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アルバイト勧誘編

現役ユース生②

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 フットサル当日、山田に教えてもらった会場へと向かった。

「なんでお前らがいるんだ…………」

「てへっ!」

 思わず頭を抱えた。
 そこで最初に出会ったのは山田達ではなく梨音、桜川、前橋の三人だった。
 一応、梨音には今日出かけることは伝えていたが、フットサルをやることは伝えていない。
 なぜに当たり前のように来ているんだ。

「俺、今日フットサルやること一言も言ってないよな……?」

「そりゃ高坂っちの口からはね! でも私の情報収集能力を舐めちゃいけないよ!」

「もう半分ストーカーだよこれ。何でそんな休みの日まで俺の試合が見たいんだ」

「そこに高坂っちがいるから!」

 そんなそこに山があるからみたいな……。
 そういや最近はなりをひそめてたけど、こいつ元ストーカーやってたの忘れてた。

「桜川のこういう行動はなんか諦めがつくが……」

「諦め!?」

「なんで梨音と前橋までいるんだよ」

「い、いやぁ、美月が修斗の試合情報を手に入れたっていうから…………」

「若元が高坂の試合が見れるって言うから…………」

「なんなの? 君ら伝言ゲームでもしてんの?」

 だとしたら情報は正確に伝わってるよ。
 上手いこと伝言できてるよ。

「いいでしょお高坂っち~、邪魔はしないから! コートの外から見てるだけだから!」

「はぁ……」

 いつも思うが、ここまで来られて返すわけにはいかないだろ。
 こいつらも分かってて俺に言わずに現地に来たんだろうなぁ。

「分かったよ許可する」

「やったー! ねっ? 高坂っちならゴリ押せばオッケーしてくれるでしょ?」

「さすが美月!」

「ナイスゴール」

「おいこらお前ら」

 せめて俺のいないところでそういうのは言え。
 今度から許可しにくくなるだろーが。

「おいおい高坂聞いてねーぞ。なに自分だけ応援団呼んでんだよちくしょう」

 間の悪いタイミングと言うべきか、山田や山田の友人と思われる二人が来てしまった。
 まるで俺が女の子を複数人連れて来たとも見えかねないこの状況に、案の定山田は突っ込んできた。

「しかも全員可愛いとか、彼女のいない俺への当てつけかよ」

「俺だって彼女いねーよ。この三人が勝手に来ただけだ」

「高坂が内容話さない限り来れるわけないだろ」

「それは本当そう。でも来たんだよ」

「意味分かんなくね」

「俺も意味分かんねーよ」

 話してないのに来れる猛者がいるから仕方ないんだ。

 山田と一緒に来た二人、一人はどう見ても年下だ。
 身長は低いし、とてもじゃないが高校生の顔立ちには見えない。
 まぁ、堂大寺会長というイレギュラーも存在するわけだが、そんなイレギュラーが多いわけがない。

「とにかく、こっちの三人は気にしなくていい。そっちの二人が?」

「ああ、こっちが中学の時の同部の橋本。ゴールキーパーやってた」

「橋本です。よろしくお願いします」

 身長は俺と同じくらい、スポーツ刈りの一見して好青年だ。

「高坂だ。よろしく」

「んで、こっちが俺の弟。中二だけどFC横浜レグノスのジュニアユースでやってる。それなりにやれるはずだ」

 やっぱり中学生だったか。にしても横浜レグノスのジュニアユースか、前橋と同じだったってことはもしかして知り合いなんじゃないか?

「うわああああ…………本物の高坂さんだぁぁぁ……」

 山田弟は俺の姿を見るや否やあわあわしながら兄貴の後ろに隠れた。
 なんなのよ……。

「すまん、こいつも日本代表だったころの高坂に憧れてた口なんだ」

「期待に沿うようなプレーは出来ないかもしれないけどな。よろしく山田弟」

「うああああ……無理ぃぃ……」

 握手しようとしたら拒否られたんだが。
 無理って言われたんだが。
 ほんとなんなのよ……。

「なに? この人そんなに有名なの?」

 スポーツマン橋本はどうやら俺のことは知らないみたいだ。

「一言で言えばバケモンだな。ユースとかやってた人なら知らない人はいないレベル」

「凄いな」

「ハードル上げるなよな。一応、俺は怪我人だぞ」

「怪我してるけど俺達の誰よりも上手いから」

「凄い」

「話聞けよ」

 そうやって噂は一人歩きして根も葉もない噂が広まったりするんだよな。
 怪我してる状態の俺を持ち上げるのはあまりしないでほしい。

「ところでアイツは?」

「間も無く来ると思うぜ? さっき着いたって連絡が…………おお、来た来た」

 山田の目線の先に見えるのは、遠目からでも分かるほどの圧倒的な体格の持ち主。
 遠近法という概念を狂わせる。
 確かに…………俺はアイツを知っている。
 ガタイが良く最高峰のセンターフォワードとして有名なのはもちろん城ヶ崎優夜だ。
 しかし、ジュニアユース時代において、体格のみを比較するならばその優夜よりも勝っていた男がただ一人いた。

「悪い、遅れたか?」

「いや、俺達も今来たとこだ」

「だっはっはっは! 彼氏彼女みたいなこと言うな! おお……? そっちにいるのはもしかして…………高坂修斗か!?」

「そういうアンタはFC横浜レグノス所属、現日本代表の大城国だいじょうこく紗凪さなぎか…………!」

 本当にとんでもない大物連れてきたな……!
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