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第一章 中盤
第50話:魔族か魔物か
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視界がひらけると、オレは冒険者ギルド前のちいさな広場へと転移していた。
「ふう……。何度経験してもこの浮遊感は気持ち悪いな。ジルが頑なに転移したがらないのもちょっとだけ頷けるんだよなぁ」
いや、それよりリルラがめっちゃ心配になってきたんだけど……。
なんだようるさいって!?
でも、今さら戻る手段もリルラに連絡する手段もない。
そもそもリルラが遅れを取ること事態そうそうあることではないだろうし、オレはオレのすべきことをきっちりこなそう。
「ね、ねぇ君! い、今いきなり現れなかったか!?」
声をかけられて振り返ると、あんぐりと口を開けている冒険者が何人か見えた。
周りの声を聞く感じだと、突然空間がぐにゃりと歪んだかと思うとオレが突然現れたようだ。
「え……? き、気のせいじゃないですかね?」
「え……? そ、そうか。そうだよな……ハハハ……俺、今日は依頼受けずに休もうかな」
な、なんか悪いことしたな……。
すまない。でも、今は急いでいるんだ。
心のなかで軽く謝罪しつつ走ると、すぐに目的の建物が見えた。
魔族より先回り出来ているはずなので、オレはこの時間を利用して魔族を探す前に冒険者ギルドへと向かっていた。
この学術都市セデナの冒険者ギルドは、護衛依頼の達成報告に一度きているので迷うことはない。
地方都市ドアラと比べると一回り小さく、冒険者自体の数も半分ほどしか所属していないが、人探しなら一人でも多いほうがいい。
それに、魔界門が設置されて魔物が溢れだした場合は討ち漏らしが怖いので、先に情報を共有して冒険者ギルドにも協力を求めるつもりだ。
オレは冒険者ギルドに入ると、すぐに受付まで進み、暇そうにしていた受付嬢をつかまえ……。
「すみません! もうすぐこの辺りに魔族が現れそうなんです! 協力をお願いします! 学院から魔法郵便が届いているはずなので、詳しくはそちらを確認してください。あ、あと、急ぎギルマスにも伝えてください!」
と言うだけ言って、返事も待たずに冒険者ギルドをあとにした。
またすぐに広場の方に戻らないと!
後ろで「えぇぇ!? ちょ、あ、あなた待って! 魔族って何ですか!?」とか叫んでるが、待っているとまた後手に回ってしまうのでそんな時間はない。
オレの話だけなら信じてもらえないかもしれないが、学院から魔法郵便で連絡が届いているから大丈夫だろう。
そもそもギルドに寄ったのは、その魔法郵便を早く処理してもらうためだから、これで目的は果たせた。
だからそのまま魔族を待ち伏せしようと広場の方に向かっていると、偶然探していた人物を発見した。
「あ、もしかしてあいつって……」
間違いない。ドアンゴだ!
なんらかの魔道具を使われて居場所が掴めなかったのでラッキーだ!
しかしドアンゴは一人ではなかった。
あきらかにサイズがあっていない学院のローブを無理やり被った大男たちと一緒だ。
っていうか……あれ、どう見てもはみ出ている頭や腕が魔族のそれだろ……。
魔族と一緒に行動を共にしていたのなら、偶然というより見つかって当然だな。
ここで魔族共々終わりにしてあげるとしよう。
「ドアンゴ先生。さっきぶりですね」
オレがわざとらしく声をかけると、そこでようやくオレに気付いたようだ。
「なんだお前は……あぁ!? さっきの宝槍を持ったガキじゃないか! どうやらツキが向いてきたようだ!」
と警戒することもなく、今度は一転して喜びの声をあげた。
「ついてます? オレはついてないとおもうんですけどね~」
と言って、雷槍ヴァジュランダをクルリと回して構えをとった。
この槍が目当てらしいからな。
ご要望に応えてあげようじゃないか。
「おい! コイツだ! コイツの持っている槍を何としてでも奪うんだ!!」
黒いローブを纏っていた男……というかもうバレバレなので魔族でいいか。その数は全部で五人。
しかし向かってきたのは四人だけ。残りの一人はなにかあやしい行動を取り始めた。
もしかすると魔界門の設置を始めようとしているのかもしれない。
これは遊んでいる場合じゃないな!
魔界門は設置させないよ?
「黒闇穿天流槍術、【月歩】!」
向かってくる四人の魔族を無視し、呪具のような物を取り出して設置しようとしていた魔族の前へと一気に躍り出る。
「グガァッ!?」
オレのことなど眼中になく、完全に油断していた魔族はまったくの無防備だった。
石突きで魔族が持っていた呪具を打ち払って奪うと、慌てている魔族にそのまま閃光をお見舞いしてやる。
ドガガガガガガッ!!
軽く放った閃光だったが、加護の力が上がっており、その煌きは百を超えて一瞬にして魔族を黒い霧へと変えた。
なにごとかと広場が騒然となるが、緊急事態だから仕方ない。
「なぁ!? ななな、なんなんだお前!?」
ドアンゴも予想しなかった展開に動揺して声をあげている。
いや、だけどすこし考えればわかるだろう。
「ドアンゴ先生。いや、ドアンゴ。ご自慢の鑑定眼でオレの槍の価値を見抜いたんでしょ? そんなすごい槍を持っている奴がただの冒険者だと?」
と言って、ドアンゴの方へと雷槍ヴァジュランダを向けて構えると、今度は顔を真っ青にしている。
そりゃぁ、お金か何か目が眩んで魔族に協力するような奴だからな。考えも浅はかか。
一応なにか弱みでも握られて……って可能性もわずかに考えていたが、この態度を見る限りその線も消えただろう。
「まぁそういう訳だから捕まえさせて貰う。ウィンドアさんにも頼まれたのでね」
「ひぃ!? お、お前ら! そいつを殺せ! お、俺に近づけるな!!」
狂ったように指示を出すドアンゴだが、いったい魔族との間でどういう契約がなされているのか。特に反抗することなくドアンゴの指示に従い、守るように残った四人が展開。その正体を現した。
「な!? さらにデカくなるのか……」
魔族は学園のローブを引き千切ると、最終的に三メートル近くまで体躯が膨らんでいく。
ジルのような魔法ではなく、実際に肉体を変化させているように感じるな。
その頭には二本の短い角を備え、上あごからは大きな牙が生えており、有名な魔物ととても似ていた。
「え? オーガ。その亜種に見えるが……」
魔族ではないのか?
オーガは魔物に分類されていたと思うが、ジルのいう魔族と魔物の分け方が人と違うのか?
いや、今は考えても仕方ない。
魔物であろうと魔族であろうとすることは同じだ。
そんな風に状況を分析しつつ隙を伺っていると……。
「なんだ~? どうして街中にオーガなんてのがいやがる?」
バカでかい呟きが聞こえてきた。そちらに視線を向けると、声の主はギルドから出てきた壮年の男性のようだ。
なかなかに貫禄があるように見える。
視線があったので聞いてみるか。
「あなたは?」
冒険者ギルドから出てきたのだから冒険者なのだろうが、周りにいるほかの冒険者と比べて存在感が大きい。念のために誰何しておく。
「俺のことを知らないってことは、この街の冒険者じゃねぇのか? 俺はこの街の冒険者ギルドを取り仕切ってるグラムだ」
取り仕切ってる。つまりはこの学術都市セドナの冒険者ギルド、ギルドマスターってことか。
ギルドマスターには冒険者からの叩き上げと、腕っぷしは弱いが管理能力などを評価されて職員が出世してなる二つのケースが多いらしいが、どう考えても前者だな。
「ギルドマスターでしたか。オレはドアラの街のC級冒険者のコウガです。ウィンドア学院長に頼まれてこいつの凶行を止めに来ました」
と言って槍でドアンゴとその前に並び立つ四匹《・》のオーガを指し示す。
「なるほどねぇ。お前があの冒険者初のドラゴンテイマーか。でも、肝心のドラゴンはどうした? まぁお前自身もかなりの強さに見えるが」
面白そうにニヤリと笑いながらこちらを見るグラムさん。
あのってなんだあのって……。
気になるけど、今はそんな時間はないか。
「従魔のドラゴンはもうすぐ来ますよ。でも、オレも元々槍使いなんでそれなりにはやるつもりです。だからここは……さっさとオレの方で終わらせてしまいますね」
オレはそう言うと【雷鳴】を四連続で放ち、一瞬でオーガを消し去った。
まわりにいた人たちは、まず大きな雷鳴に驚き、そして一瞬でオーガ四匹が黒い靄となって消えていくことに気づいて更に驚きの声を上げた。
「なっ!? こいつは驚いた。なにが『それなりに』だ! S級冒険者並みじゃねぇか……」
グラムさんも驚いているが、もっと驚いて放心している奴がいる。
ドアンゴだ。
「……へ?」
オーガはCランクの魔物。亜種ならBランクぐらいの強さはあったのだろう。
それが一瞬で倒されたのだから、驚くのも無理はないのかもしれない。
ただ、待ってやる必要もない。
呆けているドアンゴをさっさと確保しようと駆け寄るのだが……突然現れた気配に足を止められた。
「っ!? ……だれだ?」
「お? なかなかの反応速度だな。でも、こいつは利用価値があるんで持ってかれると困るんだよ~」
いつの間にかドアンゴの前に、両手を頭の後ろに組んだ小さな男の子いた。
多少油断していたかもしれないが、まったく気配を感じられなかった。
「なんだこいつは……この魔力は只者じゃねぇぞ」
グラムさんの言う通りだ。
さっきまで何も感じられなかったのに、今はその魔力に圧倒されそうなほどだ。
ただ……取り乱すほどではない。
オレの周りにいるジルやリルラと比べればそれほどではない。
もちろん、だからといって油断していい相手でないので一気に警戒レベルをひきあげた。
「ドアンゴさ~ん。せっかくアモン謹製の隠蔽の魔道具貸してあげたのに、オーガたちと一緒にいたら意味ないじゃん」
「クロケル! た、助けてく……ぐげっ!?」
そのクロケルと呼ばれた少年は、驚くことにドアンゴの顎を片手で掴み軽々と宙に持ち上げていた。
当然身長はドアンゴの方が高い。クロケルが宙に浮かんでいるのだ。
「何度言ったらわかるんだ? 『ク・ロ・ケ・ル・さ・ま』だ」
「クロケルしゃま、おた、お助け下しゃい」
「よぉし! 良い子は助けてあげよう。じゃぁ、そこの槍使い君。君とはまた会う事になりそうな気がするけど……これで失礼するよ」
そう言った瞬間だった。
突然空から黒い雷が落ちたかと思うと……もうそこに二人の姿はなかった。
「ふう……。何度経験してもこの浮遊感は気持ち悪いな。ジルが頑なに転移したがらないのもちょっとだけ頷けるんだよなぁ」
いや、それよりリルラがめっちゃ心配になってきたんだけど……。
なんだようるさいって!?
でも、今さら戻る手段もリルラに連絡する手段もない。
そもそもリルラが遅れを取ること事態そうそうあることではないだろうし、オレはオレのすべきことをきっちりこなそう。
「ね、ねぇ君! い、今いきなり現れなかったか!?」
声をかけられて振り返ると、あんぐりと口を開けている冒険者が何人か見えた。
周りの声を聞く感じだと、突然空間がぐにゃりと歪んだかと思うとオレが突然現れたようだ。
「え……? き、気のせいじゃないですかね?」
「え……? そ、そうか。そうだよな……ハハハ……俺、今日は依頼受けずに休もうかな」
な、なんか悪いことしたな……。
すまない。でも、今は急いでいるんだ。
心のなかで軽く謝罪しつつ走ると、すぐに目的の建物が見えた。
魔族より先回り出来ているはずなので、オレはこの時間を利用して魔族を探す前に冒険者ギルドへと向かっていた。
この学術都市セデナの冒険者ギルドは、護衛依頼の達成報告に一度きているので迷うことはない。
地方都市ドアラと比べると一回り小さく、冒険者自体の数も半分ほどしか所属していないが、人探しなら一人でも多いほうがいい。
それに、魔界門が設置されて魔物が溢れだした場合は討ち漏らしが怖いので、先に情報を共有して冒険者ギルドにも協力を求めるつもりだ。
オレは冒険者ギルドに入ると、すぐに受付まで進み、暇そうにしていた受付嬢をつかまえ……。
「すみません! もうすぐこの辺りに魔族が現れそうなんです! 協力をお願いします! 学院から魔法郵便が届いているはずなので、詳しくはそちらを確認してください。あ、あと、急ぎギルマスにも伝えてください!」
と言うだけ言って、返事も待たずに冒険者ギルドをあとにした。
またすぐに広場の方に戻らないと!
後ろで「えぇぇ!? ちょ、あ、あなた待って! 魔族って何ですか!?」とか叫んでるが、待っているとまた後手に回ってしまうのでそんな時間はない。
オレの話だけなら信じてもらえないかもしれないが、学院から魔法郵便で連絡が届いているから大丈夫だろう。
そもそもギルドに寄ったのは、その魔法郵便を早く処理してもらうためだから、これで目的は果たせた。
だからそのまま魔族を待ち伏せしようと広場の方に向かっていると、偶然探していた人物を発見した。
「あ、もしかしてあいつって……」
間違いない。ドアンゴだ!
なんらかの魔道具を使われて居場所が掴めなかったのでラッキーだ!
しかしドアンゴは一人ではなかった。
あきらかにサイズがあっていない学院のローブを無理やり被った大男たちと一緒だ。
っていうか……あれ、どう見てもはみ出ている頭や腕が魔族のそれだろ……。
魔族と一緒に行動を共にしていたのなら、偶然というより見つかって当然だな。
ここで魔族共々終わりにしてあげるとしよう。
「ドアンゴ先生。さっきぶりですね」
オレがわざとらしく声をかけると、そこでようやくオレに気付いたようだ。
「なんだお前は……あぁ!? さっきの宝槍を持ったガキじゃないか! どうやらツキが向いてきたようだ!」
と警戒することもなく、今度は一転して喜びの声をあげた。
「ついてます? オレはついてないとおもうんですけどね~」
と言って、雷槍ヴァジュランダをクルリと回して構えをとった。
この槍が目当てらしいからな。
ご要望に応えてあげようじゃないか。
「おい! コイツだ! コイツの持っている槍を何としてでも奪うんだ!!」
黒いローブを纏っていた男……というかもうバレバレなので魔族でいいか。その数は全部で五人。
しかし向かってきたのは四人だけ。残りの一人はなにかあやしい行動を取り始めた。
もしかすると魔界門の設置を始めようとしているのかもしれない。
これは遊んでいる場合じゃないな!
魔界門は設置させないよ?
「黒闇穿天流槍術、【月歩】!」
向かってくる四人の魔族を無視し、呪具のような物を取り出して設置しようとしていた魔族の前へと一気に躍り出る。
「グガァッ!?」
オレのことなど眼中になく、完全に油断していた魔族はまったくの無防備だった。
石突きで魔族が持っていた呪具を打ち払って奪うと、慌てている魔族にそのまま閃光をお見舞いしてやる。
ドガガガガガガッ!!
軽く放った閃光だったが、加護の力が上がっており、その煌きは百を超えて一瞬にして魔族を黒い霧へと変えた。
なにごとかと広場が騒然となるが、緊急事態だから仕方ない。
「なぁ!? ななな、なんなんだお前!?」
ドアンゴも予想しなかった展開に動揺して声をあげている。
いや、だけどすこし考えればわかるだろう。
「ドアンゴ先生。いや、ドアンゴ。ご自慢の鑑定眼でオレの槍の価値を見抜いたんでしょ? そんなすごい槍を持っている奴がただの冒険者だと?」
と言って、ドアンゴの方へと雷槍ヴァジュランダを向けて構えると、今度は顔を真っ青にしている。
そりゃぁ、お金か何か目が眩んで魔族に協力するような奴だからな。考えも浅はかか。
一応なにか弱みでも握られて……って可能性もわずかに考えていたが、この態度を見る限りその線も消えただろう。
「まぁそういう訳だから捕まえさせて貰う。ウィンドアさんにも頼まれたのでね」
「ひぃ!? お、お前ら! そいつを殺せ! お、俺に近づけるな!!」
狂ったように指示を出すドアンゴだが、いったい魔族との間でどういう契約がなされているのか。特に反抗することなくドアンゴの指示に従い、守るように残った四人が展開。その正体を現した。
「な!? さらにデカくなるのか……」
魔族は学園のローブを引き千切ると、最終的に三メートル近くまで体躯が膨らんでいく。
ジルのような魔法ではなく、実際に肉体を変化させているように感じるな。
その頭には二本の短い角を備え、上あごからは大きな牙が生えており、有名な魔物ととても似ていた。
「え? オーガ。その亜種に見えるが……」
魔族ではないのか?
オーガは魔物に分類されていたと思うが、ジルのいう魔族と魔物の分け方が人と違うのか?
いや、今は考えても仕方ない。
魔物であろうと魔族であろうとすることは同じだ。
そんな風に状況を分析しつつ隙を伺っていると……。
「なんだ~? どうして街中にオーガなんてのがいやがる?」
バカでかい呟きが聞こえてきた。そちらに視線を向けると、声の主はギルドから出てきた壮年の男性のようだ。
なかなかに貫禄があるように見える。
視線があったので聞いてみるか。
「あなたは?」
冒険者ギルドから出てきたのだから冒険者なのだろうが、周りにいるほかの冒険者と比べて存在感が大きい。念のために誰何しておく。
「俺のことを知らないってことは、この街の冒険者じゃねぇのか? 俺はこの街の冒険者ギルドを取り仕切ってるグラムだ」
取り仕切ってる。つまりはこの学術都市セドナの冒険者ギルド、ギルドマスターってことか。
ギルドマスターには冒険者からの叩き上げと、腕っぷしは弱いが管理能力などを評価されて職員が出世してなる二つのケースが多いらしいが、どう考えても前者だな。
「ギルドマスターでしたか。オレはドアラの街のC級冒険者のコウガです。ウィンドア学院長に頼まれてこいつの凶行を止めに来ました」
と言って槍でドアンゴとその前に並び立つ四匹《・》のオーガを指し示す。
「なるほどねぇ。お前があの冒険者初のドラゴンテイマーか。でも、肝心のドラゴンはどうした? まぁお前自身もかなりの強さに見えるが」
面白そうにニヤリと笑いながらこちらを見るグラムさん。
あのってなんだあのって……。
気になるけど、今はそんな時間はないか。
「従魔のドラゴンはもうすぐ来ますよ。でも、オレも元々槍使いなんでそれなりにはやるつもりです。だからここは……さっさとオレの方で終わらせてしまいますね」
オレはそう言うと【雷鳴】を四連続で放ち、一瞬でオーガを消し去った。
まわりにいた人たちは、まず大きな雷鳴に驚き、そして一瞬でオーガ四匹が黒い靄となって消えていくことに気づいて更に驚きの声を上げた。
「なっ!? こいつは驚いた。なにが『それなりに』だ! S級冒険者並みじゃねぇか……」
グラムさんも驚いているが、もっと驚いて放心している奴がいる。
ドアンゴだ。
「……へ?」
オーガはCランクの魔物。亜種ならBランクぐらいの強さはあったのだろう。
それが一瞬で倒されたのだから、驚くのも無理はないのかもしれない。
ただ、待ってやる必要もない。
呆けているドアンゴをさっさと確保しようと駆け寄るのだが……突然現れた気配に足を止められた。
「っ!? ……だれだ?」
「お? なかなかの反応速度だな。でも、こいつは利用価値があるんで持ってかれると困るんだよ~」
いつの間にかドアンゴの前に、両手を頭の後ろに組んだ小さな男の子いた。
多少油断していたかもしれないが、まったく気配を感じられなかった。
「なんだこいつは……この魔力は只者じゃねぇぞ」
グラムさんの言う通りだ。
さっきまで何も感じられなかったのに、今はその魔力に圧倒されそうなほどだ。
ただ……取り乱すほどではない。
オレの周りにいるジルやリルラと比べればそれほどではない。
もちろん、だからといって油断していい相手でないので一気に警戒レベルをひきあげた。
「ドアンゴさ~ん。せっかくアモン謹製の隠蔽の魔道具貸してあげたのに、オーガたちと一緒にいたら意味ないじゃん」
「クロケル! た、助けてく……ぐげっ!?」
そのクロケルと呼ばれた少年は、驚くことにドアンゴの顎を片手で掴み軽々と宙に持ち上げていた。
当然身長はドアンゴの方が高い。クロケルが宙に浮かんでいるのだ。
「何度言ったらわかるんだ? 『ク・ロ・ケ・ル・さ・ま』だ」
「クロケルしゃま、おた、お助け下しゃい」
「よぉし! 良い子は助けてあげよう。じゃぁ、そこの槍使い君。君とはまた会う事になりそうな気がするけど……これで失礼するよ」
そう言った瞬間だった。
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追記:2025/09/20
再編、あるいは続編を書くか迷ってます。
もし気になる方は、
コメント頂けるとするかもしれないです。
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