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第八話 推しだけじゃなくて推しの要素を構成する周りのキャラだいたい皆好きになるから結局箱推しになる その1
しおりを挟む――、時は、少し前から遡る。
――――
「いやぁぁぁあ!吸い込まれますわ!ハレンチですわぁぁぁぁ!!!!」
「ポラリス・ホールド」をかけたミーティアちゃんの大絶叫が学校中に響き渡った直後。
「ぐへぇっ!」
突然、ミーティアちゃんの身体から強い光が出て、私の視界を白く塗り潰した。
光が収まるのを待って、やっと目を開けてみたら、ミーティアちゃんは案の定、私の腕の中からいなくなっていたのである。
――――
「結局、あの子はなんだったんだろうね……」
あれだけ派手に割られたハズの窓ガラスが元通りになっているのを見ながら、あおいちゃんがお弁当の卵焼きを頬張った。
……、校庭に現れたサイヤクダーは、全学年の生徒が体育館に避難するほどの騒ぎになったらしく、勝手にいなくなっていた私達「マジカル・ポラリス」の三人は、ミーティアちゃんとの戦闘の後に国語のオッサン先生から大目玉を食らった。
美少女戦士もののアニメの定番とはいえ、理不尽である。いや、先生が生徒の安全を守らなきゃいけないからっていう理由はわかるんだけども。
「メテオリトの妹って言っていたけど、本当なのかな」
「そりゃ、あかりんのことをあんな風に言ってくるってことは、そうなんじゃないの?『泥棒猫!』なんて、ウチ初めて生で聞いたよ」
しみじみと話している二人に、ちょっとだけ悪いと思ってしまった。
生の『泥棒猫』を聞いて興奮している人間なんて、この場で私しかいない。
二人は、前世の記憶を持ち合わせない、純粋な中学二年生なのだ。教育的に、悪いことをしてしまった。
「ごめんね。私の愛が深くて激しいばっかりに……」
こんな修羅場を二人に見せつけるつもりなんてなかった。
多分、『マジカル☆ステラ』的にもNGだろう。日曜朝の子ども向けアニメで、「泥棒猫」なんて単語は出しちゃいけない。さすがにそれはダメだ。
「あぁ……、まぁ、あかりだし」
「メテオリトへのアプローチがあんだけ激しければ、妹さんだって気付くよねぇ……」
あおいちゃんが溜息を吐き、ことねちゃんが肩をすくめる。
……、あれ?これ、なんか、呆れられてない?私、二人に呆れられてない?
「ご、ごめん!でも、私、メテオくんのこと――」
「誰も諦めろ、なんて言ってないよ。どうせ止めたって聞かないでしょ」
「まぁ、周りの男子にも目を向けて欲しいけどね。……って」
ことねちゃんが、何気なく振り返る。
その視線の先には、メテオくん……、もとい、「天手オリト」の席があった。
あれ?そういえば――。
「天手くん……、戻って来てないね?」
それどころか、今の今まで気が付かなかった。
周りのクラスメイト達も、先生も、何事もなかったかのようにお弁当を食べている。
「ねぇ、日向」
ことねちゃんが、少し離れた席でフットサル同好会のメンバーとお昼を食べている日向くんに呼びかけた。
彼はフットサルのメンバーとの会話に夢中だったけれど、ことねちゃんに気付いた子が、日向君を小突いて気付かせてくれた。
「どうした、星野?」
「天手くん、どうしたの?さっきの騒ぎの時はいたと思うんだけど」
「え?何言ってんだ?」
日向くん、鳩が豆鉄砲を食ったような顔をしている。
「オリトは、今日、休みだろ?」
……、え?
どういう、ことだ?
だって、私達は、確かに、オリトくんを後ろに庇って戦っていたハズなのに。
「え?あの授業の前までいたよね?だってウチら――」
「いや、休みだって。なぁ?」
日向くんが言うと、フットサル同好会のメンバー達も頷く。
他のクラスメイト達も誰も反応しないから、多分、日向くん達の言葉の方が正しいのだろう。
……、正直、天手くんはメテオくんだ。何が起こったっておかしくない。
だけど、こんな展開って。これって――。
「……、どうしたの、あかり」
取り越し苦労かもしれない。
杞憂かもしれない。
妹のフォローをしているだけかもしれない。
だけど、どうしても、最悪の状況が頭をよぎる。
「ごめん。私も体調が悪くなった。たった今」
「え?」
椅子から立ち上がって、弁当を包む。
机の中の教科書を出して、鞄に放り込む。
その鞄を背負えば、昼休みに学校を早退する、見事な不良女子中学生の出来上がりだ。
「ちょっと早退するね。大丈夫。心配しないで」
――、アニメ「マジカル☆ステラ」では、メテオくんが最終決戦でいなくなった後、「天手オリト」の記憶は、クラスメイトの皆の中からは完全に消えてしまう。
今は、完全に消えたわけではないし、単なる「休み」になっているだけだから、もしかしたら、メテオくんが自分の力で皆の記憶を書き換えたのかもしれないけれど。
でも、「もし」、「万が一」、メテオくんが消えるようなことになっていたら。
今すぐには消えなくても、それに繋がるようなことになってしまっていたら。
「あかり!」
「あかりん!」
――私は、何のために、この世界で「マジカル・ポラリス」しているんだか、わからない。
「ステラ・マジカルプロテクション!」
廊下に走り出て、五階の窓から飛び降りながら叫ぶ。
これは、私一人が決めたことだから、絶対に他の二人は巻き込んじゃいけない。
ましてや、私の前世のことも半信半疑な二人には。
こんな時でも、ステラ・ミラーは私の呼びかけに答えてくれた。
下から吹き上げる風を感じながら、眩しい光の中で目を閉じる。
サイヤクダーも出ていないのに変身するなんて、お茶の間の子どものヒーローとしては失格だ。
だけど、きちんとメテオくんの無事を確かめないと、どうしても落ち着かない。
素早くメテオくんを探すには、結局これが一番なのだ。
「どうしたポラ!?ポラリス!」
ポラルンが横から話しかけてくる。
こんな主人公で、こんな主で、本当にごめん。
「メテオくんを、探しにいく」
マジカル・ポラリスの脚力で、五階のジャンプからの衝撃に耐える。
学校の裏のフェンスを跳び越え、道路を跳び越え、屋根から屋根を伝って、なるべく一般人の皆々様に見つからないような道を選びながら、私は街の中を駆け巡った。
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