怪我でサッカーを辞めた天才は、高校で熱狂的なファンから勧誘責めに遭う

もぐのすけ

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サマーバケーション勧誘編

夏休み②

 生徒会室へ着くと俺達以外全員揃っているみたいだった。
 神奈月先輩はスピーチ原稿を読みふけり、大鳥先輩と新波先輩は終業式当日の流れの段取りを確認し、前橋は今学期の決算まとめに目を通している。

「すいません遅くなりました」

「シュートにリオ、特にすることないから来なくてもいいって言ったのに」

 神奈月先輩が驚いたように言った。
 確かに今日は休みで構わないと言われたが、他の先輩方や前橋が業務を行っているのに俺達だけサボるわけにはいかない。

「何かやれることがあるかもしれませんし」

「ふむ…………よし、ニーナ」

「は~い」

「何か茶菓子のようなものが食べたいとは思わないかい?」

「そうですね~特に駅前にあるケーキ屋さんとかですかね~」

「というわけだシュート、リオ。駅前にある『パティスリー』というお店で紅茶に合いそうな茶菓子を買ってきてくれたまえ。もちろんお金は私が出そう」

 まさかのお使いかよ。
 いやまぁ庶務っぽいと言われればそうなんだけど。
 一応、仕事がない俺らに対する神奈月先輩からの気遣いってことで捉えていいんだよな?

「でもさすがにお金までは受け取れませんよ」

「いやいや、仕事に対する対価は貰って当然さ。その茶菓子で私達の作業効率が大きく変わってくると言っても過言ではないんだ。超重要案件だよ」

「だって修斗、どうする?」

「どうするも何も、そこまで言われたら断る方が失礼だろうに」

 相手の好意に対して食い下がり過ぎればそれは逆に失礼に値する。引き際ってやつが大事なんだ何事も。

「ついでにキイも行ってきなさい」

「な、なんで!?」

 突然話を振られ、前橋が驚きの声を上げた。

「こうでもしないと運動しないだろキイは。それに決算のチェックなんて学期末じゃなくて年度末で充分だよ。あらかじめの支出額以外のものはないんだから」

「それは……そうですけど……」

「仲良く1年生トリオで美味しい茶菓子を買ってきてくれたまえ」

 そして半ば追い出されるようにして俺達は生徒会室を出た。
 前橋は幾分か納得のいっていないような表情だった。

 下駄箱で上履きから靴に履き替え、下校する生徒達に混ざるようにして校門を抜ける。

「全く……未来さんは人使いが荒い」

「ごめんねきい、私達が生徒会室に来なければ……」

「ち、違う。若元を責めてるんじゃないから」

「責めるなら修斗を……」

「あっさり売るんじゃねーよ俺を」

「高坂のせいかもしれない」

「買い取るんじゃねーよ責任を」

 流れ的に生徒会から追い出されることになったが、これは捉え方によってはチャンスとも言える。
 元々生徒会室に向かったのは仕事を手伝うことの他に前橋を海に誘いたかったからだ。
 みんなが仕事してる中で遊びに誘うよりかは誘いやすい。

「そういえばきい、今度みんなで海に行くんだけど来ない?」

 俺が声を掛けるよりも先に、梨音が誘っていた。
 男の俺が誘うよりも女友達から聞かれた方が答えやすいか。

「みんなって…………誰?」

 まず誰が来るかの心配かよ。
 さては知らない人がいたら来ないつもりだな。この人見知り美少女め。

「いつものメンバーだよ。修斗に佐川にニノと冬華。それに美月もこの後誘おうかなって」

「海かぁ…………うーん」

 駅前に向かう足を止めることなく考え込む前橋。
 人選に問題があるのか海に抵抗があるのか。
 人選だとしたら間違いなく新之助がいるからだな。もしそうなら新之助は家に置いていこう。

「あんまり乗り気じゃない?」

「そういうわけじゃないんだけど…………あんまり泳げないし……」

「海だったら泳ぐことの方が少ないから大丈夫だよ! みんな浅瀬で遊ぶだけだし」

「なんなら浮き輪も持ってけばいいしな。ライフガードの人達がいる海水浴場に行くから何かあっても大丈夫だ」

「なら…………行こうかな」

「やったー! これできいも確保だね!」

 梨音がガバッと前橋に抱きついた。

「暑いからベタベタしないで……」

「俺も抱きついていい流れ?」

「「ダメに決まってるでしょ!!」」

 そんな二人して拒絶しなくても。
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