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第六章その15 ~おかえりなさい!~ 勇者の少年・帰還編
黒鷹は亜空間にいる
岩凪姫は周囲の霊気を探ったが、黒鷹の気配は見つからなかった。
「迂闊だった。霊気がまるで感じられない」
「霊界にもいないそうよ、お姉ちゃん」
神器の画面で確認していた佐久夜姫も振り返る。
「だとしたら……可能性は1つしかないな。多分、まだ中にいるのだと思う」
「中? 中ってどういう事、ナギっぺ?」
「……柱は砕け、その反動でお前達は吹き戻された。だが最下層にいた黒鷹は、まだ地上に戻れていない。たぶん途中で倒れているのだ」
「だ、だったら迎えに行けばいいわけですよね?」
必死に問うカノンに、岩凪姫は首を振る。
「……いや、その場所が分からぬのだ。恐らくその地が亜空間となって、私達の感知から外れている。柱の余剰エネルギーと、魔王の気を受けて変質したのだろう」
「そ、そんな……!?」
カノンは言葉を失うが、岩凪姫は説明を続ける。
「場所が分からぬ以上、こちらから迎えに行く事は出来ぬ。黒鷹自身が気がついて、内側から開かねばならんのだ。開きさえすれば引きつかみ、力ずくで引き戻せる」
だがカノンはなおも食い下がる。
「でっ、でも、気が付いてたら動きがあるでしょ!? それが無いって事は、気を失ってるんじゃないでしょうか……!」
「……だとしたら打つ手が無い。時が経てば経つほど、どんどん別の時空へ遠ざかるだろう」
女神の言葉に、少年少女は静まり返った。
誰もが絶望に包まれかけたが、そこで鶴が祈り始めた。
「お願い、誰かっ、誰でもいいの。黒鷹を助けて……! それが無理なら、せめてお話させて欲しいの。そしたら黒鷹が気が付くから……!」
「…………すまぬ」
岩凪姫は項垂れた。神である自分も、この願いだけは叶えてやれない。
……だが、まさにその時だった。
必死に祈る鶴の傍に、小さな光が現れた。雪のように舞い踊る、ピンポン玉ほどの光の玉だ。もちろん岩凪姫はその名を知っていた。
「幸魂? そうか、あの時のものだな」
鶴も黒鷹も、かつて与えた幸魂を、多くの人に向けて放った。
そして残った自分達の分を、2人は使わずにとっておいたのだ。ごくごくわずかな幸運だったが、この日本を取り戻し、平和になったら使おうと決めていたのだ。
「……待て、幸魂だと!? もしかしたらいけるかも知れん!」
「ナギっぺ、それはどういう事?」
「よいか、私やお前の霊力は、外から亜空間には干渉出来ぬ。だが幸魂はただの幸運……もしかしたら通じるやも知れんぞ……!」
「分かった、やってみるわ」
鶴は再び祈り始めるが、カノンがそこで声を上げた。
「あ、あたしのも使って!」
「うちも!」
「俺もだぜ!」
「俺のも使ってくれ!」
難波、宮島、香川も続き、遠巻きに見守っていた凛子も言う。
「良く分からないけど、あいつが困ってるんだろ? あたい達もいけるかい?」
「そうだな、皆使わずにとってあるようだ。すまぬが願いを託してくれ。目を閉じて、鶴に渡すと念じるだけでいい」
岩凪姫の言葉に、凛子達は頷いた。
「了解! よーし二本松コンビ、しぐれ、頼むよ!」
「黒鷹さんのためならこの恭介、協力は惜しまないぜ!」
「受けた恩は忘れんさ!」
「だべ!」
更に次々他の隊が集まってくる。事情を聞いた彼らは、すぐ協力を申し出てくれたのだ。
「迂闊だった。霊気がまるで感じられない」
「霊界にもいないそうよ、お姉ちゃん」
神器の画面で確認していた佐久夜姫も振り返る。
「だとしたら……可能性は1つしかないな。多分、まだ中にいるのだと思う」
「中? 中ってどういう事、ナギっぺ?」
「……柱は砕け、その反動でお前達は吹き戻された。だが最下層にいた黒鷹は、まだ地上に戻れていない。たぶん途中で倒れているのだ」
「だ、だったら迎えに行けばいいわけですよね?」
必死に問うカノンに、岩凪姫は首を振る。
「……いや、その場所が分からぬのだ。恐らくその地が亜空間となって、私達の感知から外れている。柱の余剰エネルギーと、魔王の気を受けて変質したのだろう」
「そ、そんな……!?」
カノンは言葉を失うが、岩凪姫は説明を続ける。
「場所が分からぬ以上、こちらから迎えに行く事は出来ぬ。黒鷹自身が気がついて、内側から開かねばならんのだ。開きさえすれば引きつかみ、力ずくで引き戻せる」
だがカノンはなおも食い下がる。
「でっ、でも、気が付いてたら動きがあるでしょ!? それが無いって事は、気を失ってるんじゃないでしょうか……!」
「……だとしたら打つ手が無い。時が経てば経つほど、どんどん別の時空へ遠ざかるだろう」
女神の言葉に、少年少女は静まり返った。
誰もが絶望に包まれかけたが、そこで鶴が祈り始めた。
「お願い、誰かっ、誰でもいいの。黒鷹を助けて……! それが無理なら、せめてお話させて欲しいの。そしたら黒鷹が気が付くから……!」
「…………すまぬ」
岩凪姫は項垂れた。神である自分も、この願いだけは叶えてやれない。
……だが、まさにその時だった。
必死に祈る鶴の傍に、小さな光が現れた。雪のように舞い踊る、ピンポン玉ほどの光の玉だ。もちろん岩凪姫はその名を知っていた。
「幸魂? そうか、あの時のものだな」
鶴も黒鷹も、かつて与えた幸魂を、多くの人に向けて放った。
そして残った自分達の分を、2人は使わずにとっておいたのだ。ごくごくわずかな幸運だったが、この日本を取り戻し、平和になったら使おうと決めていたのだ。
「……待て、幸魂だと!? もしかしたらいけるかも知れん!」
「ナギっぺ、それはどういう事?」
「よいか、私やお前の霊力は、外から亜空間には干渉出来ぬ。だが幸魂はただの幸運……もしかしたら通じるやも知れんぞ……!」
「分かった、やってみるわ」
鶴は再び祈り始めるが、カノンがそこで声を上げた。
「あ、あたしのも使って!」
「うちも!」
「俺もだぜ!」
「俺のも使ってくれ!」
難波、宮島、香川も続き、遠巻きに見守っていた凛子も言う。
「良く分からないけど、あいつが困ってるんだろ? あたい達もいけるかい?」
「そうだな、皆使わずにとってあるようだ。すまぬが願いを託してくれ。目を閉じて、鶴に渡すと念じるだけでいい」
岩凪姫の言葉に、凛子達は頷いた。
「了解! よーし二本松コンビ、しぐれ、頼むよ!」
「黒鷹さんのためならこの恭介、協力は惜しまないぜ!」
「受けた恩は忘れんさ!」
「だべ!」
更に次々他の隊が集まってくる。事情を聞いた彼らは、すぐ協力を申し出てくれたのだ。
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