怪我でサッカーを辞めた天才は、高校で熱狂的なファンから勧誘責めに遭う

もぐのすけ

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文化祭勧誘編

田舎出身②

【若元梨音目線】

「ああ、そうそう忘れるところだった。シュート」

 修斗が神奈月先輩に呼ばれ、なにやらヒソヒソ話をしていた。
 一体なんだろう?

 しばらくするとドアがノックされ、一人の女の子が生徒会室に入ってきた。

「あの~、会長にお願いしてた大石柚葉ゆずはです」

「ゆ~ちゃんだ。どうしたの~?」

「そういえば翼もおったんだすけな。わざわざ会長にお願いしてしまったべ」

「ニーナは知り合いだったのか」

「1年の頃、同じクラスだったんですよ~。どうしたの~?」

「えーっと…………」

 大石さんと呼ばれる人は周りを見渡すと、修斗のところで視線が止まった。
 さっき神奈月先輩が話していたことと関係あるのかな?

「きい、見たことある人?」

「…………私はない」

 こっそりきいにも聞いてみたけど私と同じ答えが返ってきた。

「彼が高坂修斗だよ。シュート、先ほど説明した通りだ、大石さんが君に話があるらしい」

 やっぱりそうみたいだ。

「初めまして。1年7組の高坂修斗です」

「ああ、こちらこそ初めましてぇ。2年3組の大石柚葉だべ」

「用って何ですか?」

「えっと……ここじゃ少し話しづらいすけ、外で話してもいいかぁ?」

「え、ええ。大丈夫ですよ」

 そう言って大石さんと修斗は外へと出て行ってしまった。

 二人が出て行くところを見て、なんだか少し私の心がザワついた。
 ここ最近の修斗は、キックターゲットの動画のせいで他のクラスからも男女問わず見に来る人が増えていて、それはつまり冬華が話していたことが、少なからず的を射ていることを証明していた。
 もしかしたらあの人も…………そんな修斗を見て気になって…………?
 ここで話し辛いってことは……そういうことだよね…………?

「さて…………リオ、キイ」

「!! は、はい!」

「…………?」

「大石さんと修斗が何を話してるのか、気になるよね」

「へっ!? い、いや、別にそんなことは……!」

「そうだよ。何で私まで…………」

 そう言いつつ、きいも何だかそわそわしていた。

「いいんだよ大丈夫。二人でこっそり覗き見してくるといいよ!」

「ちょっ、神奈月先輩! 茶化さないでくださいよ!」

「気にならないのかい?」

「うっ…………それは…………」

「内容は私も全く知らないけど、高坂の幼馴染として、熱狂的なファンとして見過ごせないんじゃないかなぁ」

「……別に熱狂的なファンじゃないし」

「そ、そうですよ。幼馴染だからってそんな………………きい、行こっか」

「若元!?」

 気になる。
 実際凄い気になる。
 いきなりそんな、まさか無いと思うけど万が一告白してるような場面だったりなんてしたら……私は気が気じゃない。

「うんうん、私が許可するから行っておいで」

 神奈月先輩はきっと私の修斗に対する気持ちに気付いているんだ。
 だからさりげなくフォローを…………。

「会長…………さては楽しんでませんか」

「そんなことあるよ!」

「せめて否定してくださいよ!」

 違った。
 純粋に楽しんでるだけだった。
 私達を行かせた方が面白くなりそうだからだった。

 私は嫌がる素振りを見せながらもしっかり付いてくるきいを連れて生徒会室を出た。
 廊下を少し行ったところ、階段の近くで二人が話し合う声が聞こえてきた。
 遠目から修斗の背中越しに大石さんの姿が見え、私達は角に隠れるようにして忍んだ。

「………………動画を見て……………………どうしても会いたく……………」
「………………そんな全然……………………ありがとうございます……………」

 微かに聞こえてきた言葉から察するに、やっぱりキックターゲットの動画を見て修斗に会いにきたんだ。

「良かったら………………………付き合ってもらえねぇすけ……………………」

(!?)

 思わずきいと顔を見合わせてしまった。
 今、絶対に、付き合ってって聞こえた。
 大石さん、修斗に告白してる…………!

「…………………………いいですよ!………………」

 お辞儀をしている大石さんに向かって、修斗もお辞儀をし返していた。
 その元気な回答が聞こえてきたことで、私の動悸が早くなる。
 自分がちゃんと立てているのかも分からない。
 周りの音が何も聞こえなくなったように、目の前がチカチカしてきた。

 ───修斗が大石さんの告白にOKしていた。

 ……もしかしたら私の聞き間違いかもしれない。
 部分部分でしか会話は聞こえてなかったから、もしかしたら。
 そう思ってきいを見たけど、同じようにきいも動揺していたから聞き間違いじゃないんだと分かってしまった。

 あ、あれ?
 やだ、ちゃんと立ってられない───。

「若元!?」

 少しフラついたところで、きいに支えられた。
 危なく倒れるところだった。
 私って…………こんなに弱かったっけ。

「ん…………おい梨音? ちょっ、大丈夫かよ!」

 驚いたきいの声に気付いたのか、修斗がこちらへ走ってきた。

 やだ…………やだよ……。
 修斗を他の人に取られたくない……。
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