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本編
突然の着信
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筬島のスマホが着信を告げる。
折角敷波と後輩のデビューを見守りながらコラボの話をしていたのに、水を差された気分だ。
誰だろうとスマホを見れば、その画面には“アヤ”の表示。
「電話?」
「あ…」
敷波も着信にも気づいたようで、視線がスマホに向いている。
「彼女?」
「…違う」
――彼女ではない。それはたしかだ。
なかなか出ようとしない筬島に、敷波が訝しむような視線を向ける。
出ようかどうするか…悩んでいる間に着信は途切れてしまった。
「いいの?」
「うん…」
「颯くんがそんな対応することあるんだ。苦手な相手?」
えっと…と重い口を開くも言い淀むことしか出来ない。
なんといえばいいのか…。
「…無理に話さなくてもいいけど」
「その……前、付き合ってた、人」
「あー、元カノ?」
「いや、」
「ん?」
敷波が素直に首を捻る。
「元カレ…」
そう伝えれば、ああ、と納得顔を見せた。
「たしかに、彼女じゃないか」
嫌な表情ひとつ見せず頷いているが、声が揺れているようにも感じる。
いきなり同性の恋人がいましたはさすがに動揺するか。
「うん…」
しかし筬島が言い淀んだのは男と付き合っていたからでは無い。
その辺りは特に気にしないタイプで、聞かれれば普通に答える、オープンな方だ。
過去に彼女もいたので、ゲイと言うわけではないが、2人とも告白されてから付き合った。
よく話すし、なんとなく好きだし付き合った…というと誠意のない感じに聞こえるが、その時の筬島にとっては付き合うということが誠意のつもりだった。
それなりに仲良く過ごしていたと思ったが、相手から別れを告げられ、長く続くことはなかった。
上手くいっていると思っていたのは筬島だけだったということだ。
「筬島くん私のこと好きじゃないよね」
「颯は、俺のこと好きじゃないだろ」
何故か2人から言われた別れの言葉は全く同じだった。
勿論、そんなことないと否定したが。
「だって抱いてくれないじゃん」
「だって抱かせてくれないじゃん」
付き合う=セックスする、は共通認識だったようで、そこで漸く筬島は自身の恋愛観がそこから外れていることを知った。
喋ったりデートしたり、穏やかな時間を過ごすだけじゃどうしていけないのか。
振られた直後はそんなことを考えさせられたが、どうやらマイノリティだっただけの話で、恋愛に対する趣味趣向がそもそも合っていなかったのだ。
それに気づいてから吹っ切るのは早かったのだが、今更なんの用だろう。
「なんの用だったんだろうな。ちゃんと別れたんだろ?」
「別れた、てか、別れてって言われたから別れたんだけど…なんだろ、今更」
「…全然未練ないの?」
「未練?」
悩みの種にはなったが、別れたことに未練はない。
だか、こんな風に連絡があると気にする程度には気になる存在というくらいだ。
「んー…」
思わず首を捻る。果たしてどこからが未練なのか。
復縁したいかと聞かれれば、ノー。
趣味趣向を変えてまで歩み寄ることは出来ないだろう。
相手が望むことを筬島はしてあげられないし、出来ていれば多分別れてない。
きっとそこまでの愛情ではなかったのだ。
自身の軽薄さに思わず顔を歪めてしまう。
でも、そんな事敷波には言えない。
「あー…ごめん、気にしないで」
ポンっと頭に乗せられた敷波の手の優しさに涙が出そうになった。
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