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Ⅰ ~邪竜をテイムしたのでついでに魔王も倒しておこうと思う~
【第7話:おのぼりさんです】
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地方都市ドアラ。
人口1万人ほどの街で、そばに『深き森』という魔物が非常に多く住む森がある。
その森の魔物を目当てに多くの冒険者が集まっている事でも有名な街で、この国に3人しかいないS級冒険者の一人もこのドアラを拠点にしているそうだ。
都市の周りはぐるりと城壁に囲われていて、見ているだけで圧倒されるような威圧感がある。
この世界では都市と名付けられている町は、そのほとんどが高い城壁で囲まれている。
中でもこの地方都市ドアラは『トリアデン王国』最南端の都市で、『深き森』の奥地は人跡未踏の地の為、国境防衛の役割も担っている。
まだこのドアラが出来る前の大昔の話らしいが、過去に魔王軍が侵攻してきた事もあるそうだ。
「お。朝早いからまだ人が少ないようですね」
テリオスさんが城門の前に短い列しかないのを見て嬉しそうにそうこぼす。
町に入る為の手続きはあまり待たずに済みそうだ。
~
列に並んで10分ほどでオレ達の番が回ってきた。
テリオスさんは商人ギルドのギルドカードを、オレは村長からもらった紹介状を衛兵に見せる。
「ん? おのぼりさんか。働く当てはあるのか?」
衛兵は愛想の良い人で、気さくに話しかけてきた。
「はい。冒険者になろうと思っています」
「やっぱりかぁ。やめとけやめとけ。冒険者なんて命がいくつあっても足りない。それにそんな小柄な体格じゃ1年と生き残れないぞ?」
きっとこの衛兵のおじさんは何度となく、帰ってこない若い冒険者を見てきたのだろう。
多少口は悪いが、本気で心配してくれているのがわかる。
しかし、そこにテリオスさんが楽しそうに割り込んできた。
「衛兵さん。この子は大丈夫だよ。私が保証しても良い! なんせここに来る途中にゴブリン7匹の群れに襲われたんだが、一人で飛び出したかと思うと10秒ほどで全部倒しちまった」
テリオスさんは話をするのが大好きなので、あの時の出来事を誰かに話したかったのだろう……。
「10秒ってA級冒険者じゃあるまいし、おっさんも大袈裟だな……って、それよりまたゴブリンが街道に出たのか!?」
ちょうど10秒ぐらいで倒したんだが……まぁ良いか。
それより「また」って言うのが気になるので聞いてみる。
「衛兵さん。『また』っていう事は最近はよく街道に魔物が出るんですか?」
「あぁ。今月に入ってもう7件の報告がある。その内1件は護衛を連れていなかったために、犠牲者まで出ているんだ」
「なんと!? この街道は安全だと聞いていたのですが……魔物が出たのが偶然じゃないのなら、これからはここも護衛を連れていかないとダメですな」
その後、どの辺りで出たのかなど細かく報告をし、ようやく町に入る事が出来た。
~
「いやぁ。根掘り葉掘り聞かれて、思ったより時間を取られてしまいましたね」
「そうですね。それより ここまで馬車に乗せてもらって助かりました。ありがとうございます!」
オレは本当に感謝していたので素直にお礼を言っただけなのだが、そこで呆れられてしまう。
「コウガ君……君は何を言っているんだい? ゴブリンに襲われた時にコウガ君がいなかったら私一人だったらそのまま死ぬか、無事に逃げ延びても大怪我を負っていたはずです。これは少ないですが護衛達成の報酬だと思って受け取ってください」
そう言うと銀貨3枚そっと差し出してくる。
たまたま一緒にいただけなんだからお礼はいらないと断ったのだが、遠慮するなと強引に手渡してきたので、結局有難く頂く事になった。
母さんから餞別に金貨3枚を貰ったのだが、両替しなくて済みそうだ。
ちなみにこの世界の貨幣の価値を大雑把に言うと、鉄貸が1枚10円ぐらい、銅貨が100円、大銅貨が1000円、銀貨が1万円、金貨が10万円ぐらいだろうか。
この上に材料にオリハルコンを使った白金貨があるそうで、これは1枚で1000万円ぐらいの価値があるようだ。一度ぐらい持ってみたいものだな。
ただ、こちらの世界は生活必需品の物価が前世よりかなり安く、逆に嗜好品や贅沢な品は物凄く高いという特徴があるので、一概にこの通りではない。
「それじゃぁ有難く頂いておきます」
そう言ってもう一度お礼を言う。
「じゃぁコウガ君が冒険者として成功する事を祈っているよ。またね。女神アセト様のご加護がありますように」
「テリオスさんにも女神アセト様のご加護がありますように」
最後に別れの時のお約束の挨拶をすると、テリオスさんは馬車に乗って大通りを進んで行ってしまった。
「さぁ、いよいよ冒険者だ!」
オレは気持ちを切り替えると、冒険者ギルドに向けて歩きはじめるのだった。
人口1万人ほどの街で、そばに『深き森』という魔物が非常に多く住む森がある。
その森の魔物を目当てに多くの冒険者が集まっている事でも有名な街で、この国に3人しかいないS級冒険者の一人もこのドアラを拠点にしているそうだ。
都市の周りはぐるりと城壁に囲われていて、見ているだけで圧倒されるような威圧感がある。
この世界では都市と名付けられている町は、そのほとんどが高い城壁で囲まれている。
中でもこの地方都市ドアラは『トリアデン王国』最南端の都市で、『深き森』の奥地は人跡未踏の地の為、国境防衛の役割も担っている。
まだこのドアラが出来る前の大昔の話らしいが、過去に魔王軍が侵攻してきた事もあるそうだ。
「お。朝早いからまだ人が少ないようですね」
テリオスさんが城門の前に短い列しかないのを見て嬉しそうにそうこぼす。
町に入る為の手続きはあまり待たずに済みそうだ。
~
列に並んで10分ほどでオレ達の番が回ってきた。
テリオスさんは商人ギルドのギルドカードを、オレは村長からもらった紹介状を衛兵に見せる。
「ん? おのぼりさんか。働く当てはあるのか?」
衛兵は愛想の良い人で、気さくに話しかけてきた。
「はい。冒険者になろうと思っています」
「やっぱりかぁ。やめとけやめとけ。冒険者なんて命がいくつあっても足りない。それにそんな小柄な体格じゃ1年と生き残れないぞ?」
きっとこの衛兵のおじさんは何度となく、帰ってこない若い冒険者を見てきたのだろう。
多少口は悪いが、本気で心配してくれているのがわかる。
しかし、そこにテリオスさんが楽しそうに割り込んできた。
「衛兵さん。この子は大丈夫だよ。私が保証しても良い! なんせここに来る途中にゴブリン7匹の群れに襲われたんだが、一人で飛び出したかと思うと10秒ほどで全部倒しちまった」
テリオスさんは話をするのが大好きなので、あの時の出来事を誰かに話したかったのだろう……。
「10秒ってA級冒険者じゃあるまいし、おっさんも大袈裟だな……って、それよりまたゴブリンが街道に出たのか!?」
ちょうど10秒ぐらいで倒したんだが……まぁ良いか。
それより「また」って言うのが気になるので聞いてみる。
「衛兵さん。『また』っていう事は最近はよく街道に魔物が出るんですか?」
「あぁ。今月に入ってもう7件の報告がある。その内1件は護衛を連れていなかったために、犠牲者まで出ているんだ」
「なんと!? この街道は安全だと聞いていたのですが……魔物が出たのが偶然じゃないのなら、これからはここも護衛を連れていかないとダメですな」
その後、どの辺りで出たのかなど細かく報告をし、ようやく町に入る事が出来た。
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「いやぁ。根掘り葉掘り聞かれて、思ったより時間を取られてしまいましたね」
「そうですね。それより ここまで馬車に乗せてもらって助かりました。ありがとうございます!」
オレは本当に感謝していたので素直にお礼を言っただけなのだが、そこで呆れられてしまう。
「コウガ君……君は何を言っているんだい? ゴブリンに襲われた時にコウガ君がいなかったら私一人だったらそのまま死ぬか、無事に逃げ延びても大怪我を負っていたはずです。これは少ないですが護衛達成の報酬だと思って受け取ってください」
そう言うと銀貨3枚そっと差し出してくる。
たまたま一緒にいただけなんだからお礼はいらないと断ったのだが、遠慮するなと強引に手渡してきたので、結局有難く頂く事になった。
母さんから餞別に金貨3枚を貰ったのだが、両替しなくて済みそうだ。
ちなみにこの世界の貨幣の価値を大雑把に言うと、鉄貸が1枚10円ぐらい、銅貨が100円、大銅貨が1000円、銀貨が1万円、金貨が10万円ぐらいだろうか。
この上に材料にオリハルコンを使った白金貨があるそうで、これは1枚で1000万円ぐらいの価値があるようだ。一度ぐらい持ってみたいものだな。
ただ、こちらの世界は生活必需品の物価が前世よりかなり安く、逆に嗜好品や贅沢な品は物凄く高いという特徴があるので、一概にこの通りではない。
「それじゃぁ有難く頂いておきます」
そう言ってもう一度お礼を言う。
「じゃぁコウガ君が冒険者として成功する事を祈っているよ。またね。女神アセト様のご加護がありますように」
「テリオスさんにも女神アセト様のご加護がありますように」
最後に別れの時のお約束の挨拶をすると、テリオスさんは馬車に乗って大通りを進んで行ってしまった。
「さぁ、いよいよ冒険者だ!」
オレは気持ちを切り替えると、冒険者ギルドに向けて歩きはじめるのだった。
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