【完結】アラサーの俺がヒロインの友達に転生?ナイワー

七地潮

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モブに絡むモブ

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「あら、キャスティーヌ様、今日はサボタージュはしませんの?」

寄ってきたのは三人の少女…いや、それよりちょっと待て、サボタージュ?
そうだよ、貴族のご令嬢なら「サボった」なんて言わないよな。

ヤバイ、昨日リズヴァーンに思いっきり「サボった」とか言っちゃったよ。
変に思われるだけならまだしも、あのシスコン兄に告げ口されたら、心配してシスコン暴走するんじゃないか?
あー、黙っててくれるといいなー。

「ちょっと、貴女聞いてらっしゃるの!」
あ、ごめん、聞いてなかった。
えーと、この三人は影でヒロインを虐めるモブの女A、B、Cこと、アンジュエラ、ベネッサ、キャサリンだったよな。

ゲームでは名前付いてなかったけど、この世界で生きて生活しているのだから、名前くらいあるよね。

「夜会を途中で抜けたと思ったら、翌日には授業にも出ず、人の話も聞かないなんて、高貴なお方のなさる事ではありませんわ」
アンジュエラが言うと、頷く二人。

「それにお二人とも、昨日はアルバート殿下にこそこそとお話しされてたわね」
「教室の入り口など人目のある場所で、密やかに話されるなんてはしたないと思いませんか」
因縁つけて来る三人。

実はこの三人に虐められてたんだよね、キャスティーヌは。
勿論主人公の事も虐める。

思い出したんだけど、今までも、
「頭の中身や慎みまでオッパ……胸に吸い取られてんじゃないの」とか、「男性の気を引く為にでっかくしたんだろ」とか、「なんでも兄貴にちくってんじゃねえぞ」とかとか。

いや、もちろんこんな言葉遣いじゃないけどね。

そんな三人が、昨日のことをなぜネチネチ言ってるかと言うと、今が女性だけの授業で、男性の目が無いから。

教室で絡むと異性の評判が落ちるから、この三人は女性だけの授業や、トイレや更衣室、放課後の呼び出しなど、周りに男の目の無いところでネチネチするのだ。

女って陰険だなぁ。

それに比べてスカーレットは、人目も気にせず、思ったことを思った時にズバー!と言うから、俺は好き。

でも、他の男から見ると、ズケズケ物を言う性格のキツイ奴、なんだよね。

この三人娘なんて本当に腹黒くって、何か言い返すと
「ワタクシそんなつもりじゃあありません、ひどいですわ」
なんて言いながら泣き真似をする。
そうするとバカな……経験の浅い若い男はコローっと騙されるんだよね。

でもあまりやり過ぎると、そんなバカ……男性にも信じてもらえなくなるってわかってるから、普段は異性の目のない所で因縁ふっかけてくるんだよ。
それとも涙が出そうにない時は人前で文句言わないようにしてんのか?

計算高い女って本当怖いよなぁ。


「私達は入り口に立ち止まったことを注意されてただけですわ。
そんな言いがかりやめてもらえませんか」
いけないいけない、ヒロインを庇う友達ポジなのに、ヒロインに庇われてどうする。

「そうかしら?
もしかして殿下が教室にいらっしゃると分かってて立ち止まっていたのではなくって?」

うーん、言い返したいけど、言葉遣いがわからん。
ここはクリスティーナにお任せでいいかなぁ、いやダメか。

「そうですわ、注意されていただけなのですけど、私達に恥をかかせないよう、殿下は声を潜めてくださっただけですわ」
「まあ!殿下が貴女方を気遣ったとおっしゃるの?
なんて自惚れなのかしら!」

うわー、面倒~、逃げていいかなぁ、いや、ダメか。
えー、『本当の事しか言ってないのに何がしたいんだよあんた達』はどう言えばいいかなぁ。

「事実を述べているだけですのに、貴女方はどうされたいのですか?」
こんな感じ?

「まあ、なんて言い方なんでしょう!」

あー、なんだかヒートアップしてきたよ。
そんな三人に釣られるように、クリスティーナも熱くなってきた。
どう収集するんだよ、これ。

「ちょっといいかな、お嬢さん達。
通りすがりなんだけど、会話が耳に入っちゃったんだ」
明るく軽い声が背後からかけられた。

五人の視線がそちらへ向くと、そこに居たのは、焦げ茶の天パーで、金色の瞳、日に焼けた肌、南国出身の両親を持つ、今王都で一番大きな輸入商品取り扱い店の息子、モースディブス、18歳、ヒロインの攻略キャラの一人だ。

「廊下を通りかかったら揉めてるみたいなんで聞いてたんだけど、どうもそちらの三人の言いがかりとしか聞こえなかったんだよね。
口を挟むのはどうかとも思ったんだけど、会話の中心人物が近くにいるから止めた方がいいかな、って思ったんだけど」

年上のしかも男性の出現に、三人娘の口が止まる。
その上王子が近くに居ると聞いたら顔色まで青くなる。

「わ……私の思い違いだったのなら申し訳ございませんでしたわ。
これからもお気をつけくださいね」
行きましょうと、三人娘は退場。
残ったのはクリスティーナとモースディブスと俺。

少し気まずそうなクリスティーナ、一安心の俺、ニヤニヤしているモースディブス…長いな、デイブで良いかな、いやダメか。
商人の息子ルートで、ヒロインが仲良くなった時に呼ぶ愛称だから、モブが呼ぶのは無しだよな。

「余計なことしたかな、アルバートのお姫様」
あ、設定思い出した、この男アル兄をライバル視してるんだった。

将来のために算術や経済学、経営学を究めたいのに、どうしてもアル兄に成績で勝てないとかだったはず。
だから皮肉を込めてキャスティーヌの事を「アルバートのお姫様」って呼ぶんだよね。

「いえ、助かりましたわ。
ありがとうございます」
「そう、助かったのなら、是非とも次の試験では俺のことを助けて欲しいもんだ」
「モースディブス様、不正をしろとおっしゃっているのですか」
クリスティーナが眉根を寄せて、庇うように俺の前へ出る。

いやいや、逆だから、ヒロインは庇われる立場なんだから。
それにこいつあんたのお相手の一人だよ、険悪ムードやめといた方が良くない?

「冗談ですよ、冗談。
そんなに睨まないでくださいよ、ヨルハイム子爵令嬢」
揶揄うような口調に、クリスティーナの眉間のシワが増える。

うん、こいつ従順な女性より、頭の回転の早い、物をはっきり言う女性が好みだったはず。
だからヒロインと結ばれなかったらスカーレットとくっつくんじゃなかったっけ?

この感じだと、まだこいつのルートに行く可能性もあるのかな?

「それじゃあ俺は失礼させていただきますよ、お二方」
上半身を少し屈めて挨拶をして、モースディブスも去って行く。

残った俺達も、今日はなんだか疲れたからと、家に帰ることとなった。


もちろんどこから聞きつけて来るのか、アル兄に拉致られるように馬車に乗せられたよ。

GPS疑惑はシャレじゃ無いかもしれない……。





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