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遅延新入生勧誘編
偶発的必然②
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雨が降る月曜日。
学校が始まる1週間の始まり、学校に着いた俺はいつ弥守に話を聞きに行こうか迷っていた。
前科があるとはいえ、唐突に「お前ストーカーしてる?」みたいなことを聞くのも失礼だ。
何か話のきっかけがあればいいんだが…………そう思ったまま4限の体育の授業になっていた。
「今日の体育は何するって?」
「体育館で卓球だってよ。雨で外が使えないからって」
「やったー。あんまり動かなくていいやつだよねー」
外が雨ということもあり、室内で卓球をすることになったようだ。
卓球台もそんなにあるわけではないので、多くが休憩になる暇な時間だ。
ちなみに女子も半面コートを使ってバスケをしている。
本来は2クラス合同のため人数が多くなるのだが、俺達は余った一クラス的立場なので合同で体育をしたりはしない。
「4人1組になって卓球台を使えー! そうすれば全員参加できるだろー!」
体育教師の門倉先生、通称カド先が声を張り上げて呼びかけた。
入学初日に新之助の頭を水道に突っ込んでいたところを見ていた先生だ。
俺が生徒会に入ることになったのも、カド先が職員室で話していたことがきっかけになったと言っても過言ではあるまい。
「あと1人どうするよ」
「水本でいいんじゃね」
「よしきた。水本ここ空いてるから入れよ」
「おー」
縦にひょろ長い水本を呼んで俺達は4人組を作った。
軽音楽部に入っている水本は運動があまり得意ではないと話していたので、体育の時間はいつも端っこにいる。
「ニノと水本で先にやってていいぜ」
「オッケー」
そう言って新之助は俺の方を見て意味深にニヤリと笑い、バスケをしている女子の方を見た。
「見ろよ修斗、あれが八幡の本気だ」
新之助の視線の先にはボールをドリブルしながら走っている八幡がいた。
ボールがバウンドするたびに胸のボールもバウンドしている。
彼女にはボールが三つあるようだ。
「ほう……なかなか素晴らしいものをお持ちのようで」
「すげーすげーとは思っていたが、体操着になるともはや破壊神だ」
さすがクラス内トップのバスト(新之助調べ)を誇る八幡だ、他の女子を全て圧倒している。
「で、新之助の話はそれだけか?」
「馬鹿言え、これを見ろ」
新之助がズボンのポケットから取り出したのは携帯だった。
まさか体育の時間に携帯を持ってくる奴がいるとは。
「俺の瑞都高校女子コレクション、通称女子コレに収めるためにわざわざ忍ばせていたんだ。暑くなってきてジャージを着なくなった今こそ、八幡や鷺宮を撮る絶好のチャンス……!」
「しかしここからだと距離が結構あるだろ」
体育館の真ん中には男子と女子を隔てるようにして、端から端まで天井からネットが下げられていた。
これがあるせいで女子のコートへ自然に入ることはできない。
「そこは俺に考えがある……! このピンポン球が偶然女子のコートに入ってしまったということにして、それを取りにいく体を装って撮りにいってくるんだよ!」
「ふぅん……?」
ピンポン球をどうやって女子コートに入れるつもりなんだろうな。
ネットの網目は小さいからピンポン球は通り抜けないと思うし……。
ちょっといまいちピンと来ないが、新之助の自信満々な表情を見るに完璧な作戦なんだろう。
「あーしまったー、ピンポン球が跳ねて変な方向にー」
新之助がわざとピンポン球を女子のコートに向かって跳ねさせ、球は軽い音を立てながらバウンドしてネットにポスッと当たって落ちた。
「で……ここからどうすんだ?」
「ば…………馬鹿な! 球が網目を通り抜けないだと……!?」
「馬鹿はお前だよ」
見たらすぐに分かることを何故……。
時々、俺は小学生相手に話をしているのかと勘違いしてしまう時がある。
そして「ああ、同い年か」と再認識しては悲しくなるんだ。
「クソッ! かくなる上はネットを持ち上げてからピンポン球を……!」
「何やってるんだ佐川、それに高坂」
新之助がネットをガッツリ下から持ち上げたところで、さすがに気付いたカド先が声を掛けてきた。
そりゃそんなパワープレーしてたらバレるよ。
「お前それ、携帯じゃないのか?」
「ち、違うんだカド先! 俺はただ高校生活の思い出を残したくて写真を撮りたかっただけなんだ! 決して下心とかで女子の写真を撮りたかったわけじゃない!」
「俺はまだ何も言ってないんだが……。とにかく授業中の携帯の使用は禁止だ。終わるまで俺が預かっておく」
「い、嫌だ……!」
「佐川…………俺はお前が結構な問題児だということを知っている。そんな問題児が携帯を持って何故かネットを持ち上げていることを見逃すと思うか?」
「え、問題児だったの俺」
「自覚無かったのか」
どうやら教師間では新之助が問題児であるという話がまことしやかに流れているらしい。
新之助は渋々携帯をカド先に渡し、俺はなんとも言えない表情でその光景を眺めていた。
「二宮達のように真面目に卓球やれよ」
そう言ってカド先は他の人達の見回りに向かって行ってしまった。
「ただクラスメイトの写真を撮りたかっただけなのに、一体俺の何が悪かったって言うんだ……!」
「頭だろ」
女子のコートではちょうど弥守が3ポイントシュートを決めていた。
学校が始まる1週間の始まり、学校に着いた俺はいつ弥守に話を聞きに行こうか迷っていた。
前科があるとはいえ、唐突に「お前ストーカーしてる?」みたいなことを聞くのも失礼だ。
何か話のきっかけがあればいいんだが…………そう思ったまま4限の体育の授業になっていた。
「今日の体育は何するって?」
「体育館で卓球だってよ。雨で外が使えないからって」
「やったー。あんまり動かなくていいやつだよねー」
外が雨ということもあり、室内で卓球をすることになったようだ。
卓球台もそんなにあるわけではないので、多くが休憩になる暇な時間だ。
ちなみに女子も半面コートを使ってバスケをしている。
本来は2クラス合同のため人数が多くなるのだが、俺達は余った一クラス的立場なので合同で体育をしたりはしない。
「4人1組になって卓球台を使えー! そうすれば全員参加できるだろー!」
体育教師の門倉先生、通称カド先が声を張り上げて呼びかけた。
入学初日に新之助の頭を水道に突っ込んでいたところを見ていた先生だ。
俺が生徒会に入ることになったのも、カド先が職員室で話していたことがきっかけになったと言っても過言ではあるまい。
「あと1人どうするよ」
「水本でいいんじゃね」
「よしきた。水本ここ空いてるから入れよ」
「おー」
縦にひょろ長い水本を呼んで俺達は4人組を作った。
軽音楽部に入っている水本は運動があまり得意ではないと話していたので、体育の時間はいつも端っこにいる。
「ニノと水本で先にやってていいぜ」
「オッケー」
そう言って新之助は俺の方を見て意味深にニヤリと笑い、バスケをしている女子の方を見た。
「見ろよ修斗、あれが八幡の本気だ」
新之助の視線の先にはボールをドリブルしながら走っている八幡がいた。
ボールがバウンドするたびに胸のボールもバウンドしている。
彼女にはボールが三つあるようだ。
「ほう……なかなか素晴らしいものをお持ちのようで」
「すげーすげーとは思っていたが、体操着になるともはや破壊神だ」
さすがクラス内トップのバスト(新之助調べ)を誇る八幡だ、他の女子を全て圧倒している。
「で、新之助の話はそれだけか?」
「馬鹿言え、これを見ろ」
新之助がズボンのポケットから取り出したのは携帯だった。
まさか体育の時間に携帯を持ってくる奴がいるとは。
「俺の瑞都高校女子コレクション、通称女子コレに収めるためにわざわざ忍ばせていたんだ。暑くなってきてジャージを着なくなった今こそ、八幡や鷺宮を撮る絶好のチャンス……!」
「しかしここからだと距離が結構あるだろ」
体育館の真ん中には男子と女子を隔てるようにして、端から端まで天井からネットが下げられていた。
これがあるせいで女子のコートへ自然に入ることはできない。
「そこは俺に考えがある……! このピンポン球が偶然女子のコートに入ってしまったということにして、それを取りにいく体を装って撮りにいってくるんだよ!」
「ふぅん……?」
ピンポン球をどうやって女子コートに入れるつもりなんだろうな。
ネットの網目は小さいからピンポン球は通り抜けないと思うし……。
ちょっといまいちピンと来ないが、新之助の自信満々な表情を見るに完璧な作戦なんだろう。
「あーしまったー、ピンポン球が跳ねて変な方向にー」
新之助がわざとピンポン球を女子のコートに向かって跳ねさせ、球は軽い音を立てながらバウンドしてネットにポスッと当たって落ちた。
「で……ここからどうすんだ?」
「ば…………馬鹿な! 球が網目を通り抜けないだと……!?」
「馬鹿はお前だよ」
見たらすぐに分かることを何故……。
時々、俺は小学生相手に話をしているのかと勘違いしてしまう時がある。
そして「ああ、同い年か」と再認識しては悲しくなるんだ。
「クソッ! かくなる上はネットを持ち上げてからピンポン球を……!」
「何やってるんだ佐川、それに高坂」
新之助がネットをガッツリ下から持ち上げたところで、さすがに気付いたカド先が声を掛けてきた。
そりゃそんなパワープレーしてたらバレるよ。
「お前それ、携帯じゃないのか?」
「ち、違うんだカド先! 俺はただ高校生活の思い出を残したくて写真を撮りたかっただけなんだ! 決して下心とかで女子の写真を撮りたかったわけじゃない!」
「俺はまだ何も言ってないんだが……。とにかく授業中の携帯の使用は禁止だ。終わるまで俺が預かっておく」
「い、嫌だ……!」
「佐川…………俺はお前が結構な問題児だということを知っている。そんな問題児が携帯を持って何故かネットを持ち上げていることを見逃すと思うか?」
「え、問題児だったの俺」
「自覚無かったのか」
どうやら教師間では新之助が問題児であるという話がまことしやかに流れているらしい。
新之助は渋々携帯をカド先に渡し、俺はなんとも言えない表情でその光景を眺めていた。
「二宮達のように真面目に卓球やれよ」
そう言ってカド先は他の人達の見回りに向かって行ってしまった。
「ただクラスメイトの写真を撮りたかっただけなのに、一体俺の何が悪かったって言うんだ……!」
「頭だろ」
女子のコートではちょうど弥守が3ポイントシュートを決めていた。
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