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遅延新入生勧誘編
決別①
弥守の捲し立てるように話す言葉を俺はまるで他人事のように聞いていた。
狩野隼人が鹿島オルディーズからこんな私立に移動したのも、ヴァリアブルの奴らが練習試合で瑞都高校に来たのも、全部弥守が仕組んだことだったっていうのか?
だが、信じられない話じゃない。
弥守は自分の父親が経営するクラブチームすら動かしてみせたほどだ。
今さらこの程度で驚いていたら身が持たない。
「私がこの半年間…………いえ、修斗とドイツで会った時からどれだけ修斗のことを考えていたか、これで分かってくれたかしら。それなのに修斗はこれでも首を縦に振らない」
「それは…………しょーがねーだろ。さっきも言ったように俺は前ほどサッカーに依存しちゃいない。万が一、高校生の間中サッカーのためにリハビリを繰り返したとしよう、その結果無駄に終わったらどうすんだよ。サッカー以外にも面白いことがあると分かったんだ。新しい事に夢中になることはダメなのか?」
「…………そうね。もし修斗がこのままサッカーを諦めるというのなら、私ももう修斗を追いかけるようなことはしないわ。サッカーをしない修斗に価値は無いもの」
「価値はない……か。ならあの時、優夜に対して言ったことは嘘だったってことかよ」
俺が優夜と口論になった時、俺の価値はサッカーだけじゃないと熱弁してくれたのは弥守だった。
あまりの情報量に逆に引いたぐらいだったが。
「必要としている人がいると言ったのは本当。でもサッカー以外に価値があると言ったのは嘘。あの時は機嫌を損ねて帰られたら困るからああ言っただけよ」
「そうか……」
心がちくりと痛んだ。
サッカー以外にも価値があると話してもらえて、少なからず嬉しかったわけだが、嘘だったのか……。
「はぁ…………まさか私の憧れた選手がここまで腑抜けだと思わなかったわ。当時話していた貴方はもっと自信に溢れていた気がしたけれど、今の貴方はまるで怯えた子犬」
「………………」
「きっと城ヶ崎や神上のプレーを見て心が折れてしまったのね。あーあ、私の半年間は何だったのかしら」
何でここまで煽られるようなことを言われなきゃいけないんだ?
半年間も何も、弥守が勝手にやっていたことだろうが。
そんな意味の分からない責任をこっちに押し付けてくるなよ。
「安心して。これからは修斗のことを二度と追わないし近づかない。たとえ修斗が万が一サッカーが出来るようなったとしてもね。私がすべきことは、残されたヴァリアブルの選手達をドイツのプロリーグに引っ張り、世界最高峰の選手にすること。修斗はその姿を画面越しに唇噛み締めながら見ているといいわ。負け組として一生ね」
ここまで馬鹿にされたのは生まれて初めてだ。
小さくなっていたプライドを大きく傷つけられ、忘れかけていた闘争心が顔を覗かせる。
「大した言いようだな。勝手に自分でやっておきながらそこまで逆恨みされちゃたまんねーよ。いいぜ、二度と俺に近づくな。だけどな、もしその万が一が起きて後で唇を噛み締めるのがお前になったとしても恨むんじゃねーぞ」
小学生の頃に似たような気持ちになったことがある。
あれは…………そうだ、俺が決定機でシュートを外して試合に負けた時だ。
心の底から悔しくて、情けない自分に腹が立って、満足いくまで何千本とシュート練習を繰り返した時に似ている。
ただ今回の怒りの矛先は自分にじゃない。
俺のことを散々にコケにしたこいつだ。
俺が優夜や涼介のプレーをみてビビってるだと? ふざけるな。
俺は常に自分が一番だと思っている。
「はいはい。これだけお膳立てをしてもやる気にならなかった貴方じゃ無理でしょうけどね」
「言ってろストーカー野郎」
「あ、私は明日にはもう転校するから。ヴァリアブルの提携校にね」
「そりゃ朗報だ。こう毎日付き纏われちゃ敵わないからな」
「だからもう近づかないってば……。ま、精々生徒会役員として高校生活を楽しんでれば。一般人としてね」
「ほざけ」
ふん、と弥守は見下したように俺を睨んだ後、踵を返すようにして帰っていった。
十数分前とはえらい態度の違いだ。
今までの態度が演技だったことを思い返すとイラッとする。
生徒会室に戻った後も、俺の胸中はイガイガしていた。
「お帰り修斗。ほら見てアレ、新波先輩ったら興奮し過ぎて鼻血出しちゃったんだよ。可笑しいよね」
「ああ」
大鳥先輩にティッシュで鼻を押さえてもらっている新波先輩を指差しながら、梨音が楽しそうに話しかけてきたが俺はつい素っ気ない返事をしてしまった。
「…………何かあった?」
「いや、何もないよ」
「嘘ばっか。いつもより顔が険しくなってる」
流石に長い付き合いなだけあって梨音は鋭い。
だがこれは俺と弥守の問題だ。
余計な心配を掛ける必要はないだろう。
「本当に何もないぞ」
「ふーん…………まぁいいけど。もし本当に困った事があるのなら言ってね、力になるから」
「ああ、助かるよ」
サッカーを続けるのであれば、いずれは梨音にも話す事になる。
その時は遠慮なく手伝ってもらおう。
狩野隼人が鹿島オルディーズからこんな私立に移動したのも、ヴァリアブルの奴らが練習試合で瑞都高校に来たのも、全部弥守が仕組んだことだったっていうのか?
だが、信じられない話じゃない。
弥守は自分の父親が経営するクラブチームすら動かしてみせたほどだ。
今さらこの程度で驚いていたら身が持たない。
「私がこの半年間…………いえ、修斗とドイツで会った時からどれだけ修斗のことを考えていたか、これで分かってくれたかしら。それなのに修斗はこれでも首を縦に振らない」
「それは…………しょーがねーだろ。さっきも言ったように俺は前ほどサッカーに依存しちゃいない。万が一、高校生の間中サッカーのためにリハビリを繰り返したとしよう、その結果無駄に終わったらどうすんだよ。サッカー以外にも面白いことがあると分かったんだ。新しい事に夢中になることはダメなのか?」
「…………そうね。もし修斗がこのままサッカーを諦めるというのなら、私ももう修斗を追いかけるようなことはしないわ。サッカーをしない修斗に価値は無いもの」
「価値はない……か。ならあの時、優夜に対して言ったことは嘘だったってことかよ」
俺が優夜と口論になった時、俺の価値はサッカーだけじゃないと熱弁してくれたのは弥守だった。
あまりの情報量に逆に引いたぐらいだったが。
「必要としている人がいると言ったのは本当。でもサッカー以外に価値があると言ったのは嘘。あの時は機嫌を損ねて帰られたら困るからああ言っただけよ」
「そうか……」
心がちくりと痛んだ。
サッカー以外にも価値があると話してもらえて、少なからず嬉しかったわけだが、嘘だったのか……。
「はぁ…………まさか私の憧れた選手がここまで腑抜けだと思わなかったわ。当時話していた貴方はもっと自信に溢れていた気がしたけれど、今の貴方はまるで怯えた子犬」
「………………」
「きっと城ヶ崎や神上のプレーを見て心が折れてしまったのね。あーあ、私の半年間は何だったのかしら」
何でここまで煽られるようなことを言われなきゃいけないんだ?
半年間も何も、弥守が勝手にやっていたことだろうが。
そんな意味の分からない責任をこっちに押し付けてくるなよ。
「安心して。これからは修斗のことを二度と追わないし近づかない。たとえ修斗が万が一サッカーが出来るようなったとしてもね。私がすべきことは、残されたヴァリアブルの選手達をドイツのプロリーグに引っ張り、世界最高峰の選手にすること。修斗はその姿を画面越しに唇噛み締めながら見ているといいわ。負け組として一生ね」
ここまで馬鹿にされたのは生まれて初めてだ。
小さくなっていたプライドを大きく傷つけられ、忘れかけていた闘争心が顔を覗かせる。
「大した言いようだな。勝手に自分でやっておきながらそこまで逆恨みされちゃたまんねーよ。いいぜ、二度と俺に近づくな。だけどな、もしその万が一が起きて後で唇を噛み締めるのがお前になったとしても恨むんじゃねーぞ」
小学生の頃に似たような気持ちになったことがある。
あれは…………そうだ、俺が決定機でシュートを外して試合に負けた時だ。
心の底から悔しくて、情けない自分に腹が立って、満足いくまで何千本とシュート練習を繰り返した時に似ている。
ただ今回の怒りの矛先は自分にじゃない。
俺のことを散々にコケにしたこいつだ。
俺が優夜や涼介のプレーをみてビビってるだと? ふざけるな。
俺は常に自分が一番だと思っている。
「はいはい。これだけお膳立てをしてもやる気にならなかった貴方じゃ無理でしょうけどね」
「言ってろストーカー野郎」
「あ、私は明日にはもう転校するから。ヴァリアブルの提携校にね」
「そりゃ朗報だ。こう毎日付き纏われちゃ敵わないからな」
「だからもう近づかないってば……。ま、精々生徒会役員として高校生活を楽しんでれば。一般人としてね」
「ほざけ」
ふん、と弥守は見下したように俺を睨んだ後、踵を返すようにして帰っていった。
十数分前とはえらい態度の違いだ。
今までの態度が演技だったことを思い返すとイラッとする。
生徒会室に戻った後も、俺の胸中はイガイガしていた。
「お帰り修斗。ほら見てアレ、新波先輩ったら興奮し過ぎて鼻血出しちゃったんだよ。可笑しいよね」
「ああ」
大鳥先輩にティッシュで鼻を押さえてもらっている新波先輩を指差しながら、梨音が楽しそうに話しかけてきたが俺はつい素っ気ない返事をしてしまった。
「…………何かあった?」
「いや、何もないよ」
「嘘ばっか。いつもより顔が険しくなってる」
流石に長い付き合いなだけあって梨音は鋭い。
だがこれは俺と弥守の問題だ。
余計な心配を掛ける必要はないだろう。
「本当に何もないぞ」
「ふーん…………まぁいいけど。もし本当に困った事があるのなら言ってね、力になるから」
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その時は遠慮なく手伝ってもらおう。
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