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プロローグ ~弁天様とおかしな聖女!?~

大きい敵は経験値が貯まりやすい。ポイントでチートアイテムも買える

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「な、何だ……?」

 一瞬、状況が理解できなかった。

 半壊していたはずの機体が光に包まれている。凄まじい光だ。

 モニターに映るオークキングが、怯えたように後ずさるのが見えた。

 目をやると、モニター端に映る機体の模式図が、見る見るうちに別の形へ変化していった。

 先ほどまでの騎士鎧のようなフォルムから、いかにも敏捷びんしょうそうな姿に。

 もしもニンジャを模した機体があったら、こんなふうだと思えるようにだ。

 機体はやがて音声で語りかけてくる。

『戦闘開始、武装を選択してください』

『オーラバレット×2(貫通補正LEVEL1・誘導補正LEVEL1・敵防御魔法無効化LEVEL1)』

『オーラブレード×2(斬撃補正LEVEL1・破邪補正LEVEL1・敵防御魔法無効化LEVEL1)』

「な……なんだこれ……」

 俺は震える指でその1つに触れた。

 オーラバレット……バレット、弾、つまり銃か?

 次の瞬間、機体の両腕が勝手に上がり、左右の手にマシンガンのような武器を装備していた。

 モニターに弾数∞が表示され、手にした銃が黄金色に光り輝く。

 さっきまであれほど暴力の限りを尽くしていたオークキングは、明確にこちらの存在を恐れているようだった。

 自らの天敵たる何かの力を、本能で感じとっているのだろうか。

 オークキングは悲鳴のような叫びをあげ、眼の前に光の魔法陣のような電磁シールドを発生させる。

 なりふり構わず身を守ろうとしているのだ。

 ……が、次の瞬間、甲高い猛禽類もうきんるいの叫びのような音とともに発射された弾丸は、オークキングをいともたやすく貫通していた。

 あれほど強固だった防御魔法がアメ細工のように打ち砕かれ、痛みを感じないゾンビのごとき体の奴が、苦しげな悲鳴を上げて倒れていく。

 オークキングはそのままどろどろと溶け去り、機体の画面端に、何かの数字が表示された。

『討伐経験値獲得 847 討伐報酬 1700ポイント』

『仮契約のため、機体ステータスの強化・新規武装の獲得は不可となります』

『必要アイテムとのポイント交換は可能です』

『仮契約終了期限まで あと6日と23時間59分』

 な、何だこの意味不明の情報の羅列られつは。

「よ、よく分からん……よく分からんけど……!」

 俺は機体を前に走らせた。

 速い!!! いや、半端じゃなく滅茶苦茶早い!!!

 普通の機体なんか目じゃないし、まるで疾風、走る弾丸だ。

 破壊されたアスファルトを巻き上げ、爆風のように空気を切り裂きながら移動した俺は、次々モンスターどもを撃ち抜いていく。

 いずれもオークキング以下の相手だったし、防御魔法なんて紙みたいに撃ち抜けた。

 ていうかあれだ、バラマキ気味に撃った弾も、弾道補正でカーブを描いて敵の体に殺到していく。

 連射する弾丸全てが一撃必殺の誘導弾みたいなもんだ。

「な、鳴っちあんた、どないしたん!? 何やのその機体!」

 モニターに映る仲間達が目を丸くしているが、「説明は後!」とだけ怒鳴って俺は会話をやめた。

 進路上にいる、多数の首を持つモンスター……いわゆるヒュドラ型と呼ばれる相手が目に入ったからだ。

 こいつはオークキングより更にでかくて手強い。

 蛇のような複数の首がこちらを睨み、目を光らせると、口元に魔法の光が輝いた。

 超大威力の魔法攻撃であり、多数の味方が一瞬にして凍り付かされた事もあるのだ。

 だが先ほどまで警告を繰り返していた機体は、今は完全に沈黙していた。

 俺は機体をヒュドラに迫らせながら尋ねた。

「今度は警告しないのかよ!?」

『必要ありません。破邪の鎧にあの攻撃は無意味です』

「い、いや、でもあれがぶっぱなされたら、他のみんながどうなるか……」

 しかし鎧はかたくなだった。

『必要ありません。低レベルの魔法攻撃のため、やはり脅威とはなりません』

「て、低レベルだって……!!!???」

 俺は目を丸くするが、その時、目の前に新しいメッセージが表示された。

自動魔法阻害効果オートカウンターマジック発動』

『対象 敵ヒュドラ級』

「い、いやいや、いやいやいやいや……」

 いくら何でも無茶苦茶だ、と思った俺をよそに、ヒュドラの口の光が大きく膨れ上がった。

 究極の冷気魔法であり、あれが弾ければ、近隣が絶対零度に近い寒さに襲われるはずだが……

 だが爆発的に広がるはずの冷気は、俺の機体に吸い込まれるように、渦を巻きながら消えてしまった。

 マイクロブラックホールでも発生させたかのように、あっけなく魔法の破裂が邪魔されたのだ。

「な、なんだこれ……おかしいだろ……」

 呆然と呟く俺の前に、再びメッセージが表示される。

『推奨武装 オーラブレード×2(斬撃補正LEVEL1・破邪補正LEVEL1・敵防御魔法無効化LEVEL1)』

 俺がオーラブレードを選択した途端、機体の両腕の銃は消え、2本の刀が握られていた。

 通常の機体のソードよりやや短く、小太刀か忍者刀のようなサイズ感だったが、その刀身には黄金色の光が満ちる。

 満ちる。満ちる。満ち過ぎている……!

 いや太陽かよ、眩しすぎるから。どんだけパワー込めてんだよ……!

 ヒュドラはその巨体の全エネルギーを集中させて、オークキングなど比べ物にならないほど強固な、かつ多重の防御魔法を発生させた。

 俺は知っている。こいつの防御魔法は凄まじいエネルギーを含んでいて、攻撃を防御すると同時に破裂し、相手にカウンターダメージを与えるのだ。

「駄目だ君、そいつに正面からの攻撃は!」

 味方の誰かの声が聞こえる。

 いや、俺だってそう思うよ。思うけど、思ってるけど。

 !!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!

 機体が刀を振るった瞬間、ヒュドラは斬られた。

 いや、斬ったというより存在ごと光に焼き尽くされたみたいになって、蒸気になって消えてしまったのだ。

 反撃するはずの防御魔法など跡形も無い。全部まとめて消滅していた。

「「「「「ええええええええっっっ!!!???」」」」」

 さっき忠告してくれた誰かが、そして他の味方からの悲鳴が聞こえる。

 おかしいよな、俺だってそう思うってば。

「な、何だよこれ、絶対おかしいだろこれ……」

 そう呟く俺に対し、少女は「おかしくないですよ!」と得意げである。

「ん……?」

 俺は隣を二度見し、それから絶叫していたのだ。

「う、うわああああっっっ!!!??? なんか出た!!!」
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