届く

果粒

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届く

手を伸ばす

掴む

手を握る

逃す

そばから離れる


手には青春が詰まっている

君を愛するのも手から伝わる熱でわかはず
君の熱で君の愛も伝わる


いつから冷たくなったのか
いつから他人の温度を感じる様になったのか

まるで君は猫の様だった
気分屋でたまに甘えてくる


それでも、他人の匂い、温度、感触はきえない

いつ離れていくのか
いつ戻ってくるのか


怖くて恐くて怖ろしくて恐ろしい

怒りがあるか

いや全くない

彼女の生き様はきれいだった
彼女の生き様はきらいだった

僕には緩く、人には熱く

思いなんかあっという間に冷めていく
そして夢から覚める


ついに別れがくる
どんな表情で
どんな感情で
どんな仕草で

明日を迎えるのだろうか

僕は準備ができている
君はできているのだろうか

悲しくないわけない。
辛いに決まっている。

君はどうだろうか。


この感情は届くのか。


当日、君の目には涙が流れていた。
僕は信じていない

その涙には全く熱が篭っていない
乾ききった涙だった


届かなかった

最後に君は

ありがとう、楽しかったと。

他人の口から出た言葉に僕は全く響かなかった


あぁ。こういうことなのか。

人に届かない感情は

届けることができなかった感情は



けれど、彼女は言った

またね。

と。




当初は何を言っているかわからなかった。

彼女の叫びは僕には届かなかったのだ。

彼女が冷めていたわけではないことを気付くことができなかったのだ。


そう。

僕が冷めきっていた


帰りを待つ君にありがとうの一言もなかった

存在に甘えていたのだ。

彼女のまたねは
時間と共に刺さる

地獄をみた。

1人では上を向くことがこんなに辛いなんて。
1人では下を向くことしかできないなんて。


届かなかった。
彼女の気持ちを理解する僕ではなかった。
彼女にふさわしい彼氏になろうと努力した
届かなかった。

努力が足りていなかったわけではない。
エゴで君を苦しめていた。


いつから、冷めた
いつから緩くなった。


違う。

変化を受け入れる自分ではなかった。
容量が足りなかった。

時間をかけすぎた

君の叫びは僕には届かない
僕の叫びは君には届いていたのに。



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