怪我でサッカーを辞めた天才は、高校で熱狂的なファンから勧誘責めに遭う

もぐのすけ

文字の大きさ
13 / 203
部活勧誘編

一一①

 次の日、学校に行くと桜川が俺のクラスでスタンバッてた。
 朝早くからご苦労なこって。

「待ってたよ高坂っち。今日こそはイエスって言ってもらうんだから」

「イエス様はこうおっしゃった。右頬を殴られたら左頬を差し出せと。これでいい?」

「誰もキリスト教の教えは求めてないよ! 例の話!」

 イエスって言ったのに約束が違うな。
 何度来られても俺の返答は変わらないというのに。

「あ、昨日も来てた人だよね。ウチのクラスの人?」

 梨音が聞いてきた。

「いや、6組の人。俺を部活に入れたくてしょうがないらしい」

「へー。何部?」

「サッカー」

「…………サッカー部?」

 梨音が怪訝な表情を示した。
 梨音は俺が怪我をしてサッカーを辞めたことをもちろん知っているわけだから、こんな風に誘ってくる人に対していい印象を持たないのだろう。

「中学時代の俺のことを知ってくれてるみたいでな」

「ファンと言っても過言じゃないよ! 高坂っちのプレイはいろんな人にとって魅力的で参考になっていたからね」

「ふーん…………」

 朝のホームルームを知らせるチャイムが鳴った。
 桜川を追い払うには良いタイミングだ。

「ほら自分のクラス戻れよ桜川。チャイム鳴ってんぞ」

「チャイムなんかで私の思いは止められないね!」

「覇道でも突き進んでんのかお前は。じゃあ止められる人にお願いするわ」

「え?」

「どこの生徒だ? 早く戻らんと遅刻だぞ」

 桜川の後ろにいたのは我らが担任、宇佐木先生だ。
 新之助の額を砕いたチョーク投げのごとく、桜川も6組に放り投げてやってください。

「先生! 先生は何かに一生懸命になっている人を見ると応援したくなるタイプでしょうか!?」

「ん? ああ、まぁどちらかと言えばな。教職員だしな」

「では私は彼を部活勧誘するのに一生懸命なので、先生は応援してくれるというわけですね?」

 どんな暴論だよ。
 こんな押し通りそうもない論破は初めてだ。

「ふむ…………貴方の名前は?」

「桜川美月です」

「では、一生懸命な桜川に一言、美人で優しい先生から応援メッセージをやろう」

「何でしょうか!?」

「『時と場合を考えろ』」


 ────────────

 ───────

 ────


「いやぁ朝は助かった」

「何だお前、まだ絡まれてんのか」

 ホームルームが終わった後、後ろから新之助が話しかけてきた。
 宇佐木先生の一言により桜川はすごすごと引き下がり、梨音の機嫌もあれ以上悪くならずに済んだ。

「絡まれてるも何も、そういうお前は結局サッカー部入るのかよ」

「俺? 入るわけないじゃんサッカー部なんか。やったこともないしな」

 こいつ……!
 マジで一回殴られた方がいいと思う。
 今度こいつの発言全部録音しといてやろうかな。

「女の子に必要とされてる状況、素直に受け取っとけって修斗」

「簡単に言ってくれるなよ。俺にだって色々と事情があるんだからな」

「そんなことよりよ、このクラスにすげー名前の奴がいるの、知ってるか?」

「いや、知らん」

 クラスで自己紹介をそもそもしていないため、俺はまだ梨音と新之助以外の名前を全然把握していない。
 というか話してすらいない。

「あそこ、左から2列目前から一番目のところに座ってる奴、いるだろ?」

「ああ、大人しそうな奴な」

 新之助が指差したところにいたのは、髪が長く眼鏡をかけた少し暗そうな男子生徒だった。

「あいつの名前がガチ珍しくてな」

「どんなよ?」

「これなんだけどよ」

 新之助は紙とペンを取り出し、『一、一」と横棒を二つ書いた。

「…………で?」

「いや、これが名前なんだよ」

「は? 棒書いただけじゃん。お前人のことあんま舐めんなよぶっ飛ばすぞ」

「何でそこまで言われなきゃなんねーんだよ! だいたい俺は嘘ついてねー!」

 新之助が嘘ついてないとすると、こんな棒2本でなんと読むのか。
 見たこともないぞ。

「どーよ」

「…………同点?」

「試合じゃねーよサッカー馬鹿。アクロバティックな読み方すんな」

「分かんねーな。ホントに人の名前か?」

「おうよ。実はこれでな…………にのまえはじめって読むんだってよ」

 わ、分かんねー!
 一をにのまえなんて読み方すんのも分かんねーしよ、一を続けてるって名付け親酷くねーかこれ?
 絶対今までイジられてきたんだろーなぁ……。

「何というか……大変そうな人生送ってそうだな」

「なぁ、ちょっと話しかけに行ってみようぜ」

 そう言うと新之助はすぐに動いたので、俺も後を追った。

 新之助は高校デビューの割に社交的で、こういう時の行動力は大したもんだ。
 今までの行動を見ても初対面の人とグイグイ話している。
 俺には無いもので、素直に尊敬できる所でもある。
感想 0

あなたにおすすめの小説

俺は陰キャだったはずなのに……なぜか学園内でモテ期が到来した件

こうたろ
青春
友人も恋人も居ないボッチ学生だった山田拓海が何故かモテだしてしまう。 ・学園一の美人で、男女問わず憧れの的。 ・陸上部のエースで、明るく活発なスポーツ女子。 ・物静かで儚げな美術部員。 ・アメリカから来た金髪碧眼でハイテンションな留学生。 ・幼稚園から中学まで毎朝一緒に登校していた幼馴染。 拓海の生活はどうなるのか!?

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。

ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。 真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。 引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。 偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。 ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。 優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。 大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。

むっつり金持ち高校生、巨乳美少女たちに囲まれて学園ハーレム

ピコサイクス
青春
顔は普通、性格も地味。 けれど実は金持ちな高校一年生――俺、朝倉健斗。 学校では埋もれキャラのはずなのに、なぜか周りは巨乳美女ばかり!? 大学生の家庭教師、年上メイド、同級生ギャルに清楚系美少女……。 真面目な御曹司を演じつつ、内心はむっつりスケベ。

キャバ嬢(ハイスペック)との同棲が、僕の高校生活を色々と変えていく。

たかなしポン太
青春
   僕のアパートの前で、巨乳美人のお姉さんが倒れていた。  助けたそのお姉さんは一流大卒だが内定取り消しとなり、就職浪人中のキャバ嬢だった。  でもまさかそのお姉さんと、同棲することになるとは…。 「今日のパンツってどんなんだっけ? ああ、これか。」 「ちょっと、確認しなくていいですから!」 「これ、可愛いでしょ? 色違いでピンクもあるんだけどね。綿なんだけど生地がサラサラで、この上の部分のリボンが」 「もういいです! いいですから、パンツの説明は!」    天然高学歴キャバ嬢と、心優しいDT高校生。  異色の2人が繰り広げる、水色パンツから始まる日常系ラブコメディー! ※小説家になろうとカクヨムにも同時掲載中です。 ※本作品はフィクションであり、実在の人物や団体、製品とは一切関係ありません。

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗@オートスキル第1巻発売中
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

至れり尽くせり!僕専用メイドの全員が溺愛してくる件

こうたろ
青春
普通の大学生・佐藤健太は目覚めると、自宅が豪華な洋館に変わり10人の美人メイドたちに「お目覚めですか、ご主人様?」と一斉に迎えられる。いつの間にか彼らの“専属主人”になっていた健太は戸惑う間もなく、朝から晩までメイドたちの超至れり尽くせりな奉仕を受け始める。