少年少女の異世界英雄譚 ~ みんなで異世界を生き抜きます ~

エイスト

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第二章 街での日常

第十九話『強化(武具再現 ・武具改造編)』

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「それじゃあみんな。全員揃ったところで始めようか。」

 異世界に来て今日で三日目の朝の談話室にて、僕らは椅子に座って今日の予定の会議をする。

「でもその前に、今後僕らが取り組むことを整理しておこう。」

 僕らがこの異世界に来て3日目が経った。この世界はレベルという概念が存在していて、モンスターという存在もいる。
 それに獣人という種族もいて、その獣人の人が営んでる幾つかの店の顧客になっている。
 しかし、だからといってこの世界のことに詳しくなったわけではない。まだ情報不足な状況であることには変わらない。
 そこで、今後僕らが取り組むこと、やらなければならないことを整理していく。

 一つ目は、モンスターの討伐でクエストの報酬や素材売却で得たお金の使い道について。これは生活費、主に食事や宿代、装備の購入、いざというときのための貯金、急な出費の時用、等々。第一目標として、僕ら全員の内一人分の所持金が金貨50枚ほどになるまで稼ぐのを目標とする。現実の世界だと50万円を所持することになるのだが、いざというときのことを考えれば両案だろう。

 二つ目は今いる世界について。この世界の情勢、土地、モンスターなどの情報の収集をすること。これは常に怠らず続行だ。

 三つ目、自分たちのレベルを上げること。世界は広く、僕らよりも強い敵は沢山いる。今は周辺のモンスターと戦って、十分以上にレベルを上げる。レベルが高くて越したことはない。現段階での目標は30~40ほど。それ以上のレベ上げとなるとこの街から離れる必要がある。

 四つ目は英雄武具について。これは、自分たちがこの世界に来て既に所持してた武具のことで、自身のレベルが上がるにつれてウェポンスキルが解放することができる。まだ解放できるスキルがある筈の為、レベル上げを怠らないようにする。

 五つ目は戦闘技術。これはクラススキルの影響か、ある程度所持してる英雄武具の扱いのコツが分かる。しかしスキルレベルがまだ低いため、戦闘訓練はちゃんとしておいた方がいい。

 大体こんなものだ。
 僕たちはまだこの世界について詳しくはない。情報がまだ足りないし、この世界の常識もまだ分かりきってない。
 それに戦闘技術もまだ未熟だ。異世界に来てまだ三日目だから未熟なのは分かるけど、それでもいつ死んでもおかしくない世界だ。少しでも戦闘技術を上げるため、戦闘訓練は必須となるだろう。
 初日に盗賊相手と戦って勝てたものの、あれはこちらからの奇襲や向こうのレベルとかで運良く勝てたものだ。
 運だけではどうしようもないこともある為、レベルに技術などを万全な状態にしておく必要がある。
 
「そういう訳でみんな。今日は僕らの強化を目的として頑張ろう。」

「でもエイスト、強化といっても具体的に何をするんだ。」

 ジニアが質問してきた。
 強化といっても、ただ体を動かして鍛える訳じゃない。それじゃあ時間がかかるし、必ずいい結果を生み出せるわけがない。
 先ほどのことだが、レベルと技術力を上げる必要があるといったが、その二つが全てではない。
 僕らに必要なのは高いレベルと素晴らしい技術、そして強い武器だ。
 今日の強化はその武器に関わって来る。

「それはウェポンスキルが関わってくるんだ。僕が目につけたのはこの二つだ。」

 僕が目につけたもの、それは、『武具再現(ウェポンコピー)』と『武具改造(ウェポンカスタム)』のことだ。
 このスキルを使えば、必ずといえるほど強くなれる。

 『武具再現(ウェポンコピー)』はその名の通り、同じ系統の武具を手にすることでコピーすることができるスキルだ。
 例えば、ノバラは剣の英雄武具だから大剣をコピーすればそれに似た大剣に変えれたり、細剣をコピーすれば似た細剣に変えることができるということだ。

 『武具改造(ウェポンカスタム)』は、これもその名の通り武具を改造することができるスキルだ。
 武具にアクセサリーを飾ったり、鉱石及び金属、モンスターの素材などを用いることによって、武具の能力が上がるなどの変化が起きたり、新しい武具ができる。
 なにかのゲームとどこか似ている気がするけど、なんだったっけ。

【変更済】→【変更前2】

「そういう訳で、今から武器屋に行くつもりなんだ。武器やなら沢山コピーできるし、自分好みにカスタマイズできるだろうしね。」

 地図で武器屋を確認したら、武器屋もセチアさんの知り合いが営んでることが書かれてある。
 セチアさんの知り合いって、どのくらいいるのだろうか。

「それじゃあみんな。各自準備して行こうか。」

 そうして、僕らの異世界生活三日目がはじまる。



「さて、この辺りの筈なんだけどなぁ。」

 宿屋から出たあと、セチアさんの知り合いが営んでる武器屋へ向かってるのだが、道の途中から人混みが増えてきた。
 僕らは人混みの中、逸れたら危ないので二人一組で進むようにしている。

「うーん、そろそろの筈なんだが……あっ、あれだ!」

 剣と盾の絵が彫られている吊り看板を見つけた。
 恐らくあそこだろう。


「みんな、店を見つけたから僕について来て。」

「分かった。」

「やっと人混みから解放される。」

「早く人混みから脱出しましょう。」

 僕らは急ぎ足で武器屋へ駆け込んだ。



 カランカラン

 武器屋の中に入ると、剣や槍などの武器が壁や棚に置かれていたり、ショーウィンドウに飾られてるのもある。

「らっしゃい!今日は新品の武器が入荷されてるぞ!買うなら今だぜ!」

 店の奥のカウンターからも大きな声が響く。

「おっ、お客さんらは新人かい。今ならサービスしとくぜ。」

 見ると、頭が牛で尻尾も生えている男がカウンターにいる。
 まるで古代ローマにいたとされるミノタウロスみたいだな。

「どうも。僕たちセチアさんからおすすめの店を紹介されて来た新人冒険者です。知り合いが営んでる武器屋があると、貰った地図に書かれてました。」

「そうか!セチアと他のみんなにお得意の客ができたと話を聞いたが、アンタらがそうか。」

 僕は武器屋の店主に、セチアさんの知り合いに武器屋の店主がいるため、そこに行っていい武具がないか見てみたいと言う。

「いいぞ!気に入った武具があれば是非買っていってくれ!」

 よし!まず第一段階成功だ。

 僕らにはウェポンコピーがあって、武具を持つとその武具をコピーすることができる。    
 でもそれだと詐欺になってしまうし、セチアさんの知り合いに悪いことをしていることになる。

 まずは第一段階に、武具を見させてほしいと言う。
 長時間武具を見てたら不自然に思われるだろうから、先に口実を言ってればそこまで気にしないだろう。
 次に第二段階、ウェポンコピーをして武具をコピーする。
 これで本日の目標は達成されたのと同じだ。
 最後に第三段階、一通りウェポンコピーを完了すれば、ナイフや小盾などの、戦闘や生活で役に立ちそうなものを購入する。流石に何も買わずに帰るのは失礼だし、役立ちそうなら購入しておくといいだろう。

(さて、と。銃はどこかな。あればコピーしておきたいんだけど。)

 僕らは武器屋の中を周り、次々とコピーしていく。
 剣や槍、弓や杖などはメジャーな武器だから見つけやすいし数も多いため沢山コピーできる。
 でも籠手や盾などは防具であるため余り置いていなくて、コピーする数は少ない。

(えーと……あれ?銃が見当たらないぞ。)

 僕は先ほどから銃を探しているけど、全くと言っていいほど見つからない。

「すみません。ここに銃って置いてますか?」

「じゅう?なんだいそりゃ。」

 あれっ?この人は銃を知らないのか。
 まぁ銃はマイナー武器に属してるから余り知られてないだろうけど。
 僕は腰に掛けてる銃を店主に見せ、使い方を説明する。

「うーん。やっぱり初めて見るものだな。」

 …武器屋の店主から嘘を感じない。
 やっぱり銃を知らないようだ。
 そこで僕は銃について説明する。

「…なるほどな。しかし興味深い武器だな。弓と違って初心者にも扱いやすく、力が弱い者でも使える。かと言って、弓のように曲射にできないため障害物や味方ごしに攻撃できないし、発砲時の反動もあるため足腰を鍛える必要もある。」

 おお!銃の利点と欠点を看破るとは、流石は武器屋の店主だ。

「なぁ、その銃って武器をもっと見せてもらっていいか。できれば分解して詳しい構造を知りたいんだ。」

 分解!それはちょっと困る。
 僕自身、銃の構造はそこまで知らないし、分解しても修復するのができなくなったら元も子もない。
 唯一の武器を失うのは避けたい。

「銃の構造なら某(それがし)が知ってるでござる。」

 デイジーがタイミングよく話に入って来てくれた。
 恐らくデイジーも僕と同じく、分解して修復できない可能性を分かってるだろう。

「紙とペンはお持ちですかな?」

「あ、ああ、今持ってくる。」

 そう言って武器屋の店主は店の奥に入っていく。

「ありがとう、デイジー。」

「いいや、構わんでござるよ。」

 そう言ってると、店の奥から店主が戻ってきた。手には紙とペンを持っている。

「言われた通り、紙とペンを持って来たぜ。」

「うむ、仕事が早くて感謝するでござる。」

 そう言ってデイジーは机で銃の構造をスラスラと書いていく。
 どのように発砲するのか、どのように新しい弾が装填されるのか、事細かく書いていく。
 本当に、デイジーはこういうことに関しては天才的だ。
 
「よし、完成でござる。」

 銃について書かれた紙を店主に手渡した。

「ありがとうな!見たことない武器を見せてもらったのとその構造を教えてもらったお礼に、兄ちゃんたちの専属武器店になってやるぜ!今度からオマケするぞ!」

 よし!
 思わぬことでだけど、武器屋のコネが手に入って良かった。

 これで、セチアさんの雑貨屋、ボルツさんの防具屋、カトレアさんの服屋、ザクラさんの魔道具店、そしてこの武器屋の店主と、五つの店とコネが手に入った。
 宿屋のアチェロスさんとはまだそんなに親しくないため、コネが手に入ったことになってない。地道に手に入れるようにするか。

 そうして武器屋に来て数時間後、みんな一通り武器をコピーできたようだし、そろそろ帰るか。

 僕らはカウンターに集まって、そこそこ役立ちそうな武器を購入する。
 みんなはスリングショットやブーメランなどを選んでいて、僕はスリンガーと小盾を選んだ。
 小盾は籠手と融合してて、刃を受け止めたり受け流すのに役立つ。以前に一角兎との戦闘で銃を盾に使ってたため、ちゃんとしておきたいと思ってた。これは右腕に装備しておく。
 次にスリンガーだが、これは少し特殊なものだ。
 スリンガーとは、籠手と弓が融合した武器兼防具だ。と言っても、このスリンガーはそれと違い、機能は主に二つある。
 一つはクラッチクローと言って、爪状のクローを発射して、フックのように木の枝や崖などに引っ掛ける。
 もう一つはアイテムを装填して撃つというものだ。例えば、手榴弾とかの爆発物を装填して敵に撃ったり、上空にいる敵を撃ち落とすために石などを装填して撃つというのだ。
 スリングショットやブーメランは漫画や小説で出てくることはあるが、スリンガーは余り耳にしない。強いて言うなら、巨大モンスターを狩るゲームで聞くくらいだ。

「ようし!それじゃあ……合計で金貨5枚だな!」

 僕はカウンターに金貨5枚を置き、早速購入したスリンダーを装備した。

(この機能をああすれば多分あれができる筈だ。)

 そう思い込んでると、店主が手紙を渡してきた。

「これを鍛冶屋に持っていってくれ。そうすれば兄ちゃんの持ってる武器と同じのを作ってくれるぜ。」

 おお!つまりこれは鍛冶屋への紹介状か。これを渡せば鍛冶屋にもコネが手に入るかも。

「そういえば兄ちゃんらはセチアたちの名前を聞いてるんだったな。ザクラから聞いたぜ。」

 ザクラさんから、か。通信用の魔道具でも作ってるのかね。

「俺の名前はラーク!セチアたちとは昔からの付き合いでな、今でもよく会ってる。」

「ラークさんですね。今後ともよろしくお願いします。」

「おう、よろしく!」


 武器屋を出た後、ラークさんの紹介で誘われた鍛冶屋に向かっているところだ。

「そういえばみんな。ウェポンコピーできた武器はあったかい?」

「はい。僕は10種類以上コピーできました。」

「俺もそれくらいだ。」

「私も。」

「俺も!」

 みんな沢山コピーできたようだ。剣や槍はメジャー武器だから当然か。

「俺は余りコピーできなかった。ハァ」

 ジニアが落ち込んでる様子で溜息を吐く。やっぱり籠手だと防具屋だからか。

「俺も余りコピーはできなかったな。だが攻撃系スキルが手に入ったから不満ではない。」

「ああ、そういえば俺も攻撃系スキルが手に入ったぞ。」

 パチラは満更でもない様子だ。

 聞いてみたところ、パチラがコピーした盾は攻撃可能としたもので、攻撃系スキルを獲得したようだ。

 一つ目はスパイクシールド。表面に鉄のトゲトゲが付いている盾だ。ちなみにスキルは『鉄針殴(てっしんおう)』と言い、ゲームのスキルの『シールドバッシュ』と動作が同じで盾で相手を殴る技だ。
 二つ目はデュエリングシールド。凧状の盾、カイトシールドと剣が組み合わさったものだ。盾の尖ってる部分に剣の切先が出ていて、守りと攻撃の両方を兼ね備えているようだ。スキルは『守衛斬撃(しゅえいざんげき)』で、盾に付いてる切先で相手を斬りつける技だ。
 三つ目はランタンシールド。盾と籠手が組み合わさっていて、盾の中心にランタンが取り付けられている。夜間戦闘や目眩しに使えそうだ。他にも、腕と平行して剣身を伸ばす機能が備わってる。スキルは『火光盾(かこうたて)』と『盾刃突(じゅんじんとつ)』の二つだ。
 最後の四つ目はブレイクバックラー。バックラーに太い針金をリング状にしたのを付けたものだ。これは別名、ソードブレイカーともいわれていて、リング状で相手の剣を絡め折り取る機能がある。スキルは『武器破壊(小)』と言い、武器破壊系のスキルだ。

「盾といっても、ただ守るだけじゃないというわけか。とにかく、これでパチラも攻撃手段が手に入ったわけだ。」

 そういえばパチラは今まではカウンター系のスキルや突進系のスキルばかりで、攻撃手段はほとんどなかった。

「ああ。けれど攻撃すると隙ができて防御に影響が出てくる。相手の隙を狙って攻撃するとかの工夫を考える必要があるな。」

 パチラは攻撃手段を分析して、使い方を考えてるようだ。
 そもそもパチラの攻撃力は僕らの中で一番低い。仮に攻撃したとしても余りダメージは入らないだろう。
 でも使い方を考えれば話は別だ。例えば相手の目や傷口に攻撃すればクリティカルが入りダメージ量は普通に攻撃するよりも高くなる。それに相手の武器破壊は味方の状況を有利にする。

「確かにパチラの言う通り、パチラの役割は敵の攻撃から味方を防ぐことだ。でも戦況を見ながら相手の隙を見て攻撃すれば、味方側が有利になるだろうね。」

 要は工夫次第で戦況を変えれるということだ。ただ守るだけじゃなく相手の弱体化もできるなら、戦況を大きく揺らすことになるだろう。

「今度モンスターと戦う時に、攻撃と防御の両方を使い分けることができるように頑張ろう。」

「ああ、そうだな。」



「すみません。ラークさんの紹介で来た者です。どなたかいらっしゃいませんか。」

 鍛冶場に着いて、まず最初に声を掛けたものの鍛冶場には誰も見当たらない。
 店の奥にいるのだろうか。

「おーい、誰かいませんかー!」

 痺れを切らしたのか、ジニアが鍛冶屋の中に入る。

「あ、おいジニア待て。」

「勝手に入ったら怒られますよ。」

「奥にいるかもしれないだろ。」

 パチラとノバラがジニアを止めようとするが、ジニアは鍛冶屋に入っていく。

「すみません!誰かいませんか!ほらみんなも。」

「ええと…誰かいませんか。」

「すみませーん。」

「なんだい‼︎さっきからやかましい!」

 すると急に後ろから怒鳴り声がした。
 振り向くとピョコンとした灰色の耳と灰色の毛が生えた女性が立っている。

「アンタら!勝手にウチの工房に入ってなにしてるんだ!」

 この人がラークさんの言ってた鍛冶屋の知り合いなのか?

「勝手に入ってすみません。僕たちラークさんの紹介で来た者です。」

 とりあえず僕はこの鍛冶屋の主人に経緯を説明する。

「…なるほど、話は分かった。まずはラークからの手紙を見せてもらおうか。」

 僕はラークさんからの手紙を渡すと、鍛冶屋の主人は手紙を確認する。
 ちらりと見えたが、手紙の中にはデイジーが書いた銃の構造が書かれたのも入ってるようだ。
 それよりもこの人、上半身の服が鍛治用エプロンだけで布面積が少ないんだけど…まぁ仕事場が暑い場所だからだろう。というかさっきから男性陣の目線がチラチラと女性の方に向いてるのだが。

(あっ、ジニアがダリアに腕つねられてる。)

 そうこう考えてるうちに、女性が少し難しそうな顔つきになる。

「…ハァ、ラークのやつ、イキシアが似てるのを持ってるのを忘れてるようだな。」

 鍛冶屋の主人が溜息をついた後、僕らの方に顔を向けた。

「まずこの手紙には、ラークがアンタの持ってる武器と同じのを作ってやってくれって書かれてたのと、この銃という武器の構造が書かれた紙が入ってた。だけどウチはもうこれと同じのを作ってるんだ。」

 作ってる?

「ウチらにはイキシアっていう仲間がいてな。そいつの武器がアンタの武器と同じ銃って武器を持ってるんだ。」

 なんと!でもラークさんは知らないと言ってたはずだけど。

「あの牛野郎は昔から物忘れが激しくてな。特に最近だと、この街で迷子になったことがあるんだ。」

 おいおい、それって物忘れが激しすぎる気がするんだけど。
 …あれ、待てよ。

「でも銃を知ってるなら、ラークさんの武器屋に銃が無かったのはどうしてですか?ずっと前から銃のことを知ってるなら作ってるはずでは?」

 イキシアさんという人が銃を所持してるなら、銃の作り方を知ってるはずだと思う。鍛治士なら銃の構造を調べたり製造方法を生み出すことができそうなんだけど。

「ああ、ウチも作ってはみたんだけどな。試作品を作ってはみたものの、どうも上手くいかないんだ。イキシアの銃を分解を試したんだが、どうも分解することができなかったんだ。まぁ古代の技術力で作られた武器だし、分解できないのも仕方ない。」

 なるほど。
 しかしイキシアさんの銃が古代技術で作られた代物とは。漫画やアニメのようなものがこの世界にあるなんて。いつか見つけたいものだ。

「しかしアンタら、なんで銃の構造なんて知ってるんだ?ウチでも分からなかったのに。」

 あっ、まずい!
 このままじゃ僕らが古代技術でできた武器の構造を知る子供達ということになる。そうなれば注目の的になってしまう。なんとか誤魔化さないと。

「それはですね…僕の祖父から貰ったものなんです。僕の祖父は昔冒険者をしてまして、冒険の中でこの武器と設計図、使い方が書かれた書物を手に入れたそうなんです。その祖父はもういなくて…亡くなる前日に貰いました。」

「……そうか。なんか聞いてすまなかったね。」

「いいえ、別に気を悪くしてませんから。」

 ふぅ、なんとか誤魔化せたようだ。
 この世界に来たとき何故か持ってたなんて言えないからな。

「それでなんですが、銃の製造はできそうですか。」

「あぁ、この通り設計図があるからできそうだ。でも構造が複雑でいつ完成できるか分からないけどね。」

 すぐにはできない、か。でも初めて作るものなら時間はかかるだろう。
 銃の構造は少し複雑だし火薬や銃弾を作るのも大変だから仕方ない。

「…そうだ!完成したらアンタにこの武器を譲るよ。設計図のお礼さ。」

 なんと!タダで譲ってくれるとは。

「いいんですか?こちらは設計図を譲るだけですが。」

「いいんだよ。設計図がないと作れなかったし。それに世界で最初に作るのが私になるから、やる気が出てきたんだ。」

 なるほど。職人の魂が疼くというやつか。これは期待できそうだ。

「分かりました。ではよろしくお願いします。」

「おう!任しときな。」

 僕と鍛治士は互いに握手をする。

「そうだ。僕の名前はエイストといいます。このパーティのサブリーダーです。」

「エイストか。アタシはウル。よろしくな。」

 そうしてウルさんとのコネを手に入れ、僕らは鍛冶屋を後にした。
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