怪我でサッカーを辞めた天才は、高校で熱狂的なファンから勧誘責めに遭う

もぐのすけ

文字の大きさ
144 / 203
サマーバケーション勧誘編

真剣勝負①

 梨音やもっちーさん達のいる方に向かって親指を立て、意気揚々と待機エリアに戻ったところで既に挑戦を終えた人達から囲まれた。

「お前、高坂修斗だったのかよ!」

「怪我したって聞いてたけど治ったのか!?」

「全パーフェクトとか相変わらず凄ぇな」

 質問攻めだ。
 俺が見知っているのは3人だけで、他は全く知らない人達ばかりだというのに、自分のことながら改めて多くの人に知られていたことを実感する。

 一通り簡単な質問に答えたところで次の人の準備が始まったことから、騒ぎ立てることはなくなった。
 みんなが離れたところで熊埜御堂と目が合った。
 俺はそのまま熊埜御堂の隣に座った。

「初めまして、だな」

「お前が高坂か。噂には聞いている」

 熊埜御堂が世間的にも有名になったのは、ちょうど俺が怪我した頃と同じになるので入れ替わりのような形になる。
 つまり、お互いに話は聞いていても実際のプレーを見たことない同士だったのだ。
 そして今日、少なくともお互いの蹴り方を見て思うところがあるはずだ。

「熊埜御堂の蹴り方はやっぱり独学なのか? それとも誰かを参考に?」

「…………参考にした選手は何人かいる。だが、途中から自分なりの形に変えた」

「やっぱそうか。とてつもない完成度だよな」

「お前は何故こんなところにいるんだ? ユースでは何をしてる」

 何故こんなところにいるかは、そっくりそのままお返ししたいところだけどな。

「俺はユースに入ってない。怪我のせいでユースに上がれなかったんだ」

「そうか」

 ………………会話終わっちまった。
 せっかく話したくない怪我話を展開したというのに。
 あんまり話したりするのは好きじゃないのか?
 賢治と同じ職人気質なのかな。

「熊埜御堂こそ、なんでこれに出てるんだ? ユースの練習とかはいいのか?」

「金のためだ」

 予想外にシンプルな答えが返ってきた。
 そういえばもっちーさんの目的のゲームとは別に賞金3万円も出るんだったか。

「金?」

「当然だ。俺には金がどうしてもいる。ユースには特別に許可を貰った。こんな簡単なゲームで3万円も貰えるなら、出ない理由がない」

 簡単なゲームときたか。
 確かに1stステージはシンプルなキックターゲットだったし、俺自身もミスはしていない。
 それでもここまで自信のある言葉を、思ったとしても口には出さない。
 それにしても金のためにわざわざ許可まで貰って出るなんて、プロ志向の考え方をしてるのか?

「なんでそんなに金が必要なんだよ」

「お前にそこまで話す義理はない」

 まぁ…………それはそうだけども。
 ちょっとしたコミュニケーションの一種じゃないか。

「ま、俺も負けるつもりはないからな。この後もよろしく頼むぜ」

「はっ、お前ごときが俺を超えるのか?」

 おっと……?
 これまた予想外な回答だ。
 お前ごときだって? 随分と挑発的な発言じゃないか。
 ここまで明確に下に見られたことは久しぶりな気がする。
 弥守や優夜に言われた時とはまた違う、相手がどうのこうのというよりも、自分の実力に確実な自信があるがゆえの発言なのだろう。
 腹立つというよりも、素直に面白いと思った。

「超えてみせるさ。ことサッカーに関して俺は、誰にも負けたくない」

「フリーキックは俺の全てだ。結果も金も、誰にも譲らない」

 意図せず宣戦布告みたいになってしまったが、フリーキックの名手クラックと呼ばれている熊埜御堂と真剣勝負ができるのは貴重なことだ。
 これを復帰へと足掛かりの一つとさせてもらう。


 その後、全員の挑戦が終わり結果発表となった。
 当然、俺や熊埜御堂は突破し、佐久間さくま玖音くおん武藤むとうはじめ福島ふくしままもるといった俺の見知った顔も1stステージを突破していた。
 俺を含めた突破者7名はそのままの流れで反対側のコートへと移動させられ、続いての2ndステージの説明を受けることとなった。
 的についてはカーテンが掛けられてまだ見えない。

「それでは2ndステージの説明をさせていただきます。まずキック位置ですが、先ほどの位置からは少し離れたところになります」

 そう言って指定した場所はペナルティエリアのちょうど真上。
 つまり、5mほど後ろに下がったことになる。

「的から約16.5mの位置になります。そして問題の的ですが───」

 そこでカーテンが下ろされ、現れた的は1番~7番の番号が振られた大小様々な形をしていた。
 円形や長方形、台形に三角形など先ほどのノーマルなパネルとは大きく異なっていた。

「こちらの的になります。こちらを持ち球12球の間に狙っていただく形になります」

 距離が遠くなり、なおかつ大きさや形が変わった的。先ほどまでとは打って変わって難易度が上がっている。
 それにこの距離はフリーキックの位置により近い。
 つまり、熊埜御堂の有利ポジということだ。

 だからと言って壁やキーパーがいないことに変わりはない。
 俺がミスをしなければ負けはない。
 集中だ。
感想 0

あなたにおすすめの小説

俺は陰キャだったはずなのに……なぜか学園内でモテ期が到来した件

こうたろ
青春
友人も恋人も居ないボッチ学生だった山田拓海が何故かモテだしてしまう。 ・学園一の美人で、男女問わず憧れの的。 ・陸上部のエースで、明るく活発なスポーツ女子。 ・物静かで儚げな美術部員。 ・アメリカから来た金髪碧眼でハイテンションな留学生。 ・幼稚園から中学まで毎朝一緒に登校していた幼馴染。 拓海の生活はどうなるのか!?

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。

ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。 真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。 引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。 偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。 ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。 優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。 大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。

むっつり金持ち高校生、巨乳美少女たちに囲まれて学園ハーレム

ピコサイクス
青春
顔は普通、性格も地味。 けれど実は金持ちな高校一年生――俺、朝倉健斗。 学校では埋もれキャラのはずなのに、なぜか周りは巨乳美女ばかり!? 大学生の家庭教師、年上メイド、同級生ギャルに清楚系美少女……。 真面目な御曹司を演じつつ、内心はむっつりスケベ。

キャバ嬢(ハイスペック)との同棲が、僕の高校生活を色々と変えていく。

たかなしポン太
青春
   僕のアパートの前で、巨乳美人のお姉さんが倒れていた。  助けたそのお姉さんは一流大卒だが内定取り消しとなり、就職浪人中のキャバ嬢だった。  でもまさかそのお姉さんと、同棲することになるとは…。 「今日のパンツってどんなんだっけ? ああ、これか。」 「ちょっと、確認しなくていいですから!」 「これ、可愛いでしょ? 色違いでピンクもあるんだけどね。綿なんだけど生地がサラサラで、この上の部分のリボンが」 「もういいです! いいですから、パンツの説明は!」    天然高学歴キャバ嬢と、心優しいDT高校生。  異色の2人が繰り広げる、水色パンツから始まる日常系ラブコメディー! ※小説家になろうとカクヨムにも同時掲載中です。 ※本作品はフィクションであり、実在の人物や団体、製品とは一切関係ありません。

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗@オートスキル第1巻発売中
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

至れり尽くせり!僕専用メイドの全員が溺愛してくる件

こうたろ
青春
普通の大学生・佐藤健太は目覚めると、自宅が豪華な洋館に変わり10人の美人メイドたちに「お目覚めですか、ご主人様?」と一斉に迎えられる。いつの間にか彼らの“専属主人”になっていた健太は戸惑う間もなく、朝から晩までメイドたちの超至れり尽くせりな奉仕を受け始める。