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第七話 信頼と親愛
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ウィンダの索敵スキルを駆使して、レッドサイクロプスの居場所を探しながら森を探索する事1時間、俺とウィンダは疲労感に襲われていた。
「さすがに疲れてきたな」
「そうだね、私の魔力もそろそろ限界だし、一休みしたいね」
「ウィンダ、せっかく手繋いでるし1つ試してもいいかな?」
「いいけど、試すって何を?」
「ウィンダの索敵スキルに俺の”連携”スキルを組み合わせるんだ」
「組み合わせるとどうなるの?」
「俺も何が起きるか、やってみないとわからん」
「え、えぇ……」
「とりあえず、やってみようぜ」
ウィンダが目を瞑り、索敵スキルに意識を集中させる。
―――「連携」―――
俺はそれに合わせてスキルを発動させた。
発動と同時に、脳内に広大な捜索範囲と膨大な量の位置情報や地形が流れ込んでくる。
「う、うわ、すごい、すごい量入ってくるよ、クリス君」
「あ、あぁこれはものすごい情報量だな」
握っている手に熱を感じ、目を開けると俺達は汗をかいていた。
「クリス君は何をしたの?」
「俺が使ったスキル”連携”は、仲間が使ったスキルを一時的に共有と強化する効果があるんだ」
「そうなんだ、そのおかげで半径500メートル内の地形と、モンスターの位置は把握できたね」
「あぁ、ここのすぐ近くに、モンスターが1体もいない場所もあったな」
俺とウィンダはモンスターのいない安全な場所で休憩することにした。
着いた場所は、木々で出来たとても大きな空洞で、真上にぱっくりと丸い穴が空いている。
そこから陽が差し込むため、今まで歩いてきた道よりずっと明るい。
地面は綺麗な草原になっていて、至る所に花が咲いている。
「へー、森の中にこんな場所があったのか」
ウィンダは手を離し、陽の当たる場所へ駆け出す。
「クリス君も早くおいでよー」
こちらに振り向き、手招きするウィンダはとても可愛く思える。
ウィンダの元に駆け寄ると、彼女が足元を指差していた。
「ねぇねぇ、クリス君ここ」
そこには、何か引っこ抜かれたかのように、土が剥き出しになっていた。
「何か咲いてたのか?」
と、聞くと、ウィンダの姿はそこにはなかった。
「クリス君こっち来てー!」
少し離れたところからウィンダの声がした。
声のした方に視線をやると、草原からウィンダの腕だけが見えていた。
近づくと、ウィンダは横になりながら、「ここ気持ちいいよ」と、自分の隣を軽く叩いた。
この子、ちょっと無防備過ぎないか?
「何してるのクリス君、一緒に寝っ転がろ?」
ウィンダが起き上がり、俺の腕を引っ張る。
「ちょっ、まっ、うわっ」
「キャッ!」
腕を引っ張られ、体勢を崩した俺はウィンダに倒れ込んだ。
「大丈夫かウィン……ダ」
何とか、手のひらを地面に着いて接触を免れたが、目の前には着崩れたウィンダが仰向けで俺を見ている。
ウィンダの頬は赤く染まり、恥ずかしそうな表情をしていた。
「わ、私は大丈夫だよ」
「悪い、すぐ離れる」
腕に力を入れ離れようとするが、ウィンダに腕を捕まれる。
「私はまだこのままでも……いいよ」
ウィンダの深緑色の髪の間から、花が顔を覗かすその光景は、あまりに魅力的だ。
俺の頬を熱くなり、心臓の鼓動は早くなる。
落ち着け俺、この状況は妹にやられた事があるだろう!
落ち着かせようと自分の心に言い聞かせるが、目の前に広がる光景から目が離せない。
乱れた髪、翡翠色の瞳、前が全開のコート、肌をチラ見せする服の裾、立っている時は気付かなかったが、その大きさがはっきりとわかる2つの山。
……。
………。
時が止まったかのように見つめあった末、俺は腕に力を入れて起き上がる。
「か、からかうのもいい加減にしろ」
「クリス君なら―――と思ったのに」
ウィンダがボソッと呟く。
何を呟いたか不明だったが、しばらく顔が合わせられず、お互い黙ったままだった。
「すー、すー、すー」
ウィンダの方に視線を向けると、疲れていたのかいつの間にか彼女は眠っていた。
「静かだなと思ったら寝てるのかよ。まぁ休憩しに来たわけだし俺も一休みするか」
ついでにちょっと情報でも集めるか。
そう考え、俺は目を手で覆い図書を開く。
ここだけ日が当たっている理由は?
『ここは、”ザ・フォレスト(仮名)”の本体が居る場所の、真上に位置しています。主な養分は魔力ですが、木を維持するためには太陽光も必要なので、意図的にここだけ陽が当たるようにしています。
また追加情報として、この森に住むモンスター達は陽の光に弱いため、この場所に立ち入ることができません』
「だから、ここだけモンスターが居なかったのか」
ザ・フォレストは何年前から居る?
『約2000年前と考えられます』
レッドサイクロプスの居場所は?
『この森の中に居るのは確かですが、詳細までは不明です』
なぜ居場所が分からない?
『私がわかるのは出身地のみで、現在地はその個体によって違うため把握しておりません』
「とりあえず、聞きたいのはこんなもんかな」
疲れた俺は、ウィンダから少し離れた場所に寝転がり、眠りについた。
……。
………。
どれだけ寝ていたか分からないが、目を覚まして身体を起こそうとした時、すぐにその異変に気が付いた。
この右腕にある柔らかな感触、昔妹にやられた事がある。
この感触は男なら一度は味わってみたいだろう。だが俺は幾度となくこの感触を味わってきた。
そう、腕にアレを押し付けられる感触だ。
とりあえず、少なくとも妹よりは小さいな。
挟まれてる感触はするけど、包まれてる感じはしない。
俺は一度目を閉じ、深呼吸をする。
そしてもう一度目を開けて首を右に回す。
目の前には、離れて寝ていたはずのウィンダの顔があり、状況を確信した。
あの、ウィンダさん? 流石に無防備すぎやしませんかね?
思わず心の中で問い掛けた。
このままではイケナイと思い、腕が抜けないか試すが、ウィンダの口から「んっ」と甘い声が漏れ、身体が固まってしまった。
再度落ち着きを取り戻し、今度はウィンダ自身にどいてもらおうと、彼女の方に身体ごと向ける。
抜け方は簡単で、まず左手でウィンダの右腕を俺の腕から離し、そのまま上に持ち上げ、ウィンダの横腹辺りに乗せる。
その後、ゆっくりと二の腕を押して、仰向けにさせる。こうすることで、谷間に挟まれた腕を簡単に救出することが出来るのだ。
俺は一体、誰に説明してるのやら……。
ウィンダの捕縛から抜け出し、一度立ち上がる。
腰を回したり、腕や脚を伸ばして全身を解す。
それから、俺はウィンダの肩を揺らし声をかける。
「おーいウィンダ、そろそろ行くぞ」
「ん、んー? クリス……君?」
「あぁ、俺だよ」
ウィンダは瞼を擦りながら上半身を起こすと、大きな欠伸をした。
「ごめんなさい、いつの間にか寝てたみたい」
ウィンダが前で指を交差させて、手のひらを外に向けて伸ばす。
「んーーっ……はぁ」
「てか、ウィンダはいつの間に俺の横へ? 確か離れて寝たはずなんだけど」
「あぁ、クリス君が寝てる時に、一度起きたんだけど、クリス君の寝顔見てたら、何故か添い寝したくなっちゃって」
「それで腕に絡み付いて寝てたのか!?」
「え、私、クリス君の腕にくっ付いてたの?」
「そうだよ、俺が起きたらがっちり捕縛されてた」
そう返すと、ウィンダはボンッと全身を赤くして、両手で頬を隠してしまった。
ウィンダが落ち着くまで待とうと思ったが、俺のお腹が空腹を知らせる。
「ふふ、ちょうど私も小腹が空いてたから、持ってきたサンドイッチ一緒に食べましょ?」
「あぁ、ありがとう」
ウィンダが具現化した、焦げ茶色のバケットの中には、タマゴや野菜、ハムなど、色んな種類のサンドイッチが入っていた。
「どれも美味しそう」
「昨日泊まった宿屋の台所で作ったんだ、普段家じゃ料理なんてしたこと無かったけど、パンに挟むだけなら私にも出来そうって」
「うまい!」
「そう? なら良かった」
ウィンダが持ってきたサンドイッチを食べ終わった俺達は、この空洞を後にし再びレッドサイクロプスを目指して歩き始めた。
空洞を出る前に、ウィンダと索敵×連携で森の全体像を再度確認したところ、1体だけ広い空間で明らかに動きがないモンスターが居た。
俺達は、その場所を目指して歩き始めたが、再びオレンジ色のモンスターの接近に気が付き、すぐ側の木陰でやり過ごそうと隠れる。
しかし、今回は一本道のため確実に俺達の目の前を通過する。
そこでウィンダは、俺の手を取り小声で伝えた。
「クリス君、連携を使って私の隠密と掛け合わせてやり過ごすの」
俺は黙って頷き、スキルを発動させる
―――隠密――― ―――連携―――
隠密スキルは、自身の姿や気配を消してくれるスキルで、ウィンダの戦法に一番合うスキルだ。
さらに今回は俺の連携を同時に使っているため、姿や気配に加えて、臭いまでかき消す能力になっていた。
だが、目の前を通るオレンジ色のモンスターは、俺達の目の前で止まる。
俺とウィンダは息をも止め、早く行ってほしい思いで耐えた。
すると、オレンジ色のモンスターの方から幼い少女のような声が聞こえる。
「――――――、―――」
少女の声が聞こえなくなり、オレンジ色のモンスターが再び歩み始める。
しばらくして、モンスターの足音は森の奥へ消えていった。
「はぁ……はぁ……はぁ、ようやく行ったぁ」
「はぁ、そう……だね、はぁ…はぁ…」
息を整え、微動だにしないモンスターがいる空間へと向かう。
入口は一本道になっているが、蛇行していて先が見づらくなっていた。
歩き続けると、徐々に道に光が差し込んでくる。
ようやくたどり着いたそこは、無数の極太の蔓に覆われた空間が広がっていた。
目標のレッドサイクロプスは目の前にある段差の上で、仰向けの状態で俺から見て頭が右になるように寝ている。
「あれが、レッドサイクロプス」
ウィンダは初めて見るようで、その圧倒的なサイズ感に驚いてる様子だ。
俺は一度、エクサリス村の近くに出没したサイクロプスと戦った経験があるため、あまり驚かない。
「よし、行こクリス君」
「いや、ちょっと待て。たぶんこの先に入ると奴が起きる可能性がある。その前に先制攻撃を仕掛けよう」
「いいけど、具体的にどうするの?」
「そうだな。ウィンダはここから頭狙える?」
「ううん、ここからだと見にくくて、うまく狙えないわね」
「なら、ウィンダは戦闘が始まったら、蔓の高台に向かってくれ」
「クリス君はどうするの?」
「俺はそのまま接近するけど、その前に」
俺は右手に太刀を具現化させる。
「それをどうするの?」
俺は入口から数メートルほど下がると、具現化した太刀を逆手持ちにする。
―――「属性付与」―――
「太刀に麻痺属性と雷属性を付与!」
その直後、太刀の刀身にバチバチッという音を立てながら、黄色と青白い雷が走り始める。
「これをこうするんだよ!」
俺は走り出し、ウィンダの前を通過する直前でジャンプする。
―――投擲―――
レッドサイクロプス目掛け投げると、太刀は少し山なりに飛んでいき、左横腹に刺さった。
すると、レッドサイクロプスの全身を黄色と青白い雷がバリバリッと、目の前で落雷が起きたような大きい音を立てる。
直後、レッドサイクロプスの頭上に緑色のゲージが二本出現し、そのゲージの上に「BOSS」という赤色の文字と、麻痺を示す黄色と黒色の落雷のようなアイコンが表示された。
「よし、麻痺したな。今のうちに与えられるだけ与えるぞ!」
「了解!」
俺は大剣”アイアンプレート”を、ウィンダは魔力狙撃銃”PGM・へカートII”をそれぞれ具現化し、ボスエリアへと入って行った。
「さすがに疲れてきたな」
「そうだね、私の魔力もそろそろ限界だし、一休みしたいね」
「ウィンダ、せっかく手繋いでるし1つ試してもいいかな?」
「いいけど、試すって何を?」
「ウィンダの索敵スキルに俺の”連携”スキルを組み合わせるんだ」
「組み合わせるとどうなるの?」
「俺も何が起きるか、やってみないとわからん」
「え、えぇ……」
「とりあえず、やってみようぜ」
ウィンダが目を瞑り、索敵スキルに意識を集中させる。
―――「連携」―――
俺はそれに合わせてスキルを発動させた。
発動と同時に、脳内に広大な捜索範囲と膨大な量の位置情報や地形が流れ込んでくる。
「う、うわ、すごい、すごい量入ってくるよ、クリス君」
「あ、あぁこれはものすごい情報量だな」
握っている手に熱を感じ、目を開けると俺達は汗をかいていた。
「クリス君は何をしたの?」
「俺が使ったスキル”連携”は、仲間が使ったスキルを一時的に共有と強化する効果があるんだ」
「そうなんだ、そのおかげで半径500メートル内の地形と、モンスターの位置は把握できたね」
「あぁ、ここのすぐ近くに、モンスターが1体もいない場所もあったな」
俺とウィンダはモンスターのいない安全な場所で休憩することにした。
着いた場所は、木々で出来たとても大きな空洞で、真上にぱっくりと丸い穴が空いている。
そこから陽が差し込むため、今まで歩いてきた道よりずっと明るい。
地面は綺麗な草原になっていて、至る所に花が咲いている。
「へー、森の中にこんな場所があったのか」
ウィンダは手を離し、陽の当たる場所へ駆け出す。
「クリス君も早くおいでよー」
こちらに振り向き、手招きするウィンダはとても可愛く思える。
ウィンダの元に駆け寄ると、彼女が足元を指差していた。
「ねぇねぇ、クリス君ここ」
そこには、何か引っこ抜かれたかのように、土が剥き出しになっていた。
「何か咲いてたのか?」
と、聞くと、ウィンダの姿はそこにはなかった。
「クリス君こっち来てー!」
少し離れたところからウィンダの声がした。
声のした方に視線をやると、草原からウィンダの腕だけが見えていた。
近づくと、ウィンダは横になりながら、「ここ気持ちいいよ」と、自分の隣を軽く叩いた。
この子、ちょっと無防備過ぎないか?
「何してるのクリス君、一緒に寝っ転がろ?」
ウィンダが起き上がり、俺の腕を引っ張る。
「ちょっ、まっ、うわっ」
「キャッ!」
腕を引っ張られ、体勢を崩した俺はウィンダに倒れ込んだ。
「大丈夫かウィン……ダ」
何とか、手のひらを地面に着いて接触を免れたが、目の前には着崩れたウィンダが仰向けで俺を見ている。
ウィンダの頬は赤く染まり、恥ずかしそうな表情をしていた。
「わ、私は大丈夫だよ」
「悪い、すぐ離れる」
腕に力を入れ離れようとするが、ウィンダに腕を捕まれる。
「私はまだこのままでも……いいよ」
ウィンダの深緑色の髪の間から、花が顔を覗かすその光景は、あまりに魅力的だ。
俺の頬を熱くなり、心臓の鼓動は早くなる。
落ち着け俺、この状況は妹にやられた事があるだろう!
落ち着かせようと自分の心に言い聞かせるが、目の前に広がる光景から目が離せない。
乱れた髪、翡翠色の瞳、前が全開のコート、肌をチラ見せする服の裾、立っている時は気付かなかったが、その大きさがはっきりとわかる2つの山。
……。
………。
時が止まったかのように見つめあった末、俺は腕に力を入れて起き上がる。
「か、からかうのもいい加減にしろ」
「クリス君なら―――と思ったのに」
ウィンダがボソッと呟く。
何を呟いたか不明だったが、しばらく顔が合わせられず、お互い黙ったままだった。
「すー、すー、すー」
ウィンダの方に視線を向けると、疲れていたのかいつの間にか彼女は眠っていた。
「静かだなと思ったら寝てるのかよ。まぁ休憩しに来たわけだし俺も一休みするか」
ついでにちょっと情報でも集めるか。
そう考え、俺は目を手で覆い図書を開く。
ここだけ日が当たっている理由は?
『ここは、”ザ・フォレスト(仮名)”の本体が居る場所の、真上に位置しています。主な養分は魔力ですが、木を維持するためには太陽光も必要なので、意図的にここだけ陽が当たるようにしています。
また追加情報として、この森に住むモンスター達は陽の光に弱いため、この場所に立ち入ることができません』
「だから、ここだけモンスターが居なかったのか」
ザ・フォレストは何年前から居る?
『約2000年前と考えられます』
レッドサイクロプスの居場所は?
『この森の中に居るのは確かですが、詳細までは不明です』
なぜ居場所が分からない?
『私がわかるのは出身地のみで、現在地はその個体によって違うため把握しておりません』
「とりあえず、聞きたいのはこんなもんかな」
疲れた俺は、ウィンダから少し離れた場所に寝転がり、眠りについた。
……。
………。
どれだけ寝ていたか分からないが、目を覚まして身体を起こそうとした時、すぐにその異変に気が付いた。
この右腕にある柔らかな感触、昔妹にやられた事がある。
この感触は男なら一度は味わってみたいだろう。だが俺は幾度となくこの感触を味わってきた。
そう、腕にアレを押し付けられる感触だ。
とりあえず、少なくとも妹よりは小さいな。
挟まれてる感触はするけど、包まれてる感じはしない。
俺は一度目を閉じ、深呼吸をする。
そしてもう一度目を開けて首を右に回す。
目の前には、離れて寝ていたはずのウィンダの顔があり、状況を確信した。
あの、ウィンダさん? 流石に無防備すぎやしませんかね?
思わず心の中で問い掛けた。
このままではイケナイと思い、腕が抜けないか試すが、ウィンダの口から「んっ」と甘い声が漏れ、身体が固まってしまった。
再度落ち着きを取り戻し、今度はウィンダ自身にどいてもらおうと、彼女の方に身体ごと向ける。
抜け方は簡単で、まず左手でウィンダの右腕を俺の腕から離し、そのまま上に持ち上げ、ウィンダの横腹辺りに乗せる。
その後、ゆっくりと二の腕を押して、仰向けにさせる。こうすることで、谷間に挟まれた腕を簡単に救出することが出来るのだ。
俺は一体、誰に説明してるのやら……。
ウィンダの捕縛から抜け出し、一度立ち上がる。
腰を回したり、腕や脚を伸ばして全身を解す。
それから、俺はウィンダの肩を揺らし声をかける。
「おーいウィンダ、そろそろ行くぞ」
「ん、んー? クリス……君?」
「あぁ、俺だよ」
ウィンダは瞼を擦りながら上半身を起こすと、大きな欠伸をした。
「ごめんなさい、いつの間にか寝てたみたい」
ウィンダが前で指を交差させて、手のひらを外に向けて伸ばす。
「んーーっ……はぁ」
「てか、ウィンダはいつの間に俺の横へ? 確か離れて寝たはずなんだけど」
「あぁ、クリス君が寝てる時に、一度起きたんだけど、クリス君の寝顔見てたら、何故か添い寝したくなっちゃって」
「それで腕に絡み付いて寝てたのか!?」
「え、私、クリス君の腕にくっ付いてたの?」
「そうだよ、俺が起きたらがっちり捕縛されてた」
そう返すと、ウィンダはボンッと全身を赤くして、両手で頬を隠してしまった。
ウィンダが落ち着くまで待とうと思ったが、俺のお腹が空腹を知らせる。
「ふふ、ちょうど私も小腹が空いてたから、持ってきたサンドイッチ一緒に食べましょ?」
「あぁ、ありがとう」
ウィンダが具現化した、焦げ茶色のバケットの中には、タマゴや野菜、ハムなど、色んな種類のサンドイッチが入っていた。
「どれも美味しそう」
「昨日泊まった宿屋の台所で作ったんだ、普段家じゃ料理なんてしたこと無かったけど、パンに挟むだけなら私にも出来そうって」
「うまい!」
「そう? なら良かった」
ウィンダが持ってきたサンドイッチを食べ終わった俺達は、この空洞を後にし再びレッドサイクロプスを目指して歩き始めた。
空洞を出る前に、ウィンダと索敵×連携で森の全体像を再度確認したところ、1体だけ広い空間で明らかに動きがないモンスターが居た。
俺達は、その場所を目指して歩き始めたが、再びオレンジ色のモンスターの接近に気が付き、すぐ側の木陰でやり過ごそうと隠れる。
しかし、今回は一本道のため確実に俺達の目の前を通過する。
そこでウィンダは、俺の手を取り小声で伝えた。
「クリス君、連携を使って私の隠密と掛け合わせてやり過ごすの」
俺は黙って頷き、スキルを発動させる
―――隠密――― ―――連携―――
隠密スキルは、自身の姿や気配を消してくれるスキルで、ウィンダの戦法に一番合うスキルだ。
さらに今回は俺の連携を同時に使っているため、姿や気配に加えて、臭いまでかき消す能力になっていた。
だが、目の前を通るオレンジ色のモンスターは、俺達の目の前で止まる。
俺とウィンダは息をも止め、早く行ってほしい思いで耐えた。
すると、オレンジ色のモンスターの方から幼い少女のような声が聞こえる。
「――――――、―――」
少女の声が聞こえなくなり、オレンジ色のモンスターが再び歩み始める。
しばらくして、モンスターの足音は森の奥へ消えていった。
「はぁ……はぁ……はぁ、ようやく行ったぁ」
「はぁ、そう……だね、はぁ…はぁ…」
息を整え、微動だにしないモンスターがいる空間へと向かう。
入口は一本道になっているが、蛇行していて先が見づらくなっていた。
歩き続けると、徐々に道に光が差し込んでくる。
ようやくたどり着いたそこは、無数の極太の蔓に覆われた空間が広がっていた。
目標のレッドサイクロプスは目の前にある段差の上で、仰向けの状態で俺から見て頭が右になるように寝ている。
「あれが、レッドサイクロプス」
ウィンダは初めて見るようで、その圧倒的なサイズ感に驚いてる様子だ。
俺は一度、エクサリス村の近くに出没したサイクロプスと戦った経験があるため、あまり驚かない。
「よし、行こクリス君」
「いや、ちょっと待て。たぶんこの先に入ると奴が起きる可能性がある。その前に先制攻撃を仕掛けよう」
「いいけど、具体的にどうするの?」
「そうだな。ウィンダはここから頭狙える?」
「ううん、ここからだと見にくくて、うまく狙えないわね」
「なら、ウィンダは戦闘が始まったら、蔓の高台に向かってくれ」
「クリス君はどうするの?」
「俺はそのまま接近するけど、その前に」
俺は右手に太刀を具現化させる。
「それをどうするの?」
俺は入口から数メートルほど下がると、具現化した太刀を逆手持ちにする。
―――「属性付与」―――
「太刀に麻痺属性と雷属性を付与!」
その直後、太刀の刀身にバチバチッという音を立てながら、黄色と青白い雷が走り始める。
「これをこうするんだよ!」
俺は走り出し、ウィンダの前を通過する直前でジャンプする。
―――投擲―――
レッドサイクロプス目掛け投げると、太刀は少し山なりに飛んでいき、左横腹に刺さった。
すると、レッドサイクロプスの全身を黄色と青白い雷がバリバリッと、目の前で落雷が起きたような大きい音を立てる。
直後、レッドサイクロプスの頭上に緑色のゲージが二本出現し、そのゲージの上に「BOSS」という赤色の文字と、麻痺を示す黄色と黒色の落雷のようなアイコンが表示された。
「よし、麻痺したな。今のうちに与えられるだけ与えるぞ!」
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