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サマーバケーション勧誘編
蹴球標的①
夏休みも折り返し、残すはわずか10日ほどとなったころ、俺と梨音は以前にもっちーさんと約束していた通り、キックターゲットに参加しに来ていた。
もっちーさんの運転で梨音が付き添い、目的地までやってきた。
場所は貸し出しの芝生のグラウンドで、片面ずつ巨大なセットが作られている。
どうやらステージが別れているようだ。
おそらくは勝ち進んだ人がもう片方のステージを挑戦することができる仕様なんだろう。
「いやーわざわざもうしわけないっすね」
「全然気にしないでください。海に行った時は色々とお世話になりましたし」
「そうですよ。それに修斗はサッカーが物凄く上手いんですから期待しても大丈夫です」
「お前なぁ、ハードルを上げるようなことを言うんじゃないよ」
「だって本当のことだもん」
「いやいや、参加してくれるだけありがたいんでほんと」
学生限定というだけあって、この場に来ているのは同年代に近い人達が多かった。
中には大学生っぽい人達もいるが、俺でも知っている顔が何人かいる。
それに参加条件もそれなりにシビアだ。
「とりあえず受付済ませましょうか」
俺達は大会の案内人のところに行き、受付を済ませることにした。
黄色の蛍光色のゼッケンを着た人達がテーブルの前で準備をしていた。
「すいません。事前登録していた高坂修斗です」
「はいはい、高坂修斗さんね…………東京Vのジュニアユースに在籍記録があって、Uー15の大会でも優勝経験あり。はい、こちらでも確認できてます」
改めてヴァリアブルにいた頃の話をされると変な感じするな。
「一応、事前に記載していた通り、この大会の状況を後日You◯ubeで流させてもらいますが大丈夫ですか?」
「えっ?」
なにそれ聞いてない。
思わずもっちーさんの方を見ると、「ごめん伝え忘れた」というように片手を立てて申し訳なさそうにスマンのポーズを取っていた。
まぁ流れることに対して別に抵抗はないし、ここまで来て今さらノーというのもない。
俺は二つ返事で了承した。
「では番号札は13番になります。大会開始はおよそ30分後になりますので、それまでお待ちください」
「分かりました」
俺は受け取った札を胸につけた。
キックターゲットで使うボールは自由に触ってもいいということで、1球だけ借りた。
「すんません~。伝えるの忘れてたっす」
「全然それはいいですけど。それよりも、結構見知った奴らがいるんですよね」
「顔馴染みとかっすか?」
「顔馴染みというか過去に戦ったことがあるってだけなんですけど」
分かる範囲で言えば、浦和ガンズの佐久間玖音、名古屋クラウディアの武藤初、紗凪と同じ横浜レグノスの福島衛。
中学時代に戦ったことがある奴らだ。
確か佐久間と福島は2つ上で、武藤は一つ上だったはず。
今でもユースに参加しているのだろうか。
「キックターゲットの難易度にもよりますけど、このメンツならなんとかなりそうだなって…………」
───いや、待て。
一人とんでもない奴がいるな。
直接戦った事はないが、中学3年に上がったころには結構噂にはなってた奴だ。
長髪の金髪で目つきも鋭いが、女子受けしそうな顔をしている男。
「あれは…………川崎アルカンテラの熊埜御堂将太朗か」
「熊埜御堂?」
「『ヴァリアブル世代』って呼ばれてるうちの一人だよ。前橋や桜川でも絶対知ってるぐらいユースサッカー情報誌にも紹介されてるし、日本代表にも選出されてる」
「え~そんな上手い人なんだ」
「上手いというか…………特別なんだよあの選手は」
「特別?」
情報誌でも取り立たされ、直接戦ったことがなくても耳に入ってくるほどの噂は、ただ上手いというだけの話ではなかった。
光の足の速さのように、涼介の個人技のように、紗凪のフィジカルのように、俺でも敵わない長所を熊埜御堂は持っている。
「熊埜御堂は、FKに関してのみ日本のプロを含めた選手の中でも1、2を争うレベルだと言われてる」
「プロって…………大人の!?」
「ああ。中村俊輔って選手がいたのを知ってるか?」
「知らないかも……」
「自分は名前ぐらいは聞いたことあるっすよ」
今は現役も引退してるし、日本代表にいたのも俺らが小さい頃だし仕方ないか。
「その人はFKの名手とも呼ばれていて、海外でも活躍していた選手なんだが、その人が日本代表にいた頃は、FKやコーナーキックといったセットプレーの方が得点の匂いがするとまで言われていたんだ」
「らしいっすね~」
「それであそこにいる熊埜御堂は、多分だけどその選手に影響を受けているんじゃないかって言われるぐらい蹴り方も似ていてしかも左利き、FKの決定率も化け物だと言われている」
「どれぐらいなの?」
「直接狙った時のゴール決定率は…………5割を超えてるらしい」
「…………ふーん。思ったより普通だね」
「ばっ……! フリーキックの2本に1本決まるってとんでもないことだぞ!!」
「ごめんごめん、あんまり凄さ分かんなくて。もっと8割とか超えてるものかと」
8割超えるようなフリーキッカーがいてたまるか……!そんなんもはやゴールキーパー不在じゃねぇか!
俺でも当時は3割あれば上出来だと思ってたぐらいなのによ。
ちなみに熊埜御堂はひたすらにFKのみを追求しているようで、その他の技術に関してはあまり良くないらしく、日本代表でもオプションの一つとして召集されているみたいなことを聞いた。
もっちーさんの運転で梨音が付き添い、目的地までやってきた。
場所は貸し出しの芝生のグラウンドで、片面ずつ巨大なセットが作られている。
どうやらステージが別れているようだ。
おそらくは勝ち進んだ人がもう片方のステージを挑戦することができる仕様なんだろう。
「いやーわざわざもうしわけないっすね」
「全然気にしないでください。海に行った時は色々とお世話になりましたし」
「そうですよ。それに修斗はサッカーが物凄く上手いんですから期待しても大丈夫です」
「お前なぁ、ハードルを上げるようなことを言うんじゃないよ」
「だって本当のことだもん」
「いやいや、参加してくれるだけありがたいんでほんと」
学生限定というだけあって、この場に来ているのは同年代に近い人達が多かった。
中には大学生っぽい人達もいるが、俺でも知っている顔が何人かいる。
それに参加条件もそれなりにシビアだ。
「とりあえず受付済ませましょうか」
俺達は大会の案内人のところに行き、受付を済ませることにした。
黄色の蛍光色のゼッケンを着た人達がテーブルの前で準備をしていた。
「すいません。事前登録していた高坂修斗です」
「はいはい、高坂修斗さんね…………東京Vのジュニアユースに在籍記録があって、Uー15の大会でも優勝経験あり。はい、こちらでも確認できてます」
改めてヴァリアブルにいた頃の話をされると変な感じするな。
「一応、事前に記載していた通り、この大会の状況を後日You◯ubeで流させてもらいますが大丈夫ですか?」
「えっ?」
なにそれ聞いてない。
思わずもっちーさんの方を見ると、「ごめん伝え忘れた」というように片手を立てて申し訳なさそうにスマンのポーズを取っていた。
まぁ流れることに対して別に抵抗はないし、ここまで来て今さらノーというのもない。
俺は二つ返事で了承した。
「では番号札は13番になります。大会開始はおよそ30分後になりますので、それまでお待ちください」
「分かりました」
俺は受け取った札を胸につけた。
キックターゲットで使うボールは自由に触ってもいいということで、1球だけ借りた。
「すんません~。伝えるの忘れてたっす」
「全然それはいいですけど。それよりも、結構見知った奴らがいるんですよね」
「顔馴染みとかっすか?」
「顔馴染みというか過去に戦ったことがあるってだけなんですけど」
分かる範囲で言えば、浦和ガンズの佐久間玖音、名古屋クラウディアの武藤初、紗凪と同じ横浜レグノスの福島衛。
中学時代に戦ったことがある奴らだ。
確か佐久間と福島は2つ上で、武藤は一つ上だったはず。
今でもユースに参加しているのだろうか。
「キックターゲットの難易度にもよりますけど、このメンツならなんとかなりそうだなって…………」
───いや、待て。
一人とんでもない奴がいるな。
直接戦った事はないが、中学3年に上がったころには結構噂にはなってた奴だ。
長髪の金髪で目つきも鋭いが、女子受けしそうな顔をしている男。
「あれは…………川崎アルカンテラの熊埜御堂将太朗か」
「熊埜御堂?」
「『ヴァリアブル世代』って呼ばれてるうちの一人だよ。前橋や桜川でも絶対知ってるぐらいユースサッカー情報誌にも紹介されてるし、日本代表にも選出されてる」
「え~そんな上手い人なんだ」
「上手いというか…………特別なんだよあの選手は」
「特別?」
情報誌でも取り立たされ、直接戦ったことがなくても耳に入ってくるほどの噂は、ただ上手いというだけの話ではなかった。
光の足の速さのように、涼介の個人技のように、紗凪のフィジカルのように、俺でも敵わない長所を熊埜御堂は持っている。
「熊埜御堂は、FKに関してのみ日本のプロを含めた選手の中でも1、2を争うレベルだと言われてる」
「プロって…………大人の!?」
「ああ。中村俊輔って選手がいたのを知ってるか?」
「知らないかも……」
「自分は名前ぐらいは聞いたことあるっすよ」
今は現役も引退してるし、日本代表にいたのも俺らが小さい頃だし仕方ないか。
「その人はFKの名手とも呼ばれていて、海外でも活躍していた選手なんだが、その人が日本代表にいた頃は、FKやコーナーキックといったセットプレーの方が得点の匂いがするとまで言われていたんだ」
「らしいっすね~」
「それであそこにいる熊埜御堂は、多分だけどその選手に影響を受けているんじゃないかって言われるぐらい蹴り方も似ていてしかも左利き、FKの決定率も化け物だと言われている」
「どれぐらいなの?」
「直接狙った時のゴール決定率は…………5割を超えてるらしい」
「…………ふーん。思ったより普通だね」
「ばっ……! フリーキックの2本に1本決まるってとんでもないことだぞ!!」
「ごめんごめん、あんまり凄さ分かんなくて。もっと8割とか超えてるものかと」
8割超えるようなフリーキッカーがいてたまるか……!そんなんもはやゴールキーパー不在じゃねぇか!
俺でも当時は3割あれば上出来だと思ってたぐらいなのによ。
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