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学園祭があるですよ

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結局その後もクリスティーナの家のことは聞けずじまいだ。
プライベートな事は、本人が口にするまで、聞いちゃダメだよね。
儀式の件を聞かれた俺の感想です。


さてさて、社会人モノならお決まり行事は社員旅行、または温泉旅行辺りかな。

学園モノだから、本当にありきたりで申し訳ないんだけど、後期の最初の行事は学園祭だ。

だがしかし、『お化け屋敷』や『屋台』『メイド喫茶』などの黄金出展は無い。

平民もいるとは言え、学園に通うのは殆どが貴族子女だ。
ハメを外すのにも限界があるし、召使の真似事などできない、なんてね。
だから【学園祭】と言うか、【発表会】みたいな感じかな。 


歌や楽器、曲の発表、絵画や彫刻の展示、新しい魔道具開発の発表や、複合魔法の研究発表、馬術や種目ごとによる勝ち抜きトーナメントなどなど。
選択している授業により、出し物が決まる。

その他には、劇や詩の朗読などもある。
食べ物などは、業者…近隣の食堂や、カフェが出店を出す。

勿論学園のカフェや学食もオープンされているので、親達は普段どんな物を、自分の子供達が口にしているかをチェックする。
そこで味やメニューの変革が行われるので、学園内での飲食は、その辺のレストランより安くて美味しくて、量も多いから、ありがたいことだ。

学園祭は二日間行われる。
一日目は色んな出し物とトーナメントの予選が、二日目は一トーナメントの決勝戦がメインだ。

一般の観覧は、親や婚約者、卒業生などしか入れない。
セキュリティの事を考えると当然だね。

二日目の最後は、ダンスパーティーと、いろんな発表がある。
投票による一番良かった出し物、トーナメントの優秀者発表、前期の成績優秀者の発表もある。

そして唯一浮かれた催しが、ミス、ミスターコンテストだ。

成績だけでなく、貴族子女としては、美しさも大事だからね。
でもさぁ……王族がいる時点で、ミスターに選ばれる人は決まっている、出来レースみたいなもんだと思うのは、穿った見方かな。


そんな感じの学園祭で、生徒はなんでも良いので、最低一つの出し物には参加しなければならない。

俺は……どうするか悩み中だ。

俺の存在からしたら、やはりヒロインと同じものを選んで、一緒にキャッキャうふふするべきなんだろうけど、クリスティーナが選んだのが、体術授業の弓の競技だ。
遠的と、動く的に当てる競技で、合計点で勝ち抜いていく。

俺って弓はイマイチなんだよ。
だからと言って、どの武器の競技に出ても、ガチ勢になんてかなうわけがない。

『参加することに意義がある』なんてのはこの世界には無い。
『出るからには勝つ!』この一択だ。
初戦敗退が分かりきっているんだから、出たくは無い。

「キャシーはまだ決まりませんの?」
「うううう……、だって~…」
「トーナメントに出たく無いのなら、発表に出るしかないのではなくて?」
「そうですわよ、キャシー」

新学期になってから、3人で行動することが増えた。
え?誰って、俺とクリスティーナとスカーレットだ。

ライバルポジはどこに行った?って、成績をかけて切磋琢磨するライバルだよね、二人は。
悪役令嬢?そんな設定は無かったんだろう。

「スカーレットは魔道具の発表ですよね?」
「ええ、そうですわよ」
「試作品を使わせていただいていますけれど、とても綺麗になって助かりますわ」

スカーレットの開発した魔道具は、風の魔石に振動の術式を付与したもの。
これを水に沈め、指輪やネックレスを入れると、細部の汚れが落ちて、綺麗になる………、謂わば【超音波洗浄機】みたいなのだ。

そう言った開発チートは、日本の記憶のある俺がするもんなんだろうけど、いかんせん面倒くささが表立ち、日本の文化をこちらに広めようとは思わない。

別に生活に不自由しているわけでなし、ゲーム内世界だから、ご都合主義な日本文化が元からあるしね。
わざわざ何かを発信して、目立つことをしたくない。

強いて言うなら、パソコンとタブレットと、Googl●先生が有れば良かったけど、無いなら無いで良いかな、と。
っか作れないしね、そんなもの。

絵を描くのは趣味が高じた仕事だったけど、仕事はする必要ないし、絵はね……。

俺の絵がこの世界で受け入れられる事は無いってわかっているから、落書きぐらいはしても、人に見せようなんて思わない。
他にやらなきゃいけない事が色々あるしね~。

だからこそなのか、今こうして悩んでいる。
人に見せるようなものがないから、学園祭の出し物が無いんだよ。

武術も勝ち残れる訳ないし、歌や楽器は無理。
絵画も萌絵なんて論外だし、開発もやる気ない。
劇なんて、無茶振りもいいとこだ。

迷いに迷った結果、俺の選んだのは【詩の朗読】だ………。


何で全員参加なんだよぅ!!
チキショー、凡才なのが哀しいぜ!




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