎧だったと言うが……」
「ええい、だまらっしゃい! そして後者は永久に忘れなさい!」
「ひいっ!?」
一同は鶴の気迫に怯えている。
「私の名は大祝鶴姫、現世を守るスペシャルな聖者よ! 前は調べずひっぱたいて怒られたから、まずは罪をあばいてやるわ!」
鶴は虚空から神器のタブレット画面を取り出した。
「むむ、さっそく反応があるわ!」
鶴は画面の反応を見て、物凄い勢いで引き出しを開けていく。
引き出しは上げ底になっており、たちどころに隠していた書類が見つかった。
コマが駆け寄り、書類の中身を吟味してみる。
「なるほど鶴、これは資材の横流しの記録だよ。この調子でいこう」
「任せてコマ!」
鶴は神器を駆使し、次々に不正の証拠を発見する。
戸棚の奥、パソコンの隠しフォルダ、絵画の裏から絨毯の下。
データにパスワードをかけていようが、適当に数字を打ち込んで解除し、理不尽なまでに秘密が暴かれていくのだ。
「まだこの場にないものも沢山あるわね。そういう時はこれよ!」
鶴は神器を高々と掲げると、光り輝かせ、大きなカメラの形に変えた。
「……あ、あれは何のカメラなんだっ!?」
誠は狛犬の刃を白刃取りしながらコマに尋ねた。
「あれはね黒鷹、時間を遡って撮影出来るカメラだよ。本人を撮れば、過去の悪事も写真におさめられるんだ」
「それじゃ、一気に行くわよ!」
鶴が次々シャッターを切ると、汚職の瞬間をとらえた証拠写真が大量に宙に舞った。
「さすがは姫様、最高じゃあ!」
神使達がはやしたてるので、鶴はノリノリで撮影ボタンを連打するが、勢い余って誠の前でもシャッターを切ってしまう。
「あらごめんなさい、黒鷹もやっちゃったわ……」
鶴は神器から吐き出された写真を拾うが、そこには誠が水着写真集を持つ様が映っている。
鶴は真っ赤になり、室内にはオソロシーイ、と鶴の悲鳴が木霊した。
「おんどりゃあっ、姫様に失礼なものを見せやがったな!」
「このエロガキが、やっぱり死ぬべきや!」
「俺のじゃない、もらったんだ!」
誠は神使達から逃げ回るが、
「全員、正座よ!!!」
鶴が叫び、なぜか誠も正座させられた。鶴は正座した一同の前に、証拠の写真や書類を積み上げ、お説教を開始する。
「あなた達、それでも人の上に立つ身なのかしら? いいこと、世の主君というものは、常に民を思いやり、王としての責任を果たすものなの。かくいう私は、生後百日で喋り、大変真面目で立派な姫として……」
長くなりそうなので、コマが鶴の肩に飛び乗って遮った。
「ストップだよ鶴、調子に乗って話を盛ると、またこっぴどく怒られるよ?」
「そ、それもそうね。とにかく、悪事が出来たのは今までの話よ。今のうちに悪党と手を切るなら、命だけは勘弁してあげる。もちろん全く強制じゃないけど、そこの狛犬は悪党の魂が大好物だから、自由に選ぶといいわ」
政治家達が目をやると、いつの間にか巨大化した狛犬が彼らを見ながら、よだれをたらして唸っている。
選択肢など1つも無く、政治家達は流れるような土下座を見せる。
狛犬がじろりと睨んでくるので、誠も冷や汗を流しながら倣った。
「わ、私達も、良くない事だとは思っていました。しかし食料も資金も、そして土地さえも蛭間が握っており、逆らいようが無かったのです」
「そうですとも、彼らの援助なくして第5船団は成り立たないため、やむなく言いなりになっただけなのです」
「姫様、どうしやしょうか?」
うなるような声で狛犬が尋ねる。
「そうね、私は慈悲深いから……こうよ!」
鶴が×の付いたカードを差し出し、狛犬が政治家達を追い回す。
「よし、食ってやる!」
「ひえええっ!?」
「あら、出す向きを間違えたわ」
鶴がカードを反転させ、○をこちらに向けた頃には、政治家達は全員白髪になってへたり込んでいた。
「うんうん、これにて一件落着よ」
鶴は満足そうに頷くが、その瞬間、なぜかコマが焦って×のカードを掲げていた。鶴が振り返ると、いつの間にか後ろに女神が立っていたのだ。
「ひっ、ナギっぺ!?」
「私は仲間にしろと言ったのだ、誰が脅迫しろと言ったか、このお調子者め! そしてまた話を盛ったな!」
鶴は神使達とともに、急いで廊下を駆け去って行く。
女神はやれやれとため息をつき、政治家達に向き直った。
佐々木も杖をついたまま、生まれたての小鹿のように立っている。
「ともかく佐々木、それに貴様らには、これからバリバリ働いてもらうぞ。取り急ぎ船団の政を立て直す事だ」
「か、かしこまりましたっ!」
佐々木達は言葉通り、かしこまって一礼する。
女神はそこで扉からこちらを窺っている狛犬達に目配せをした。
「……今の気配だ、追え」
「合点!」
狛犬達は飛び上がると、通路の向こうへ走って行った。
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