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第三章その7 ~いざ勝負!~ 黄泉の軍勢・撃退編
チャンスは一瞬……!
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「……予定通りだ、再生してきたな……!」
鶴が表示した半透明の地図を見つめ、誠は呟いた。
地下を走る網目のような触手を通り、大量の邪気が前線に送られて来ている。その凄まじいエネルギー量は、まるで邪気の濁流である。
地上の柱は見る見るうちに再生を始め、崩れかけていた骸骨どもも、再び姿を整え始めた。
「すごい大量の邪気だ。せっかくみんなで壊したのに、もうほとんど元に戻されたね」
コマも地図を見ながらそう言った。
全ては無駄だったのかと、普通ならば思うだろう…………そう、普通ならばだ。
やがて誠の機体は風を切り、超上空から全力加速。降下するのではなく、全速力で真下に加速するのだ。
あの地下の触手をいくら切っても、柱を折っても回復する……だったら本体を叩くしかない。最初から分かりきった結論だった。
敵は大量の柱を破壊され、その修復のために膨大なエネルギーを使わねばならないし、その直後、本体の力は一時的に激減しているはず。
だから空に待機して、敵の動きを待っていた。
そしてそれを怪しまれないために、才次郎の機体に心神そっくりの白い偽装外装をかぶせ、地上で動かしてもらっていたのだ。
鶴が後部座席から呼びかけてくる。
「思った通りよ黒鷹。本体の邪気、かなり弱まってるわね」
「増殖して柱を増やした直後に、それをほとんど壊されたからな。あれだけ大量の柱を復活させたら、そうとう力をすり減らしたはずだ」
誠も頷くが、しかしチャンスは一瞬だ。
敵もバカではないし、本体の周囲には、それなりに警護の餓霊もいる。ピンチになれば、更なる増援も駆けつけるだろう。
それまでの一瞬に、全てを賭けねばならないのだ。
「……そろそろ雲を抜けるわ」
鶴がさすがに緊張した声で呟いた。
「近づいたから分かる……あれはやっぱりディアヌスの分身ね。あの時と同じ気配がする……!」
それでも逃げ戻るわけにはいかないのである。
黒っぽいもやが機体の前を高速で行き過ぎ、氷の塊が飛び散っていく。
やがて機体は雲を突き抜けた。
やけにゆっくりと迫る地表。
暗雲の底に蠢く餓霊どもの一群。
その中央に位置する、蓮の花のような台座と人型の上半身。
強力な電磁式が相手の頭上を覆い尽くしていたが、鶴が目を閉じ、何かを念じた。
!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
物凄い衝撃がコクピットに走り、目の前に光が乱れ飛ぶが、機体はそれを突き抜けていた。鶴が敵のバリアを中和してくれたのだ。
接近と同時に相手の電磁バリアの組成を読み取り、中和する。並大抵の業でない事ぐらい、誠にも分かる。
やがて中央の敵がこちらを見上げ、無数の腕が動き始めた。
大量の光る何かが放たれるが、誠は怯まなかった。機体をひねって攻撃を避けながら相手に迫る。
全力の慣性加速を受け、甲高い叫びを上げる機体の翼は、青い光を帯びて輝いた。
そのまま敵の親玉めがけ、一直線に間を詰めると、鶴が再び何かを念じる。同時に機体の持つ強化刀に、激しい稲光が輝き始めた。
敵は飛び道具でこちらを止めるのを無理と感じたのか、手に持つ巨大な武器を振りかぶった。
「おおおおおおおおおおおおおっ!!!!!!!」
受け身も何も考えず、誠は声を限りに叫ぶ。
大気を切り裂いた刀が、敵の構える幾本かの腕を切断。そのまま肩口から、袈裟斬りに大きく斬り裂いていたのだ。
裂かれた敵の上半身が激しくもがき、乱れた力が、放電したように辺りを駆け巡っている。
本来なら落下の衝撃で機体が砕けていたかもしれないが、誠の機体は無事である。
恐らく衝突寸前に、鶴が霊力でブレーキをかけてくれたのだろう。
…………だが、しかし。
次の瞬間、無数の腕が誠の機体を掴んでいた。
「!!!???」
激しい衝撃が全身を揺さぶる。
機体が急激に宙に浮かぶと、目の前に、狂気に満ちた顔が見えた。敵は上半身を裂かれたまま、倒れる事なく動いているのだ。
「くそっ、浅かったか……!?」
流石にディアヌスの分身である。普通の餓霊とは、その耐久力の桁が違う。
間近で見ればサイズの差は歴然、まるで造船所の巨大クレーンに喧嘩を挑むドンキホーテのようだ。
歯噛みする誠に、コマが叫んだ。
「黒鷹、僕が外に出るよ!!」
コマはたちまち光に包まれ、操縦席から姿を消す。そのまま巨大化して外に現れると、ディアヌスの分身に頭突きした。
分身は若干揺らいだが、腕を伸ばし、コマの体をも掴み取る。同時に誠の機体、そしてコマにも、猛烈な衝撃が走った。
まるで高圧電流を流されたようで、全身の神経が焼きつきそうだ。
誠は必死に操縦レバーを握ろうとするが、目の前の景色が歪んでいく。
意識が遠退く……体がまるで言う事を聞かない……!
敵は勝利を確信したように、その顔に笑みを浮かべる。
そして裂けた体から、無数の糸のようなものが伸び、傷口が閉じていくのだ。
(これが……魔王の力なのか……)
だが誠の意識が消えかけたその時。
操縦席の画面に、不意にある人物の顔が映った。
鶴が表示した半透明の地図を見つめ、誠は呟いた。
地下を走る網目のような触手を通り、大量の邪気が前線に送られて来ている。その凄まじいエネルギー量は、まるで邪気の濁流である。
地上の柱は見る見るうちに再生を始め、崩れかけていた骸骨どもも、再び姿を整え始めた。
「すごい大量の邪気だ。せっかくみんなで壊したのに、もうほとんど元に戻されたね」
コマも地図を見ながらそう言った。
全ては無駄だったのかと、普通ならば思うだろう…………そう、普通ならばだ。
やがて誠の機体は風を切り、超上空から全力加速。降下するのではなく、全速力で真下に加速するのだ。
あの地下の触手をいくら切っても、柱を折っても回復する……だったら本体を叩くしかない。最初から分かりきった結論だった。
敵は大量の柱を破壊され、その修復のために膨大なエネルギーを使わねばならないし、その直後、本体の力は一時的に激減しているはず。
だから空に待機して、敵の動きを待っていた。
そしてそれを怪しまれないために、才次郎の機体に心神そっくりの白い偽装外装をかぶせ、地上で動かしてもらっていたのだ。
鶴が後部座席から呼びかけてくる。
「思った通りよ黒鷹。本体の邪気、かなり弱まってるわね」
「増殖して柱を増やした直後に、それをほとんど壊されたからな。あれだけ大量の柱を復活させたら、そうとう力をすり減らしたはずだ」
誠も頷くが、しかしチャンスは一瞬だ。
敵もバカではないし、本体の周囲には、それなりに警護の餓霊もいる。ピンチになれば、更なる増援も駆けつけるだろう。
それまでの一瞬に、全てを賭けねばならないのだ。
「……そろそろ雲を抜けるわ」
鶴がさすがに緊張した声で呟いた。
「近づいたから分かる……あれはやっぱりディアヌスの分身ね。あの時と同じ気配がする……!」
それでも逃げ戻るわけにはいかないのである。
黒っぽいもやが機体の前を高速で行き過ぎ、氷の塊が飛び散っていく。
やがて機体は雲を突き抜けた。
やけにゆっくりと迫る地表。
暗雲の底に蠢く餓霊どもの一群。
その中央に位置する、蓮の花のような台座と人型の上半身。
強力な電磁式が相手の頭上を覆い尽くしていたが、鶴が目を閉じ、何かを念じた。
!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
物凄い衝撃がコクピットに走り、目の前に光が乱れ飛ぶが、機体はそれを突き抜けていた。鶴が敵のバリアを中和してくれたのだ。
接近と同時に相手の電磁バリアの組成を読み取り、中和する。並大抵の業でない事ぐらい、誠にも分かる。
やがて中央の敵がこちらを見上げ、無数の腕が動き始めた。
大量の光る何かが放たれるが、誠は怯まなかった。機体をひねって攻撃を避けながら相手に迫る。
全力の慣性加速を受け、甲高い叫びを上げる機体の翼は、青い光を帯びて輝いた。
そのまま敵の親玉めがけ、一直線に間を詰めると、鶴が再び何かを念じる。同時に機体の持つ強化刀に、激しい稲光が輝き始めた。
敵は飛び道具でこちらを止めるのを無理と感じたのか、手に持つ巨大な武器を振りかぶった。
「おおおおおおおおおおおおおっ!!!!!!!」
受け身も何も考えず、誠は声を限りに叫ぶ。
大気を切り裂いた刀が、敵の構える幾本かの腕を切断。そのまま肩口から、袈裟斬りに大きく斬り裂いていたのだ。
裂かれた敵の上半身が激しくもがき、乱れた力が、放電したように辺りを駆け巡っている。
本来なら落下の衝撃で機体が砕けていたかもしれないが、誠の機体は無事である。
恐らく衝突寸前に、鶴が霊力でブレーキをかけてくれたのだろう。
…………だが、しかし。
次の瞬間、無数の腕が誠の機体を掴んでいた。
「!!!???」
激しい衝撃が全身を揺さぶる。
機体が急激に宙に浮かぶと、目の前に、狂気に満ちた顔が見えた。敵は上半身を裂かれたまま、倒れる事なく動いているのだ。
「くそっ、浅かったか……!?」
流石にディアヌスの分身である。普通の餓霊とは、その耐久力の桁が違う。
間近で見ればサイズの差は歴然、まるで造船所の巨大クレーンに喧嘩を挑むドンキホーテのようだ。
歯噛みする誠に、コマが叫んだ。
「黒鷹、僕が外に出るよ!!」
コマはたちまち光に包まれ、操縦席から姿を消す。そのまま巨大化して外に現れると、ディアヌスの分身に頭突きした。
分身は若干揺らいだが、腕を伸ばし、コマの体をも掴み取る。同時に誠の機体、そしてコマにも、猛烈な衝撃が走った。
まるで高圧電流を流されたようで、全身の神経が焼きつきそうだ。
誠は必死に操縦レバーを握ろうとするが、目の前の景色が歪んでいく。
意識が遠退く……体がまるで言う事を聞かない……!
敵は勝利を確信したように、その顔に笑みを浮かべる。
そして裂けた体から、無数の糸のようなものが伸び、傷口が閉じていくのだ。
(これが……魔王の力なのか……)
だが誠の意識が消えかけたその時。
操縦席の画面に、不意にある人物の顔が映った。
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