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第1章幸せな日々、そして・・・

少年の告白と令嬢の答え3

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 「身に余るお申し出をしてくださりありがとうございます。
 わたくしの両親は恋愛結婚を推奨してくれておりますので、すぐにでもお受けしたいところです。
 ですが、まだ私にはアル様とともに国のために力を尽くせる自信がありません。
 家名をおっしゃらないのは、この国において重要な位置を占める貴族の方だからではないでしょうか。
 アル様があえて名乗らない家名をこの場で問いただすことはいたしません。
 しかし、それほど地位のある方のそばにいるということは、気持ちだけでどうにかなるものではないのです。
 たとえわたくし自身が国にかかわることはなくとも、その妻だというだけで求められるものはあるはずです。」
 「それじゃあ、受けてはくれないのかい?
 僕が君だけを希、君が何をしても守ると言っても。」
私が次の言葉を探している間に、アル様が詰め寄ってきます。
実をいうと、花の中から現れて声をかけてくださったときから、私はアル様に引き付けられていました。
一目ぼれとは違う、波長が合うような感覚を味わったのです。
だからこそ、この型につらい思いをさせたくないと感じ、それを訴えかけようとして気が付いた時にはかなり厳しいことを言っていました。
今も本当は私の奥底にあるアル様を慕う気持ちをさらけ出してしまいたいのです。
けれど、実りある未来を手に入れるためにそれはぐっとこらえなければなりません。
まずはアル様の説得からです。
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