怪我でサッカーを辞めた天才は、高校で熱狂的なファンから勧誘責めに遭う

もぐのすけ

文字の大きさ
122 / 203
アルバイト勧誘編

不意強襲④

「さっきまでそこでフットサルやってたんですよ! それで高坂っちのチームが優勝して───」

 桜川の何の悪気の無い一言によって空気がピリついた。
 それもそのはず、弥守と涼介は俺がボールを蹴れることをまだ知らない。

「フットサル? あなたが?? あはは! サッカーができない代わりにフットサルなんて始めたのね。いいんじゃない? そういう道もあると思うわ。今からサッカーを始めても間に合わないだろうしね」

 見下すように弥守が言った。
 いや見下すようにじゃない、見下してるんだ、実際。
 弥守が転校してからまだ1ヶ月。俺は大見得切ってサッカーをやれると言える段階ではない。
 だからこそ以前と同じように煽っているんだ。

「弥守、そんな言い方はないだろう」

「そうだよ鷺宮さん。急に転校して心配してたのに、どうしてそんな責めるような」

 涼介と梨音がたしなめた。
 そういえば梨音は八幡と一緒に体育の時間で弥守とバスケで対決していたぐらいには馴染みがあるんだったか。

「そうね、終わった選手に対して少し過剰に反応し過ぎてしまったみたい。私らしくもない」

「こいつ…………!」

「高坂は終わった選手なんかじゃない!」

 突然の大声に思わずビックリした。
 大声ももちろんそうなんだが、何よりもその大声を出した人物に俺達は驚いていた。

 前橋が感情的になってる……。

「さっきから聞いてれば高坂のことをよく知らないくせに失礼なことばかり……! アナタにとってどうでもいい選手なら無視すればいいでしょ!」

「よく知らない…………!? 貴方がどこの誰かは知らないけど、私の方が修斗のことについては良く知ってるつもりだけど? その上で終わった選手だと評しているのよ」

「違う! 高坂は終わってなんかない! 今だってサッカーができるように毎日リハビリを頑張ってるし、プレイの精度や独創性だって今日見たけど衰えてなかったんだから!」

「へ、へぇ……衰えてなかったんだ………じゃなくて! そんなの、貴方目線の話でしょ? アマチュアのレベルに混ざって活躍したからと言って、第一線で活躍できるわけないでしょ」

「そ、そんなことない! そんなこと…………ないし…………!」

「もういいよ前橋。擁護してくれてありがとう。その気持ちだけで俺は嬉しい」

 感情が昂りすぎて既に少し涙目になっている前橋の肩に手を置いて落ち着かせた。
 普段から低血圧の鬼で人見知りが激しく、クラスメイトですらろくに話すことのできない前橋が、話したこともない同年代相手に俺のことでこんなにも熱くなってくれている。
 それだけで心にグッと来るものがある。
 これに応えなきゃ男じゃねーだろ。

「弥守、俺は前にも言ったよな。唇を噛み締めることになるのはお前だって」

「どうだったかしら」

「改めて今ここで宣言してやる。俺は必ず、世界で一番のサッカー選手になる。涼介や優夜なんて目じゃ無い、世界中のトッププレーヤー達の頂点にな」

 俺は常に自分が一番だと思っている。
 その心の持ちようは今でも変わらない。
 見据える先は常にトップだ。

「マジかよ……!」

 一番に反応したのは涼介だった。

「じゃあ修斗の足の具合は良くなるんだな? だから言っただろ、修斗は必ず戻ってくるって。俺はずっと信じてたんだ…………! いつ頃修斗はヴァリアブルに戻ってくるんだ? 修斗が戻って来れば、俺達はまた最強の布陣が完成する。ヴァリアブルの本当の全盛期が来るんだ。全てのタイトル総ナメも確実なものになるぞ…………!!」

 俺がヴァリアブルに出戻りするのが当たり前といった反応だ。
 だが俺はヴァリアブルには戻らない。
 俺を切り捨てたクラブチーム、そして鷺宮=アーデルハイト=弥守を見返すことが俺の今の原動力だ。

「俺はヴァリアブルには戻らない」

「………………え?」

 涼介には悪いが、俺は俺の道でトップを目指す。

「悪いな親友、次お前とフィールドでサッカーをする時は、敵同士だ」

「………………ははっ」

 意外にも涼介は嬉しそうに笑った。
 まるで俺が敵として立ちはだかっていることを喜ぶように。

「面白い……! 思えば修斗とはジュニアサッカー時代の頃から常に一緒にやってきた。だからこそ敵として真剣に戦ったことは一度もない。いいぜ、かかってきな。修斗が俺達の前に現れるまで、俺達は常に頂点の位置で待つ。上がってこい…………高坂修斗!」

「首洗って待ってな」

 お互いに啖呵を切った。
 どちらも一歩も引くことは許されない。
 ここから先、どんな地獄が待っていようとも俺は諦めない。
 誰のためでもない、俺自身のために。
感想 0

あなたにおすすめの小説

俺は陰キャだったはずなのに……なぜか学園内でモテ期が到来した件

こうたろ
青春
友人も恋人も居ないボッチ学生だった山田拓海が何故かモテだしてしまう。 ・学園一の美人で、男女問わず憧れの的。 ・陸上部のエースで、明るく活発なスポーツ女子。 ・物静かで儚げな美術部員。 ・アメリカから来た金髪碧眼でハイテンションな留学生。 ・幼稚園から中学まで毎朝一緒に登校していた幼馴染。 拓海の生活はどうなるのか!?

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。

ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。 真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。 引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。 偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。 ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。 優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。 大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。

むっつり金持ち高校生、巨乳美少女たちに囲まれて学園ハーレム

ピコサイクス
青春
顔は普通、性格も地味。 けれど実は金持ちな高校一年生――俺、朝倉健斗。 学校では埋もれキャラのはずなのに、なぜか周りは巨乳美女ばかり!? 大学生の家庭教師、年上メイド、同級生ギャルに清楚系美少女……。 真面目な御曹司を演じつつ、内心はむっつりスケベ。

キャバ嬢(ハイスペック)との同棲が、僕の高校生活を色々と変えていく。

たかなしポン太
青春
   僕のアパートの前で、巨乳美人のお姉さんが倒れていた。  助けたそのお姉さんは一流大卒だが内定取り消しとなり、就職浪人中のキャバ嬢だった。  でもまさかそのお姉さんと、同棲することになるとは…。 「今日のパンツってどんなんだっけ? ああ、これか。」 「ちょっと、確認しなくていいですから!」 「これ、可愛いでしょ? 色違いでピンクもあるんだけどね。綿なんだけど生地がサラサラで、この上の部分のリボンが」 「もういいです! いいですから、パンツの説明は!」    天然高学歴キャバ嬢と、心優しいDT高校生。  異色の2人が繰り広げる、水色パンツから始まる日常系ラブコメディー! ※小説家になろうとカクヨムにも同時掲載中です。 ※本作品はフィクションであり、実在の人物や団体、製品とは一切関係ありません。

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗@オートスキル第1巻発売中
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

至れり尽くせり!僕専用メイドの全員が溺愛してくる件

こうたろ
青春
普通の大学生・佐藤健太は目覚めると、自宅が豪華な洋館に変わり10人の美人メイドたちに「お目覚めですか、ご主人様?」と一斉に迎えられる。いつの間にか彼らの“専属主人”になっていた健太は戸惑う間もなく、朝から晩までメイドたちの超至れり尽くせりな奉仕を受け始める。