少年少女の異世界英雄譚 ~ みんなで異世界を生き抜きます ~

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第二章 街での日常

第二十四話『王宮 前編 上』

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「よく来た、お前たちが城下町で噂となってる冒険者たちか。」

 謁見の間に入るとそこには予想以上に広い空間が広がっている。そしてその壁際には鎧を着た兵士たちが佇んでいる。恐らく空間の広さを調整する魔道具を使って広くしてるのだろう。
 そしてその奥には玉座があって、そこには豪華な服装を着た一人の中年男性が座っている。あの男が国王なのだろう。

「リリシオン王国の国王様ですね。この度はわざわざ王様直々からの呼び出しで参りました。と言いましても、近衛騎士たちから無理矢理連れて来られたようなものですけど。」

 僕は前に出て国王に挨拶と、少しの嫌味を言う。いきなり連れてこられたことに対して僕は少し怒ってるからだ。
 すると壁際にいた騎士たちが僕の方に視線を飛ばしてくる。無礼だとでも思ったのか。

「急な呼び出しをしたことはすまなかった。だがどうしてもお前たちに聞きたいことがあってのことで呼び出したのだよ。」

 王様が騎士たちに手を上にあげ、静止の合図を送る。見たところ彼方から悪意は感じない。

「聞きたいこととは?」

「うむ。…単刀直入に聞こう、お前たちは勇者なのか?」

 いきなりか。というより、僕たちが勇者だというのに勘付かれるとは。
 僕以外のみんなはただジッとしている。以前、自分達は勇者かと聞かれても絶対動じないようにと言っておいたが、みんな動揺していなくて助かる。

「僕たちはただの冒険者です。なぜ自分達が勇者だとお思いで?」

 僕は国王に聞き返した。『読唇術』で嘘がないか警戒する。

「あぁ、以前よりお前たちの活躍のことは耳にしてな。ひと月前に現れ、若き冒険者の中で群が抜けてるおる者たちがいるとな。」

 若い冒険者の中で群が抜けている、か。僕たちがこの世界に来たのは一ヶ月前になるし、他の冒険者たちと比べてモンスターを沢山倒している。
 レベル上げのためとはいえ、モンスターを倒しすぎたのは少しやり過ぎだったかな。一応、倒した半分くらいは武具に吸収してるけど、それでも多かったのだろう。
 今度からはモンスターを倒しても倒した分全てを換金するのはよしておこう。

「あともう一つあるのだが、これは伝承であって信憑性が低いと思っている。」

 伝承か。伝承となると、長い年月のうちに子孫たちへ受け継がれていると改変することがある。そのため伝承と聞くと信憑性が低いように思える。

「伝承、ですか?」

「うむ。“魔の者共ものども荒ぶる刻、13の勇敢なる者共現ずる”と。」

 これが伝承か。魔の者共はモンスターのことを指すとして、13の勇敢なる者共現ずるのところが気になる。

「つまり王様は、伝承にある勇敢なる者共が僕達であると思ってるのですか。」

「うむ。浅はかではあるとは思うが、可能性としてはなくはないと思うてな。」

 王様も浅はかな考えであるとは分かってるようだ。僕たち全員で13人だからという理由で勇者と決めつけるのは浅はかとしかいえない。
 でもそれ以前に伝承そのものが間違ってるかもしれないわけで…これ以上考えるだけ無駄か。

「先ほども言いましたが、僕たちは勇者ではなくただの冒険者です。僕たちが強い冒険者というのは正直嬉しいのですが、それを根拠に勇者と思われるのはありがた迷惑です。」

 事実僕たちは勇者ではあるものの、勇者であることを認めれば色々と面倒ごとが降りかかってくる。早く帰りたいんだが。
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