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アルバイト勧誘編
無圧面接③
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「まぁとりあえず問題は無さそうだし、本来合否は後日連絡という形にするのかもしらんが、ウチはそこまでカッチリしていないからな、望月さんには今度から働いてもらうとしよう」
「マジですか合格っすか? やったー」
もっちーさんが両手を上げてガッツポーズを取った。
「ちなみにお金はどうして必要なんですか? やっぱり学費とか?」
梨音が聞いた。
「いや~恥ずかしい話、最近もっぱらFPSゲーにハマってまして。そのスキンを買うのに課金し過ぎたんすよ」
「FPS?」
「一人称視点の意味っすね。色んなゲームやってきましたけど、結局はPKする系のゲームが一番面白いんすよね」
「ペナルティキック?」
「プレイヤーキルの略っすね。でも回線が重いのかFPSの数値が低くて重いんで新しい回線と契約もしたいんすよ」
「一人称の数値?」
「そっちではなくフレームレートの意味っす」
な、何一つ分からん!
ゲームの話をしているということはかろうじて分かるんだが、もっちーさんの話している言語が果たして日本語なのかどうか疑わしいレベルで言っていることが理解できん。
ゲーム機自体遊んだことないから俺が知らないだけかとも思ったが、隣に梨音の頭にも巨大なクエスチョンマークが浮かんで見えるから普通の人には分からない専門用語なんだろう。
「そ、そうなんですね。なんか凄いなぁ」
梨音のやつ、理解することを諦めたな。
「紹介するのを忘れていたが、そっちが娘の梨音で隣が知り合いの息子の修斗だ」
「今度からよろしくお願いしますね、梨音さん修斗さん」
「「こちらこそよろしくお願いします」」
その日、初めて若元食堂にアルバイトが入ることとなった。
次の日、神奈月先輩から連絡が届いた。
生徒会活動に関係する会議があるため今日は出席して欲しいといった内容だった。
今日も病院でリハビリをする予定だったが、普段から融通を効かせてもらっているため俺は病院へと断りの連絡を入れ、放課後、梨音と一緒に生徒会室へと向かった。
扉の前で一度ノックを挟み、生徒会室へと入室した。
「来たか高坂、若元。会長はまだ来ていないんだ。しばらく待っていてくれ」
中にいたのは大鳥先輩と新波先輩がだけだった。
神奈月先輩と前橋の姿は見えない。
「前橋もまだですか?」
「いつものとこにいるよ」
そう言って前橋専用の個室を指差した。
相変わらず自室に引き篭もるのがお好きなようで。
「梨音、前橋引きずり出してきてよ」
「言い方。それに何で私なのよ」
「俺が女の子のいる個室に入ろうとすると、またいわれのない扱いを受ける可能性があるから」
「一理ある」
「自分で言っておいてなんだが否定して欲しかった」
前橋のことは梨音に任せ、俺は大鳥先輩へ近付いた。
難しい顔をして書類とにらめっこしている。
「会議って何についてですか?」
「その点はまだ聞いてないのか。4月に漆間大学附属高校と交流会があっただろう。それが今月の中旬にもあるんだよ」
「また前回のようなスポーツをやるんですか?」
「いや、今回はちゃんとした意見交換会だ。僕達の生徒会室で行う」
そういやそんなこともやるって言ってたな……。
あれ? でもあの時確か……。
「待たせたね諸君! 待ち人来たれりだよ!」
勢いよく扉が開いたかと思えば、勢いよく神奈月先輩が入ってきた。
相変わらずのテンションの高さだ。
未だに慣れない。
神奈月先輩に合わせるようにして梨音と一緒に前橋が重苦しく部屋から出てきた。
この陰陽の差よ。
「お疲れ様です神奈月先輩」
「お~シュートじゃないか! よしよし、連絡通りにちゃんと来たみたいだね」
「普段から特別扱いしてもらってますからね。要望があれば来るのは当然です」
「いい心掛けじゃないか。大鳥君聞いた? 後輩に慕われてるよ、私」
「自慢はいいですから本題に入って下さい」
「未来さ~ん、私も未来さんのこと、慕ってますよ~」
「ニーナは相変わらず可愛いなぁ。家に持って帰って飼いたいぐらいだよ」
「会長」
度々大鳥先輩に釘を刺され、ようやく神奈月先輩は自席に着いた。
相変わらず大鳥先輩の苦労者感が半端ない。
去年胃に穴が空いたというのもあながち嘘ではないのかもしれない。
「さて、今回シュートにも集まってもらったのは他でもない、前に漆間大の生徒会とフットサルした時のことは覚えているかい」
「はい。さっき大鳥先輩から聞きました。また交流会をやるんですよね?」
「ぬ…………ちょっと大鳥くん」
「はい?」
「私がシュートに直接伝えたかったのに、何で言ってしまうのかなぁ」
「ええ…………大した内容じゃないじゃないですか」
神奈月先輩のむっとした声に、大鳥先輩はなぜ責められているのか分からない顔をした。
「普段のありきたりな業務内容であれば伝えてもらって構わないけど、今回みたいな面白い企画は私から話したいんだよ。副会長ならそれぐらい察してくれないとなぁ」
「ええ…………なんか胃が痛くなってきた」
ま、まずい!
大鳥先輩のストレス耐久値が限界を!
「まだ意見交換会をやるとしか聞いてないですから! 面白い企画ってことは他に何かあるんですよね!?」
すかさずフォローを入れていく俺。
「その通り! 今回の意見交換会は至って真面目なものだ。新生徒会が発足して以降、お互いの学校で取り組んだ業務と成果を話し合い、参考にしあうというものだ。だけど前回のフットサルの時、賭けをしたのを覚えているかい?」
「賭け…………? あっ」
「……女装」
「キイの言う通り!」
そういや次の交流会の時に女装してくることが約束されてたな…………。
至って真面目とは一体。
「マジですか合格っすか? やったー」
もっちーさんが両手を上げてガッツポーズを取った。
「ちなみにお金はどうして必要なんですか? やっぱり学費とか?」
梨音が聞いた。
「いや~恥ずかしい話、最近もっぱらFPSゲーにハマってまして。そのスキンを買うのに課金し過ぎたんすよ」
「FPS?」
「一人称視点の意味っすね。色んなゲームやってきましたけど、結局はPKする系のゲームが一番面白いんすよね」
「ペナルティキック?」
「プレイヤーキルの略っすね。でも回線が重いのかFPSの数値が低くて重いんで新しい回線と契約もしたいんすよ」
「一人称の数値?」
「そっちではなくフレームレートの意味っす」
な、何一つ分からん!
ゲームの話をしているということはかろうじて分かるんだが、もっちーさんの話している言語が果たして日本語なのかどうか疑わしいレベルで言っていることが理解できん。
ゲーム機自体遊んだことないから俺が知らないだけかとも思ったが、隣に梨音の頭にも巨大なクエスチョンマークが浮かんで見えるから普通の人には分からない専門用語なんだろう。
「そ、そうなんですね。なんか凄いなぁ」
梨音のやつ、理解することを諦めたな。
「紹介するのを忘れていたが、そっちが娘の梨音で隣が知り合いの息子の修斗だ」
「今度からよろしくお願いしますね、梨音さん修斗さん」
「「こちらこそよろしくお願いします」」
その日、初めて若元食堂にアルバイトが入ることとなった。
次の日、神奈月先輩から連絡が届いた。
生徒会活動に関係する会議があるため今日は出席して欲しいといった内容だった。
今日も病院でリハビリをする予定だったが、普段から融通を効かせてもらっているため俺は病院へと断りの連絡を入れ、放課後、梨音と一緒に生徒会室へと向かった。
扉の前で一度ノックを挟み、生徒会室へと入室した。
「来たか高坂、若元。会長はまだ来ていないんだ。しばらく待っていてくれ」
中にいたのは大鳥先輩と新波先輩がだけだった。
神奈月先輩と前橋の姿は見えない。
「前橋もまだですか?」
「いつものとこにいるよ」
そう言って前橋専用の個室を指差した。
相変わらず自室に引き篭もるのがお好きなようで。
「梨音、前橋引きずり出してきてよ」
「言い方。それに何で私なのよ」
「俺が女の子のいる個室に入ろうとすると、またいわれのない扱いを受ける可能性があるから」
「一理ある」
「自分で言っておいてなんだが否定して欲しかった」
前橋のことは梨音に任せ、俺は大鳥先輩へ近付いた。
難しい顔をして書類とにらめっこしている。
「会議って何についてですか?」
「その点はまだ聞いてないのか。4月に漆間大学附属高校と交流会があっただろう。それが今月の中旬にもあるんだよ」
「また前回のようなスポーツをやるんですか?」
「いや、今回はちゃんとした意見交換会だ。僕達の生徒会室で行う」
そういやそんなこともやるって言ってたな……。
あれ? でもあの時確か……。
「待たせたね諸君! 待ち人来たれりだよ!」
勢いよく扉が開いたかと思えば、勢いよく神奈月先輩が入ってきた。
相変わらずのテンションの高さだ。
未だに慣れない。
神奈月先輩に合わせるようにして梨音と一緒に前橋が重苦しく部屋から出てきた。
この陰陽の差よ。
「お疲れ様です神奈月先輩」
「お~シュートじゃないか! よしよし、連絡通りにちゃんと来たみたいだね」
「普段から特別扱いしてもらってますからね。要望があれば来るのは当然です」
「いい心掛けじゃないか。大鳥君聞いた? 後輩に慕われてるよ、私」
「自慢はいいですから本題に入って下さい」
「未来さ~ん、私も未来さんのこと、慕ってますよ~」
「ニーナは相変わらず可愛いなぁ。家に持って帰って飼いたいぐらいだよ」
「会長」
度々大鳥先輩に釘を刺され、ようやく神奈月先輩は自席に着いた。
相変わらず大鳥先輩の苦労者感が半端ない。
去年胃に穴が空いたというのもあながち嘘ではないのかもしれない。
「さて、今回シュートにも集まってもらったのは他でもない、前に漆間大の生徒会とフットサルした時のことは覚えているかい」
「はい。さっき大鳥先輩から聞きました。また交流会をやるんですよね?」
「ぬ…………ちょっと大鳥くん」
「はい?」
「私がシュートに直接伝えたかったのに、何で言ってしまうのかなぁ」
「ええ…………大した内容じゃないじゃないですか」
神奈月先輩のむっとした声に、大鳥先輩はなぜ責められているのか分からない顔をした。
「普段のありきたりな業務内容であれば伝えてもらって構わないけど、今回みたいな面白い企画は私から話したいんだよ。副会長ならそれぐらい察してくれないとなぁ」
「ええ…………なんか胃が痛くなってきた」
ま、まずい!
大鳥先輩のストレス耐久値が限界を!
「まだ意見交換会をやるとしか聞いてないですから! 面白い企画ってことは他に何かあるんですよね!?」
すかさずフォローを入れていく俺。
「その通り! 今回の意見交換会は至って真面目なものだ。新生徒会が発足して以降、お互いの学校で取り組んだ業務と成果を話し合い、参考にしあうというものだ。だけど前回のフットサルの時、賭けをしたのを覚えているかい?」
「賭け…………? あっ」
「……女装」
「キイの言う通り!」
そういや次の交流会の時に女装してくることが約束されてたな…………。
至って真面目とは一体。
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