怪我でサッカーを辞めた天才は、高校で熱狂的なファンから勧誘責めに遭う

もぐのすけ

文字の大きさ
32 / 203
生徒会勧誘編

推薦基準③

 今週末にフットサルでボールを蹴れるかもしれない。
 その可能性を考えただけで俺はじっとしていられなかった。
 家へと戻った俺は部屋へと戻ると、簡単に動ける服に着替え、ボールとスパイクを取るとすぐに出掛ける準備をした。

「どこか出掛けるの? 修斗」

 裏口から出ようとしたところで梨音に声をかけられた。

「ちょっと公園行ってくるわ」

 梨音は俺の格好とボールを見て、少し呆れたように、でも少し嬉しそうに笑った。

「無理はしないでね」

「おうよ」

 まるで無邪気な少年のように俺は外へと出た。
 外の景色が普段よりも明るく見える。
 きっと気のせいなんだろうけど、心の持ちよう一つでこんなにも変わるとは。

 少し跳ねるようにして走ってみる。

 右膝が少し痛むが、苦痛で顔が歪むほどではない。
 言ってみれば筋肉痛みたいなものだ。
 それに、調べたらフットサルは基本的にスライディングやタックルといった危険行為は基本的に禁止されているケースが多いみたいだ。
 交流会と言うしそんな危険なプレー自体そもそもされるとも思わないけど、これを機にフットサルをやるのもアリかもしれない。
 俺自身の膝と要相談だけど。

 近くの公園に来た。

 結構広く、ちょっとしたグラウンド並みの広さがあり、滑り台やブランコとは区切られているため小さい子達にボールが当たる心配もない良いところだ。
 小さい頃から梨音と一緒によくこの公園で練習していた。
 梨音は見てるだけだったけどな。

 俺は軽くリフティングから始めた。
 この程度の衝撃なら特に足は痛くない。
 それに、部屋でも暇さえあればボールを触っていたせいか、怪我以前とまではいかなくてもボールが足に吸い付く感覚はまだ失われていなかった。
 足首や股関節のストレッチも欠かさなかったからな。

 次に足元でボールを素早く動かした。
 左右の足裏を使い、左に右にボールを動かしながら後ろに下がっていく。

 続いて右足首をフリックして右にボールを出すと見せかけて左に動かすエラシコ。
 これも問題無くできた。

 マルセイユルーレット、ヒールリフト、クライフターン。
 ドリブラーとしては抑えておくべきスキルを次々に試してみたが、若干体幹がふらつく以外はどれも滞りなく使うことができた。
 小さい頃から染み付いた動きは、そうそう忘れることはないみたいだ。

「ははっ。やっぱこれだよな!」

 調子に乗った俺は勢い余って公園の壁に向かってボールを強く蹴った。

「っ!!」

 ズキッッッと右膝に痛みが走った。
 前にグラウンドでボールを蹴った時よりも激しい痛みだった。

「ってて……! やっぱ強くは蹴れないか……」

 俺は右膝を少しさすりながら、壁に跳ね返ったボールを取りに行った。

「ちょっと大丈夫?」

 見ると梨音が転がったボールを手にして、心配そうにこちらへ駆け寄ってきていた。

「また無茶したんじゃないの?」

「何だ、来てたのか」

「7時過ぎても帰って来ないから心配になったのよ」

 気付くと確かに辺りが少し暗くなり始めていた。
 いつの間にそんな時間経ってたのか。

「まったく、修斗のことだからどうせ夢中になってるんじゃないかと思ってたけど、予想通りじゃない」

「いやぁ、ほら、やっぱせっかくフットサルやるんだったら練習はしとかないとさ」

「無理しないでって言ったのに」

 そう言いながらも梨音は笑っていた。
 まるで俺が無茶するのを分かっていたような口ぶりだ。

「でもこうして修斗が練習しているところを見るのも、久しぶりな気がする」

「小学生ぐらいまではよく練習してたな。中学からはクラブチームで遅くまで練習してたから公園でやる機会はほとんどなかったし」

「ここで練習してた頃は、一つ技ができるたびに私に自慢してたよね。こんなことできるんだぜーって」

「い、言ってたかぁ? そんなこと」

「言ってたよ。それで私が凄ーいってリアクションとったら、得意げになった修斗がその後違う技をしようとして、ボールに乗っかって転んでたし」

「なんで覚えてんだよそんな恥ずい話!! 忘れてくれよ頼むから!」

「忘れませーん。もしもの時のための弱味として握っておきまーす」

「ぐぬぬ……!」

「ぷっ…………あははは!」

「へっ…………はははっ」

 俺達はお互い吹き出したように笑った。
 こんなくだらないことで笑い合える、そんな心地のいい関係性なのが俺と梨音だ。

「そろそろ帰ろう。晩御飯の支度、できてるよ」

「そうだな」

 暗くなり、街灯が点き始めた帰り道を、俺はまるで昔の頃のように梨音と並んで帰っていった。
感想 0

あなたにおすすめの小説

俺は陰キャだったはずなのに……なぜか学園内でモテ期が到来した件

こうたろ
青春
友人も恋人も居ないボッチ学生だった山田拓海が何故かモテだしてしまう。 ・学園一の美人で、男女問わず憧れの的。 ・陸上部のエースで、明るく活発なスポーツ女子。 ・物静かで儚げな美術部員。 ・アメリカから来た金髪碧眼でハイテンションな留学生。 ・幼稚園から中学まで毎朝一緒に登校していた幼馴染。 拓海の生活はどうなるのか!?

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。

ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。 真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。 引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。 偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。 ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。 優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。 大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。

むっつり金持ち高校生、巨乳美少女たちに囲まれて学園ハーレム

ピコサイクス
青春
顔は普通、性格も地味。 けれど実は金持ちな高校一年生――俺、朝倉健斗。 学校では埋もれキャラのはずなのに、なぜか周りは巨乳美女ばかり!? 大学生の家庭教師、年上メイド、同級生ギャルに清楚系美少女……。 真面目な御曹司を演じつつ、内心はむっつりスケベ。

キャバ嬢(ハイスペック)との同棲が、僕の高校生活を色々と変えていく。

たかなしポン太
青春
   僕のアパートの前で、巨乳美人のお姉さんが倒れていた。  助けたそのお姉さんは一流大卒だが内定取り消しとなり、就職浪人中のキャバ嬢だった。  でもまさかそのお姉さんと、同棲することになるとは…。 「今日のパンツってどんなんだっけ? ああ、これか。」 「ちょっと、確認しなくていいですから!」 「これ、可愛いでしょ? 色違いでピンクもあるんだけどね。綿なんだけど生地がサラサラで、この上の部分のリボンが」 「もういいです! いいですから、パンツの説明は!」    天然高学歴キャバ嬢と、心優しいDT高校生。  異色の2人が繰り広げる、水色パンツから始まる日常系ラブコメディー! ※小説家になろうとカクヨムにも同時掲載中です。 ※本作品はフィクションであり、実在の人物や団体、製品とは一切関係ありません。

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗@オートスキル第1巻発売中
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

至れり尽くせり!僕専用メイドの全員が溺愛してくる件

こうたろ
青春
普通の大学生・佐藤健太は目覚めると、自宅が豪華な洋館に変わり10人の美人メイドたちに「お目覚めですか、ご主人様?」と一斉に迎えられる。いつの間にか彼らの“専属主人”になっていた健太は戸惑う間もなく、朝から晩までメイドたちの超至れり尽くせりな奉仕を受け始める。