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第三章その3 ~敵の正体!?~ 戦いの真相編
期待の新人つるちゃん
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城塞の中は、盛り場のような賑やかさだった。
渡り廊下や空中階段が、デパートの自動昇降階段のごとく入り乱れ、そこを外見も大きさも様々な魔族が行き来している。
いかにも昔話な風体の鬼や、樹木の精霊が擬人化したような輩もいたが、先ほどの門番と同じ獣人が多かった。
「中国地方は鬼、九州は熊襲一族だったけど、北陸は獣人とか、自然霊の縄張りみたいだね。山が深いからかな?」
コマが辺りを見回しながらそう言う。まるで不思議の国に迷い込んだように感じる誠だったが、それは他の連中も同じらしい。
「こ、これ……餓霊というより、もうおとぎ話だろう……」
「一体おらたち、何と戦ってるんだべ……?」
だが鶴は物怖じせず、ずんずん前に進んでいく。
「どっちに行けばいいのかしら。誰かに聞いてみましょう」
「ちょっと、駄目だよ鶴!」
コマがアイマスクをずり上げながらツッコミを入れるが、鶴はもう中庭らしき場所にいた。
誠達は慌てて駆け寄ったが、よく見ると、そこにいるのは角の生えた鬼達である。
一人は小柄で、髪の長い童のような鬼。もう一人はかなりの巨体で、袖なしの着物がワイルドな鬼。
つまるところ九州で出合った、あの紫蓮・剛角の豪腕コンビなのだ。
「あーちっくしょ、なんでワシらが毎回こうせにゃならんのだ」
剛角は中庭の石に腰掛け、棒で焚き火をいじりながら呟く。
「しゃーないじゃろ剛角、毎度おなじみ、罰ゲームの留守番じゃ」
紫蓮もそう言いながら、退屈そうにあくびをしていた。
(さ、最悪だ……何でこいつらがいるんだよ……!? 九州で戦いの約束をすっぽかしたし、バレたらとんでもない目にあうぞ……!)
ぞっとする誠だったが、そこでもう1人、派手な原色のスーツを着た若い男が歩み寄った。手にしたドリンクを鬼達に渡しつつ、自分も近くに腰を降ろす。
「まあ鬼のお2人さん、そう言いなさんな。今は我慢のサラリーマン魂さ」
誠はこの男にも見覚えがあった。
一見普通の人間のようだが、九州で出合った魔族・熊襲一族の青年だ。確か名は焔だったが、とにかく厄介な相手には違いない。
鶴はその辺りを気にもとめず、一同の会話に混じろうとしていた。
「おいヒメ子っ、あいつら魔族の幹部だぞ。変な事言ったら大事になるし」
「平気よ黒鷹。まったく、私を誰だと思ってるの」
鶴はバシバシウインクをしながら、気さくに鬼に話しかけた。
「ちわっ先輩、私よ。今日からお世話になる新入りなの」
なんちゅう言葉遣いを、と言いたくなる誠だったが、魔族達は咎めるでもなく顔を上げた。
「おうおう、新入りか。挨拶回りご苦労だな」
剛角はそこまで言って、ふと誠の方に目を向ける。
「ん? なんか後ろのお前、あいつに似てないか? 確か人の武芸者で……」
「いっ、いいいい、いいえっ、まったく似てないとよく言われますよっ!」
誠は滝のような汗を流し、首をぶんぶん振って否定する。
「ワハハ、確かにこんな所に来るわけないか」
剛角が笑うと、スーツ姿の焔が後を続けた。
「初日なら緊張してるんだろ? まあそのへん座りな。折角だし、焼き芋でも食ってったらいいじゃん」
「じゃあ遠慮なく。もぐもぐ……まあ、おいしいわね!」
鶴はちゃっかりいただいているが、他のメンバーは気が気ではない。
そんな一同の内心も知らず、剛角は愚痴を言い始めた。
「ったく、あの爪牙兵団の連中、何かと言えば威張り腐りやがって。とっととボコボコにされればいいのによお」
「ボコボコね、了解したわ」
鶴は気軽に頷いた。
「あの虎みたいな変ちきりんでしょう? 大丈夫、次はこてんぱんにする予定だから」
「……ちょっ、ちょっと鶴っ!」
ツッコミを入れるコマをよそに、魔族達は手を叩いて喜んだ。
「面白い! お前、結構言うもんじゃの。威勢のええ新人じゃ」
「そうそう、私は神人だから」
鶴は紫蓮と意気投合しているが、2人の意図する漢字が違う事は絶対に知られてはいけない。
「それにしてもこの砦は立派ね。霧はどこから出てるのかしら?」
鶴の問いに、剛角は奥を指差した。
「そりゃここの一番奥だ。夜祖大神様が作られた術だからな。同じく夜祖様が作った道しるべの宝珠がなけりゃ、俺らでも帰って来られないんだぞ」
「まあ、凄いハイテクなのねえ」
「そうだ、大体爪牙兵団が強いんじゃない、この砦のおかげだっての。霧で見えにくいところを早駆けで奇襲してんだから、どんなバカでも手柄ぐらい立てれるわい…………おっ?」
剛角はそこで視線を逸らした。
「噂をすれば、嫌な連中が来やがったぞ」
一同が振り返ると、建屋の奥から物々しい一団が近づいてくる。
先頭の男はやや小柄だった。
逆立つ長髪、派手な戦化粧が猛々しい印象だが、一番おかしいのは、『鶴姫本陣』と書かれた旗を持っている事だ。
男はこちらを見つけると、大股にずかずか歩み寄ってくる。
「おうおう、探したぜお前ら、ちゃんと真面目にやってっか?」
剛角も紫蓮も、そして焔もジト目になり、「うぜぇ」と小声で呟いたが、相手は気にする様子も無い。
「しっかり働けよ。この爪牙兵団の拠点なんだ、学べるこたぁ山ほどあんだろ」
「うるせえ虎丸っ、お前はほっつき歩いてるだけだろがっ」
剛角が言い返すと、虎丸と呼ばれた男は牙をむき出して笑った。
「そりゃ戦だから出歩くだろ、留守番してるヤツとは違うぜ。お前らがコテンパンに負けた人間側の神人、俺達は引き分けたんだぜ。ま、引き分けったって、9割がた勝ってたんだがよ! 相手の旗も取ったし、バカとは違うんだよ、ギャーハッハ!」
虎丸は腰に手を当て、ふんぞり返って笑っている。
コマが「敵もけっこう話を盛るね」と感心したが、剛角は負けじと嫌味を言った。
「ケッ、陣地ったって、どーせちっこい陣だろドラ猫」
「んん~? それでもお前らには無理だろ?」
「くっそ~っ、こいつぶっとばしてやりてえ……!」
「ワシも限界じゃ、喧嘩したいのお剛角」
「だめだ鬼のお2人さん。今暴れれば、双角天様にもご迷惑がかかるぜ。ここは我慢のリーマン根性だ」
「まあせいぜい我慢の練習してくれや、ギャーハッハ!」
虎丸の一団は、高笑いしながら去っていく。
鶴はお茶を飲みながら一同に同情した。
「どこも大変なのねえ。分かるわ、私もナギっぺやコマに睨まれて、毎日がストレスフルだもの」
「どの口が言うんだよ、遊んでばかりじゃないか」
コマは鶴の肩に飛び乗って抗議した。
「いいから鶴、そろそろ行こうよ。何自分の家みたいにくつろいでるんだ」
「せかせかして余裕がない狛犬ねえ」
鶴はしぶしぶ立ち上がり、焼き芋の礼を言ってその場を去った。
渡り廊下や空中階段が、デパートの自動昇降階段のごとく入り乱れ、そこを外見も大きさも様々な魔族が行き来している。
いかにも昔話な風体の鬼や、樹木の精霊が擬人化したような輩もいたが、先ほどの門番と同じ獣人が多かった。
「中国地方は鬼、九州は熊襲一族だったけど、北陸は獣人とか、自然霊の縄張りみたいだね。山が深いからかな?」
コマが辺りを見回しながらそう言う。まるで不思議の国に迷い込んだように感じる誠だったが、それは他の連中も同じらしい。
「こ、これ……餓霊というより、もうおとぎ話だろう……」
「一体おらたち、何と戦ってるんだべ……?」
だが鶴は物怖じせず、ずんずん前に進んでいく。
「どっちに行けばいいのかしら。誰かに聞いてみましょう」
「ちょっと、駄目だよ鶴!」
コマがアイマスクをずり上げながらツッコミを入れるが、鶴はもう中庭らしき場所にいた。
誠達は慌てて駆け寄ったが、よく見ると、そこにいるのは角の生えた鬼達である。
一人は小柄で、髪の長い童のような鬼。もう一人はかなりの巨体で、袖なしの着物がワイルドな鬼。
つまるところ九州で出合った、あの紫蓮・剛角の豪腕コンビなのだ。
「あーちっくしょ、なんでワシらが毎回こうせにゃならんのだ」
剛角は中庭の石に腰掛け、棒で焚き火をいじりながら呟く。
「しゃーないじゃろ剛角、毎度おなじみ、罰ゲームの留守番じゃ」
紫蓮もそう言いながら、退屈そうにあくびをしていた。
(さ、最悪だ……何でこいつらがいるんだよ……!? 九州で戦いの約束をすっぽかしたし、バレたらとんでもない目にあうぞ……!)
ぞっとする誠だったが、そこでもう1人、派手な原色のスーツを着た若い男が歩み寄った。手にしたドリンクを鬼達に渡しつつ、自分も近くに腰を降ろす。
「まあ鬼のお2人さん、そう言いなさんな。今は我慢のサラリーマン魂さ」
誠はこの男にも見覚えがあった。
一見普通の人間のようだが、九州で出合った魔族・熊襲一族の青年だ。確か名は焔だったが、とにかく厄介な相手には違いない。
鶴はその辺りを気にもとめず、一同の会話に混じろうとしていた。
「おいヒメ子っ、あいつら魔族の幹部だぞ。変な事言ったら大事になるし」
「平気よ黒鷹。まったく、私を誰だと思ってるの」
鶴はバシバシウインクをしながら、気さくに鬼に話しかけた。
「ちわっ先輩、私よ。今日からお世話になる新入りなの」
なんちゅう言葉遣いを、と言いたくなる誠だったが、魔族達は咎めるでもなく顔を上げた。
「おうおう、新入りか。挨拶回りご苦労だな」
剛角はそこまで言って、ふと誠の方に目を向ける。
「ん? なんか後ろのお前、あいつに似てないか? 確か人の武芸者で……」
「いっ、いいいい、いいえっ、まったく似てないとよく言われますよっ!」
誠は滝のような汗を流し、首をぶんぶん振って否定する。
「ワハハ、確かにこんな所に来るわけないか」
剛角が笑うと、スーツ姿の焔が後を続けた。
「初日なら緊張してるんだろ? まあそのへん座りな。折角だし、焼き芋でも食ってったらいいじゃん」
「じゃあ遠慮なく。もぐもぐ……まあ、おいしいわね!」
鶴はちゃっかりいただいているが、他のメンバーは気が気ではない。
そんな一同の内心も知らず、剛角は愚痴を言い始めた。
「ったく、あの爪牙兵団の連中、何かと言えば威張り腐りやがって。とっととボコボコにされればいいのによお」
「ボコボコね、了解したわ」
鶴は気軽に頷いた。
「あの虎みたいな変ちきりんでしょう? 大丈夫、次はこてんぱんにする予定だから」
「……ちょっ、ちょっと鶴っ!」
ツッコミを入れるコマをよそに、魔族達は手を叩いて喜んだ。
「面白い! お前、結構言うもんじゃの。威勢のええ新人じゃ」
「そうそう、私は神人だから」
鶴は紫蓮と意気投合しているが、2人の意図する漢字が違う事は絶対に知られてはいけない。
「それにしてもこの砦は立派ね。霧はどこから出てるのかしら?」
鶴の問いに、剛角は奥を指差した。
「そりゃここの一番奥だ。夜祖大神様が作られた術だからな。同じく夜祖様が作った道しるべの宝珠がなけりゃ、俺らでも帰って来られないんだぞ」
「まあ、凄いハイテクなのねえ」
「そうだ、大体爪牙兵団が強いんじゃない、この砦のおかげだっての。霧で見えにくいところを早駆けで奇襲してんだから、どんなバカでも手柄ぐらい立てれるわい…………おっ?」
剛角はそこで視線を逸らした。
「噂をすれば、嫌な連中が来やがったぞ」
一同が振り返ると、建屋の奥から物々しい一団が近づいてくる。
先頭の男はやや小柄だった。
逆立つ長髪、派手な戦化粧が猛々しい印象だが、一番おかしいのは、『鶴姫本陣』と書かれた旗を持っている事だ。
男はこちらを見つけると、大股にずかずか歩み寄ってくる。
「おうおう、探したぜお前ら、ちゃんと真面目にやってっか?」
剛角も紫蓮も、そして焔もジト目になり、「うぜぇ」と小声で呟いたが、相手は気にする様子も無い。
「しっかり働けよ。この爪牙兵団の拠点なんだ、学べるこたぁ山ほどあんだろ」
「うるせえ虎丸っ、お前はほっつき歩いてるだけだろがっ」
剛角が言い返すと、虎丸と呼ばれた男は牙をむき出して笑った。
「そりゃ戦だから出歩くだろ、留守番してるヤツとは違うぜ。お前らがコテンパンに負けた人間側の神人、俺達は引き分けたんだぜ。ま、引き分けったって、9割がた勝ってたんだがよ! 相手の旗も取ったし、バカとは違うんだよ、ギャーハッハ!」
虎丸は腰に手を当て、ふんぞり返って笑っている。
コマが「敵もけっこう話を盛るね」と感心したが、剛角は負けじと嫌味を言った。
「ケッ、陣地ったって、どーせちっこい陣だろドラ猫」
「んん~? それでもお前らには無理だろ?」
「くっそ~っ、こいつぶっとばしてやりてえ……!」
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「まあせいぜい我慢の練習してくれや、ギャーハッハ!」
虎丸の一団は、高笑いしながら去っていく。
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「どの口が言うんだよ、遊んでばかりじゃないか」
コマは鶴の肩に飛び乗って抗議した。
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