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第一章その7 ~あなたに逢えて良かった!~ 鶴の恩返し編
初雪は勇気と共に
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「ま、まずい!」
誠は慌てるが、画面上で岩凪姫が語気を強めた。
「うろたえるな、すぐに吸収されはしない! お前はやるべき事に集中しろ!」
「…………!」
誠は機体をみしまへ着艦させ、甲板に用意されていた対巨大餓霊用のライフルを受け取る。ライフルには既に幾本ものケーブルが繋がれていた。
「特殊属性添加弾装填。貫通属性、充填開始……!!!」
ボルトアクションで黄金色の弾丸を装填し、ケーブルから属性添加を開始する。
と同時に、激しいエネルギーが銃身に宿るのが分かった。心神の筋力をして辛うじて抑え込んでいるものの、銃身は暴れ馬のように揺れ動いた。
(この銃身のブレで、しかも揺れる船の上で……あの繭に当てられるのか?)
彼方にそびえる繭は、ごく小さな点にしか思えなかった。しかも僅かでも狙いを外せば、1人の少女の人生を台無しにしてしまう。
怖かった。
明日馬を殺め、雪菜を傷つけ、罪の意識に怯えた日々が思い出される。
息の振動ですら狙いが外れる気がした。
「……緊張しているかい? ナルセ」
「!」
ふいにかけられた思念の言葉に、誠ははっとして逆鱗を見やった。
あの祭神ガレオンが、誠の逆鱗に同期しているのだ。逆鱗は青く優しい光を放っている。
「短い間だったが、君の逆鱗に宿って、なかなか楽しかったぞ。色々な物を見て、色々な事を考えた。生まれた意味すら分からなかった私に、違う世界を見せてくれた君に、心から感謝している」
「……俺も、あなたに感謝してるよ」
誠も素直にそう答える。
「ガレオンがいなかったら、俺達は何1つ出来なかったから。人に戦う力をくれて、本当に感謝してる」
「それは私のためでもあるが、一応言葉は受け取っておこう」
ガレオンは尚も会話を続ける。
「人は興味深い生き物だ。己のためだけでなく、他者のためにあれだけの痛みに耐える事が出来るのだから……まだまだ観察の余地がありそうだ。あのディアヌスを倒したら、私も君と生きてみたい。新しい世界で、もっと知識を求めてみたい。この気持ちはディアヌスには分からないだろうな」
「……ああ」
誠は力強く頷いた。
そうだ、みんなで生きるのだ。新しい世界に、新しい時代に。そのために、絶対この一撃を当ててみせる……!!!
誠は再び狙いを定める。船の揺れも、繭の小ささも、もう何も気にならなかった。
やがて放たれた弾丸は、大気を震わせながら飛んだ。時代の闇を切り裂くために、絶望を打ち破るために。
弾は幾重もの防御魔法を打ち砕き、繭の本体へと突き刺さる。
!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
一瞬、物凄い力が周囲に撒き散らされる。
貫かれまいとする繭と、射抜こうとする弾がせめぎ合い……けれど弾丸は、光を帯びて飛び去っていく。
巨大な風穴をあけられた繭は、やがて大きく痙攣する。肉片が、どんどん高く盛り上がった。
「破裂する……失敗したのか?」
「いや、恐らく大丈夫だ」
誠の不安に、逆鱗に宿るガレオンが答えた。
「呪詛の組成を完全にかき乱した。あそこにあるのは、もう呪いとしての意味を為さない」
ガレオンの言葉通りだった。
膨張し、破裂した繭からは、白い光が溢れ出た。光は天高く舞い上がり、それから四方に飛散していく。
「………………」
人々は、ただ空を見つめていた。
降り注ぐ光は、少し早い初雪のように、辺りを白く輝かせている。
「綺麗だ……けどヒメ子は……!?」
誠は急いで機体を操作するが、そんな彼を制するように、モニターには2人の女神が映し出された。
「焦るな黒鷹、鶴は無事だ」
「当たる瞬間、コマちゃんが亜空間に飛んでくれたのよ。戻るまでちょっとかかるけど、安心して待っててね」
「……………………よ、よかった……!」
誠は全身の力が抜けて、ずるずると座席に身をもたせかけた。
安堵する誠を面白そうに眺めながら、岩凪姫が問いかけてくる。
「なんだ、当たったと思ったか?」
「いえ、もしかしたらと思って……」
「鶴に伝えてみよう。黒鷹が心配していたと」
岩凪姫は目を閉じて念じていたが、しばらくして目を開けた。
「鶴からの伝言だ。残念、それは分身です、だと」
誠は独りでに笑みがこぼれ出たが、そこで岩凪姫は、真面目な顔で語りかけた。
「黒鷹、お前に話がある」
誠は慌てるが、画面上で岩凪姫が語気を強めた。
「うろたえるな、すぐに吸収されはしない! お前はやるべき事に集中しろ!」
「…………!」
誠は機体をみしまへ着艦させ、甲板に用意されていた対巨大餓霊用のライフルを受け取る。ライフルには既に幾本ものケーブルが繋がれていた。
「特殊属性添加弾装填。貫通属性、充填開始……!!!」
ボルトアクションで黄金色の弾丸を装填し、ケーブルから属性添加を開始する。
と同時に、激しいエネルギーが銃身に宿るのが分かった。心神の筋力をして辛うじて抑え込んでいるものの、銃身は暴れ馬のように揺れ動いた。
(この銃身のブレで、しかも揺れる船の上で……あの繭に当てられるのか?)
彼方にそびえる繭は、ごく小さな点にしか思えなかった。しかも僅かでも狙いを外せば、1人の少女の人生を台無しにしてしまう。
怖かった。
明日馬を殺め、雪菜を傷つけ、罪の意識に怯えた日々が思い出される。
息の振動ですら狙いが外れる気がした。
「……緊張しているかい? ナルセ」
「!」
ふいにかけられた思念の言葉に、誠ははっとして逆鱗を見やった。
あの祭神ガレオンが、誠の逆鱗に同期しているのだ。逆鱗は青く優しい光を放っている。
「短い間だったが、君の逆鱗に宿って、なかなか楽しかったぞ。色々な物を見て、色々な事を考えた。生まれた意味すら分からなかった私に、違う世界を見せてくれた君に、心から感謝している」
「……俺も、あなたに感謝してるよ」
誠も素直にそう答える。
「ガレオンがいなかったら、俺達は何1つ出来なかったから。人に戦う力をくれて、本当に感謝してる」
「それは私のためでもあるが、一応言葉は受け取っておこう」
ガレオンは尚も会話を続ける。
「人は興味深い生き物だ。己のためだけでなく、他者のためにあれだけの痛みに耐える事が出来るのだから……まだまだ観察の余地がありそうだ。あのディアヌスを倒したら、私も君と生きてみたい。新しい世界で、もっと知識を求めてみたい。この気持ちはディアヌスには分からないだろうな」
「……ああ」
誠は力強く頷いた。
そうだ、みんなで生きるのだ。新しい世界に、新しい時代に。そのために、絶対この一撃を当ててみせる……!!!
誠は再び狙いを定める。船の揺れも、繭の小ささも、もう何も気にならなかった。
やがて放たれた弾丸は、大気を震わせながら飛んだ。時代の闇を切り裂くために、絶望を打ち破るために。
弾は幾重もの防御魔法を打ち砕き、繭の本体へと突き刺さる。
!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
一瞬、物凄い力が周囲に撒き散らされる。
貫かれまいとする繭と、射抜こうとする弾がせめぎ合い……けれど弾丸は、光を帯びて飛び去っていく。
巨大な風穴をあけられた繭は、やがて大きく痙攣する。肉片が、どんどん高く盛り上がった。
「破裂する……失敗したのか?」
「いや、恐らく大丈夫だ」
誠の不安に、逆鱗に宿るガレオンが答えた。
「呪詛の組成を完全にかき乱した。あそこにあるのは、もう呪いとしての意味を為さない」
ガレオンの言葉通りだった。
膨張し、破裂した繭からは、白い光が溢れ出た。光は天高く舞い上がり、それから四方に飛散していく。
「………………」
人々は、ただ空を見つめていた。
降り注ぐ光は、少し早い初雪のように、辺りを白く輝かせている。
「綺麗だ……けどヒメ子は……!?」
誠は急いで機体を操作するが、そんな彼を制するように、モニターには2人の女神が映し出された。
「焦るな黒鷹、鶴は無事だ」
「当たる瞬間、コマちゃんが亜空間に飛んでくれたのよ。戻るまでちょっとかかるけど、安心して待っててね」
「……………………よ、よかった……!」
誠は全身の力が抜けて、ずるずると座席に身をもたせかけた。
安堵する誠を面白そうに眺めながら、岩凪姫が問いかけてくる。
「なんだ、当たったと思ったか?」
「いえ、もしかしたらと思って……」
「鶴に伝えてみよう。黒鷹が心配していたと」
岩凪姫は目を閉じて念じていたが、しばらくして目を開けた。
「鶴からの伝言だ。残念、それは分身です、だと」
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