14 / 24
二章
七、若き日のゼウス 後編
しおりを挟む
「二十年前のあの日、初めての勇者が思いの外、上手く創れたんで浮かれていてな。本当にすまない」
若き日の自分のミスに今になって気が付くなんて。
――うっかりしていた。
「村中を捜したと言っていたが……何の手掛かりもなくて当然だ。他の者には何も見えない。だが、あの子が強く望んだのなら魔界の入口が現れる可能性がある」
ガチャン!
何かが割れる音に、女性はハッとすると、急いで台所へ駆けつけた。
「やっぱり!! 私の湯呑みじゃない! ひどい!」
村長がよりによって、娘のお気に入りの湯呑みを割ったようだが全く目に入っておらず、あんぐりと口を開けたまま固まっている。
――女の勘もよく当たるのだ。
「そ、それで……孫は……」
「恐らく、見つけてしまったんだろう」
「だけど、一体どうやって?」
「本当に何の変哲もない場所なのだ。だが、私たちの怒りが一定を超たとき扉が現れ、トンネルがあちら側に通じる」
もし、その時が来た場合は何人か仲間を呼び寄せ、勇者と共に行かせるつもりだったのだ。
勇者とはいえひとりで行かせるつもりなどなかった。
ーー正義感も増し増し、初回限定の特別仕様だ!
勢いづいてしまったあの日の自分が、情けないやら、悔しいやら。
マガドや城に住む魔物達とドンチャン騒ぎで祝った日から今まで、約束が破られた様子はない。
それでも、正義感を必要以上に強く与えられた勇者にとって、日々、耐え難い悪が溢れていたのだろう。
その事に気付いていなかった、私の責任だ。
若き日の自分のミスに今になって気が付くなんて。
――うっかりしていた。
「村中を捜したと言っていたが……何の手掛かりもなくて当然だ。他の者には何も見えない。だが、あの子が強く望んだのなら魔界の入口が現れる可能性がある」
ガチャン!
何かが割れる音に、女性はハッとすると、急いで台所へ駆けつけた。
「やっぱり!! 私の湯呑みじゃない! ひどい!」
村長がよりによって、娘のお気に入りの湯呑みを割ったようだが全く目に入っておらず、あんぐりと口を開けたまま固まっている。
――女の勘もよく当たるのだ。
「そ、それで……孫は……」
「恐らく、見つけてしまったんだろう」
「だけど、一体どうやって?」
「本当に何の変哲もない場所なのだ。だが、私たちの怒りが一定を超たとき扉が現れ、トンネルがあちら側に通じる」
もし、その時が来た場合は何人か仲間を呼び寄せ、勇者と共に行かせるつもりだったのだ。
勇者とはいえひとりで行かせるつもりなどなかった。
ーー正義感も増し増し、初回限定の特別仕様だ!
勢いづいてしまったあの日の自分が、情けないやら、悔しいやら。
マガドや城に住む魔物達とドンチャン騒ぎで祝った日から今まで、約束が破られた様子はない。
それでも、正義感を必要以上に強く与えられた勇者にとって、日々、耐え難い悪が溢れていたのだろう。
その事に気付いていなかった、私の責任だ。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
8
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる