怪我でサッカーを辞めた天才は、高校で熱狂的なファンから勧誘責めに遭う

もぐのすけ

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遅延新入生勧誘編

懸念材料②

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 昼休み、俺はいつものように新之助とニノの昼飯を食べていたが、場所は教室ではなく食堂にいた。
 朝、時間が無かったので俺は昼飯を買いそびれてしまったのだ。
 同様に新之助も昼飯を買いそびれたということで、それならばと食堂で食べることになった。
 俺はカレーを頼み、新之助は蕎麦を頼んで先に席を取っていたニノの所へ向かった。

「意外と食堂も良いかもな」

「ちょっと人が多い気がするけどね」

「つーかニノは毎回弁当持ってきてるよな。親が作ってくれてんのか?」

 新之助の質問にニノは首を横に振った。

「えーっと、一応お手伝いさん? が作ってくれてる」

「お手伝いさん? おいおいニノよ、もしかしてなんだが…………お前んち金持ち?」

「いやぁどうなんだろ。僕は不自由なく暮らさせてもらってるけど」

「家政婦のいる家が金持ちじゃないわけないと思うけどな。ご両親は何してる人なんだ?」

 俺が聞くとニノは少し困ったような表情を見せた。
 あまり聞かれたくないことだったか?

「うーん……僕はあんまり詳しくないからなぁ。基本的に家にいないことが多いし。だからその分お手伝いさんに色々面倒見てもらってるというか」

しもの世話とかも?」

「新之助、50円あげるから死んでくれ」

「俺の存在価値は50円かよ」

 クズ発言するような奴の価値なんざ50円でも多いくらいだ。
 なんなら処分代として金銭を要求する。

「でも僕のことを気にかけてくれてて、悪い人達じゃないんだ」

「凄い他人事みたいな言い方だな」

「羨ましいぜ。俺のとこのババアなんか毎朝叩き起こしてきて、はよ飯食べろだの遅刻するだのピーチクパーチクよ」

 おっと、似たような話が俺にもあるな。
 唯一違う点は俺の場合はそれが幼馴染ってだけか。
 そもそもサッカーをやっていた頃は早寝早起きが当たり前だったのに、運動出来なくなってからは体力が余りすぎて夜寝付けないんだよな。
 室内でできる筋トレぐらいはやるけど、やっぱランニングとかの有酸素運動をしないと満足しないというか、身体に負荷があまり掛からない。
 何か効果的なトレーニングはないものか。

「起こしてくれる人がいるだけいいだろ」

「毎朝ケンケン言われてみ? 嫌になってくるぜ。その点俺の妹は優秀でさぁ、毎朝早く起きてランニングしに行ってるんだぜ? バレー部ってそんなに体力いるのかねぇ」

「中2だったか。朝のランニングは結構体にいいんだぞ。その後の気分も晴れるし、体力作りには必須だからな」

「俺が起きた時にはもう制服に着替えててよ「兄さん起きるの遅いですね」って言ってくんのよ」

「それが?」

「いや俺のことめっちゃ見てくれてんじゃん! って、反抗期だったんじゃないのかよ! って」

「バカにされてんだよそれ」

「やっぱどう考えても俺の妹可愛いすぎるんだよな。何で彼氏いねーんだ。いたら別れさせてやるのに」

「こいつヤバ過ぎんだろ」

「シスコン×サイコパス=サガー君の公式が完成したね」

 新之助の非常識っぷりを再認識しつつ、久しぶりの食堂の昼食を満喫した。


 放課後、梨音と生徒会室に向かった。
 東京Vと瑞都高校の試合は気になるが、やはり今は自分がすべきことを優先する。
 任された仕事はこなさなければ、それが生徒会役員庶務としての責務だ。

 生徒会室に入ると既に神奈月先輩、大鳥先輩、新波先輩、前橋が集まっていた。
 机の上には様々な資料が置かれており、今後の生徒会活動が活発になるであろうことを表していた。

「お、来たねシュートとリオ」

「これが昨日話していた資料ですか?」

「そう。これは去年と一昨年の生徒会新聞をパソコンのデータから印字したもので、それよりもっと前の生徒会新聞は図書室に保管されているから確認してみてね。生徒会新聞は主に1年生に向けた内容で、生徒会がどんな仕事をしていてどんな要望を受け付けているかといったような、いわゆる自己紹介みたいなものだ。そんなに硬いものにしなくていいから、みんなの目に留まるような感じで頼むよ」

 俺は神奈月先輩が持ってきたくれた資料を一枚見た。
 確かに多彩な色使いで見やすく纏められている。
 去年の生徒会新聞には『お困りごとは我らが生徒会長神奈月未来まで!!どんな無理難題でも押し通してみせます!!』とまで書かれている。
 実現できるかどうかはともかくとして、確かに生徒の目には留まるな。

「それは2人にまかせるとして……キイは部活動の予算運営についての項目と、今年の部費に関する予算案についての打ち出しをお願い」

「……分かった」

「大鳥君は委員会会議で使う資料をまとめて、それを事前にニーナに確認してもらって」

「はい。新波、去年使った資料は残ってるよな?」

「データに残ってるよ~」

 神奈月先輩がテキパキと仕事を振り分けていく。
 グループのリーダーに必要とされるのは適切なオーダー能力と言われるが、その点において神奈月先輩はやはり頼りになるな。
 サッカーにおいても声出しの指示は欠かせないため、その重要性については俺も理解している。

「じゃあ、新聞作っていこっか」

「そうだな。紙の大きさはA3、どんな内容にするのかとどんなイラストを加えるか、まずはレイアウトを考えていく必要があるな」

 去年と一昨年の新聞を見ると、メインに据えているのはやはり神奈月先輩のことだ。
 去年で言えば簡単な役員紹介が書かれた後、一昨年の生徒会活動として神奈月先輩が成し遂げた生徒からの要望を書き連ねている。
 逆に一昨年は一年生生徒会長としての珍しさをピックアップしているといった形だ。

 とすれば、今年は神奈月先輩が生徒会長になって3年連続となることを見出しとすればイケるか?
 2年、3年生は神奈月先輩が3年連続で生徒会長をやっていることを知っているが、1年の間では話題にすらなっていない。
 生徒会長選挙が行われなかったことも話題に上がらない理由の一つだな。

「見出しは3年連続生徒会長というのでどうだ?」

「あ、いいねそれ。右上に生徒会新聞を縦書きで書いて、一番上に横文字で『3年連続生徒会長が築く高校生活!!』みたいな」

「それっぽいな。その辺りのレイアウトは任せるから、俺は内容を考えるためにもちょっと図書室行ってもう少し過去の資料を見てくるよ」

「うん。お願い」

 俺は生徒会室を出て、1階にある図書室へと向かった。
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