怪我でサッカーを辞めた天才は、高校で熱狂的なファンから勧誘責めに遭う

もぐのすけ

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生徒会勧誘編

試合終了②

「さて、勝負は私達の勝ち。お待ちかねの罰ゲームタイムだよミッキー」

 神奈月先輩が、打ちひしがれている堂大寺会長に容赦なく詰め寄った。
 人によっては心に傷が残るタイプの罰ゲーム、一体なんだろうか。

「…………負けたもんは仕方ねぇ」

「むふふ」

「会長、悪い顔してますね」

 大鳥先輩の言う通り。
 あれじゃあ悪女だ。

「内容は事前に告知していた通りで構わないよね?」

「……拒否権はねーんだろ」

「もちろん!」

「………………」

 堂大寺会長の顔が徐々に苦々にがにがしくなっていく。
 獰猛犬のようなオーラが無くなっていくな。

「罰ゲームって何だろうね」

「言っても交流会だし、お昼ご飯奢るとかそういうのじゃないかな」

「…………それだけであんなに顔色悪くならないと思う」

 前橋の予想が当たりだろうな。
 昼飯奢るくらいで、あの噛み付き会長があそこまでしおれたりしないだろ。
 もっとトラウマを植え付けるようなタイプの…………。

「会長…………一体どんな内容にしたんですか」

「許せお前ら……。絶対に勝てると思っていたんだ」

「マジで何にしたんですか」

「漆間高校生徒会への罰ゲームは!」

 神奈月先輩が天を指差し、そして突きつけるようにして言い放った。

「次回の意見交換会の時に女装してくることです!」

「…………わあああああああああ!!!」

「嘘だあああああああああ!!」

「会長何を約束してくれてんですかあああああ!!」

 阿鼻叫喚。
 まるで死刑を宣告されたかのような悲鳴。
 女装とか…………人によってというかほとんどが心に傷を負うだろそれ。

「仕方ねぇだろうが!! 逆に俺達が勝てば神奈月達の水着姿が見れたんだぞ!!」

「マジすか!!」

「その罰ゲームもどうなんだ!?」

 思わず俺がツッコミを入れてしまった。
 男としての欲望全開かよ。

「知らなかった? ミッキーって意外とむっつりなんだよ」

「むっつりじゃねぇ!!」

 そんな風には全く見えなかったんだが……。
 女だろうが関係ねぇ全員ぶっ殺す! みたいな性格してそうなのに。

「……未来さん、そんなこと聞いてなかったんですけど」

 不満そうに前橋が言った。

「言ったらキイは参加しないでしょ?」

「当たり前です!!」

 おお、前橋が声を張ってるよ。
 初めて見たな。

「確か去年も似たような内容だったよね~」

「そうだな。堂大寺会長も懲りないみたいだな」

「まぁ、容姿端麗な私に女の武器を最大限に持つニーナ、小動物系美少女のキイにアイドル級のリオ。そんな豪華なメンバーを脱がしたいという気持ちも分からなくはないね」

「分かってどうする」

 体をくねらせながら話す神奈月先輩に、大鳥先輩の鋭いツッコミが入った。
 この人は本当に良い意味でも悪い意味でもぶっ飛んでるな。
 少なくとも、ここにいる誰よりも人生を楽しんでいると思う。

「ねぇねぇ修斗」

 梨音に服をちょいちょいと引っ張られた。
 どうした、危うく水着姿で接待させられそうになったことに対する愚痴か?

「なに?」

「神奈月先輩に初めて下の名前で呼ばれた」

「えっ、しょーもな」

 何を言うかと思ったらホントしょーもな。
 その報告今いる?

「えーでも今まで若元さん、だったんだよ? なんか仲間に入れてもらえたって感じだよね」

「その理論で行くと俺はまだ仲間にはいれてねーじゃんか」

「そうだね可哀想」

「おーなんだなんだそのマウントは。悔しいからちょっと待ってろ」

 俺は神奈月先輩のところへ行った。

「神奈月先輩」

「どうしたんだい?」

「俺、生徒会に入ることにしました」

「おお! ホントに!?」

「なので俺も名前呼びでお願いします」

「もちろん! よろしく頼むよシュート!」

 俺は梨音の方へ向いてどうだと言わんばかりにドヤ顔をしてみせた。
 べっと舌を出して梨音も対抗してくる。

「会長、僕だけいつまでたっても名前で呼ばれないんですけど……」

 確かに大鳥先輩はずっと『大鳥君』って呼ばれてるな。
 この機会に大鳥先輩も名前呼びに……。

「大鳥君…………下の名前なんだっけ?」

「嘘ぉ!?」

 ああ……ちょっと涙目に……!

「ウソウソ。でも大鳥君はやっぱり大鳥君だから、今さら周平って呼ぶのも恥ずかしいかな」

「……複雑な気持ちではありますけど、会長に恥ずかしいとかいう概念あったんですね」

「あるに決まってるじゃないか、私も乙女だしぃ」

「おいイチャついてんじゃねえ」

 ショックから立ち直ったのか、元に戻った堂大寺会長が口を挟んだ。

「罰ゲームの件は分かった、今日のところはお前らに華を持たせてやるよ」

「去年からだけどね」

「ぐっ…………とにかくだ、今日はこれで交流会は終わりにする。神奈月、一応聞いておくが生徒会長になる自信はあるんだよな? もしお前以外の奴が生徒会長になったら今日の交流会は無意味になるんだぞ?」

「愚問だね。私にとって生徒会選挙は散歩をするのと同じ。私以外に瑞都みずと高校の生徒会長は務まらないよ」

「はっ、相変わらず鼻につくセリフだぜ」

 堂大寺会長が呆れたように、しかし否定することなく笑った。

 ここにいる誰しもが理解していた。
 神奈月未来という人物が持つ吸引力を超える人は、そうそういないであろうということに。
 そして、他に立候補者がいたとしても神奈月未来という人物が落選する可能性は無いのだと。

「また意見交換会で会おうね、ミッキー」

「ああ」

 こうして瑞都高校と漆間大学附属高校との交流会は終了したのだった。
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