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遅延新入生勧誘編
説明責任③
弥守はこの高校に入学するまでの経緯を簡単に話してくれた。
春休みにドイツで俺と出会った後、父親の仕事の関係でドイツ滞在が長くなってしまったため日本の帰国が遅れてしまったこと。
日本に戻ってきてから東京Vに寄ったが、俺は既に怪我をしていて滅多なことではクラブには顔を出さなくなっていたので、そのまま会うことができずに俺がクラブを退団していってしまったこと。
「修斗に会いに行こうとしたのに怪我をしたって聞いたから、じゃあどうやって探そうかって話になったのよ。クラブに聞いてもプライバシーに関わることは教えてくれなかったし」
そりゃそうだろ。
クラブからしたら誰か知らない人に選手の個人情報を漏らすわけがない。
その辺りはさすがだな。
「だからお父さんにお願いして、お父さんのチームと東京Vが業務提携を結ぶようにしてもらったの。そうすれば私は関係者みたいなものでしょ?」
「…………は?」
得意気に話す弥守に思わず背筋がゾッとした。
ただ俺を探すためだけにクラブを動かしたってのか?
「東京Vはドイツ1部リーグチームのユースやリザーブチームへの編入も可能だし、お父さんのチームも日本のトップクラスの選手をスカウトすることができる。両方にとって旨みがある話よね。ま、私にとってはそんなのどうでもいい口実に過ぎないけど」
たった5日間。
ドイツで一緒にいただけの人間を探すために?
まだサッカー選手として生きている俺だったなら分かる、俺自身としてもヨーロッパへの移籍は視野に入れていた。
でも怪我をしてクラブからいなくなっていることを知っていながらもなお、俺を探す理由ってなんだってんだ……。
「そうしてクラブの方に修斗の事を聞いたら、さすがに住所なんかは教えてくれなかったけど、自宅から近い瑞都高校を進学するって聞いたから」
クラブからユースに上がることはできない旨の打診を受けた時、もしもサッカーを続ける気があるのならばと、いくつか有名な強豪校を紹介された。
俺を推薦してくれるかどうかはその高校次第になるというが、打診はしてくれると。
その時既に俺の心は折れており、サッカーを続ける気がなかったことから自宅から一番近い瑞都高校を受けると回答していた。
クラブは弥守にそれを話したのか…………!
「春にまたドイツに戻る用事があったから入学が遅れちゃったけど…………こうして修斗にまた会えて良かった……!」
再び弥守が俺に抱きついてくる。
俺にとってこいつは…………合宿先で会ったただの友人だ……!
もっと言えば弥守のことはそんなに知らない。
たった5日の間でも実際に一緒にいたのは自由時間を与えられた少しの間、弥守が会いに来ていた時だけだ。
何でこいつがこんなにも好意を寄せてくるのかは知らないが、ストーカー紛いに俺の事を調べ、同じ高校にまで入学してくる……。
正直言って………………怖ぇ!
「だから離れろって!」
「だって嫌じゃないって言ったじゃ~ん」
今の話を聞いたら気味の悪さが勝って嫌なんだよ!
見た目が美人だろうが関係ない、ストーカーしてくるような奴はお断りだ!
「いいから早く───」
「あっ……」
「っ!? り、梨音……」
ちょうどトイレがある方から梨音と八幡が目の前を通った。
状況的には弥守が抱き着いて、俺がそれを許容しているような状態。
言い訳不可避。
「うわっちゃー…………高坂君、これはやってるね」
「ち、ちげーから八幡! 梨音も! お前らが思ってるようなことじゃない!」
「確かに自己紹介の時にも何かあるなーとは思ってたけど…………高坂君も隅には置けないね」
「ちげーって!」
「行こ、冬華。2人の逢引きの邪魔しちゃ悪いし」
「お、おい梨音!」
梨音は俺に一瞥をくれると、そのまま教室へと戻っていってしまった。
弁論の余地もくれないのか……!
「あ~…………梨音のフォローはしておくから」
いやお前も今煽ってた原因の一人じゃねぇか!
梨音のあとを追う八幡に対して噛みつきの一言を心の中で思った。
「く、くそ……!」
「修斗、今のは誰?」
「ああ? …………とりあえず離れろよ」
「…………」
俺の不機嫌さを察したのか、弥守はそのまま俺から離れた。
…………胃が痛む。
弥守の振りかざしてくる感情が悪意なら俺も強く当たれる。
だけどこれはたぶん好意から来る行動だ。
何で弥守がそこまで俺に執着するのかまでは分からないが、やり方を間違えているだけなんだ、きっと。
立ち回り方を考えなければ。
弥守に対して冷たく当たると、何も知らないクラスメイトからの非難が飛んでくる可能性がある。
とはいえ弥守の好意を素直に受け入れられるほど俺は人間できちゃいない。
何より今は恐怖心の方が勝っている。
梨音に対しての勘違いも解く必要があるな。
春休みにドイツで俺と出会った後、父親の仕事の関係でドイツ滞在が長くなってしまったため日本の帰国が遅れてしまったこと。
日本に戻ってきてから東京Vに寄ったが、俺は既に怪我をしていて滅多なことではクラブには顔を出さなくなっていたので、そのまま会うことができずに俺がクラブを退団していってしまったこと。
「修斗に会いに行こうとしたのに怪我をしたって聞いたから、じゃあどうやって探そうかって話になったのよ。クラブに聞いてもプライバシーに関わることは教えてくれなかったし」
そりゃそうだろ。
クラブからしたら誰か知らない人に選手の個人情報を漏らすわけがない。
その辺りはさすがだな。
「だからお父さんにお願いして、お父さんのチームと東京Vが業務提携を結ぶようにしてもらったの。そうすれば私は関係者みたいなものでしょ?」
「…………は?」
得意気に話す弥守に思わず背筋がゾッとした。
ただ俺を探すためだけにクラブを動かしたってのか?
「東京Vはドイツ1部リーグチームのユースやリザーブチームへの編入も可能だし、お父さんのチームも日本のトップクラスの選手をスカウトすることができる。両方にとって旨みがある話よね。ま、私にとってはそんなのどうでもいい口実に過ぎないけど」
たった5日間。
ドイツで一緒にいただけの人間を探すために?
まだサッカー選手として生きている俺だったなら分かる、俺自身としてもヨーロッパへの移籍は視野に入れていた。
でも怪我をしてクラブからいなくなっていることを知っていながらもなお、俺を探す理由ってなんだってんだ……。
「そうしてクラブの方に修斗の事を聞いたら、さすがに住所なんかは教えてくれなかったけど、自宅から近い瑞都高校を進学するって聞いたから」
クラブからユースに上がることはできない旨の打診を受けた時、もしもサッカーを続ける気があるのならばと、いくつか有名な強豪校を紹介された。
俺を推薦してくれるかどうかはその高校次第になるというが、打診はしてくれると。
その時既に俺の心は折れており、サッカーを続ける気がなかったことから自宅から一番近い瑞都高校を受けると回答していた。
クラブは弥守にそれを話したのか…………!
「春にまたドイツに戻る用事があったから入学が遅れちゃったけど…………こうして修斗にまた会えて良かった……!」
再び弥守が俺に抱きついてくる。
俺にとってこいつは…………合宿先で会ったただの友人だ……!
もっと言えば弥守のことはそんなに知らない。
たった5日の間でも実際に一緒にいたのは自由時間を与えられた少しの間、弥守が会いに来ていた時だけだ。
何でこいつがこんなにも好意を寄せてくるのかは知らないが、ストーカー紛いに俺の事を調べ、同じ高校にまで入学してくる……。
正直言って………………怖ぇ!
「だから離れろって!」
「だって嫌じゃないって言ったじゃ~ん」
今の話を聞いたら気味の悪さが勝って嫌なんだよ!
見た目が美人だろうが関係ない、ストーカーしてくるような奴はお断りだ!
「いいから早く───」
「あっ……」
「っ!? り、梨音……」
ちょうどトイレがある方から梨音と八幡が目の前を通った。
状況的には弥守が抱き着いて、俺がそれを許容しているような状態。
言い訳不可避。
「うわっちゃー…………高坂君、これはやってるね」
「ち、ちげーから八幡! 梨音も! お前らが思ってるようなことじゃない!」
「確かに自己紹介の時にも何かあるなーとは思ってたけど…………高坂君も隅には置けないね」
「ちげーって!」
「行こ、冬華。2人の逢引きの邪魔しちゃ悪いし」
「お、おい梨音!」
梨音は俺に一瞥をくれると、そのまま教室へと戻っていってしまった。
弁論の余地もくれないのか……!
「あ~…………梨音のフォローはしておくから」
いやお前も今煽ってた原因の一人じゃねぇか!
梨音のあとを追う八幡に対して噛みつきの一言を心の中で思った。
「く、くそ……!」
「修斗、今のは誰?」
「ああ? …………とりあえず離れろよ」
「…………」
俺の不機嫌さを察したのか、弥守はそのまま俺から離れた。
…………胃が痛む。
弥守の振りかざしてくる感情が悪意なら俺も強く当たれる。
だけどこれはたぶん好意から来る行動だ。
何で弥守がそこまで俺に執着するのかまでは分からないが、やり方を間違えているだけなんだ、きっと。
立ち回り方を考えなければ。
弥守に対して冷たく当たると、何も知らないクラスメイトからの非難が飛んでくる可能性がある。
とはいえ弥守の好意を素直に受け入れられるほど俺は人間できちゃいない。
何より今は恐怖心の方が勝っている。
梨音に対しての勘違いも解く必要があるな。
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