怪我でサッカーを辞めた天才は、高校で熱狂的なファンから勧誘責めに遭う

もぐのすけ

文字の大きさ
124 / 203
アルバイト勧誘編

神上涼介①

【神上涼介目線】


 いつもと同じ時間、いつもと同じランニング道で、いつもと違うことが起きた。
 瑞都高校で会った時以来に修斗と再会したのだ。
 話を聞けばどうやら近くのフットサルコートでフットサルに参加していたらしく、それどころかサッカー選手として復帰するというではないか。
 俺達、東京Vヴァリアブルの中心的存在で絶対のエース。
 そんなアイツが戻って来るというのだ。期待せずにはいられない。
 だが、そんな中で、俺よりも喜んでいそうな人物が隣にいた。

「修斗が…………戻ってくる…………苦労した甲斐が…………フヒヒ……」

「俺より嬉しそうだな鷺宮」

 修斗がサッカーを始めるという話を聞いてから、鷺宮は時折口角を上げていた。

「は? 別に喜んでませんけど」

「いやいやいや、無理あるだろ。よっぽど嬉しそうだぞお前」

「はぁ……涼介はまだ分かっていないみたいね。修斗にお熱だったあの頃の私はもういないの。今は貴方達をどうやってプロの世界まで押し上げるかで忙しいのよ」

「だから最近、俺の自主練に付き合ってくれているのか?」

「そんなところね」

 鷺宮の真意は俺には分からない。
 元々転校してきた時に鷺宮は修斗が復帰する可能性のあることを匂わせる発言をしていた。
 いつかこんな日がくるであろうことを、鷺宮は話していた。

 にしても、まさか修斗がヴァリアブル以外のところに行くとは想像だにしていなかった。
 ともすれば、修斗は一体どこのチームに行くというのだろうか。
 クラブチームで有力なところで言えば、大城国だいじょうこく紗凪さなぎのいるFC横浜レグノスか、熊埜御堂くまのみどう将太朗しょうたろうがいる川崎アルカンテラあたりか。
 もしもその2チームのどちらかに修斗が入れば、俺達の三連覇は難しくなるな。
 まさか……高校の部活には入らないだろう。
 鹿島オルディーズにいた狩野隼人がいたということで前に戦ったが、チームとしては所詮高校レベルだ。
 それならば青森光聖学園に行った方がよっぽど意味がある。

 いずれにせよ、修斗を獲得したチームは間違いなく俺達の障壁となるだろう。
 より一層練習に身が入るな。



「おう、二人揃って来たんか。色恋にうつつ抜かしとんちゃうぞ」

 ヴァリアブルのグラウンドへ戻って来るやいなや、シュート練をしていた優夜が茶化すように言ってきた。
 東京Vヴァリアブルの点取り屋として、上級生を押し除けて不動のセンターフォワードを張っている。

「馬鹿言わないで。私は貴方達を将来的にクシャスラへプロデュースするために来ているの。邪な気持ちでこのクラブに在籍しているわけではないわ」

「そうだぞ優夜。邪な気持ちを持ってサッカーに臨むのは光だけで充分だろ」

「別に邪な気持ちでやってないんですけど~。心外だなぁ」

 ヴァリアブル1足の速い男、荒井光が身体を伸ばしながら歩いてきた。
 奴が熱心に練習に取り組んでからというもの、その実力は桁違いに伸び始めている。
 だが、それと同時に女遊びも派手になった。
 足だけでなく手も速い男なのだ。

「それにこうやって練習を真面目に出てるだけ偉くない?」

「よう言うわ。一度代表の選考から外されてから誰に言われんでも練習量増やした真面目ちゃんなくせにな」

「別にそれだけが理由じゃないんですけど~?」

「まぁ足の速さだけじゃ限界は来るだろ。しかも代わりに呼ばれたのが流星だったからな。修斗がいなくなってからは一段と目立つようになった」

 現在のヴァリアブルのトップ下に定着している狭間はざま流星りゅうせい
 中学時代は俺達と同じく『高坂世代』と呼ばれていたが、同じポジションの比較対象が強大過ぎたことによって、チームメイト以外の人達からは過小評価されていた。
 くしくも、修斗がヴァリアブルからいなくなったことにより、その実力は多くの人の目に止まることとなり、最強の控えに甘んじていたところがついに日の目を浴びることとなった。
 現在は日本代表にも選出されている。

「流星が呼ばれたこと自体は別にいいんだよ。そのあと、俺だってすぐに日本代表に復帰したし~」

「確かに光はクロスが抜群に上手くなったよな」

「おう、それだけは認めたるさかい、俺のアシストだけはどんどんせぇよ」

「うわ、クロスあげたくね~」

 気づけば賢治もグラウンドにやって来ていた。
 相変わらず試合中以外ではほとんど話さない。
 優夜に似た図体で無愛想な表情なので、初対面の相手は大体萎縮してしまうのだが、心優しい人物であることはみんな知っている。

「そういえば台徳丸に前回の試合でダメだったところをフィードバックするのを忘れていたわ」

 鷺宮が賢治の元へ向かっていった。
 鷺宮の人の能力を見抜く目は本物だ。
 トレーニング内容や戦術面の知識についてはからっきしだが、育成という面においては彼女ほどの適任はいない。
 どこがダメだったのか、どこを伸ばせば自身の特性を活かせるのか、それを教えてくれるだけでも後はコーチにでも練習方法を確認して引き伸ばせばいい。

 俺達1年は今年、9人がユースへと昇格している。
 その内、Aチームに昇格しているのは俺を含めて、城ヶ崎優夜、荒井光、台徳丸賢治、狭間流星の5人。
 その他の友ノ瀬龍二、大門だいもん郡司ぐんじ三木みき彰三しょうぞう小日向おびなた圭一郎けいいちろうはBチームだ。

 そしてもう一人、スカウト組としてユースからヴァリアブルに所属することとなり、俺達と同じAチームに昇格している男、十文字じゅうもんじかける

 修斗がいずれかのチームに所属して相対する頃には、俺達の代がスタメンの多くを占めているはずだ。
 俺の目から見ても優秀な人材しかいない俺達の代を、修斗がどう打ち破るのか今からそれが楽しみで仕方ない。
 故に、修斗に対する憧れは今この瞬間に全て捨てる。
 盟友ともから強敵ともへと認識を改める。

「俺が一番のプレーヤーだ。修斗にその座は譲らない」

 その日の練習中、俺は全ての1対1で賢治に勝利した。
感想 0

あなたにおすすめの小説

俺は陰キャだったはずなのに……なぜか学園内でモテ期が到来した件

こうたろ
青春
友人も恋人も居ないボッチ学生だった山田拓海が何故かモテだしてしまう。 ・学園一の美人で、男女問わず憧れの的。 ・陸上部のエースで、明るく活発なスポーツ女子。 ・物静かで儚げな美術部員。 ・アメリカから来た金髪碧眼でハイテンションな留学生。 ・幼稚園から中学まで毎朝一緒に登校していた幼馴染。 拓海の生活はどうなるのか!?

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。

ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。 真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。 引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。 偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。 ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。 優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。 大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。

むっつり金持ち高校生、巨乳美少女たちに囲まれて学園ハーレム

ピコサイクス
青春
顔は普通、性格も地味。 けれど実は金持ちな高校一年生――俺、朝倉健斗。 学校では埋もれキャラのはずなのに、なぜか周りは巨乳美女ばかり!? 大学生の家庭教師、年上メイド、同級生ギャルに清楚系美少女……。 真面目な御曹司を演じつつ、内心はむっつりスケベ。

キャバ嬢(ハイスペック)との同棲が、僕の高校生活を色々と変えていく。

たかなしポン太
青春
   僕のアパートの前で、巨乳美人のお姉さんが倒れていた。  助けたそのお姉さんは一流大卒だが内定取り消しとなり、就職浪人中のキャバ嬢だった。  でもまさかそのお姉さんと、同棲することになるとは…。 「今日のパンツってどんなんだっけ? ああ、これか。」 「ちょっと、確認しなくていいですから!」 「これ、可愛いでしょ? 色違いでピンクもあるんだけどね。綿なんだけど生地がサラサラで、この上の部分のリボンが」 「もういいです! いいですから、パンツの説明は!」    天然高学歴キャバ嬢と、心優しいDT高校生。  異色の2人が繰り広げる、水色パンツから始まる日常系ラブコメディー! ※小説家になろうとカクヨムにも同時掲載中です。 ※本作品はフィクションであり、実在の人物や団体、製品とは一切関係ありません。

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗@オートスキル第1巻発売中
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

至れり尽くせり!僕専用メイドの全員が溺愛してくる件

こうたろ
青春
普通の大学生・佐藤健太は目覚めると、自宅が豪華な洋館に変わり10人の美人メイドたちに「お目覚めですか、ご主人様?」と一斉に迎えられる。いつの間にか彼らの“専属主人”になっていた健太は戸惑う間もなく、朝から晩までメイドたちの超至れり尽くせりな奉仕を受け始める。