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我慢の日々

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『健やかなる時も病める時も、あなたは愛を誓いますか?』
『はい。一生アリスを愛します』



王宮で式をあげたあの時のレオさまは、私にとって世界で1番の王子さまでした。

名ばかりだけの名家、破産寸前の実家には借金だけはありましたわね。


病気がちの母。他界した父。後ろ盾もなく明日をも知れぬ私を拾って下さったのはレオさまでした。


王家とのパーティーで知り合って、その場で気に入られてあっという間に結婚。まるで夢物語でしたね。




でも…



「レオさま。…私たちの寝室に浮気相手を連れ込むのはやめて下さいってお願いしたじゃありませんか…」

「…あー、そうだっけ」

そう悪びれもなく、今目の前で浮気相手とベッドで布団に潜っているのは、もちろんレオ様。

若く美人な浮気相手にベッドからクスクス笑われるのも、もう慣れっこです…。



レオさまは変わりました。

いえ、元からこうだったのかもしれませんね。



若くハンサムで何でも持っている方が、どうして私のような没落貴族と?と思っておりましたが。

結婚したところで浮気すれば良い、そういう思想の持ち主だったのですね。



「行こう。リリィ。ここじゃ厳しい奥さんがいて気詰まりだ」


そう言って連れ立って出て行ったお2人。

ふわっと甘い香りが漂って、悲しみに拍車がかかります。




ギュッとドレスの裾を掴む…けれどこれもレオさまに買ってもらったものですね。


あのときレオさまが私を助けてくれた恩は忘れていません。

気まぐれでも何でも、あの時知り合ったレオさまが私を迎え入れると言ってくれなかったら、私とお母様はその週末にでも無理心中をする予定でした。

最後の思い出に、と精一杯ドレスアップして出掛けたんです。借金が重なったって、もうどうでも良いじゃないかって…。



レオさまは私にとっては英雄でした。

もちろんそれだけじゃない。
こんな扱いを受けても、私はレオさまのことを今でも男性として愛しているんですのよ。



…いっそ嫌いになれたらどんなに良かったでしょう。







続く
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