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アルバイト勧誘編
偽物家族②
「それは…………まだ会ってから日が浅いからなんじゃ?」
「うん、もちろんそれもあると思うよ。今のお父さんもお母さんも仕事であまり家にいないし。でもなんというか…………一応親戚ではあるみたいなんだけど、あまり血の繋がりというものを感じられないんだ。僕にとって、あの家はただ居候させてもらってるだけにしか感じない」
血の繋がり───。
俺にとってそれはさほど重要なことのようには思えないが、ニノの中では違うのだろう。
きっと今のニノの価値基準は、一緒に過ごした時間よりも自分にとって目に見えない絆があるかどうかなんだと思う。
その分かりやすい一例が血筋というだけであって。
「僕だってこんな状態じゃダメだって、頭では分かってるんだ。お父さんもお母さんも、僕のことを本当の息子だと思ってくれてるし、牧村さん達や鈴華さんも他所から来た僕の面倒を嫌な顔せずに見てくれてる」
「………………」
「でも…………そこで今の二人を両親だって認めてしまったら、死んじゃった二人が僕の心の中からもいなくなってしまうような気がして…………!」
ニノの顔がグニャリとしかめた。
一人で考えて苦しんでいたものを吐き出しても、なおも苦しんでいるような表情だ。
今の両親が良い人達なだけに、ニノにとって板挟みのような状態に陥ってしまっている。
ニノがこんなにも心の内を俺に話してくれるなんて、正直思ってもみなかった。
もっと軽い気持ちで、恋バナぐらいの感覚で話すんじゃないかと思ってた。
軽んじてはダメだ。
話してくれたニノの気持ちに対する俺なりの気持ちを、まるでジュニアユースカップ決勝戦が始まったあの時のように、真摯に対応していく!
「なぁニノ、今から俺の家に来ないか?」
「……え? コーサカ君の家……?」
すまん梨音。
きっとお前にも迷惑かけることになりそうだ。
───────────────
─────────
────
俺はニノと一緒に歩いて家へと帰った。
家といっても、もちろん俺の自宅のことじゃない。
居候させてもらってる、この家だ。
「ここだよ」
『若元食堂』と書かれた暖簾が出ている店の前で、俺はニノに堂々と家だと紹介した。
「若元食堂…………あれ? 若元って…………」
「ただいまー」
俺はガラガラと扉を開けて中に入った。
それに続いてキョドりながらもニノも店の中に入った。
「あ、おかえりっすー」
「あれ? 修斗リハビリだって言ってたのに早いじゃん───」
先日アルバイトで雇われたもっちーさんと、今日は家の手伝いをしている梨音が出迎えてくれた。が、梨音はニノの姿に気付いて固まってしまった。
それもそのはず、俺が梨音の家に居候しているという話はシークレット中のトップシークレット。
梨音からしたら、何当たり前のようにニノを連れて入ってきてるんだと思ってるはずだ。
「何で当たり前のようにニノがいるの!?」
ほらな。
「わ……若元さん……? な、なんで?」
そして通常運転のようにテンパるニノ。
いい加減慣れろ。
「あ、らっしゃーせー」
「いや知り合いだからもっちーさん! 私や修斗の同級生!」
「あ、そうなんすか? お客さんが知り合いの時の掛け声は何になるんすかね? ゆっくりしてってや~とか?」
「何で関西弁なの!? じゃなくて、そもそもお客さんじゃないから!」
「おいおい、本当にお客としてニノが来てたらどうすんだ」
「え…………そうなの?」
「まぁ違うけど」
「なんなのよ!!」
これ以上からかうと後で血を見ることになるので程々にしておこう。
ニノもどういう状況なのか目が泳ぎまくってるしな。
「とりあえずニノはそこ座ってて。梨音、ちょっといいか?」
俺はあからさまに不信感を募らせている梨音を店の奥へと押しやり、ニノを連れてきた経緯を簡単に説明した。
ニノの秘密を勝手に話してしまうことになるが、これから俺達の秘密も話すわけだし、フィフティフィフティとして許してもらおうぜ。
「ニノがそんな悩みを抱えてたなんて……」
「表面上、そんなの分からないよな」
「でも、だからって何でウチに連れてきたの? そんなニノの不安を取り除くことなんてできないと思うよ? 美味しい物を食べさせて元気出させるっていうなら分からなくはないけど…………」
「その辺りは俺が上手いことやるよ。とにかく、俺がここに居候しているってことをニノに話してもいいか?」
梨音はしょうがないなぁと言った雰囲気で一つため息をついて答えた。
「店まで連れてきてから承諾取るなんてズルいでしょ」
「事後承諾ってやつだな」
「うるさい」
ビシッと頭にチョップを食らった。
だけど力は全然入っておらず、優しさのこもったチョップだった。
「ニノのためだもんね。修斗に任せるよ」
「ありがとう。助かるよ」
「とりあえず私はもっちーさんに仕事教えてるから、必要なことがあったら言ってね」
「ああ」
多少ゴリ押しになったが、梨音の承諾は得た。
これからするのはただ俺の価値観をニノに教えるだけだ。
それでニノがどう思うかについての保証はできない。
「うん、もちろんそれもあると思うよ。今のお父さんもお母さんも仕事であまり家にいないし。でもなんというか…………一応親戚ではあるみたいなんだけど、あまり血の繋がりというものを感じられないんだ。僕にとって、あの家はただ居候させてもらってるだけにしか感じない」
血の繋がり───。
俺にとってそれはさほど重要なことのようには思えないが、ニノの中では違うのだろう。
きっと今のニノの価値基準は、一緒に過ごした時間よりも自分にとって目に見えない絆があるかどうかなんだと思う。
その分かりやすい一例が血筋というだけであって。
「僕だってこんな状態じゃダメだって、頭では分かってるんだ。お父さんもお母さんも、僕のことを本当の息子だと思ってくれてるし、牧村さん達や鈴華さんも他所から来た僕の面倒を嫌な顔せずに見てくれてる」
「………………」
「でも…………そこで今の二人を両親だって認めてしまったら、死んじゃった二人が僕の心の中からもいなくなってしまうような気がして…………!」
ニノの顔がグニャリとしかめた。
一人で考えて苦しんでいたものを吐き出しても、なおも苦しんでいるような表情だ。
今の両親が良い人達なだけに、ニノにとって板挟みのような状態に陥ってしまっている。
ニノがこんなにも心の内を俺に話してくれるなんて、正直思ってもみなかった。
もっと軽い気持ちで、恋バナぐらいの感覚で話すんじゃないかと思ってた。
軽んじてはダメだ。
話してくれたニノの気持ちに対する俺なりの気持ちを、まるでジュニアユースカップ決勝戦が始まったあの時のように、真摯に対応していく!
「なぁニノ、今から俺の家に来ないか?」
「……え? コーサカ君の家……?」
すまん梨音。
きっとお前にも迷惑かけることになりそうだ。
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俺はニノと一緒に歩いて家へと帰った。
家といっても、もちろん俺の自宅のことじゃない。
居候させてもらってる、この家だ。
「ここだよ」
『若元食堂』と書かれた暖簾が出ている店の前で、俺はニノに堂々と家だと紹介した。
「若元食堂…………あれ? 若元って…………」
「ただいまー」
俺はガラガラと扉を開けて中に入った。
それに続いてキョドりながらもニノも店の中に入った。
「あ、おかえりっすー」
「あれ? 修斗リハビリだって言ってたのに早いじゃん───」
先日アルバイトで雇われたもっちーさんと、今日は家の手伝いをしている梨音が出迎えてくれた。が、梨音はニノの姿に気付いて固まってしまった。
それもそのはず、俺が梨音の家に居候しているという話はシークレット中のトップシークレット。
梨音からしたら、何当たり前のようにニノを連れて入ってきてるんだと思ってるはずだ。
「何で当たり前のようにニノがいるの!?」
ほらな。
「わ……若元さん……? な、なんで?」
そして通常運転のようにテンパるニノ。
いい加減慣れろ。
「あ、らっしゃーせー」
「いや知り合いだからもっちーさん! 私や修斗の同級生!」
「あ、そうなんすか? お客さんが知り合いの時の掛け声は何になるんすかね? ゆっくりしてってや~とか?」
「何で関西弁なの!? じゃなくて、そもそもお客さんじゃないから!」
「おいおい、本当にお客としてニノが来てたらどうすんだ」
「え…………そうなの?」
「まぁ違うけど」
「なんなのよ!!」
これ以上からかうと後で血を見ることになるので程々にしておこう。
ニノもどういう状況なのか目が泳ぎまくってるしな。
「とりあえずニノはそこ座ってて。梨音、ちょっといいか?」
俺はあからさまに不信感を募らせている梨音を店の奥へと押しやり、ニノを連れてきた経緯を簡単に説明した。
ニノの秘密を勝手に話してしまうことになるが、これから俺達の秘密も話すわけだし、フィフティフィフティとして許してもらおうぜ。
「ニノがそんな悩みを抱えてたなんて……」
「表面上、そんなの分からないよな」
「でも、だからって何でウチに連れてきたの? そんなニノの不安を取り除くことなんてできないと思うよ? 美味しい物を食べさせて元気出させるっていうなら分からなくはないけど…………」
「その辺りは俺が上手いことやるよ。とにかく、俺がここに居候しているってことをニノに話してもいいか?」
梨音はしょうがないなぁと言った雰囲気で一つため息をついて答えた。
「店まで連れてきてから承諾取るなんてズルいでしょ」
「事後承諾ってやつだな」
「うるさい」
ビシッと頭にチョップを食らった。
だけど力は全然入っておらず、優しさのこもったチョップだった。
「ニノのためだもんね。修斗に任せるよ」
「ありがとう。助かるよ」
「とりあえず私はもっちーさんに仕事教えてるから、必要なことがあったら言ってね」
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