【改訂版】槍使いのドラゴンテイマー ~邪竜をテイムしたのでついでに魔王も倒しておこうと思う~

こげ丸

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第一章 中盤

第45話:竜気功

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「ステータスフルブーストだ!」

 すぐさまその声にジルがこたえる。

≪承知した。『竜の加護』の抑制を解除する≫

 その瞬間、莫大な加護の力がオレに流れ込んできた。
 身体中の血液が沸き立ち、全身に全能感が満ちてくる。
 単純なステータスだけでなく、魔力はもちろん肉体そのものの構成が書き換えられていくような感覚だ。

 しかし、同時に全身が悲鳴をあげる。

「く!? きつぅ!?」

 覚悟はしていたつもりだったのだが甘かった。
 想像していた一〇倍は痛い。

 だけど……今までとは次元が違う力。すさまじいまでの力の奔流。

「コウガ様! 大丈夫ですか!?」

 リルラが心配になって駆け寄ってくるが、オレはこたえることが出来なかった。

 やばっ……ここまでとは思ってなかった。
 気を抜くと意識を持っていかれそうだ。

「ぐっ……!? かはっ!?」

 とうとうその激痛に耐えられずに蹲ってしまう。
 もう『神造機兵メグスラシル』は動き出してしまっているのに完全に判断ミスだ!

 漲る力と魔力を抑え込むだけならともかく、この肉体の構成を書き換えられていくような痛みに屈しそうになる。

≪主よ。すこし辛そうだな。なんなら、すこしサポートしようと思うがかまわぬか?≫

 …………。
 ……………………。
 ………………………………。

「で……」

≪で?≫

「出来るなら最初からしてくれぇ!!」

 いや、ほんとに勘弁してくれ……もう意識を保つのがやっとなんだよ!?

≪すまぬ。それでは承知した。この魔法は本当は主に早く覚えて欲しい竜言語魔法なのだが、今は置いておこう。とりあえずこの感覚をよく覚えておいて欲しい≫

 ジルの魔力が一瞬跳ね上がると、その竜言語魔法まほうはすぐに発動した。

たぎれ『竜気功ドラゴニックオーラ』≫

 オレとの絆を通して発動された『竜気功ドラゴニックオーラ』は、体内の魔力を竜が普段から自然に纏っている竜気というものに変えて力と成す魔法だ。

 この魔法の説明だけは受けていた。
 だがステータスフルブーストにあわせて使うことで、体を保護できるという発想はなかった。

 いや、ほんとに最初から使ってくれ……。

「すごいな! もう楽になったよ!」

 よく見ると体から竜気が溢れてうっすらと光を放っている。

「うわぁ! コウガ様、光っててなんかカッコいいです!」

 ちょっと前世で読んだ格闘漫画っぽい。
 あらためて人から言われるとちょっと恥ずかしいものがあるな……。

「あららら? これは驚いたわ~。ただのフェアリードラゴンでは無いとは思っていましたけど……私の知らない竜王様がいるのかしら~? それにコウガ君も絆を結んでいるみたいだし、公国のあのギフト~?」

 ハイエルフの二人がそれぞれ好き勝手につぶやいているが、神造機兵メグスラシルがこちらの都合など考えてくれるわけもなく、容赦なくこちらに血の渇きを放ってきた。

黒闇穿天こくあんせんてん流槍術りゅうそうじゅつ、【雲海うんかい】!」

 咄嗟に雲海で対応したのだが、雷槍ヴィジュランダの反応が今までとまったく違うことに驚いた。
 これまでオレは、この槍の力を全然引き出せてなかったのかもしれない。

 雷槍ヴィジュランダに無数の雷が纏わりつき、斬り上げるような回転に合わせて無数の雷が血の渇きを貫いたのだ。

「よし! うまく相殺できた! え?」

 咄嗟に使った【雲海うんかい】は『血の渇き』を消滅させるだけに留まらず、神造機兵メグスラシルにまでその雷の嵐を突き立てたのだが……。

「自分で驚くぐらいのすごい攻撃だったのに……そう簡単にはいかないか」

 オレからすると想像以上のすごい攻撃だったのだが、神造機兵メグスラシルはまるで何事も無かったかのように、一瞬止めた歩みを止めただけで終わってしまった。

 でも相殺は成功している。
 まずは出来ること一通りやってみて時間稼ぎをしてみよう。

黒闇穿天こくあんせんてん流槍術りゅうそうじゅつ、【雷鳴らいめい】!」

 続いて次は雷鳴を放つと、雲海以上にすさまじい攻撃となってメグスラシルを襲った。

 雷槍ヴァジュランダとの相乗効果だろうか。まるで複数の雷を束ねたように幾重もの稲妻が走り、辺りに轟音と光を巻き散らした。

「うぁ!? 我ながらすごい力だな!? よし……このまま畳み掛ける! 【月歩げっぽ】!」

 せっかく普段より数倍強化されているのだから、ここで攻撃の手を休めるのはもったいない。
 たった一回の月歩でメグスラシルの前まで躍り出ると、そのまま【閃光せんこう】で光速と化した突きを放つ。

「はぁぁぁっ!!」

 今までと違って一呼吸の間に数えきれないほどの突きを放てている。
 しかもその突きにはすべて雷撃が纏われているのだから、その威力は今までの比ではない。

 だがそれでも……。

「くっ!? なんて硬さだ!?」

 槍を持つ手が痺れる……。さすがにノーダメージといった感じではなかったが、それでも致命傷にはほど遠いだろう。
 すこしよろめきこそしたが、表面の装甲を軽く破損できただけで堪えた様子はなかった。

「ちっ!?」

 お返しとばかりに振るわれる巨大な槌の一撃が眼前を通り過ぎる。
 風圧だけで体を持っていかれそうだ。

 その巨体からは考えられないような速度で振るわれる槌は、強烈な衝撃を巻き散らし、必死に避けるオレに何度も執拗に振るわれる。

「うわ!? ……ちょっとこれは!?」

 これは掠っただけでもやばい!
 秘宝級の防具に身を包んだうえでステータス強化がされているが、それでもまともに喰らえば致命傷は確実だ。

≪主よ。ずいぶん無茶をしているが大丈夫か?≫

 ジルの言う通り、ちょっとこのままではまずそうだ。
 攻撃の隙をついて【月歩げっぽ】で一旦距離を取った。

「きつ……流石にここまで攻撃が通じないと、ちょっと人が倒すのは無理なんじゃないかな~なんて感じがするんだけど……ジル? そこの所はどうなんだ?」

≪なんだ。主はあれを倒すつもりだったのか? それはいくら何でも無謀というものだ≫

 なにが可笑しいのか、器用に魔法音声で笑ってみせるジル。

「いや……あの流れでこんなすごい加護の力貰ったら、倒せるか、倒せないまでももう少しまともな戦いになるかと思うじゃないか……」

 オレは抗議の眼でジルを見つめるのだが、ドラゴンであるジルに人間の細かい機微はわかるわけもなかった。虚しい……。

≪まぁそう怒るようなことでもあるまい。ちゃんと主の目的は果たせたではないか≫

「まぁ、それもそうか。時間稼ぎするって言ったものな。すまない」

 たしかに当初の目的は時間稼ぎだった。
 ちょっと全能感の影響で倒せるんじゃないかって欲を出しすぎた。

「うん。ちゃんと時間稼ぎはできたようだな」

 視線を向けた先ではリルラからすさまじい魔力が溢れ出し……最後の祝詞があげられたところだった。

≪顕現せよ! 風の大精霊『シグルステンペスト』!≫

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