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第六章その11 ~時代絵巻!?~ 過去の英雄そろい踏み編
メガネ越しに愛を込めて
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「何なんでしょうね、あの緊張感の無さは」
戦いを継続しながら、輪太郎は呆れたように呟いている。
そう言いながらも他の班の位置を常に確認し、いざという時にサポート出来るよう備えているだろう……とちひろは思った。
こいつは昔からそういうヤツなのだ。
一見冷たく見られるが、本当は他の人が傷つくのを極端に嫌っていて、誰もが無事に帰るために、冷静であろうとしているのだ。
常に状況分析を欠かさないのもそのためだったし、彼の機体である『双輪』は、あらゆるセンサーを搭載していた。
音波から振動、はては微弱な電磁波の変化まで、戦場のいかなる変化も見逃さないよう改造されているのだ。
……だが機体はそれだけセンサーを備えているのに、当の本人が乙女心に鈍いのが困りもの。
しばし言葉を発する機会をうかがうちひろだったが、輪太郎が先に口を開いた。
「ちひろ、『八郎』の調子はどうですか?」
「あっ、うん、全然良好だよんっ!」
彼の機体から送られてくる情報……敵の危険度や優先して狙うべき相手の座標などを見ながら、ちひろは次々砲撃を加えていく。
多数の砲頭を備えたちひろの機体は重く、だからこそ素早い動きや咄嗟の対応は得意ではない。
輪太郎の機体から情報をもらい、火力を集中させる事で生きる機体なのだ。
そんな機体の設計思想は、ちひろ自身にもよく似ている。
もし輪太郎がいなければ、様々な苦難のあった神武勲章隊の日々も……いや全神連の修行だって、耐えられなかっただろうから。
だから……もしこれで最後になるのなら、きちんと伝えておくべきだろう。
「輪太郎っ! ちょっとだけ、言いたい事があるんだけどさっ!」
ちひろは忙しく目の前の敵を砲撃しながら、最大限の勇気を振り絞った。
「……あの時ね、全神連を飛び出して、パイロットに志願した時だけどさっ!」
「はい、それが何か?」
「……ほんとはさっ、結構不安だったわけなのよ!」
「はい!? 冗談でしょうが、まあ、はい」
「だからさ……まあそのっ、ありがとねっ! ついて来てくれてっ!」
「………………」
輪太郎は黙ってしまった。
そのまましばし戦いに没頭する。砲撃の威力を警戒した餓霊達が、ちひろの機体を優先して狙い始めたからだ。
周囲を囲む餓霊の群れを、正確無比な射撃で仕留める輪太郎だったが、やがてぽつりと言ったのだ。
「……まあ突っ走る方向はともかく、正義感だけはありましたからね。昔から」
「えっ……?」
ちひろは思わず聞き返したが、輪太郎はなおも続けた。
「……みんなを守ろうと、いてもたってもいられなかったんでしょう? 私も全神連ですし……………………そういう所は嫌いではありませんよ」
「……………………」
ちひろはその返事を反芻した。
嫌いではない。嫌いではないとのこと。曖昧な答えだったが、ちひろはそれで満足した。
いっぺんに何もかもうまくはいくまい。続きは明日に先延ばししよう。
だからこそ、何が何でも明日を勝ち取らないといけないのだ。
だがそこでちひろは気付いた。
いつの間にか画面にヒカリが映っている事に。
「まったくチミ達まで、どさくさに紛れてイチャつく気かね」
「ちっ、違うっ! 違うってばさヒカリ!」
ちひろは慌てて抗議するが、ヒカリの顔は画面から消えていた。
戦いを継続しながら、輪太郎は呆れたように呟いている。
そう言いながらも他の班の位置を常に確認し、いざという時にサポート出来るよう備えているだろう……とちひろは思った。
こいつは昔からそういうヤツなのだ。
一見冷たく見られるが、本当は他の人が傷つくのを極端に嫌っていて、誰もが無事に帰るために、冷静であろうとしているのだ。
常に状況分析を欠かさないのもそのためだったし、彼の機体である『双輪』は、あらゆるセンサーを搭載していた。
音波から振動、はては微弱な電磁波の変化まで、戦場のいかなる変化も見逃さないよう改造されているのだ。
……だが機体はそれだけセンサーを備えているのに、当の本人が乙女心に鈍いのが困りもの。
しばし言葉を発する機会をうかがうちひろだったが、輪太郎が先に口を開いた。
「ちひろ、『八郎』の調子はどうですか?」
「あっ、うん、全然良好だよんっ!」
彼の機体から送られてくる情報……敵の危険度や優先して狙うべき相手の座標などを見ながら、ちひろは次々砲撃を加えていく。
多数の砲頭を備えたちひろの機体は重く、だからこそ素早い動きや咄嗟の対応は得意ではない。
輪太郎の機体から情報をもらい、火力を集中させる事で生きる機体なのだ。
そんな機体の設計思想は、ちひろ自身にもよく似ている。
もし輪太郎がいなければ、様々な苦難のあった神武勲章隊の日々も……いや全神連の修行だって、耐えられなかっただろうから。
だから……もしこれで最後になるのなら、きちんと伝えておくべきだろう。
「輪太郎っ! ちょっとだけ、言いたい事があるんだけどさっ!」
ちひろは忙しく目の前の敵を砲撃しながら、最大限の勇気を振り絞った。
「……あの時ね、全神連を飛び出して、パイロットに志願した時だけどさっ!」
「はい、それが何か?」
「……ほんとはさっ、結構不安だったわけなのよ!」
「はい!? 冗談でしょうが、まあ、はい」
「だからさ……まあそのっ、ありがとねっ! ついて来てくれてっ!」
「………………」
輪太郎は黙ってしまった。
そのまましばし戦いに没頭する。砲撃の威力を警戒した餓霊達が、ちひろの機体を優先して狙い始めたからだ。
周囲を囲む餓霊の群れを、正確無比な射撃で仕留める輪太郎だったが、やがてぽつりと言ったのだ。
「……まあ突っ走る方向はともかく、正義感だけはありましたからね。昔から」
「えっ……?」
ちひろは思わず聞き返したが、輪太郎はなおも続けた。
「……みんなを守ろうと、いてもたってもいられなかったんでしょう? 私も全神連ですし……………………そういう所は嫌いではありませんよ」
「……………………」
ちひろはその返事を反芻した。
嫌いではない。嫌いではないとのこと。曖昧な答えだったが、ちひろはそれで満足した。
いっぺんに何もかもうまくはいくまい。続きは明日に先延ばししよう。
だからこそ、何が何でも明日を勝ち取らないといけないのだ。
だがそこでちひろは気付いた。
いつの間にか画面にヒカリが映っている事に。
「まったくチミ達まで、どさくさに紛れてイチャつく気かね」
「ちっ、違うっ! 違うってばさヒカリ!」
ちひろは慌てて抗議するが、ヒカリの顔は画面から消えていた。
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