新説・鶴姫伝! 日いづる国の守り神 PART3 ~始まりの勇者~

あさくらやたろう-BELL☆PLANET

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第三章その5 ~どうしよう!~ 右往左往のつるちゃん編

川の神のほこら

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「えっ、ちょっとあなた、どこ行くのよ! 熱いバトルはどうしたの!?」

 てっきり戦えるものだと思っていた鶴は、拍子抜けして目を丸くしている。

「鶴にツッコミを入れさせるとはなかなかだね」

 コマが素直に感想を述べた。

「2階には飛鳥さんがいるけど、あの逃げ足じゃ厳しいかな」

 念のため連絡を取ると、鳳はすまなさそうに報告してくる。

「……も、申し訳ありません。動きが速すぎて取り逃がしてしまい……」

「しょうがないよ。かなりの手練てだれだったし」

 コマが言うと、鶴が憤慨ふんがいして地団駄じだんだを踏んだ。

「もう、何なのこっちの敵は! せっかく懲らしめようと思ったのに、あっちもこっちも肩透かしだわ!」

 誠もそれは同意である。

「ヒメ子の言う通り、こっちの敵は異質だよな。散々引っ掻き回しといて、こちらが攻めればあっさり退くし…………逆に退いたと思えば、隙を見て大きな手を打ってくる」

「……多分、勝てる時にしか戦わないんだと思うよ」

 コマは少し考えながらそう答えた。

 誠は何の気無しにうなずいたが、その時は気が付かなかった。

 そう、こちらの敵は『勝てる時にしか戦わない』……その意味をもっと考えるべきだったのだ。

「ストレスが溜まるわねえ。こうなったらコマをからかって解消するしかないわ」

 鶴はそう言いながら打ち出の小槌を取り出し、嵐山達を大きくした。ようやく元に戻った嵐山、船渡の両名だったが、膝をついてへたり込んでしまった。

「……に、人間じゃなかったなんて。あんな連中と協力してたとか、何やってたんだろ、あたし……」

「それはこっちも同じだが……どうなってるんだろうな……」

 船団長達の落ち込みをよそに、一同は建屋内部を調べてみる。

 事前の調査通り、1階の控え室に数十名の一般人が発見された。

 彼らは皆、白い簡素な服を着て、意識が朦朧もうろうとしていたのだ。それでも時折小さな声で「生き神様……」と呟いている。

 コマは彼らの額に前足で触れた。

「霊気を吸い取られて衰弱してるけど、命に別状は無さそうだよ」

「生き神様って、これかしらね」

 鶴は祭壇の奥に飾られていた絵を持って来た。

 描かれていたのは、長い髪を伸ばし、柔らかな表情をした美しい女性である。

 どことなく誰かに似ている……と誠は思ったが、そこで鶴は呟いた。

「この絵、あのイイ天気工業の水槽の人と同じだと思うわ」

「イミナ添機だけど鶴、だとしたら敵は何をやってたんだろうね」

 コマがそう言って首をかしげる。

イミナ添機あそこで何か調整して、その後ここに来たわけだろ? 大勢霊気を抜かれてるし、エネルギーを補給しに来たのかな」

 そこで鶴の神器のタブレットに通信が入った。

 画面を拡大すると、外で見張っていた全神連の人々が映っている。

「姫様、外におかしい物があるんですけど、ちょっと来て貰えませんか」



 急いで外に出てみると、建物の横にコンクリートの水路が発見されていた。さっきまで鉄板でカバーがかけられていたらしく、中にはかなりヘドロとゴミが浮いている。

「酷い汚れようだね」

 コマはすんすん匂いをかいでいる。

「こんなに汚れてるのに、かなり多めの気が残ってるぞ」

 水路を辿っていくと、敷地内の小さなほこらの前へと伸びているようだ。

「祠を通じて、どこかに霊気を送ってたみたい。鶴、どこに送ってたか分かるかい?」

「うーん……」

 鶴はしばらく考えていたが、困った顔で首を傾げた。

「はっきりは分からないわね。何となく南の方みたいだけど。この祠、川の神様っぽいわ」

 鶴はそう言いつつ、虚空からトングとざる、ゴミ袋などを取り出す。するとそれらに手足が生えて、せっせと水路を掃除し始めた。

「良く分からないけど、汚いのは嫌だわ。川の神様が気の毒だし」

 掃除用品達の活躍で、水路はやがて清潔な水を取り戻した。

 鶴はやたらと満足げであったが、だからと言って何かが解決したわけでもない。

 一同は取りあえずいったん詰め所に戻る事にした。



 誠達が肩透かしに終わったのと同じ頃。

 薄闇の中、女は静かに座していた。

 一見して奇妙な人物である。

 長い黒髪は腰まで垂れ、顔は普通の人の肌のように見える。

 しかし口元には牙がのぞき、目は妖しい光を帯びているのだ。

 鎧を着込んでいるのか、頭部以外は黒くて硬い何かに覆われていた。そして鎧の右肩には、断ち割られたような傷跡が見える。

 女は何度か右腕を動かし、満足げに笑みを浮かべた。己の回復具合を実感しているのだろうか。

「…………?」

 だがそこで、女は自らの左手に目をやる。

 鎧のような外皮に覆われた手の平に、ごくごく僅かな光の筋が浮かんだのだ。

 光は青く透き通り、小川の流れのようにも見える。

 女はしばし無言で手を眺めていた。
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