冒険者ギルドの受付嬢と女性冒険者を愉しむ異世界奇行

鎔ゆう

文字の大きさ
4 / 157

Sid.3 俺がモテてるのか

 アニタと言う受付嬢は碧眼で金髪のカーリーミディ。肌が白く輪郭はやや丸みを帯びる。唇は健康そうな色味をしているな。視線を下に向けると、ギルドの制服だろう、今はなきファミレスの制服の如き胸元を強調する。たわわ、かもしれん。
 マルギットと言う受付嬢は栗色の瞳にストレートのブルネット。肌は同じように白く輪郭はふっくらしている。唇は赤みが強く差している感じだ。
 同じくファミレスの制服の胸元が強調され、アニタより更に大きな印象を受けた。

「トールさん、ですよね。あの、今日このあと予定は」
「あ、ずるいってば、アニタ」
「マルギットは残業でしょ」
「抜け駆け禁止だってば」

 い、いやいや。女性と接したことのない俺にとって、こんなケースは想定外だ。どう対処すればいいのかさっぱり分からない。
 逃げよう。化け物相手なら体が勝手に動くが、この場合は混乱と緊張で対処不能だ。

「えっとだな、宿を借りて休みたいから」
「でしたら、ここを出て三つ目の建物がお勧めです」
「そこ? あれラブホ」
「い、いいじゃないの」

 おい。ラブホって言わなかったか?
 この世界にもあるのか。そんなものが。じゃなくてアニタとかいう子は、やたらと積極的な感じだ。この顔はそんなに魅力、あるよなあ。どう見ても超絶イケメン。日本と同じ価値観であれば、の話だが。二人の様子を見れば価値観に相違は無さそうだ。

「トールさん。私とご一緒に」
「駄目だってば。アニタは惚れっぽすぎるんだよ」
「強くて素敵な男性を射止めず、何を射止めるの?」
「だったらあたしもだってば」

 いかん。無理だ。
 この世界も一夫一婦制なのか。だとしたら、おいそれとお付き合いはできん。
 それ以前にモテても、どうすればいいのかすら分からない。ああ、そうだ。この体の持ち主の記憶を辿れば。
 だが、映像はあれど音声は無い。つまり何を言ってるのかさっぱり。これだと参考にもならない。

「トールさん。駄目、ですか?」
「あの、トールさん。あたしと」

 眩暈が生じてきた。無理だ。今の俺には女性を扱う術がない。知らなさ過ぎるからだ。戦闘時は体が勝手に反応してくれる。しかし女性を前にして何も動けない。
 命が掛かってるわけでは無いからだな。これは自力で解決する必要があるわけだ。

「えっと、今日はとにかく休みたい」
「あ、ごめんなさい。お疲れですよね」
「無理はさせられないので、次はご一緒しましょうね」

 辛うじて逃れることはできたが。
 ああ、そうだ。宿。

「あの、宿だけど」
「ここを右に出て通りの角を左に曲がると、安くてサービスの良い宿があります」

 ラブホ、じゃないよな。ひとりで入っても情けないだけだし。かと言って、この二人のどちらか、などと思っても扱いきれない。
 せっかくのチャンスと思っても童貞の俺には無理だ。
 礼を言って冒険者ギルドをあとにするが、名残惜しそうに見つめる二人が居た。

 外に出て言われた通りに進むと、二階建てのペンションのような宿がある。白い壁は石造りだが。
 入り口であろう場所から扉を開け、中に入ると向かって右側にカウンター。正面は階段があり左側は食堂のようだ。カウンターには誰も居らず、ベルが置いてあるから、それを鳴らせということか。

 チン、と鳴らすとカウンターの奥の扉が開き、宿の主人であろう人が出てきた。そこそこ年食ってるが、五十代くらいか。髭を蓄えた厳ついおっさんだな。
 俺を見て「泊まりか?」と。サービスのレベルを日本と同じと考えては駄目だな。日本は過剰なサービスが生産性の低下を招いていた。ここではサービスも対価が必要なのだろう。元の世界の外国と同じだ。チップ次第でどうにでもなる。

「泊まりたいのですが、一泊幾らですか?」
「朝飯無しなら二千三百、込みなら二千六百」

 単位はコッパル、だよな。まさかシルヴェルじゃないだろう。
 朝飯は食っておきたい。

「朝食込みで二泊で」
「先払いだ」

 五千二百コッパルを払うと「部屋の鍵だ。場所は二階の奥から二つ目」と言われた。案内も無いのか。まあ仕方ない。ビジネスホテルも同じだし。
 鍵を受け取り部屋に向かうが「朝飯は六時だから遅れるな」と言われる。
 相槌だけ打って二階に上がり、部屋の鍵を解錠し入ると中はあれだ、薄暗くベッドと椅子とテーブルひとつだけ。他には服用のハンガーラックがあるのか。
 灯りはと思ったら室内にオイルランプがある。それを灯せということか。でもマッチとかライター。
 あ、そうだ。炎系の魔法使える。念じると指先から小さな炎が出て、オイルランプに火を灯すことができた。魔法、便利だな。
 トイレだの風呂はあるのか、と思うが室内には無いな。

 階下に向かい宿の主を呼び出し聞くと。

「トイレ? そこの右奥だ。風呂なんて無い。大衆浴場なら水路沿いのパン屋にある」

 建物内に風呂、無いんだ。大衆浴場ならあるのか。だが、聞くと朝しか営業してないらしい。パンを焼く窯の熱を利用して湯を沸かすそうだ。他には鍛冶屋でも浴場を用意してるところもあるとか。鍛冶屋の風呂ならば、火入れのタイミング次第で利用可能だそうだ。
 顔や手足を洗う洗い場はあるらしく、トイレの隣に樽があり洗面器もあった。
 タオルや歯ブラシなんかのアメニティは全て有料だとか。まあ、それは仕方ないが。
 この世界って元の世界の中世レベルだな。
 原始的な世界に来たものだ。
 そしてトイレを見て途方に暮れた。

「まじか」

 トイレと呼べる代物じゃない。入ると猛烈に臭い上に便器はおまると変わらん。おまるで用を足したらバケツに移し替え、自分で処分場へ持参するそうだ。宿の人に任せると対価が要求される。せめてボットン式とか考えなかったのか。
 ただ、小便は地面に染み込ませるようで、トイレの床に穴が掘られていて、流し込めるようになっていた。一応蓋はあるけど意味は無いな。
 手洗い用の水程度は用意されていて、樽に栓があり外すと水が出てくる。洗面器で受けて穴に流すことで、多少は臭い軽減に繋がるようだ。

 風呂は明日の朝にでも利用するとして、小便は我慢できん。

 用足しを済ませ部屋に戻り、ベッドに体を横たえるが、ちくちくするし固いなあ、このベッド。
 やることも無い。できることも無い。飯も無い。腹が減る。一日三食の生活をしてきたからな。この世界はどうだか知らんが。昔ならば二食だったかもしれないし。
 晩飯が無いってことは、暗がりで飯を食わないってことだ。日が暮れると就寝。日が昇る頃に起床する生活なのかもしれない。

 明日は少し稼いでみたいから、ギルドで何かしら依頼を受けてみよう。
 腹が鳴るも食うものは無い。寝るしかない。
 ぐうぐうとなる腹。なかなか寝付けなかったが、いつの間にか寝入ったようだ。

 まだ仄暗い中、目が覚めた。
 時間なんて分からんが、宿のカウンター奥の壁に時計らしきものがあった。
 降りて確認するが、時計自体は重錘式の掛け時計だ。振り子ですらない。原始的過ぎて時を正確に刻むのは不可能だ。
 それでも誤差は日に十五分程度だったか、目安程度にはなるな。
 文字盤の針が示すのは五時半くらい。
感想 0

あなたにおすすめの小説

異世界でぺったんこさん!〜無限収納5段階活用で無双する〜

KeyBow
ファンタジー
 間もなく50歳になる銀行マンのおっさんは、高校生達の異世界召喚に巻き込まれた。  何故か若返り、他の召喚者と同じ高校生位の年齢になっていた。  召喚したのは、魔王を討ち滅ぼす為だと伝えられる。自分で2つのスキルを選ぶ事が出来ると言われ、おっさんが選んだのは無限収納と飛翔!  しかし召喚した者達はスキルを制御する為の装飾品と偽り、隷属の首輪を装着しようとしていた・・・  いち早くその嘘に気が付いたおっさんが1人の少女を連れて逃亡を図る。  その後おっさんは無限収納の5段階活用で無双する!・・・はずだ。  上空に飛び、そこから大きな岩を落として押しつぶす。やがて救った少女は口癖のように言う。  またぺったんこですか?・・・

現世にダンジョンができたので冒険者になった。

盾乃あに
ファンタジー
忠野健人は帰り道に狼を倒してしまう。『レベルアップ』なにそれ?そして周りはモンスターだらけでなんとか倒して行く。

巻き込まれ召喚・途中下車~幼女神の加護でチート?

サクラ近衛将監
ファンタジー
商社勤務の社会人一年生リューマが、偶然、勇者候補のヤンキーな連中の近くに居たことから、一緒に巻き込まれて異世界へ強制的に召喚された。万が一そのまま召喚されれば勇者候補ではないために何の力も与えられず悲惨な結末を迎える恐れが多分にあったのだが、その召喚に気づいた被召喚側世界(地球)の神様と召喚側世界(異世界)の神様である幼女神のお陰で助けられて、一旦狭間の世界に留め置かれ、改めて幼女神の加護等を貰ってから、異世界ではあるものの召喚場所とは異なる場所に無事に転移を果たすことができた。リューマは、幼女神の加護と付与された能力のおかげでチートな成長が促され、紆余曲折はありながらも異世界生活を満喫するために生きて行くことになる。 *この作品は「カクヨム」様にも投稿しています。 **週1(土曜日午後9時)の投稿を予定しています。**

ブラックギルドマスターへ、社畜以下の道具として扱ってくれてあざーす!お陰で転職した俺は初日にSランクハンターに成り上がりました!

仁徳
ファンタジー
あらすじ リュシアン・プライムはブラックハンターギルドの一員だった。 彼はギルドマスターやギルド仲間から、常人ではこなせない量の依頼を押し付けられていたが、夜遅くまで働くことで全ての依頼を一日で終わらせていた。 ある日、リュシアンは仲間の罠に嵌められ、依頼を終わらせることができなかった。その一度の失敗をきっかけに、ギルドマスターから無能ハンターの烙印を押され、クビになる。 途方に暮れていると、モンスターに襲われている女性を彼は見つけてしまう。 ハンターとして襲われている人を見過ごせないリュシアンは、モンスターから女性を守った。 彼は助けた女性が、隣町にあるハンターギルドのギルドマスターであることを知る。 リュシアンの才能に目をつけたギルドマスターは、彼をスカウトした。 一方ブラックギルドでは、リュシアンがいないことで依頼達成の効率が悪くなり、依頼は溜まっていく一方だった。ついにブラックギルドは町の住民たちからのクレームなどが殺到して町民たちから見放されることになる。 そんな彼らに反してリュシアンは新しい職場、新しい仲間と出会い、ブッラックギルドの経験を活かして最速でギルドランキング一位を獲得し、ギルドマスターや町の住民たちから一目置かれるようになった。 これはブラックな環境で働いていた主人公が一人の女性を助けたことがきっかけで人生が一変し、ホワイトなギルド環境で最強、無双、ときどきスローライフをしていく物語!

14歳までレベル1..なので1ルークなんて言われていました。だけど何でかスキルが自由に得られるので製作系スキルで楽して暮らしたいと思います

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕はルーク 普通の人は15歳までに3~5レベルになるはずなのに僕は14歳で1のまま、なので村の同い年のジグとザグにはいじめられてました。 だけど15歳の恩恵の儀で自分のスキルカードを得て人生が一転していきました。 洗濯しか取り柄のなかった僕が何とか楽して暮らしていきます。 ------ この子のおかげで作家デビューできました ありがとうルーク、いつか日の目を見れればいいのですが

S級冒険者の子どもが進む道

干支猫
ファンタジー
【12/26完結】 とある小さな村、元冒険者の両親の下に生まれた子、ヨハン。 父親譲りの剣の才能に母親譲りの魔法の才能は両親の想定の遥か上をいく。 そうして王都の冒険者学校に入学を決め、出会った仲間と様々な学生生活を送っていった。 その中で魔族の存在にエルフの歴史を知る。そして魔王の復活を聞いた。 魔王とはいったい? ※感想に盛大なネタバレがあるので閲覧の際はご注意ください。

アイテムボックス無双 ~何でも収納! 奥義・首狩りアイテムボックス!~

明治サブ🍆スニーカー大賞【金賞】受賞作家
ファンタジー
※大・大・大どんでん返し回まで投稿済です!! 『第1回 次世代ファンタジーカップ ~最強「進化系ざまぁ」決定戦!』投稿作品。  無限収納機能を持つ『マジックバッグ』が巷にあふれる街で、収納魔法【アイテムボックス】しか使えない主人公・クリスは冒険者たちから無能扱いされ続け、ついに100パーティー目から追放されてしまう。  破れかぶれになって単騎で魔物討伐に向かい、あわや死にかけたところに謎の美しき旅の魔女が現れ、クリスに告げる。 「【アイテムボックス】は最強の魔法なんだよ。儂が使い方を教えてやろう」 【アイテムボックス】で魔物の首を、家屋を、オークの集落を丸ごと収納!? 【アイテムボックス】で道を作り、川を作り、街を作る!? ただの収納魔法と侮るなかれ。知覚できるものなら疫病だろうが敵の軍勢だろうが何だって除去する超能力! 主人公・クリスの成り上がりと「進化系ざまぁ」展開、そして最後に待ち受ける極上のどんでん返しを、とくとご覧あれ! 随所に散りばめられた大小さまざまな伏線を、あなたは見抜けるか!?

レベルが上がらない【無駄骨】スキルのせいで両親に殺されかけたむっつりスケベがスキルを奪って世界を救う話。

玉ねぎサーモン
ファンタジー
絶望スキル× 害悪スキル=限界突破のユニークスキル…!? 成長できない主人公と存在するだけで周りを傷つける美少女が出会ったら、激レアユニークスキルに! 故郷を魔王に滅ぼされたむっつりスケベな主人公。 この世界ではおよそ1000人に1人がスキルを覚醒する。 持てるスキルは人によって決まっており、1つから最大5つまで。 主人公のロックは世界最高5つのスキルを持てるため将来を期待されたが、覚醒したのはハズレスキルばかり。レベルアップ時のステータス上昇値が半減する「成長抑制」を覚えたかと思えば、その次には経験値が一切入らなくなる「無駄骨」…。 期待を裏切ったため育ての親に殺されかける。 その後最高レア度のユニークスキル「スキルスナッチ」スキルを覚醒。 仲間と出会いさらに強力なユニークスキルを手に入れて世界最強へ…!? 美少女たちと冒険する主人公は、仇をとり、故郷を取り戻すことができるのか。 この作品はカクヨム・小説家になろう・Youtubeにも掲載しています。