新説・鶴姫伝! 日いづる国の守り神 PART6 ~もう一度、何度でも!~

あさくらやたろう-BELL☆PLANET

文字の大きさ
21 / 160
第六章その2 ~あきらめないわ!~ 不屈の本州脱出編

ガンマンとかヘンゼルとグレーテルとか

しおりを挟む
 誠達を乗せた車両は、ひたすら海を目指していた。

 路面コンディションは多少良くなり、速度が出やすくなっていたが、何かが道を塞いでいた場合はそこでジ・エンドである。

「しつこいやっちゃな、まだ追って来てるで」

 難波が焦った様子で顔をしかめた。

 既に邪気の濃いエリアは越えたはずなのに、一部の餓霊はまだ追いかけて来ている。

 黄泉醜女ヨモツシコメ程ではないものの、武器がほとんど効かない強力な餓霊は、それだけで恐ろしい脅威である。

 捕まればたちまちむさぼり喰われるし、振り切れなくてもせめて距離をあけたかった。船に乗る時間を稼ぐためだ。

「……でも港って何箇所もあるでしょ? どっちに行けばいいか分かる?」

 そこでカノンが尋ねてくる。

 言えば皆の気持ちが乱れる……そう分かってはいるものの、言わねばならない事だからだ。

 輸送班やバスの運転手も黙り、しばし無言の時が流れた。

 さっきから試みている味方への通信も、今のところ繋がらないのだ。

「ヒメ子、神器の地図でまだ見れないか?」

「ごめんね黒鷹、今探してるわ」

 鶴は虚空に半透明の地図を表示し、必死に周囲を調べているが、邪気が濃いせいでなかなかうまくいかないようだ。

(考えろ、考えるんだ、何か手がある……!)

 ……だがその時、誠の目に妙な物が映った。

 前方の道路……その上に掲げられた、青く四角い案内標識。その標識に、何かカラフルなものが貼り付けてあるのだ。

(何だ……?)

 誠が映像を拡大すると、どうやら女性用の衣類のようだ。

 ド派手なピンクでよく目立つそれは、胸の部分に妙な柄が描かれている。

 西部劇のガンマンを模したキャラクターであり、両手の指を銃の形に構え、裸の上半身にはLOVEの文字が刻まれていた。

 次の瞬間、誠は咄嗟に叫んでいた。

「左だっ!!! 左、左に進んで下さいっ!!!」

 音羽氏も車両班も驚いていたが、ともかく車両は火花を上げて、交差点を左に曲がった。

「な、鳴っち、どないしたん?」

 難波達が尋ねるも、今は答える暇は無い。

 誠は食い入るように前を見つめ、次なる手がかりを探した。

「次は真っ直ぐ!」

「次は右、右に行って!」

 車は唸りを上げて道路を駆け抜け、その風圧で文房具が舞い上がった。

 まるでヘンゼルとグレーテルのように、所々に撒かれた文房具。

 そして標識には、目立つド派手なガンマン柄の衣類。

 明らかに故意的に置かれたものであり、こちらに道を教えているのだ。

「そうか……文字で残すと、敵に読まれる可能性があるんだ。だから……!」

 先に避難した人達が、後から来る誠達のために、手がかりを残してくれていたのだ。

 普段なら悪趣味と思えたであろうガンマンも、何だか世界一かっこよく見える。

『帰れるぜ。帰り道はこっちだぜ』

 そう教えてくれるかのように、ガンマンはタフな笑みを浮かべている。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

終焉列島:ゾンビに沈む国

ねむたん
ホラー
2025年。ネット上で「死体が動いた」という噂が広まり始めた。 最初はフェイクニュースだと思われていたが、世界各地で「死亡したはずの人間が動き出し、人を襲う」事例が報告され、SNSには異常な映像が拡散されていく。 会社帰り、三浦拓真は同僚の藤木とラーメン屋でその話題になる。冗談めかしていた二人だったが、テレビのニュースで「都内の病院で死亡した患者が看護師を襲った」と報じられ、店内の空気が一変する。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

セクスカリバーをヌキました!

ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。 国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。 ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

旧校舎の地下室

守 秀斗
恋愛
高校のクラスでハブられている俺。この高校に友人はいない。そして、俺はクラスの美人女子高生の京野弘美に興味を持っていた。と言うか好きなんだけどな。でも、京野は美人なのに人気が無く、俺と同様ハブられていた。そして、ある日の放課後、京野に俺の恥ずかしい行為を見られてしまった。すると、京野はその事をバラさないかわりに、俺を旧校舎の地下室へ連れて行く。そこで、おかしなことを始めるのだったのだが……。

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

みこみこP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

処理中です...