怪我でサッカーを辞めた天才は、高校で熱狂的なファンから勧誘責めに遭う

もぐのすけ

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生徒会勧誘編

試合開始②

「あれ、向こうの会長がいないな」

 先程まで仁王立ちしていた堂大寺会長だったが、俺達が柔軟している間に姿が見えなくなっていた。
 トイレにでも行ったのか?

 俺は柔軟が終わった後に少し走り込みをし、ボールに触れた。
 フットサルのボールはサッカーのボールよりも一回り小さく、いわゆる小学生以下が使用するボールと同じ大きさだ。
 それゆえに多少の違いがあるが、むしろ小さくなったことでボールコントロールはしやすい。
 そしてフットサルで最も多用される部分が足裏。
 ボール止める、前に運ぶといった動作の時には足裏を使った方がむしろスムーズにいくことが多い、とネットには書いてあった。

 軽くリフティングから始めるが、やはり小さいだけあってボールタッチは通常よりも軽くで大丈夫みたいだ。
 右足でリフティングしつつ、左足でボールを跨いで持ち替える。
 そのまま両足でタイミング良く挟み、ヒールリフトで背面からボールを上げて背中に乗せ、滑り台のように首、頭とボールを滑らせ、落ちてきたボールを左のダイレクトボレーでゴールへ叩き込んだ。

 力を入れなくてもそれなりにボールは飛ぶため、膝への負担が少ないのは助かるな。

「きゃーきゃー! 高坂っちカッコいいー!」

 うるさ過ぎて気になる……。
 流石にジュニアユース時代にもあんなうるさい人はいなかったぞ。
 しかも何枚写真撮るつもりなんだよあいつは。

「膝の方は大丈夫?」

 梨音が心配そうに聞いてきた。

「なんとかな。ただ、走るのは少しキツいかもしれない。ボールを触る分には問題ないんだが……」

 どうやらダッシュをすると膝が悲鳴をあげるようだ。
 パス、ドリブルはできるが、走り出しや守備は厳しそうだ。
 パスコース切るぐらいの動きしか出来無さそうだな……。

「高坂っちダブルクリーパーやってダブルクリーパー!!」

「なんだよその技知らねーよ!」

 別にリフティングに詳しいわけじゃねーから俺は!

「やあ待たせたね二人とも!」

 神奈月先輩だ。
 爽やかな神奈月先輩と従者みたいな大鳥先輩が来た。
 完全に荷物持ちだよ大鳥先輩。

「おや? 確かサッカー部マネージャーの桜川さんじゃないかな? もしかして高坂くんの応援かい?」

「は、初めまして! そうなんです! 高坂っちがフットサルをやるって聞いて…………ご迷惑だったらすいません!」

「迷惑だなんてとんでもない。ギャラリーは多い方が盛り上がるからね。去年のバスケの時なんか50人ぐらいはギャラリーがいたよ」

 いすぎだろそれは。

「会長、まだ向こうは誰も来てないみたいですね」

「ふむ、だらしないなぁミッキー達は」

「あ、でも相手の会長なら先程……」

「やっと来たか神奈月ぃ!!」

 見るとプレハブの方から堂大寺会長が運動着に着替えて出てきたところだった。
 中にある更衣室で着替えてたのか。

「やぁミッキー。ご機嫌麗しゅう」

「な~にがご機嫌麗しゅうだ! 今日はお前らが泣きべそ掻いて心に傷を負う日だぜ!」

「じゃあ大鳥君、私達も準備しよっか」

「無視すんじゃねぇー!! 何でお前が今年はフットサルにしたのか知らねーが、生憎だったな! こっちには中学時代にフットサルをやっていた経験者がいるんだ! 手加減なんか一切してやらねーから覚悟しろ!」

「本当かい? しかもそちらは全員男子だと言うじゃないか。それは困ったなぁ」

「はっはっはぁ! 今さらやめると言っても遅いからな!」

「そうだねぇ。精一杯頑張るよ」

 堂大寺会長は満足したのか、意気揚々と自分の荷物があるベンチへと帰っていった。

 なんというか、相手の生徒会長も色んな意味ですげー人だな。

「というわけだ高坂君。相手は全員男子、しかも経験者がいるときた。それでも勝つ自信はあるかい?」

 神奈月先輩がまるで俺を試すような質問をしてきた。
 生憎、ことサッカーに関して妥協したことは今まで一度もない。
 どんな相手でもチームを勝利に導くのが東京Vヴァリアブルのエースとしての仕事だ。

「勝つ自信しかありません」

「いいね! それでこそ我が生徒会次期庶務だ! 向こうがなんであろうと、こっちにも高坂君とキイがいる。それに才色兼備さいしょくけんび容姿端麗ようしたんれい八面六臂はちめんろっぴの私がいるんだ。負けはないよ」

 自分の時が一番褒めとるがな。
 とはいえ神奈月先輩の言うことに間違いはない。
 どんなハンデを背負っていても知恵と工夫と技術を活かせば、大抵のことは何とかなる。
 楽しみになってきたぜ。

 それから数十分後には両チーム共に全員集まり、それぞれに分かれてチーム練習を始めた。

 試合開始は13時15分から。
 15分ごとの前後半に分かれ、間に10分間の休憩を挟む方式となった。
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