槍使いのドラゴンテイマー

こげ丸

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Ⅰ ~邪竜をテイムしたのでついでに魔王も倒しておこうと思う~

【第51話:苦手なんだけどな】

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 いったいさっきの男の子あいつは何だったんだ?
 しかし、しまったな……一瞬の出来事で何も出来ずにドアンゴを連れ去られてしまった。

「こりゃぁ参った!俺みたいなA級冒険者じゃ太刀打ち出来ないような大物じゃねぇか!」

 突然グラムさんが額に手をあててそう叫ぶ。何か知ってそうだ。

「グラムさん、あいつが誰かご存知なんですか?」

「あぁ!ありゃぁ魔王軍6魔将の1人『堕天のクロケル』だ。悪魔の癖に神聖魔法を使いこなすと言われている奴だ」

 さっき消え去ったのは本来なら雷光によってあらかじめ設定した場所に転移する帰還魔法らしい。
 聖エリス神国でも使い手が数人しかいない凄い魔法らしいが、あらかじめ設定出来る場所は1ヶ所だけのようなので、ジルの転移魔法の劣化版のような感じだ。まぁ現存するほとんどの魔法はジルの使う魔法の劣化版らしいが……。

 あと、クロケルは神聖魔法以外にも人心をたぶらかし掌握する力も持っているようで、あいつのせいで過去に内部から崩壊させられた町もいくつかあるらしい。

「そんな凄い奴なんですね。搦手からめてで来る奴は苦手なんだけどな……」

 古代とか神代の人やモノじゃなければ、真っ向勝負でそうそう負けない強さを得たつもりだが、色々搦手で来られるとオレみたいな経験の浅い人間じゃ手玉に取られる可能性が高い。

 しかし……今色々考えても仕方ないか。

「グラムさん、ちょっと逃げられたのは痛いですが、実はここ以外に2箇所問題が起こってまして……」

 オレは魔界門という魔物が溢れ出す転移門が、北の貴族門と南の広場に出現している事、その対応に『恒久の転生竜』の仲間があたっていることを説明する。

「なんてこった!今、緊急依頼の準備させてたんだが、そんな悠長な事してる暇はなさそうだな!」

「そう言う事なのでオレはとりあえず南の広場の方に先に向かわせてもらいます!」

 そう言ってオレは南の広場に向かって駆け出すのだった。

 ~リリー視点~

 私たちはジルさんに広場まで転移してもらうと、すぐにそこにいる人たちに避難を呼びかけたのですが、皆突然現れた魔界門大きな門に興味津々で、誰も避難しようとしてくれませんでした。
 これももしかすると学術都市に住む人たちならではの好奇心のせいかもしれませんが、ここでは裏目に出てしまいました。

 私たちがここについて数分。避難もままならないまま、とうとう門が静かに開いてしまったのです。

 中から現れたのは以前見たようなスケルトンではなく、コボルトと呼ばれる 魔族に属する魔物でした。
 コボルトと言うのは二足歩行の狼のような容姿をしていて、知能こそ低いですが狡猾で連携して来るので低ランクの魔物の中では結構厄介な魔物です。

 しかし……私たちの敵ではありません。

 私たちは神獣の加護による全ステータスのアップに支えられ、【ギフト:共鳴の舞】と『鋼の四重奏スチールカルテッド』の相乗効果で門から溢れ出るコボルトたちを次々と黒い霧へと変えていきます。

 今まで好奇心から門の周りに集まっていた市民も、なんとか無事に逃すことが出来ました。

 ですが……次々と門から現れるコボルトに段々と追い付かなくなってきています。

「ルルー。何とか私たちで抑えきる……にゃ」

「リリー。コウガに頼まれたんだから良いとこ見せる……にゃ」

 私もですがルルーもやる気十分です。
 このまま何時間だって倒し続けてみせるつもりです!

 ~リルラ視点~

 今、私の目の前で門が開かれようとしています。
 リリーやルルー達の向かった広場と違い、まだ魔界門が設置されてからあまり時間のたっていなかった貴族街側は中々扉が開きませんでした。

 しかし、そのおかげで魔族に倒されていた衛兵さん達の治療も終わり、もうも完成しています。

「ようやくお出ましのようですね」

 扉が開ききると、門の中から次々とトカゲのような姿の二足歩行の魔物が現れだしました。
 確かあれはリザードマンと言う魔物でしょう。それなりの知能を持ち、器用に武器を使いこなす彼らは全員鈍色の剣を持っています。

 周りでその姿を見守っていた衛兵さんが、小さな悲鳴を上げながらも私を守ろうとその場に留まってくれています。
 さっき治療して差し上げた隊長らしきおじさんが「こんな小さな子一人守れずに何が衛兵かぁ!!」と言って張り切っていますが、実戦経験があまりないのか足が震えています。

「隊長様。私は大丈夫ですのでご安心ください」

 私は隊長様にそう伝えると、改めて精霊達にもお願いするのです。

「それじゃぁ精霊達みんなお願いしますね!」

 さぁ、ここからは殲滅戦です。

 1匹たりとも逃がしません!
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