4 / 109
ヒロイン可愛い
しおりを挟む「おはようご……」
教室のドアを開けて挨拶をしようとしたんだけど、言葉も終わらないうちに体当たり……もとい、柔らかい感触に包まれました。
「キャスティーヌ様!お体はもう大丈夫ですの?」
俺に抱きついて来たのは、キャスティーヌの一番の友人であるヒロインだ。
うん、もうちょっと一部の弾力が有れば言う事ないのにね。
「おはようございます、クリスティーナ様、ご心配をおかけして申し訳ありませんわ。
もう大丈夫ですからご安心なさって」
うん、本当に心配かけたと思う。
あの時すっごい焦った顔で駆け寄って来てたからね。
今だって心配が滲み出てて表情が暗い。
「本当に大丈夫ですの?
少しでも体調が思わしくないのなら、お休みしてた方がよくなくって?」
「ふふふ、クリスは心配性なんだから」
他のクラスメイトには聞こえないように愛称を呼ぶと、固かった表情が少しだけ崩れた。
「さあ、入り口に居ると他の方の迷惑になってしまいますわ、席へ行きましょう」
俺が言うと素直に頷き、二人で移動しようとしたのに、後ろから不機嫌な声が聞こえてきた。
「本当に迷惑だな、早く退いてくれないか?」
この甘いイケボは!
勢いよく振り向くとそこに居たのは第二王子、しかも背の低い俺から見ると見上げる形、そして向こうは上から見下ろす形、その背後からは、窓からキラキラ陽の光。
この角度は……ケシカラヌコトをヒロインにして上から押さえ込んで見下ろす角度!!
俺の前世の一番最後に目に入ったスチルと同じ角度!
表情は全く違うけど、見下ろす角度が一緒過ぎ!
体が震えて全身鳥肌!
思わず後ろに下がったらよろめいてしまった。
横に居たクリスティーナに支えられたから転けなかったけど、誰も居なかったら尻餅ついてた、きっと。
「なんだその態度、不敬ではないか?」
いやいやいや、にじり寄ってこないで下さい!
そのイケボで喋らないで下さい!
俺にその気はないですから!
「失礼致しました。
キャスティーヌ様は昨日の夜会で倒れられて、まだ体の調子がよろしくないのです。
どうぞお見逃しください」
胸に手を当てて頭を下げるクリスティーナ。
クリスティーナの設定は……
クリスティーナ・ヨルハイム 16歳、青銀の髪にコバルトブルーの瞳を持つ、ちょっとお胸が寂しい子爵令嬢。
体が弱かった母親の看病の為、田舎で暮らしていたが、15の時母が亡くなり王都へ戻って来る。
そのため皆より一年遅れて学園へ。
16歳の社交デビューに向けて一年間頑張って学ぶ。
そこでどのステータスを伸ばすかで攻略ルートが決まる。
全てを均等にオールマイティに伸ばし、優しさを上げると、真面目で健気な性格になり、王子とアル兄さんと用務員ルートへ。
体力を中心に伸ばすと、明るく元気な性格で、留学生と護衛騎士、商人の息子ルート。
勉強に力を入れて、体力を控えめだと、賢く聡明な優等生キャラに。
大神官の息子と教師と、王子(2ルート目)に。
そして全てをマックスにする高難易度だと、すべてに立ち向かうヒロインへ。
ルートはリズヴァーンと隠しキャラ。
どのパラメータも一定値を下回ると、誰とも絆を深めず学園を去るバッドエンド。
確かそんな感じだったかな?
隠しキャラが誰なのかは教えてもらえなかったけど。
そしてヒロインがリズヴァーンルート以外だと、俺がリズヴァーンと……のルートだ。
これは阻止したい、是非にでも!
ここはどのルートだろう、うーん、全てをそつなくそこそこだった様な……。
「おい!聞いているのかサリフォル嬢!」
おっと考え事に没頭して王子をシカト状態だった。
「申し訳ございません、やはりまだ少し調子が悪いようです」
「まあ、キャスティーヌ様、それは大変ですわ、救護室へとまいりましょう」
クリスティーナが俺の手を取る。
おー、クリスティーナもキャスティーヌに負けず劣らずすべすべだ。
「ランフェル様、御前を失礼いたします」
優雅に頭を下げるクリスティーナに追随するよう俺も頭を下げ、王子の前から退場。
しかしけしからんな、あの王子あんな顔してクリスティーナにあーんなことやこーんな羨ましいことをするんだから。
でも今の反応だと、この世界では王子ルートではないのかな?
17
あなたにおすすめの小説
黒騎士団の娼婦
イシュタル
恋愛
夫を亡くし、義弟に家から追い出された元男爵夫人・ヨシノ。
異邦から迷い込んだ彼女に残されたのは、幼い息子への想いと、泥にまみれた誇りだけだった。
頼るあてもなく辿り着いたのは──「気味が悪い」と忌まれる黒騎士団の屯所。
煤けた鎧、無骨な団長、そして人との距離を忘れた男たち。
誰も寄りつかぬ彼らに、ヨシノは微笑み、こう言った。
「部屋が汚すぎて眠れませんでした。私を雇ってください」
※本作はAIとの共同制作作品です。
※史実・実在団体・宗教などとは一切関係ありません。戦闘シーンがあります。
転生したら乙女ゲームの主人公の友達になったんですが、なぜか私がモテてるんですが?
山下小枝子
恋愛
田舎に住むごく普通のアラサー社畜の私は車で帰宅中に、
飛び出してきた猫かたぬきを避けようとしてトラックにぶつかりお陀仏したらしく、
気付くと、最近ハマっていた乙女ゲームの世界の『主人公の友達』に転生していたんだけど、
まぁ、友達でも二次元女子高生になれたし、
推しキャラやイケメンキャラやイケオジも見れるし!楽しく過ごそう!と、
思ってたらなぜか主人公を押し退け、
攻略対象キャラからモテまくる事態に・・・・
ちょ、え、これどうしたらいいの!!!嬉しいけど!!!
転生しましたが悪役令嬢な気がするんですけど⁉︎
水月華
恋愛
ヘンリエッタ・スタンホープは8歳の時に前世の記憶を思い出す。最初は混乱したが、じきに貴族生活に順応し始める。・・・が、ある時気づく。
もしかして‘’私‘’って悪役令嬢ポジションでは?整った容姿。申し分ない身分。・・・だけなら疑わなかったが、ある時ふと言われたのである。「昔のヘンリエッタは我儘だったのにこんなに立派になって」と。
振り返れば記憶が戻る前は嫌いな食べ物が出ると癇癪を起こし、着たいドレスがないと癇癪を起こし…。私めっちゃ性格悪かった!!
え?記憶戻らなかったらそのままだった=悪役令嬢!?いやいや確かに前世では転生して悪役令嬢とか流行ってたけどまさか自分が!?
でもヘンリエッタ・スタンホープなんて知らないし、私どうすればいいのー!?
と、とにかく攻略対象者候補たちには必要以上に近づかない様にしよう!
前世の記憶のせいで恋愛なんて面倒くさいし、政略結婚じゃないなら出来れば避けたい!
だからこっちに熱い眼差しを送らないで!
答えられないんです!
これは悪役令嬢(?)の侯爵令嬢があるかもしれない破滅フラグを手探りで回避しようとするお話。
または前世の記憶から臆病になっている彼女が再び大切な人を見つけるお話。
小説家になろうでも投稿してます。
こちらは全話投稿してますので、先を読みたいと思ってくださればそちらからもよろしくお願いします。
社畜OLが学園系乙女ゲームの世界に転生したらモブでした。
星名柚花
恋愛
野々原悠理は高校進学に伴って一人暮らしを始めた。
引越し先のアパートで出会ったのは、見覚えのある男子高校生。
見覚えがあるといっても、それは液晶画面越しの話。
つまり彼は二次元の世界の住人であるはずだった。
ここが前世で遊んでいた学園系乙女ゲームの世界だと知り、愕然とする悠理。
しかし、ヒロインが転入してくるまであと一年ある。
その間、悠理はヒロインの代理を務めようと奮闘するけれど、乙女ゲームの世界はなかなかモブに厳しいようで…?
果たして悠理は無事攻略キャラたちと仲良くなれるのか!?
※たまにシリアスですが、基本は明るいラブコメです。
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
治療係ですが、公爵令息様がものすごく懐いて困る~私、男装しているだけで、女性です!~
百門一新
恋愛
男装姿で旅をしていたエリザは、長期滞在してしまった異国の王都で【赤い魔法使い(男)】と呼ばれることに。職業は完全に誤解なのだが、そのせいで女性恐怖症の公爵令息の治療係に……!?「待って。私、女なんですけども」しかも公爵令息の騎士様、なぜかものすごい懐いてきて…!?
男装の魔法使い(職業誤解)×女性が大の苦手のはずなのに、ロックオンして攻めに転じたらぐいぐいいく騎士様!?
※小説家になろう様、ベリーズカフェ様、カクヨム様にも掲載しています。
つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました
蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈
絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。
絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!!
聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ!
ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!!
+++++
・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)
主人公の義兄がヤンデレになるとか聞いてないんですけど!?
玉響なつめ
恋愛
暗殺者として生きるセレンはふとしたタイミングで前世を思い出す。
ここは自身が読んでいた小説と酷似した世界――そして自分はその小説の中で死亡する、ちょい役であることを思い出す。
これはいかんと一念発起、いっそのこと主人公側について保護してもらおう!と思い立つ。
そして物語がいい感じで進んだところで退職金をもらって夢の田舎暮らしを実現させるのだ!
そう意気込んでみたはいいものの、何故だかヒロインの義兄が上司になって以降、やたらとセレンを気にして――?
おかしいな、貴方はヒロインに一途なキャラでしょ!?
※小説家になろう・カクヨムにも掲載
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる