新説・鶴姫伝! 日いづる国の守り神 PART6 ~もう一度、何度でも!~

あさくらやたろう-BELL☆PLANET

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~グランドフィナーレ~ もう一度、何度でも!

日はまた必ず昇るから♪

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 宴会はいつ果てるともなく続き、人ならぬモアイや弥五郎やごろうどん、ヤシの木といったぬいぐるみ勢も喜んでいた。

 ?マークや手紙もいたし、そうめんや醤油ビンも不気味な踊りを踊っている。

 誠は引き気味で呟いた。

「お前らいつ消えるんだよ。神使みたく、ずっと居続けるんじゃないだろうな……って、うわっ!!?」

 誠はそこで邪悪な気配を感じて振り返った。

 長い経験による勘だが、予想通り、そこには神使達がたたずんでいた。

 牛にサル、キツネ、眼帯を付けた狛犬。筋肉ムキムキでずんぐりした龍、そしてキセルをくわえた鹿。

 いつもなら飛びかかってくる彼らだが、今は静かに誠を見つめている。

「な、なんだ? 今日は襲ってこないのか?」

 誠はいぶかしんだが、そこで代表して牛が言った。

「実は……以前話していたのです。モウそろそろ私達も、黒鷹殿を認めるべきではないかと」

「お、お前らっ……!!!」

 あまりに予想外な展開に、誠は感激してしまった。

 長い長い苦難の果てに、魔族より分かり合えないと思っていた神使との雪解け。これはもう、人生の感動的なエンディングであろう……と思ったのだが。

 牛はそこで付け加える。

「…………で、話し合ったのですが。まだまだという事になりまして」

「えっ!!?」

「これからも今まで通りでお願いします」

 次の瞬間、神使達が一斉に飛び乗ってくる。

「ぐはっ!? やっぱり何も変わらないじゃんかっ!」

 もんどりうってダウンする誠を、神使の鹿が眺めている。そう言えば、こいつは誠への過激なじゃれつきに加わる気配を見せないのである。

 鹿はキセルを噛みしめ、ぽつりと呟いた。

「……良くやったな、大将。それと紅葉饅頭もみじまんじゅう、うまかったぜ」

「えっ……???」

 誠は一瞬キョトンとした。

 鹿に礼を言われるような事をした覚えはないが……しかも紅葉饅頭がらみで……

「あっ!?」

 次の瞬間、誠の記憶の糸が繋がる。

 幼い頃に訪れた厳島で、誠から饅頭を奪った雄鹿は、あいつは……

「お前だったのかっ!!?」

 絶叫する誠だったが、そこで凄まじい大歓声があがった。大山祗神社に据えられた木造ステージで、女神の歌が始まったのだ。

 そしてほぼ同時に目の前が光に包まれ、周囲は広大な草原へと変わっていた。

 あの北陸で、わんぱくカップを行った精神世界の草原であり、野外フェスよろしく日本中の人々が集っているのだ。もちろん源平の武者や戦国武将達もいた。

 楽器の演奏は厳島の女神達で、マイクを持つのは竜宮の女神姉妹だ。

 厳島の女神達は髪をなびかせ、今風にアレンジした和装に身を包んで、ノリノリで演奏している。

 いつの間にかファンクラブも出来ていたらしく、弁天様が楽しげにウインクすると、男女を問わずファンがぶっ倒れた。

 ……けれど歌が始まると、人々は夢中で聞き入っていた。

 旋律はポップで疾走感があって、耳にするだけで元気が出てくる。

 でもその歌詞は、この未曾有みぞうの大災害に耐えてきた人々の涙を誘うのだ。

 もう誰もが理解していた。

 本来なら、女神達は人が目にするのもはばかられる尊い存在である。『かけまくもかしこき』と言う通り、名を口にするのさえおそれ多い。

 それがわざわざ姿を現し、歌声まで聞かせてくれている。その意味は何なのか?

 長い長い苦難を乗り越え、必死に頑張ってきた人達への、ありったけの祝福なのだ。

 良く頑張ったね。これからはうんと幸せになってね……!

 そんな思いを込めた、女神達からの贈り物なのだ。

「さあみんなーっ、頑張って復興して、絶対幸せになるわよーっ!」

 竜宮の女神達は観客をあおり、皆の盛り上がりは最高潮に達した。

 女神が観客にマイクを向けると、人々が応える。

 何度も何度も、想いの全てを声にかえて。

 老いも若きも、男も女も、更には幼い子供達も。神使達、そして鯛やヒラメの踊り子まで、夢中で手を打って一緒に叫んだ。

 もう絶望なんて入り込む余地はない。

 日本中が1つになって、明日を創ろうとしているのだ。

 これで奇跡が起こらずして何であろうか?

 現代の洗練された神事とはまた違う、原初のままのエネルギーに満ちた祭りのように、目に見えぬ巨大な力が日本中に渦巻いていく。

 竜宮の女神達は、輝く霊気をしずくのように舞い散らしながら、高らかに歌い上げる。

『日はまた~、かーならず~、のーぼーるぅからぁ!』

 フィナーレと共に花火が上がり、空に無数の流れ星が走った。

 興奮は日本中を駆け巡り、歌は無敵の祝詞のりととなって、人々を祝福してくれたのだ。
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