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アルバイト勧誘編
偽物家族①
次の日、放課後のホームルームで宇佐木先生から重要な連絡だと言われてプリントを回された。
そのプリントを見ると『授業参観』というおぞましい単語が載せられていた。
まさかこの歳になっても授業参観なんてものがあるとは思わなかった。
俺達もう高校生だぜ?
親に見られるような歳でもないだろうに。
まぁ俺の両親は来れるわけがないから関係のない話なんだが。
「今、回したのは授業参観についてだ。高校生にもなってと思うかもしれないが、この高校では年に一回授業参観がある。そのため6月17日の土曜日は登校日になっていて、月曜日は振替休日となる。くれぐれも親御さんに見せる前にゴミ箱に捨てるようなことがないように。以上」
まるで見透かしたように、宇佐木先生が俺を含めた反抗期の生徒全員に釘を刺すように言った後、教室を出て行った。
「マジかよ土曜日出勤かよ」
新之助が不満を漏らすように呟いた。
「登校を出勤って言うなよ」
「修斗の所はどうなんだ。親呼ぶのか?」
「いや、うちは両親とも仕事が忙しいからな。一応話はしておくけどまず来ないだろうな」
「最高じゃねぇかよ。うちのオカンは暇だから絶対来るぜこれ」
新之助と同じように、周りではザワザワとざわついている。
ため息の数が多いのは親が来ることが嫌なのか、それとも土曜日登校が面倒臭いのか、はたまたその両方か。
「おっといけねぇ。俺はちょっと今日早めにおいとまするぜ」
「なんか用があるのか?」
「大好きなシリーズ物のゲームの続編発売日なんだよ。予約してあるから取りに行かなくちゃな!」
そう言って新之助は一目散に教室を飛び出して行った。
授業参観があろうがなかろうが、あいつが人生謳歌しているのは間違いないな。
あのメンタルの強さはマジでアスリート向きだと思う。
今日は生徒会から呼び出されていることもないので、病院に行ってリハビリを続けようと思い席を立った。
ふと目にしたのは、授業参観のプリントを少し見つめていた後、クシャッと丸めているニノの姿だった。
俺はニノの家で牧村さんに聞いた話を思い出した。
ニノの両親は交通事故で亡くなっており、養子として迎えられた一家では遠慮してか未だに微妙な距離感があると。
俺はニノのところに近寄った。
「よぉニノ」
「コーサカ君。どうしたの?」
ニノは丸めたプリントを隠すようにカバンの中に入れた。
「…………一緒に帰ろうぜ」
「うん、いいよ!」
なんて言おうか迷った。
ニノの過去の話は本人から聞いたわけじゃない。
デリケートな部分だ。
迂闊に人の心に踏み込んで荒らし回るわけには行かない。
それを本人が望んでいないかもしれないからだ。
だけど…………それでも俺は複雑な表情でプリントを眺めていたニノを放っておくことはできなかった。
学校を出てからも関係のない話を続けて、話すタイミングを測っていた。
俺は少し寄り道しようと言って川沿いの土手に向かった。
結構大きめの川で、運動場がいくつかあるような所だ。
土手の斜面に座って、誰もいないグラウンドを眺めた。
「にしても珍しいね。コーサカ君と二人でこんなところでお話しするなんて」
「確かにな。俺も考えてなかった」
「え?」
「何でもない。ちなみにニノは授業参観どうするんだ? 家の人呼ぶのか?」
これ以上余計な話をしても裏側あると思われそうなので本題を切り出した。
親を呼ぶ、と聞くと絶対センチメンタルな気分になると思ったので、あえて家の人と聞いた。
「うーん、どうだろう。たぶん呼ばないかなぁ」
「何で? この前会った人達はみんなニノこと心配してたぜ? 色々な面で」
「色々な面ってなんだよー。みんな少し心配性なだけだって。そもそも車で送迎ってのもやりすぎなんだよねー」
「それは確かに」
執事にメイドのいる家に突然来て落ち着かないと言う気持ちは分からんでもない。
「…………実はさっきチラッと見ちまったんだけどさ、授業参観のプリント、見せる前に捨てる気だろ?」
俺は一歩踏み込んだ質問をした。
「あー…………うん。見てたんだ」
「そもそもプリントを見せたくないってことは、家の人達と上手くいってないのか?」
「ううん、そんなことはないよ。みんな良い人達だし…………それにお母さん達も…………」
そこでニノは口をつぐんでしまった。
お母さんというのが誰を示すのか。
俺はニノが話を始めるまで待った。
「…………この前コーサカ君たちが僕の家で会った人達は、僕の本当の両親じゃないんだ」
「そうなのか?」
「僕の両親は2年前、交通事故で亡くなったんだ。それから僕は一家に養子として迎え入れられて」
既に牧村さんから聞いていたことだが、俺は初めて聞いたかのように相槌を打った。
ニノが自分から話し始めてくれたことだ、遮りはしない。
「あ、でも、家の人達は凄い良い人達なんだよ?僕のことを本当に心配してくれてるし、新しいお父さんとお母さんも僕のことを常に気にしてくれていて。でも僕には…………どうしても家族だという風には見えないんだ」
そう話すニノ顔は…………とても寂しそうに見えた。
そのプリントを見ると『授業参観』というおぞましい単語が載せられていた。
まさかこの歳になっても授業参観なんてものがあるとは思わなかった。
俺達もう高校生だぜ?
親に見られるような歳でもないだろうに。
まぁ俺の両親は来れるわけがないから関係のない話なんだが。
「今、回したのは授業参観についてだ。高校生にもなってと思うかもしれないが、この高校では年に一回授業参観がある。そのため6月17日の土曜日は登校日になっていて、月曜日は振替休日となる。くれぐれも親御さんに見せる前にゴミ箱に捨てるようなことがないように。以上」
まるで見透かしたように、宇佐木先生が俺を含めた反抗期の生徒全員に釘を刺すように言った後、教室を出て行った。
「マジかよ土曜日出勤かよ」
新之助が不満を漏らすように呟いた。
「登校を出勤って言うなよ」
「修斗の所はどうなんだ。親呼ぶのか?」
「いや、うちは両親とも仕事が忙しいからな。一応話はしておくけどまず来ないだろうな」
「最高じゃねぇかよ。うちのオカンは暇だから絶対来るぜこれ」
新之助と同じように、周りではザワザワとざわついている。
ため息の数が多いのは親が来ることが嫌なのか、それとも土曜日登校が面倒臭いのか、はたまたその両方か。
「おっといけねぇ。俺はちょっと今日早めにおいとまするぜ」
「なんか用があるのか?」
「大好きなシリーズ物のゲームの続編発売日なんだよ。予約してあるから取りに行かなくちゃな!」
そう言って新之助は一目散に教室を飛び出して行った。
授業参観があろうがなかろうが、あいつが人生謳歌しているのは間違いないな。
あのメンタルの強さはマジでアスリート向きだと思う。
今日は生徒会から呼び出されていることもないので、病院に行ってリハビリを続けようと思い席を立った。
ふと目にしたのは、授業参観のプリントを少し見つめていた後、クシャッと丸めているニノの姿だった。
俺はニノの家で牧村さんに聞いた話を思い出した。
ニノの両親は交通事故で亡くなっており、養子として迎えられた一家では遠慮してか未だに微妙な距離感があると。
俺はニノのところに近寄った。
「よぉニノ」
「コーサカ君。どうしたの?」
ニノは丸めたプリントを隠すようにカバンの中に入れた。
「…………一緒に帰ろうぜ」
「うん、いいよ!」
なんて言おうか迷った。
ニノの過去の話は本人から聞いたわけじゃない。
デリケートな部分だ。
迂闊に人の心に踏み込んで荒らし回るわけには行かない。
それを本人が望んでいないかもしれないからだ。
だけど…………それでも俺は複雑な表情でプリントを眺めていたニノを放っておくことはできなかった。
学校を出てからも関係のない話を続けて、話すタイミングを測っていた。
俺は少し寄り道しようと言って川沿いの土手に向かった。
結構大きめの川で、運動場がいくつかあるような所だ。
土手の斜面に座って、誰もいないグラウンドを眺めた。
「にしても珍しいね。コーサカ君と二人でこんなところでお話しするなんて」
「確かにな。俺も考えてなかった」
「え?」
「何でもない。ちなみにニノは授業参観どうするんだ? 家の人呼ぶのか?」
これ以上余計な話をしても裏側あると思われそうなので本題を切り出した。
親を呼ぶ、と聞くと絶対センチメンタルな気分になると思ったので、あえて家の人と聞いた。
「うーん、どうだろう。たぶん呼ばないかなぁ」
「何で? この前会った人達はみんなニノこと心配してたぜ? 色々な面で」
「色々な面ってなんだよー。みんな少し心配性なだけだって。そもそも車で送迎ってのもやりすぎなんだよねー」
「それは確かに」
執事にメイドのいる家に突然来て落ち着かないと言う気持ちは分からんでもない。
「…………実はさっきチラッと見ちまったんだけどさ、授業参観のプリント、見せる前に捨てる気だろ?」
俺は一歩踏み込んだ質問をした。
「あー…………うん。見てたんだ」
「そもそもプリントを見せたくないってことは、家の人達と上手くいってないのか?」
「ううん、そんなことはないよ。みんな良い人達だし…………それにお母さん達も…………」
そこでニノは口をつぐんでしまった。
お母さんというのが誰を示すのか。
俺はニノが話を始めるまで待った。
「…………この前コーサカ君たちが僕の家で会った人達は、僕の本当の両親じゃないんだ」
「そうなのか?」
「僕の両親は2年前、交通事故で亡くなったんだ。それから僕は一家に養子として迎え入れられて」
既に牧村さんから聞いていたことだが、俺は初めて聞いたかのように相槌を打った。
ニノが自分から話し始めてくれたことだ、遮りはしない。
「あ、でも、家の人達は凄い良い人達なんだよ?僕のことを本当に心配してくれてるし、新しいお父さんとお母さんも僕のことを常に気にしてくれていて。でも僕には…………どうしても家族だという風には見えないんだ」
そう話すニノ顔は…………とても寂しそうに見えた。
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