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プロローグ ~弁天様とおかしな聖女!?~

一日百善、いや億善!

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 俺達は順調に稼ぎクエストをこなし続けた。

 破邪の鎧の力はものすごく、ぶっちゃけ100や200のモンスターがいても何の問題もなかったのだ。

『荒野のレジェンドオーガ』

『知る人ぞ知る伝説のオークカイザー』

『いぶし銀のテクが光る戦慄せんりつのゴブリンチャンピオン』

みたいにご大層たいそうな名が表示されるボスモンスターを、流れ作業のようにひっぱたくだけだ。

 一通りかせいだ俺は体育館に向かった。

 やたら広い体育館は保管庫になっていて、本来は食料やら医療品が並んでいるはずなのだが……今はほとんど何もなかった。

 管理責任者たる巨体のおばさん・渡辺さんがため息をつきながら、とぼしい物資を眺めていた。

「まったく補給もどんどん減ってるし、この先一体どうなるのかねえ……」

 俺は体育館に駆けこむと、ステータスから霊界ネットショッピング……要するにネットスーパーみたいな画面を開く。

「ええと、食料に医薬品は、と……うわ、天然物のコメとか肉もある! けど、今は冷蔵設備が壊れてるもんな。保存のきくプランクトンの加工品をメインに、と」

 そこで鶴がずずいと顔を寄せ、画面を熱心にのぞきこむ。

 頬ずりしそうな至近距離だし、何でこう引きこもりは距離感がゼロヒャクなんだろうか。

「ここで私のナイスアシスト、お菓子もゼッタイ必要ですよね!」

「うわ待てお前っ、ものには優先順位ってもんがっ」

「いざ神速の鬼クリック! ガチャで鍛えしオラオラオラほあたぁぁっ!」

 俺が止めるのも間に合わず、鶴は菓子ボタンを鬼連打し、体育館には菓子の小山が出来上がってしまった。

 スナックやチョコレート菓子をはじめ、菓子パンなどが富士山型になだれ落ちる。

 まあまあでかい滑り台ぐらいのサイズ感だ。

「なっ、なななな何だいこりゃ!?」

 渡辺さんが目を丸くしているので、俺は仕方なく鶴ともみあう手を止める。

「そ、それ補給です! とりあえず適当に配って下さい!」

「また追加しますね!」

「無駄遣いすなっ! 菓子は後回しだっ!」

 俺は再び稼ぎクエストに戻るのだったが…………そこで問題が発生した。



「くそっ、俺も機体もノーダメージなのに、活動時間がぜっんぜん足りないっ」

 ……そう、いくらこっちが強くても、機体の稼働時間がおいつかないのだ。

「戦闘自体はすぐ終わっても、移動して近づくまでがネックだな。1時間に10秒ぐらいしか回復しないし、これじゃ1週間でぜんぶの敵を掃除できないかも」

 この辺りを狙う敵だけじゃなく、他の地域を狙う予定の敵も倒したのがまずかったのか?

 でもほかの場所にも被災者がいるし、いずれその人たちを喰い殺しに行く敵を見逃すのは心理的にきついのだ。

 香川はうどんもうまかったし、仁尾サンビーチで泳いだのは楽しかったし……

 俺は鶴に相談してみた。

「なあヒメ子、何か回復を早める方法ってないのか?」

「ありますよ。修行か、もしくはいい事をすればいいんです!」

 鶴は得意げに鎧の胸をズドーンと叩く。

「ステータス画面を開いて、破邪の鎧をクリックするとほらっ、残時間の詳細になって、推奨回復策が出て来るでしょ。
ボランティアにそうじ、草むしりにお年寄りへの肩たたき。滝行とかもありますけど、このへんに滝はないですもんね」

 俺が試しにそうじを選択すると、真っ白なぞうきんが空中から落ちてきた。

 鶴はいつの間にかエプロン姿で三角巾をかぶり、新妻・愛のそうじモードと化しているのだ。

「うおおおおおっっっ!!!」

 俺たちは猛烈な勢いで掃除しまくった。

 長い廊下をデッドヒートしながら、レーシングカーのごとく雑巾がけし、手すりはスケボーよろしく雑巾で滑り降りてみがく。

 校庭に積もっていた落ち葉を、竜巻のように竹ぼうきを振り回して吹き飛ばし、外の窓は●ーザン顔負けのロープアクションでアーアアーと叫びながらみがいた。

 サーカスのシ●クド●レイユみたいな空中ブランコみがきもやった。

「すごいなこの雑巾、滅茶苦茶ヨゴレが落ちまくってる!」

 廊下を雑巾がけしながら振り返ると、後ろの床も壁もシンデレラ城のように輝きまくっている。

 廊下に出た爺さんが、まぶしーと叫んで目を押さえてのたうち回り、婆さんは極楽浄土と間違えて拝んでいた。

 鶴はさらに得意げに鎧の胸をバチコーン叩く。

「そこはさすがの私がですね、掃除用具に課金したんですぅ!」

「ええっ!?」

 俺がステータスを開くと、

『霊界雑巾レベル9999』

『霊界ほうきレベル9999』

となっており、稼いだはずのポイントは残らずすっかり消えていた。

「お前またこのっ、勝手にポイント使いやがって! なんでそう浪費するんだよ、使ったぶんお前が稼いでこいっ!」

「いやああっ、外は怖いですぅ、ぜったいぜったい働きたくないですぅっ!!!」

 ともかく、俺たちは機体の活動時間を増やしまくった。

 そうじ以外にも、和太鼓セッションのように熱く激しくお年寄りの肩を叩き、プロレスよろしくアクロバティックな整体やマッサージをこなし。

 かつて人類が経験した事がないほどの神速の肩たたきに、ああーこりゃええわーと叫ぶお年寄りたちの声が天高く響き渡る。

 あの小さなレスラー達も手伝ってくれて、避難所の人も建物も、見違えるように完全メンテナンスされていったのだ。

 ただ多少やりすぎたのか、校舎は輝きがまぶしすぎて眠れないほどだったという。
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